3級-12 データ分析の基本
散らばりのグラフ表現
- ヒストグラム(柱状グラフ)
- 累積相対度数グラフ
- 幹葉図
- 箱ひげ図
- はずれ値
はじめに
「平均も標準偏差も計算したのに、データの姿が見えてこない……」
健康診断の結果を思い浮かべてください。身長と体重の数字を見れば、大まかな体格は分かります。でも、その人がどんな姿をしているかは、写真を見たほうがずっと早いですよね。データも同じです。
例えば、平均点が60点で標準偏差が20点のテストがあったとします。全体が20点から100点になだらかに広がっているのかもしれません。あるいは、45点あたりの集団と75点あたりの集団の2つに分かれているのかもしれません。数字だけでは区別がつきません。
実は、散らばりの本当の姿を見るには、グラフが欠かせません。しかも、グラフにはそれぞれ得意な見せ方があります。
そこで登場するのが、今回の主役である4つのグラフ、 ヒストグラム、幹葉図、累積相対度数グラフ、箱ひげ図 です。
前回の記事では、相関係数の数字だけでは形が分からないことを学びました。今回の記事では、散らばりをグラフで表す方法と、飛び離れた値の扱い方、グループどうしの比べ方について解説します。
ヒストグラムと幹葉図:分布の形を見る
はじめに、分布の形をそのまま見せる2つのグラフについて解説します。
ヒストグラム(柱状グラフ)は、4級で学んだように、横軸に階級、縦軸に度数をとり、隣どうしの柱をくっつけて並べたグラフです。山の数、山の位置、裾の長さといった全体の形が一目で分かります。写真でいえば全身写真です。
ただし、ヒストグラムの見え方は階級の幅で変わります。幅が広すぎると、全体が1つの塊になって細かい形が消えます。逆に狭すぎると、柱がギザギザになって大事な形が見えません。カメラのピントを合わせるように、ちょうどよい幅を選ぶ必要があります。
一方、ヒストグラムには弱点があります。階級にまとめると、もとの値が分からなくなることです。これを解決するのが 幹葉図 です。
幹葉図は、値を上の位(幹)と下の位(葉)に分けて並べた図です。木の幹から葉が生えている姿から名づけられました。例えば、15人のテストの点数は、次のように表せます。
| 幹(十の位) | 葉(一の位) |
|---|---|
| 4 | 5 8 |
| 5 | 2 6 7 |
| 6 | 0 3 3 5 9 |
| 7 | 1 4 8 |
| 8 | 2 |
| 9 | 1 |
読み方はシンプルです。幹が4で葉が5なら45点、幹が9で葉が1なら91点です。葉の数がそのまま度数なので、横に倒すとヒストグラムと同じ形が見えます。
ここがポイントです。幹葉図には1つ1つの値が残っているので、ここから統計量を計算できます。15人の真ん中は8番目で、葉を順に数えると、中央値は63点です。最頻値は2回現れる63点、範囲は 91 − 45 = 46 点です。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 階級の幅がそろっていないヒストグラムでは、柱の高さではなく、面積が度数を表すように描きます。
以上が、分布の形を見せるグラフについての解説です。
累積相対度数グラフ:割合を読み取る
次に、累積相対度数グラフについて説明します。
前に学んだように、累積相対度数 は、相対度数をその階級まで足し上げた値です。これを、階級の上端の位置に点で打って線で結んだものが 累積相対度数グラフ です。
イメージは、登山の標高グラフです。歩くほど標高は積み重なっていき、途中で下がることはありません。累積相対度数も、下は0から始まり、右上がりに進んで、最後に1に届きます。
【累積相対度数グラフの読み方】
- 縦軸の0.5に対応する横軸の値: 中央値
- 縦軸の0.25、0.75に対応する横軸の値: 第1四分位数、第3四分位数
- 傾きが急なところ: データが多く集まっている階級
- 傾きがゆるいところ: データが少ない階級
具体的に見てみましょう。200人のテストの結果が、次のようだったとします。
| 階級(点) | 0〜20 | 20〜40 | 40〜60 | 60〜80 | 80〜100 |
|---|---|---|---|---|---|
| 相対度数 | 0.05 | 0.15 | 0.30 | 0.35 | 0.15 |
| 累積相対度数 | 0.05 | 0.20 | 0.50 | 0.85 | 1.00 |
このグラフは、点数20のところで0.05、40のところで0.20、60のところで0.50を通ります。つまり、60点の位置で0.5に届くので、中央値は約60点です。グラフの上で線を読むと、第1四分位数は約43点、第3四分位数は約74点と読み取れます。
このグラフの強みは、割合の質問にすぐ答えられることです。例えば、「40点までに全体の何%がいるか」は、高さを読むだけで20%と分かります。
例題:累積相対度数を読み取る
先ほどの200人のデータについて、次の問いに答えましょう。(1) 60点以上の人は全体の何%でしょうか? (2) 80点以上の人は何人でしょうか? (3) 人が最も集まっている階級はどれでしょうか?
