3級-15 データ分析の基本
確率の基礎 — 独立と条件付き確率
- 独立な試行
- 条件付き確率
はじめに
「5回連続で外れたんだから、次こそ当たるはず!」
当たる確率が10%のガチャを続けて外すと、そろそろ順番が回ってくる気がしてきます。こう感じたことがある人は多いのではないでしょうか?
実は、この感覚はまちがいです。毎回同じ条件で引くのなら、何回外したあとでも、次に当たる確率は10%のままです。ガチャは、あなたが何回外したかを覚えていません。
一方で、情報が増えると確率が変わる場面もあります。例えば、朝の空が真っ黒な雲に覆われていると知ったら、雨が降る確率は、何も知らないときより高く見積もりますよね。
そこで登場するのが、今回の主役 独立な試行 と 条件付き確率 です。前者は「前の結果に左右されない」場面の道具で、後者は「情報が増えて確率が変わる」場面の道具です。
前回の記事では、回帰直線で予測をしても、残差というズレが残ることを見ました。今回の記事では、偶然を数字で扱う確率について、基本のルールから独立な試行、条件付き確率まで解説します。
確率の基本:足し算と引き算のルール
はじめに、4級で学んだ確率を思い出しながら、基本のルールについて解説します。
4級では、確率を「起こる場合の数 ÷ 全部の場合の数」と学びました。サイコロを1回振って偶数の目が出る確率は、3 ÷ 6 = 1/2 です。
ここで用語を整えておきます。サイコロを振るように、同じ条件でくり返せる実験や観察を 試行 と言います。試行の結果として起こることがらを 事象 と言い、事象 の確率を と書きます。確率は必ず0以上1以下の値です。
計算のルールを2つ見ていきましょう。
1. 余事象:起こらない確率
事象 が起こらないという事象を、 の 余事象 と言い、 と書きます。
言葉で言うと、「起こらない確率 = 1 − 起こる確率」です。例えば、降水確率が30%なら、雨が降らない確率は 1 − 0.3 = 0.7 で、70%です。
2. 加法定理:AまたはBの確率
「 または が起こる」確率は、次の式で求めます。
は「 または 」、 は「 かつ 」を表します。2つの確率を足すと、両方に当てはまる部分を二重に数えてしまうので、その分を1回引きます。クラスの名簿で、サッカー好きと野球好きを足すと、両方好きな人が2回数えられるのと同じです。
具体的に見てみましょう。1から20までの番号のカードから1枚引きます。2の倍数は10枚、3の倍数は6枚、両方に当てはまる6の倍数は3枚です。したがって、2の倍数または3の倍数を引く確率は、次のようになります。
なお、サイコロの「1の目」と「2の目」のように同時には起こらない関係を 排反 と言います。排反なら なので、そのまま足すだけで済みます。
以上が、確率の基本ルールについての解説です。
独立な試行:前の結果を覚えていない
次に、独立な試行について説明します。
2つの試行の結果が、互いの確率に影響しないとき、これらを 独立な試行 と言います。要するに、「前の結果を覚えていない」試行です。コインを投げて表が出ても、次のコインはそれを知りません。コインには記憶がないのです。
独立な試行では、「 かつ 」の確率を掛け算で求められます。
言葉で言うと、「続けて起こる確率 = それぞれの確率の掛け算」です。
例えば、コインを投げて表が出て、さらにサイコロを振って6が出る確率を考えましょう。コインとサイコロは互いに影響しないので、1/2 × 1/6 = 1/12 です。全部の組み合わせは 2 × 6 = 12 通りで、そのうちの1通りですから、数えても同じ答えになります。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。成功率0.7のフリースローを2本打ち、毎回の結果が独立だとします。2本とも成功する確率は 0.7 × 0.7 = 0.49 です。
では、冒頭のガチャに戻りましょう。当たる確率10%のガチャを5回続けて外す確率は、0.9を5回掛けて約0.59です。5回外すこと自体は、半分以上の確率で起こる、ごく普通の出来事なのです。そして、6回目に当たる確率は、それまでの結果に関係なく0.1のままです。
「そろそろ当たるはず」という思い込みは、独立な試行を忘れたときに生まれます。
例題:少なくとも1回当たる確率
当たる確率10%のガチャを、独立に3回引きます。少なくとも1回当たる確率を求めましょう。
【解き方】
- 「少なくとも1回当たる」の余事象は「3回とも外れる」
- 3回とも外れる確率を掛け算で求める: 0.9 × 0.9 × 0.9 = 0.729
- 余事象のルールで引く: 1 − 0.729 = 0.271
答えは0.271です。0.1 × 3 = 0.3 としてしまうのが、よくある間違いです。「1回目も3回目も当たる」場合を二重に数えているからです。
試験のポイント:「少なくとも1回」と書かれていたら、余事象を使って「1 − すべて起こらない確率」で計算します。
以上が、独立な試行についての説明です。
条件付き確率:情報が増えると確率が変わる
続いて、条件付き確率について解説します。
事象 が起こったと分かったうえで、事象 が起こる確率を 条件付き確率 と言い、 と書きます。「 のもとでの の確率」と読みます。
記号の意味は、分子が「 かつ 」の確率、分母が「」の確率です。言葉で言うと、「見る範囲を の中だけに絞って、その中で が占める割合」です。
