4級-1 データの読み方の基礎
統計的問題解決の方法 — PPDACサイクル
- PDCAサイクル
- PPDACサイクル
はじめに
「統計って、計算がたくさん出てくる科目でしょ?」
統計と聞くと、数字とにらめっこする姿を思い浮かべるかもしれません。でも、統計の出番はもっと身近なところにあります。
例えば、学校の給食委員になったとしましょう。先生から「最近、給食の食べ残しが多いんだよね」と相談されました。ここでいきなり「みんな残さず食べましょう」と呼びかけても、あまり効果はなさそうですよね。どの料理が残っているのかも、なぜ残っているのかも、まだ分かっていないからです。
実は、統計の本当の仕事は、計算そのものではありません。データを手がかりにして、身の回りの問題を解決することです。計算は、その途中で使う道具の1つにすぎません。
そこで登場するのが、今回の主役 PPDACサイクル です。PPDACサイクルとは、問いを立ててから結論を出すまでの流れを、5つの段階に分けたものです。
今回の記事では、4級の最初の一歩として、PPDACサイクルの5つの段階と、よく似た名前の PDCAサイクル との違いについて解説します。
PPDACサイクルの全体像
はじめに、PPDACサイクルの全体像について解説します。
PPDACサイクル は、データを使って問題を解決するときの手順です。5つの段階の頭文字を並べて、この名前が付いています。
【PPDACサイクルの5つの段階】
- Problem(問題): 何を明らかにしたいのかを決める
- Plan(計画): 何のデータを、どう集めるかを決める
- Data(データ): データを集めて、整理する
- Analysis(分析): 表やグラフにして、特徴を読み取る
- Conclusion(結論): 分かったことをまとめ、次の行動を考える
この流れは、お医者さんの診察によく似ています。
まず、「最近だるい」という悩みから、何を調べるべきかを考えます。次に、血液検査をするのかレントゲンを撮るのかを決めます。そして、実際に検査を受けて結果を集めます。結果の数値を読み取り、最後に「原因はこれです。こう治しましょう」と伝えます。検査もしないで薬を出すお医者さんがいたら、少し不安になりますよね。
もう1つのポイントは、「サイクル」という名前のとおり、1周で終わりではないことです。結論を出すと、たいてい新しい疑問が生まれます。その疑問を次の Problem にして、もう1周回していきます。
以上が、PPDACサイクルの全体像についての解説です。
5つの段階を給食の例で見る
次に、5つの段階を給食の食べ残しの例で説明します。1つずつ見ていきましょう。
1. Problem:問いを立てる
最初の段階では、解決したい問題を、データで答えられる問いに言い直します。
「食べ残しが多い」のままでは、何を調べればよいのか分かりません。そこで、「どの料理のときに食べ残しが多いのか?」という問いにします。このように問いがはっきりすると、次にやることも見えてきます。
2. Plan:調べ方を決める
次の段階では、データの集め方を決めます。ここではまだ、データは集めません。
今回は「2週間、給食のある10日間について、食べ残しの重さを毎日はかる。主菜の種類も記録する」と決めました。アンケートを取るなら、質問の内容を考えるのもこの段階です。旅行でいえば、出発の前にしおりを作る段階にあたります。
3. Data:集めて整える
続いて、計画どおりにデータを集めて、記録を整えます。
ここで見落としやすいのが、データの点検です。例えば、5.5kg のはずが 55kg と入力されていたら、後の分析がすべて狂います。記録の抜けや入力ミスを確認するところまでが、この段階の仕事です。
4. Analysis:表やグラフで読み取る
データがそろったら、表やグラフにして特徴を読み取ります。10日間の記録を主菜ごとにまとめると、次のようになりました。
| 主菜 | 日数 | 食べ残しの合計 | 1日あたり |
|---|---|---|---|
| 魚料理 | 4日 | 24.0kg | 6.0kg |
| 肉料理 | 3日 | 9.0kg | 3.0kg |
| カレー | 3日 | 4.5kg | 1.5kg |
ここで、日数が違う点に注目してください。魚料理は4日、ほかは3日なので、合計のまま比べると公平ではありません。そこで、合計を日数で割って、1日あたりの重さをそろえます。魚料理なら、24.0 ÷ 4 = 6.0 です。
すると、魚料理の日の食べ残しは、肉料理の日の2倍もあることが分かります。
5. Conclusion:結論を出す
最後に、分析の結果を最初の問いに答える形でまとめます。
