統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-1 統計数理

事象と確率 — 確率計算の理論

  • 確率の計算
  • 統計的独立
  • 条件付き確率
  • ベイズの定理
  • 包除原理

はじめに

「公式は使えるのに、『証明せよ』と言われると手が止まる……」

準1級の問題を解けるようになった人が、1級の問題を開いて最初に感じるのは、たぶんこの戸惑いです。包除原理の公式は知っています。ベイズの定理も計算できます。でも、なぜその式が成り立つのかを答案に書こうとすると、何から書けばよいのか分かりません。

例えば、料理に例えてみましょう。レシピを見て作れる人と、レシピを自分で書ける人は違います。レシピを書ける人は、なぜその順番で塩を入れるのかを説明できるので、材料が変わっても対応できます。

実は、確率の公式はどれも、3つの公理から数行で導けます。そして、導き方を身につけると、公式集に載っていない問題にも、同じ手順で式を立てられるようになります。

そこで登場するのが、今回の主役 指示関数 と 条件付けによる場合分け です。指示関数は包除原理を一気に証明する道具で、条件付けは複雑な確率を漸化式に変える道具です。

前回の記事で、準1級の範囲はひと通り終わりました。ここからは1級の統計数理です。今回の記事では、公理からの導出、包除原理の証明、条件付き確率と統計的独立の性質、そしてベイズの定理を使った確率の計算について解説します。

公理から公式を導く

はじめに、確率の計算の出発点である公理からの導出について解説します。

準1級で見た3つの約束を思い出しましょう。P(A)≥0P(A) \ge 0、P(Ω)=1P(\Omega) = 1、そして互いに排反な事象の列について P(⋃iAi)=∑iP(Ai)P(\bigcup_i A_i) = \sum_i P(A_i) です。最後の性質を 可算加法性 と呼びます。1級の答案では、最初に使ってよいのはこの3つだけ、という気持ちで書きます。

ここから、次の性質が順に出てきます。

【公理から出る基本の性質】

  1. P(∅)=0P(\emptyset) = 0: Ω=Ω∪∅∪∅∪⋯\Omega = \Omega \cup \emptyset \cup \emptyset \cup \cdots に可算加法性を使うと、P(∅)P(\emptyset) を無限に足しても有限なので0
  2. 余事象: AA と AcA^c は排反で、合わせると Ω\Omega なので P(Ac)=1−P(A)P(A^c) = 1 - P(A)
  3. 単調性: A⊂BA \subset B なら B=A∪(B∖A)B = A \cup (B \setminus A) は排反な分解なので P(A)≤P(B)P(A) \le P(B)

3つとも、やっていることは同じです。重なりのない部品に切り分けてから、足しています。ジグソーパズルのピースのように、重ならないものだけが足せるのです。

具体的に見てみましょう。2級で学んだ加法定理を証明します。A∪B=A∪(B∖A)A \cup B = A \cup (B \setminus A) と B=(A∩B)∪(B∖A)B = (A \cap B) \cup (B \setminus A) は、どちらも排反な分解です。

P(A∪B)=P(A)+P(B∖A),P(B)=P(A∩B)+P(B∖A)P(A \cup B) = P(A) + P(B \setminus A), \qquad P(B) = P(A \cap B) + P(B \setminus A)

2つの式から P(B∖A)P(B \setminus A) を消すと、P(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B)P(A \cup B) = P(A) + P(B) - P(A \cap B) が得られます。

せっかくなので、無限が関わる例も見てみましょう。事象が増えていく列 A1⊂A2⊂⋯A_1 \subset A_2 \subset \cdots について、次の 確率の連続性 が成り立ちます。

P(⋃n=1∞An)=lim⁡n→∞P(An)P\left(\bigcup_{n=1}^{\infty} A_n\right) = \lim_{n \to \infty} P(A_n)

証明も同じ発想です。B1=A1B_1 = A_1、Bn=An∖An−1B_n = A_n \setminus A_{n-1} と切り分けると、BnB_n は互いに排反で、∑k=1nP(Bk)=P(An)\sum_{k=1}^{n} P(B_k) = P(A_n) です。可算加法性から、左辺はこの和の n→∞n \to \infty の極限に等しくなります。

例えば、コインを投げ続けて「いつか表が出る」確率を考えます。AnA_n を「nn 回以内に表が出る」とすると P(An)=1−(1/2)nP(A_n) = 1 - (1/2)^n なので、極限をとって確率は1です。

