統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

3級-13 データ分析の基本

相関と因果

  • 相関
  • 擬相関
  • 因果関係

はじめに

「アイスがよく売れる月ほど、水の事故も増えている。アイスを売るのをやめれば、事故は減るの?」

もちろん、そんなはずはありません。この話を聞いて笑える人でも、ニュースの見出しになると話は別です。「朝食を食べる子どもは成績がいい」と聞くと、つい「朝食を食べさせれば成績が上がる」と考えたくなりますよね。

実は、この2つの話は同じ構造をしています。2つの数字が一緒に動いていることと、一方がもう一方を動かしていることは、まったくの別物なのです。

そこで登場するのが、今回の主役 擬相関 です。一見すると関係があるように見えるのに、実は直接の関係がない、見せかけの相関のことです。

前回の記事では、散らばりをグラフで見ました。その前の記事では、相関係数で2つの変数の関係を数にしました。今回の記事では、その相関を正しく読むために、相関と因果の違い、擬相関の見抜き方、因果関係の確かめ方について解説します。

相関と因果関係は別のもの

はじめに、相関と因果関係の違いについて解説します。

相関 は、一方の値が大きいほど他方の値も大きい(または小さい)という、一緒に動く傾向のことです。データを見れば、相関係数で確かめられます。

因果関係 は、一方が原因となって、もう一方が結果として変わる関係のことです。つまり、原因のほうを動かせば、結果のほうも動きます。

イメージをつかむために、傘の例を考えてみましょう。朝、傘を持っている人が多い日ほど、雨がよく降ります。これは見事な相関です。でも、みんなで傘を持てば雨が降るわけではありません。傘の数と雨の間には相関がありますが、「傘が原因で雨が結果」という因果関係はないのです。

要するに、相関はデータに見える「並び方」で、因果関係はその裏にある「仕組み」です。相関があるだけでは、仕組みまでは分かりません。

では、XX と YY に相関が見られたとき、裏側ではどんなことが考えられるでしょうか? 大きく分けて4つの可能性があります。

【相関が見られるときの4つの可能性】

  1. XX が YY の原因: 勉強時間が増えたので、点数が上がった
  2. YY が XX の原因(逆の因果): 傘の数と雨。雨が降るから傘を持つ
  3. 第3の変数が両方に影響: アイスの売上と水の事故。暑さが両方を増やす
  4. 偶然: データが少ないと、関係がなくても相関が出ることがある

ここがポイントです。相関係数は4つとも同じように高い値になることがあり、数字だけでは区別できません。どれにあたるかは、データの背景を考えて判断する必要があります。

試験のポイント:相関係数が大きくても、因果関係があるとは言えません。「相関がある」ことと「原因である」ことを分けて読みます。

以上が、相関と因果関係の違いについての解説です。

擬相関:第3の変数が作る見かけの関係

次に、擬相関について説明します。

擬相関 は、2つの変数の間に直接の関係がないのに、別の第3の変数の影響で相関が現れることです。見かけ上の相関とも呼ばれます。

イメージは、人形劇です。舞台の上で2体の人形が同時に手を挙げました。お互いに合図を送り合っているように見えますが、実は上にいる人形師が、同じ手で2本の糸を引いているだけです。第3の変数は、舞台の上からは見えない人形師です。

冒頭のアイスの話なら、人形師は「気温」です。暑い日はアイスが売れます。暑い日は海やプールに行く人が増えて、水の事故も増えます。アイスと事故の間に、直接の矢印はありません。

具体的に見てみましょう。ある小学校の1年生4人と6年生4人の、足のサイズと漢字テストの点数を調べました。

学年足のサイズ(cm)漢字テスト(点)
1年生17, 18, 19, 2030, 40, 40, 30
6年生23, 24, 25, 2680, 90, 90, 80

(足のサイズと点数は、左から順に同じ人の値です。)

8人全員で相関係数を計算すると、約0.92です。「足が大きいほど漢字が得意」に見えますよね。しかし、学年ごとに計算すると、1年生も6年生も相関係数は0になります。同じ学年の中では、足のサイズと点数はまったく関係がありません。

人形師は「学年」です。学年が上がると足も大きくなり、習った漢字も増えます。それだけのことでした。

このように、データを第3の変数でグループに分けて調べることを 層別 と言います。層別すると相関が消えるなら、擬相関の疑いが強くなります。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。市ごとに調べると、図書館の数が多い市ほど、交通事故の件数も多いという相関が見られるとします。図書館が事故を起こすわけではありません。人口の多い市は、図書館も事故も多いのです。この場合、人口1万人あたりの数に直して比べれば、人口の影響を取り除けます。

【第3の変数の探し方】

  • 時間とともに増えるものどうし → 年月や季節が人形師ではないか
  • 地域ごとの件数 → 人口や面積が人形師ではないか
  • 人どうしの比較 → 年齢や学年、家庭環境が人形師ではないか

例題:第3の変数を見抜く

ある調査で、「年収が高い人ほど、血圧が高い」という相関が見られました。この相関を説明する第3の変数として、最も考えられるものはどれでしょうか?