【解き方】
- 60点までの累積相対度数は0.50なので、1 − 0.50 = 0.50 より、50%
- 80点までが0.85なので、1 − 0.85 = 0.15。200 × 0.15 = 30 より、30人
- 隣の点との差が最大の階級を探す。0.85 − 0.50 = 0.35 の「60〜80」で、傾きが最も急
答えは、(1) 50%、(2) 30人、(3) 60〜80点の階級です。
試験のポイント:累積相対度数グラフでは、縦軸0.5の位置が中央値、傾きの急な部分がデータの多い階級です。
以上が、累積相対度数グラフについての説明です。
箱ひげ図とはずれ値
続いて、箱ひげ図とはずれ値について解説します。
4級で学んだように、箱ひげ図 は、最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値の5つの数で分布を要約した図です。この5つを 五数要約 と言います。箱は真ん中の約半分のデータの範囲を、箱の中の線は中央値を表します。
全身写真のヒストグラムに対して、箱ひげ図は身分証の情報のようなものです。細かい形は省きますが、要点が小さくまとまっています。
3級で押さえたいのは、はずれ値 の扱いです。はずれ値は、他の値から大きく離れた値のことで、4級の「外れ値」と同じものです。箱ひげ図では、次の基準ではずれ値を判定することがよくあります。
と は第1四分位数と第3四分位数、 は四分位範囲です。言葉で言うと、「箱の端から、箱の長さの1.5倍より遠くにある値」です。はずれ値は点で打ち、ひげは、はずれ値を除いた最大値と最小値まで伸ばします。
例題:はずれ値を判定する
11人の通学時間(分)は、次のとおりです。はずれ値はありますか?
5, 8, 10, 12, 13, 15, 16, 18, 20, 22, 45
【解き方】
- 中央値は6番目の15。前半 5, 8, 10, 12, 13 の中央値から 、後半 16, 18, 20, 22, 45 の中央値から
- 四分位範囲: 20 − 10 = 10
- 上の境界: 20 + 1.5 × 10 = 35
- 下の境界: 10 − 1.5 × 10 = −5
答えは、35より大きい45分がはずれ値です。下の境界より小さい値はありません。箱ひげ図では、ひげの右端は22分までで、45分は点で打ちます。
では、はずれ値を見つけたらどうすればよいのでしょうか? 機械的に捨ててはいけません。健康診断の異常値と同じです。測り間違いかもしれませんし、本当に体に何か起きているのかもしれません。まず再検査をします。
【はずれ値を見つけたら】
- 原因を調べる: 入力ミスや測定ミスがないか確かめる
- ミスなら直す: 直せないなら、理由を記録して分析から除く
- 本物なら残す: 重要な情報かもしれないので、安易に消さない
はずれ値の影響も確かめましょう。先ほどの11人の平均値は約16.7分、標準偏差は約10.2分、中央値は15分でした。45分を除いて10人にすると、平均値は13.9分、標準偏差は約5.1分、中央値は14分です。標準偏差が半分になる一方、中央値はほとんど動きません。
試験のポイント:はずれ値の判定基準は「箱の端から四分位範囲の1.5倍より外」です。はずれ値を見つけても、原因を確かめずに除いてはいけません。
以上が、箱ひげ図とはずれ値についての解説です。
グループを比べる
最後に、グラフを使ってグループを比べる方法を見ていきましょう。
箱ひげ図が最も力を発揮するのは、グループの比較です。ヒストグラムをいくつも並べると読みにくいですが、箱ひげ図は横に並べるだけで、位置と散らばりの違いが見えます。背の順の列をいくつも並べて比べるようなものです。
例題:箱ひげ図の五数要約を読む
A組とB組のテストの五数要約は、次のとおりでした。読み取れることを整理しましょう。
| 最小値 | 第1四分位数 | 中央値 | 第3四分位数 | 最大値 | |