以上が、公理からの導出についての解説です。

包除原理を指示関数で証明する

次に、包除原理の証明について説明します。

kk 個の事象の重なりの確率を、すべての組について足した値を SkS_k と書きます。

Sk=∑i1<⋯<ikP(Ai1∩⋯∩Aik)S_k = \sum_{i_1 < \cdots < i_k} P(A_{i_1} \cap \cdots \cap A_{i_k})

すると準1級で見た 包除原理 は、P(⋃iAi)=S1−S2+⋯+(−1)n−1SnP(\bigcup_i A_i) = S_1 - S_2 + \cdots + (-1)^{n-1} S_n と書けます。

数学的帰納法でも証明できますが、添え字が増えて答案が長くなります。そこで 指示関数 の出番です。1A\mathbf{1}_A は、AA が起これば1、起こらなければ0をとる確率変数です。事象ごとに丸かバツを付ける、出席簿のようなものです。

【指示関数の3つの性質】

  1. 期待値が確率になる: E[1A]=P(A)E[\mathbf{1}_A] = P(A)
  2. 積が共通部分になる: 1A∩B=1A1B\mathbf{1}_{A \cap B} = \mathbf{1}_A \mathbf{1}_B
  3. 余事象は1から引く: 1Ac=1−1A\mathbf{1}_{A^c} = 1 - \mathbf{1}_A

「どの AiA_i も起こらない」の指示関数は、性質2と3から ∏i(1−1Ai)\prod_i (1 - \mathbf{1}_{A_i}) です。これを展開します。

∏i=1n(1−1Ai)=1−∑i1Ai+∑i<j1Ai1Aj−⋯+(−1)n1A1⋯1An\prod_{i=1}^{n} (1 - \mathbf{1}_{A_i}) = 1 - \sum_{i} \mathbf{1}_{A_i} + \sum_{i<j} \mathbf{1}_{A_i} \mathbf{1}_{A_j} - \cdots + (-1)^n \mathbf{1}_{A_1} \cdots \mathbf{1}_{A_n}

両辺の期待値をとると、左辺は 1−P(⋃iAi)1 - P(\bigcup_i A_i)、右辺は 1−S1+S2−⋯+(−1)nSn1 - S_1 + S_2 - \cdots + (-1)^n S_n です。これで証明は終わりです。集合の図を描かなくても、多項式の展開だけで済みました。

同じ道具で、もっと強い公式も出ます。起こった事象の個数を R=∑i1AiR = \sum_i \mathbf{1}_{A_i} とします。kk 個の積の和は、起こった RR 個から kk 個を選ぶ組の数に等しいので、Sk=E[RCk]S_k = E[{}_{R}\mathrm{C}_{k}] です。このことから、ちょうど mm 個の事象が起こる確率が求まります。

P(R=m)=∑k=mn(−1)k−m kCm SkP(R = m) = \sum_{k=m}^{n} (-1)^{k-m}\, {}_{k}\mathrm{C}_{m}\, S_k

なぜでしょうか? R=rR = r のとき、右辺の期待値の中身は ∑k(−1)k−m kCm rCk\sum_k (-1)^{k-m}\, {}_{k}\mathrm{C}_{m}\, {}_{r}\mathrm{C}_{k} です。kCm rCk=rCm r−mCk−m{}_{k}\mathrm{C}_{m}\, {}_{r}\mathrm{C}_{k} = {}_{r}\mathrm{C}_{m}\, {}_{r-m}\mathrm{C}_{k-m} と組み替えると、これは rCm(1−1)r−m{}_{r}\mathrm{C}_{m} (1-1)^{r-m} になります。つまり、r=mr = m で1、それ以外で0です。要するに、右辺は R=mR = m の指示関数の期待値なのです。

具体的に見てみましょう。4種類が等確率で出るガチャを8回引いて、全種類がそろう確率を求めます。AiA_i を「種類 ii が出ない」とします。特定の kk 種類が出ない確率は (1−k/4)8(1 - k/4)^8 なので、Sk=4Ck(1−k/4)8S_k = {}_{4}\mathrm{C}_{k} (1 - k/4)^8 です。全種類がそろうのは R=0R = 0 のときで、次のようになります。