「魚料理の日に食べ残しが多い。そこで、魚料理の味付けを見直すよう提案する」というのが今回の結論です。同時に、「魚の何が食べにくいのか? 骨か、味か?」という新しい問いも生まれました。これが、次の周の Problem になります。
例題:段階を順番に並べる
図書室の貸出数が減っている問題に取り組みました。次の作業を、PPDACサイクルの順番に並べましょう。
- A: 集計した結果を学年別の棒グラフにして比べた
- B: 「なぜ貸出数が減ったのか?」を問いにした
- C: アンケートの質問を作り、配る日を決めた
- D: 「1年生の利用が少ないので、入口の案内を増やそう」とまとめた
- E: アンケートを回収し、回答を表に入力した
【解き方】
- 問いを立てているのは B なので、Problem
- 調べ方を決めているのは C なので、Plan
- 集めて整えているのは E なので、Data
- グラフにして比べているのは A なので、Analysis
- まとめて次の行動を考えているのは D なので、Conclusion
答えは B → C → E → A → D です。
試験のポイント:「質問の内容を決める」は、データを集める前の Plan です。Data と間違えやすいので注意しましょう。
以上が、5つの段階についての説明です。
PDCAサイクルとの違い
最後に、名前のよく似た PDCAサイクルとの違いを見ていきましょう。
PDCAサイクル は、仕事や活動を改善し続けるための手順です。4つの段階からできています。
【PDCAサイクルの4つの段階】
- Plan(計画): 何をするかを決める
- Do(実行): 計画どおりにやってみる
- Check(評価): うまくいったかを確かめる
- Act(改善): 続けるか、やり方を変えるかを決める
2つの違いを一言で言うと、PPDACサイクルは「調べて、原因や実態を明らかにする」ための手順で、PDCAサイクルは「やってみて、やり方をよくする」ための手順です。
| PPDACサイクル | PDCAサイクル | |
|---|---|---|
| 段階の数 | 5つ | 4つ |
| 目的 | データで問いに答える | 活動を改善し続ける |
| 中心の作業 | データの収集と分析 | 計画の実行と見直し |
スポーツに例えてみましょう。試合の記録を集めて「後半に失点が多い」と突き止めるのが PPDAC です。一方で、「走り込みを増やす」と決めて練習し、次の試合で効果を確かめるのが PDCA です。
2つは対立するものではなく、組み合わせて使えます。せっかくなので、給食の例でも見てみましょう。
PPDAC の結論を受けて、「魚料理の味付けを変える」と計画します(Plan)。実際に1か月やってみます(Do)。食べ残しの重さをはかって効果を確かめます(Check)。減っていれば続け、減っていなければ別の工夫に変えます(Act)。
試験のポイント:どちらも最初のほうに Plan がありますが、PPDAC の Plan は「データの集め方」、PDCA の Plan は「活動の進め方」を決める段階です。
以上が、PDCAサイクルとの違いについての解説です。
細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「データを集める前に、まず問いと計画を立てる」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回はデータを使って問題を解決する手順、PPDACサイクルについて紹介しました。統計は、計算から始まるものではありません。「何を知りたいのか」という問いから始まり、その答えを行動につなげて、ようやく1周です。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- PPDACサイクルは、Problem → Plan → Data → Analysis → Conclusion の順に進む。
- お医者さんの診察と同じで、調べ方を決めてから検査し、結果を読み取って結論を出す。
- 結論から新しい問いが生まれたら、もう1周回す。
- PDCAサイクルは、Plan → Do → Check → Act の順に活動を改善する手順。
キーワードのおさらい
- PPDACサイクル: 問題、計画、データ、分析、結論の5段階で、データから問題を解決する手順
- PDCAサイクル: 計画、実行、評価、改善の4段階で、活動を改善し続ける手順
さて、PPDACサイクルの Data の段階では、データを集めました。ところで、身長の「160」と出席番号の「16」は、同じ数字でも扱い方がまったく違うことをご存知ですか?
次回は、「量的データと質的データ」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。