【考え方】

  1. 年収が血圧を直接上げるとは考えにくい
  2. 両方に影響するものを探す。一般に、年齢が上がると年収も血圧も高くなる傾向がある
  3. 年齢ごとに層別して相関が消えるなら、擬相関と判断できる

答えは年齢です。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 層別すると、相関が消えるだけでなく、全体とグループで傾向の向きが逆になることもあります。これをシンプソンのパラドックスと呼びます。第3の変数のように、原因と結果の両方に関わって判断を狂わせる要因は、交絡因子とも呼ばれます。

以上が、擬相関についての説明です。

因果関係を確かめるには

最後に、因果関係を確かめる方法を見ていきましょう。

相関だけでは因果関係は言えません。では、どうすれば言えるのでしょうか? 裁判を考えると分かりやすいです。犯人だと決めるには、現場にいたというだけでは足りません。犯行の順序が合っていて、他の人の犯行である可能性が消えて、はじめて有罪になります。

【因果関係を考える3つの条件】

  1. 関連がある: XX と YY の間に相関がある
  2. 順序が合う: 原因の XX が、結果の YY より先に起きている
  3. 他の説明を消せる: 第3の変数や偶然では説明できない

3つ目が最もむずかしい条件です。そして、これを解決する強力な方法が、前に学んだ実験研究です。

例えば、新しい学習アプリの効果を知りたいとします。アプリを使いたい人だけが使って成績が上がったとしても、効果とは言えません。もともとやる気のある人が使ったのかもしれないからです。やる気が第3の変数です。

そこで、参加者をくじ引きで2つに分けます。アプリを使う処理群と、使わない対照群です。これが前に学んだ無作為割り付けです。やる気の高い人も低い人も、家庭環境の違いも、両方のグループに同じくらいずつ混ざります。見えない人形師の糸を、両方のグループに均等に割り振るイメージです。こうすると、グループの差はアプリによるものだと判断できます。

一方で、朝食の話のように、実験ができない場面も多くあります。子どもに朝食を抜かせる実験は、倫理的に許されません。このような観察研究では、次のように慎重に考えます。

【観察研究で因果関係を疑うときの手順】

  1. 第3の変数を考える: 朝食と成績なら、生活リズムや家庭環境
  2. 層別して比べる: 同じ生活リズムの子どもどうしで比べる
  3. 結論は控えめに書く: 「関連がある」と書き、「原因である」とは書かない

冒頭の「朝食を食べる子どもは成績がいい」は、まさにこの例です。観察研究の結果だけなら、言えるのは「朝食と成績に関連がある」までです。朝食を食べさせれば成績が上がるとは言い切れません。

例題:ニュースを読む

「コーヒーを毎日飲む人は、飲まない人より睡眠時間が短い。5,000人の調査で判明した」という記事がありました。この調査は、参加者が自分の習慣を答えた観察研究です。「コーヒーが睡眠を減らす」と結論づけられるでしょうか?

【考え方】

  1. 無作為に分けた実験ではないので、因果関係は言い切れない
  2. 第3の変数がありうる: 仕事が忙しい人は、コーヒーも飲むし睡眠も短いかもしれない
  3. 逆の因果もありうる: 睡眠が短いから、眠気覚ましにコーヒーを飲むのかもしれない

答えは、結論づけられません。言えるのは「関連がある」までです。5,000人という人数の多さは、偶然の可能性を減らしますが、第3の変数の問題は解決しません。

試験のポイント:因果関係を調べるには、無作為に分けた実験が最も確かです。観察研究では、第3の変数の影響が残る可能性を考えます。

以上が、因果関係を確かめる方法についての説明です。

細かい手順を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「相関を見たら、まず人形師を探す」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は相関と因果関係の違いと、擬相関の見抜き方について紹介しました。相関係数は「一緒に動いている」ことを教えてくれますが、「なぜ動いているか」は教えてくれません。そこを考えるのは、データを読む人の役目です。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 相関は一緒に動く傾向で、因果関係は原因と結果の仕組み。相関があるだけでは因果関係は言えない。
  • 相関の裏には、XX が原因、YY が原因(逆の因果)、第3の変数、偶然の4つの可能性がある。
  • 擬相関は第3の変数という人形師が作る見かけの関係。層別すると消えることがある。
  • 因果関係を確かめる最も確かな方法は、無作為に分けた実験。

キーワードのおさらい

  • 相関: 一方の値が変わると他方の値も一緒に変わる傾向
  • 因果関係: 一方が原因となって他方が変わる関係
  • 擬相関: 第3の変数の影響で現れる、見かけ上の相関
  • 第3の変数: 2つの変数の両方に影響する別の変数
  • 層別: データを第3の変数などでグループに分けて調べること

さて、相関があるからといって因果関係があるとは限らないことが分かりました。それでも、関係が見えていれば、その関係を使って予測することはできます。勉強時間が3時間の人は、何点くらいとれそうでしょうか?

次回は、散布図に直線を引いて予測をする「回帰直線」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 擬相関の説明として、最も適切なものはどれか。
問2. A町は人口1万人でコンビニ10軒・救急車の出動400回、B町は2万人で20軒・800回、C町は4万人で40軒・1,600回だった。この結果の解釈として、最も適切なものはどれか。
問3. ある2つの変数の共分散が12、標準偏差が4と5だった。この結果の説明として、最も適切なものはどれか。
問4. 新しい学習法の効果を調べる方法として、最も適切なものはどれか。
問5. 「病院に通う回数が多い人ほど、体調が悪いと答える割合が高い」というデータの解釈として、最も適切なものはどれか。