1−4(34)8+6(12)8−4(14)8≈0.6231 - 4\left(\frac{3}{4}\right)^8 + 6\left(\frac{1}{2}\right)^8 - 4\left(\frac{1}{4}\right)^8 \approx 0.623

補足(ここは読み飛ばしてOK): 包除原理の和を途中で打ち切ると、奇数項までなら上からの評価、偶数項までなら下からの評価になります。これがボンフェローニの不等式で、∑k=0s(−1)k rCk=(−1)s r−1Cs\sum_{k=0}^{s} (-1)^k\, {}_{r}\mathrm{C}_{k} = (-1)^s\, {}_{r-1}\mathrm{C}_{s} から導けます。

例題:ちょうど m 人が自分の品を受け取る確率

nn 人が持ち寄ったプレゼントを、無作為に1つずつ受け取る。〔1〕AiA_i を「ii さんが自分の品を受け取る」としたとき、Sk=1/k!S_k = 1/k! を示せ。〔2〕ちょうど mm 人が自分の品を受け取る確率 pn(m)p_n(m) を求めよ。〔3〕p5(2)p_5(2) と、n→∞n \to \infty のときの pn(m)p_n(m) の極限を求めよ。

【解答】

〔1〕特定の kk 人が自分の品を受け取る配り方は、残り n−kn-k 人の並べ方の (n−k)!(n-k)! 通りである。したがって各項は (n−k)!/n!(n-k)!/n! で、組は nCk{}_{n}\mathrm{C}_{k} 個あるから、Sk=n!k!(n−k)!⋅(n−k)!n!=1k!S_k = \dfrac{n!}{k!(n-k)!} \cdot \dfrac{(n-k)!}{n!} = \dfrac{1}{k!} である。

〔2〕公式に代入し、kCm/k!=1/(m! (k−m)!){}_{k}\mathrm{C}_{m} / k! = 1/(m!\,(k-m)!) を使って j=k−mj = k - m とおくと、次を得る。

pn(m)=1m!∑j=0n−m(−1)jj!p_n(m) = \frac{1}{m!} \sum_{j=0}^{n-m} \frac{(-1)^j}{j!}

〔3〕p5(2)=12(1−1+12−16)=16p_5(2) = \dfrac{1}{2}\left(1 - 1 + \dfrac{1}{2} - \dfrac{1}{6}\right) = \dfrac{1}{6} である。n→∞n \to \infty では和が e−1e^{-1} に収束するので、pn(m)→e−1/m!p_n(m) \to e^{-1}/m! である。

極限は、平均1のポアソン分布の確率関数です。この結果は、後の記事の少数法則につながります。

試験のポイント:答案は「事象 AiA_i を定義する → SkS_k を求める → 公式に入れる」の順に書きます。最初に事象を言葉で定義するだけで、見通しが大きく変わります。

以上が、包除原理の証明についての説明です。

条件付き確率と統計的独立の性質

続いて、条件付き確率と統計的独立の性質について解説します。

P(B)>0P(B) > 0 のとき、条件付き確率は P(A∣B)=P(A∩B)/P(B)P(A \mid B) = P(A \cap B)/P(B) でした。ここで大切なのは、BB を固定すると Q(A)=P(A∣B)Q(A) = P(A \mid B) がまた3つの公理を満たすことです。

証明は短いです。Q(A)≥0Q(A) \ge 0 は明らかで、Q(Ω)=P(B)/P(B)=1Q(\Omega) = P(B)/P(B) = 1 です。AiA_i が排反なら Ai∩BA_i \cap B も排反なので、可算加法性も引き継がれます。

つまり、条件付き確率は特別なものではなく、新しい確率そのものです。舞台を BB に替えて、同じ劇を上演するイメージです。だから、余事象の公式も包除原理も、すべての確率に ∣B\mid B を付けたままで使えます。

次に、統計的独立 です。AA と BB が独立なら、AA と BcB^c も独立です。

P(A∩Bc)=P(A)−P(A∩B)=P(A)−P(A)P(B)=P(A) P(Bc)P(A \cap B^c) = P(A) - P(A \cap B) = P(A) - P(A)P(B) = P(A)\, P(B^c)

事象 A1,…,AnA_1, \dots, A_n が互いに独立であるとは、どの部分集合についても積の式が成り立つことです。式の本数は 2n−n−12^n - n - 1 本あります。上の計算をくり返すと、一部を余事象に置き換えても互いに独立なままだと分かります。