舞台のスポットライトを想像してください。はじめは舞台全体を照らしていますが、「 が起きた」と分かった瞬間に、光が の部分だけに絞られます。その光の中で の割合を見直すのが、条件付き確率です。
例題:クロス集計表から求める
ある学校の生徒100人について、部活動と朝食の習慣を調べました。
| 朝食を食べる | 朝食を食べない | 計 | |
|---|---|---|---|
| 運動部 | 48 | 12 | 60 |
| 文化部 | 24 | 16 | 40 |
| 計 | 72 | 28 | 100 |
1人を選んだとき、次の確率を求めましょう。
【解き方】
- 朝食を食べる確率: 全体の100人が範囲なので、72 ÷ 100 = 0.72
- 運動部と分かったときに朝食を食べる確率: 範囲を運動部の60人に絞るので、48 ÷ 60 = 0.8
- 朝食を食べると分かったときに運動部である確率: 範囲を朝食を食べる72人に絞るので、48 ÷ 72 ≒ 0.67
2と3は、同じ48人を見ているのに、答えが違いますね。ここがポイントです。分母になるのは、「分かっている条件」のほうです。
つまり、 と は別物です。せっかくなので、別の例も見てみましょう。「雨の日に傘を持っている確率」はほぼ1ですが、「傘を持っている日に雨が降っている確率」はそこまで高くありません。折りたたみ傘を毎日持ち歩く人もいるからです。
試験のポイント:表の問題では、「〜のうち」「〜と分かったとき」の部分が分母です。全体の人数で割らないように注意します。
以上が、条件付き確率についての解説です。
戻すか戻さないか:独立と条件付きの関係
最後に、独立と条件付き確率の関係を見ていきましょう。
条件付き確率の式を変形すると、次の 乗法定理 が得られます。
言葉で言うと、「 が起こって、そのうえで が起こる」という順に掛け算します。
これを使う代表例が、くじ引きです。10本のうち3本が当たりのくじを、2本続けて引きます。
【2本とも当たる確率】
- 引いたくじを戻す場合: 3/10 × 3/10 = 9/100
- 引いたくじを戻さない場合: 3/10 × 2/9 = 1/15
戻す場合は、2本目も同じ状態から引くので、独立な試行です。一方、戻さない場合は、1本目が当たると残りは9本で、当たりは2本に減ります。2本目の確率が1本目の結果に左右されるので、独立ではありません。
ここから、独立の見分け方も分かります。
この式が成り立つとき、 が起きたと知っても の確率は変わりません。これが、事象 と が 独立 であるということです。この式を乗法定理に入れると、独立のときの掛け算の式に戻ります。
先ほどの表で確かめましょう。朝食を食べる確率は全体で0.72、運動部に絞ると0.8でした。部活が分かると確率が変わるので、この2つの事象は独立ではありません。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 「排反」と「独立」は別の言葉です。排反は同時に起こらないこと、独立は互いの確率に影響しないことです。確率が0でない2つの事象が排反なら、一方が起こるともう一方は起こらなくなるので、独立にはなりません。
試験のポイント:「元に戻す」は独立なので同じ確率の掛け算、「元に戻さない」は残りの本数で確率を計算し直します。
以上が、独立と条件付き確率の関係についての説明です。
細かい式が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「独立なら掛け算、条件付きなら分母を絞る」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は確率の基本ルールと、独立な試行、条件付き確率について紹介しました。ガチャの結果は前の回を覚えていませんが、くじを戻さなければ、残りの中身は変わります。確率を計算するときは、「前の結果が次に影響するかどうか」を最初に確かめることが大切です。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 余事象のルールは「1 − 起こる確率」。「少なくとも1回」の問題で活躍する。
- 「または」は足して、両方に当てはまる部分を1回引く。
- 独立な試行はコインのように記憶がない。続けて起こる確率は掛け算で求める。
- 条件付き確率は、スポットライトを条件の部分に絞って割合を見ること。
- 分母は「分かっている条件」のほう。 と は別物。
キーワードのおさらい
- 試行: 同じ条件でくり返せる実験や観察
- 事象: 試行の結果として起こることがら
- 余事象: ある事象が起こらないという事象
- 排反: 2つの事象が同時には起こらないこと
- 独立な試行: 結果が互いの確率に影響しない試行
- 条件付き確率: ある事象が起こったと分かったうえで、別の事象が起こる確率
- 乗法定理: かつ の確率を と の掛け算で求める式
さて、ここまでは「ある出来事が起こる確率」を1つずつ求めてきました。では、サイコロの目やシュートの成功回数のように、結果が数字で表せるとき、その数字全体の平均や散らばりは計算できるのでしょうか?
次回は、確率をデータのように扱う「確率変数」と、二項分布・正規分布について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。