|---|---|---|---|---|---|
| A組 | 35 | 55 | 65 | 75 | 95 |
| B組 | 45 | 60 | 62 | 66 | 80 |
【読み取りの手順】
- 位置を比べる: 中央値はA組が65点、B組が62点で、A組がやや高い
- 散らばりを比べる: 四分位範囲はA組が20点、B組が6点で、B組は真ん中に集中している
- 割合を読む: A組は中央値が65点なので、半数以上が65点以上。B組で66点以上の人は、およそ25%
ここで間違えやすいのが、箱の長さの意味です。箱が長いからといって、人数が多いわけではありません。箱の中にはどのグループも約半数が入っています。箱が長いとは、同じ人数がより広い範囲に散らばっているという意味です。
せっかくなので、ヒストグラムとの対応も見てみましょう。右に裾が長い分布では、箱ひげ図の右のひげが長くなり、中央値が箱の左寄りに来ます。分布の形と箱の形は、こうして対応しています。
でも、これには弱点があります。箱ひげ図は5つの数だけで作るので、山が2つある分布でも箱は1つです。冒頭の「45点あたりと75点あたりに分かれたテスト」でも、箱ひげ図だけでは気づけません。山の数を確かめるには、ヒストグラムや幹葉図の出番です。
4つのグラフの使い分けをまとめます。
| グラフ | 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|---|
| ヒストグラム | 分布の形、山の数を見る | もとの値が分からない |
| 幹葉図 | 形と値を同時に見る | データが多いと描けない |
| 累積相対度数グラフ | 割合や四分位数を読む | 山の形が直感的に見えない |
| 箱ひげ図 | グループを比べる、はずれ値を示す | 山の数が分からない |
試験のポイント:ヒストグラムと箱ひげ図の対応を問う問題では、中央値の位置と、ひげの長さの左右差を手がかりにします。
以上が、グループの比べ方についての説明です。
細かい読み方を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「形はヒストグラム、割合は累積相対度数グラフ、比較は箱ひげ図」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は散らばりをグラフで表す方法について紹介しました。グラフはどれも同じデータの別の写真です。何を伝えたいかに合わせて、撮り方を選ぶことが大切です。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- ヒストグラムは全身写真。形は見えるが、もとの値は消える。階級の幅で見え方が変わる。
- 幹葉図は形と値の両方が残るので、中央値や範囲も求められる。
- 累積相対度数グラフは標高グラフ。0.5の位置が中央値で、傾きの急な部分にデータが多い。
- 箱ひげ図はグループの比較に強いが、山の数は分からない。
- はずれ値は箱の端から四分位範囲の1.5倍より外の値。原因を調べずに除かない。
キーワードのおさらい
- ヒストグラム(柱状グラフ): 階級ごとの度数を、くっつけた柱で表したグラフ
- 幹葉図: 値を上の位と下の位に分けて並べた図
- 累積相対度数グラフ: 累積相対度数を線で結んだ右上がりのグラフ
- 箱ひげ図: 五数要約で分布を表す図
- はずれ値: 他の値から大きく離れた値
さて、ここまでで1つの変数と2つの変数の散らばりの見方が一通りそろいました。ところで、相関係数が高いとき、「一方が他方の原因だ」と言ってよいのでしょうか? アイスの売上と水の事故の件数に強い相関があったら、アイスを禁止すべきでしょうか?
次回は、「相関と因果」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。