例えば、故障確率0.1の機械を3台並列につなぎ、1台でも動けば動くとします。3台が互いに独立なら、すべて故障する確率は 0.130.1^3 なので、動く確率は0.999です。

ここで、1級で差がつく概念があります。条件付き独立 です。P(A∩B∣C)=P(A∣C) P(B∣C)P(A \cap B \mid C) = P(A \mid C)\, P(B \mid C) が成り立つことで、これは独立とは別物です。

具体的に見てみましょう。袋に、表の出る確率が0.9の硬貨と0.1の硬貨が1枚ずつ入っています。無作為に1枚選んで2回投げます。硬貨を決めれば、2回の結果は独立です。しかし、硬貨を決めずに計算すると、1回目の表 H1H_1、2回目の表 H2H_2 について次のようになります。

P(H1)=P(H2)=0.5,P(H1∩H2)=0.81+0.012=0.41≠0.25P(H_1) = P(H_2) = 0.5, \qquad P(H_1 \cap H_2) = \frac{0.81 + 0.01}{2} = 0.41 \ne 0.25

P(H2∣H1)=0.82P(H_2 \mid H_1) = 0.82 と、1回目の表で確率が上がりました。1回目の表が「表の出やすい硬貨を選んだらしい」という情報を運ぶからです。同じ先生が採点した2枚の答案の点数が、先生の甘さを通じて似てくるのと同じです。

試験のポイント:「硬貨を固定すれば独立」のような条件付き独立を、独立と取り違えないようにします。答案では、どの条件のもとで独立なのかを明記します。

以上が、条件付き確率と統計的独立の性質についての解説です。

ベイズの定理と条件付けによる確率の計算

最後に、ベイズの定理と、条件付けで確率を計算する手順を見ていきましょう。

ベイズの定理 の証明は、乗法定理を2通りに書くだけです。P(A)P(Bj∣A)=P(Bj)P(A∣Bj)P(A)P(B_j \mid A) = P(B_j)P(A \mid B_j) の両辺を P(A)P(A) で割り、分母に全確率の公式を入れます。

1級で便利なのは、2つの原因を比べる形です。分母の P(A)P(A) が約分で消えます。

P(B1∣A)P(B2∣A)=P(B1)P(B2)×P(A∣B1)P(A∣B2)\frac{P(B_1 \mid A)}{P(B_2 \mid A)} = \frac{P(B_1)}{P(B_2)} \times \frac{P(A \mid B_1)}{P(A \mid B_2)}

言葉で言うと、「事後オッズ = 事前オッズ × 尤度比」です。裁判で、証拠が出るたびに天秤の片側へ重りを足していくイメージです。

例えば、有病率0.5%の病気を、感度98%、特異度96%の検査で調べます。事前オッズは 1:1991 : 199 で、尤度比は 0.98÷0.04=24.50.98 \div 0.04 = 24.5 です。事後オッズは 24.5:19924.5 : 199 なので、陽性の人が病気である確率は 24.5÷223.5≈0.11024.5 \div 223.5 \approx 0.110 です。

例題:硬貨の種類を推測する

袋に、表の確率が 1/21/2 の硬貨 AA と 3/43/4 の硬貨 BB が1枚ずつある。無作為に1枚選んで3回投げると、すべて表だった。硬貨を固定すると各回の結果は独立とする。〔1〕選んだ硬貨が BB である確率を求めよ。〔2〕4回目も表である確率を求めよ。

【解答】

〔1〕3回とも表の事象を EE とする。P(E∣A)=1/8P(E \mid A) = 1/8、P(E∣B)=27/64P(E \mid B) = 27/64 で、事前オッズは 1:11 : 1 だから、事後オッズは B:A=27:8B : A = 27 : 8 である。よって P(B∣E)=27/35P(B \mid E) = 27/35 である。

〔2〕P(⋅∣E)P(\cdot \mid E) も確率なので、全確率の公式が使える。硬貨を固定すると各回は独立だから、次を得る。

P(H4∣E)=12⋅835+34⋅2735=97140≈0.693P(H_4 \mid E) = \frac{1}{2} \cdot \frac{8}{35} + \frac{3}{4} \cdot \frac{27}{35} = \frac{97}{140} \approx 0.693

何も見ていないときの P(H4)=5/8P(H_4) = 5/8 より上がっています。データから学んだ分だけ、次の予測が変わるのです。

全確率の公式には、もう1つ強力な使い方があります。「最初の1歩で場合分けする」と、確率の漸化式が立つのです。

例題:ギャンブラーの破産

1回の勝負で確率 pp で1点増え、確率 q=1−pq = 1 - p で1点減る(p≠1/2p \ne 1/2)。持ち点が0になるか NN になると終了する。持ち点 ii から始めて NN に到達する確率 PiP_i を求めよ。

【解答】

1回目の勝敗で場合分けすると、Pi=pPi+1+qPi−1P_i = p P_{i+1} + q P_{i-1} である。境界は P0=0P_0 = 0、PN=1P_N = 1 である。

p+q=1p + q = 1 を使うと p(Pi+1−Pi)=q(Pi−Pi−1)p(P_{i+1} - P_i) = q(P_i - P_{i-1}) となる。r=q/pr = q/p とおくと、差 Pi+1−PiP_{i+1} - P_i は公比 rr の等比数列で、初項は P1P_1 である。差を足し合わせて次を得る。

Pi=P1(1+r+⋯+ri−1)=P11−ri1−rP_i = P_1 (1 + r + \cdots + r^{i-1}) = P_1 \frac{1 - r^i}{1 - r}

PN=1P_N = 1 から P1P_1 を定めると、答えは Pi=1−ri1−rNP_i = \dfrac{1 - r^i}{1 - r^N} である。

p=0.4p = 0.4、i=3i = 3、N=6N = 6 なら、r=1.5r = 1.5 で P3≈0.229P_3 \approx 0.229 です。五分五分の勝負なら i/N=0.5i/N = 0.5 なので、1回あたりのわずかな不利が、大きな差に育ちます。

以上が、ベイズの定理と条件付けによる確率の計算についての解説です。

細かい式変形を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「排反に切り分ける」「指示関数に直す」「最初の1歩で場合分けする」という3つの手順だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は確率の公式を公理から導き、包除原理、独立、ベイズの定理の証明と、確率の計算の手順を紹介しました。公式を覚える段階から、公式を作れる段階へ進むことが、1級の第一歩です。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 確率の公式は、3つの公理と「排反な部品に切り分ける」操作から導ける。
  • 包除原理は、指示関数の積を展開して期待値をとるだけで証明できる。ちょうど mm 個の確率も同じ道具で出る。
  • 条件付き確率は新しい確率そのもの。条件付き独立は、独立とは別の概念である。
  • 全確率の公式で最初の1歩を場合分けすると、確率の漸化式が立つ。

キーワードのおさらい

  • 確率の計算: 公理から導いた性質と場合分けで確率を求めること
  • 統計的独立: P(A∩B)=P(A)P(B)P(A \cap B) = P(A)P(B) が成り立つこと。3つ以上ではすべての部分集合で成り立つことを要求する
  • 条件付き確率: BB を全体と見直した確率。公理を満たす新しい確率である
  • ベイズの定理: 事前確率と尤度から事後確率を求める公式。事後オッズ = 事前オッズ × 尤度比
  • 包除原理: 和事象の確率を S1−S2+S3−⋯S_1 - S_2 + S_3 - \cdots で求める公式
  • 指示関数: 事象が起これば1、起こらなければ0をとる確率変数

さて、ここまでは事象の確率を扱いました。しかし統計学の主役は、数値をとる確率変数です。分布を表す関数はたくさんありますが、それらはどうつながっているのでしょうか?

次回は、危険率から母関数までを扱う「確率分布と母関数」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 3つの事象について S1=1.2S_1 = 1.2、S2=0.4S_2 = 0.4、S3=0.05S_3 = 0.05 である。ちょうど1つの事象が起こる確率として正しいものはどれか。
問2. 3種類が等確率で出るガチャを5回引いて、全種類がそろう確率として正しいものはどれか。
問3. 独立と条件付き独立の説明として、最も適切なものはどれか。
問4. ある仮説の事前オッズが 1:91 : 9 で、得られたデータの尤度比が18である。この仮説の事後確率として正しいものはどれか。
問5. 1回の勝負で確率 2/32/3 で1点増え、確率 1/31/3 で1点減る。持ち点1から始めて、0点になる前に3点に到達する確率として正しいものはどれか。