統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-12 統計数理

点推定量の性質 — よさの立証

  • 不偏性
  • 一致性
  • 十分性
  • 有効性
  • 推定量の相対効率

はじめに

「この推定量がよいって、どうやって証明するの?」

準1級で、不偏性、一致性、十分性、有効性という4つの基準を学びました。言葉の意味は分かりましたよね。でも、1級の論述で問われるのは「θ^\hat{\theta} が一致推定量であることを示せ」「分散が最小の不偏推定量を求めよ」という立証です。

中古車を買う場面を想像してください。店員さんの「いい車ですよ」だけでは決められません。整備記録を見て、試乗をして、よさを自分で確かめますよね。推定量も同じで、基準ごとに決まった検査の手順があります。

実は、4つの基準には、それぞれ証明の道具がそろっています。不偏性には期待値の計算、一致性にはチェビシェフの不等式、十分性には条件つき期待値、有効性にはスコアの計算です。道具さえ分かれば、答案の形はほぼ決まります。

そこで登場するのが、今回の主役 一様最小分散不偏推定量(UMVU) です。これは、不偏推定量の中で、母数がどの値でも分散が最小になる推定量です。

前回の記事では、いろいろな推定量の作り方を学びました。今回の記事では、4つの基準を立証する手順と、UMVU の求め方、推定量の相対効率の計算について解説します。

不偏性:期待値の計算で立証する

はじめに、不偏性の立証について解説します。

不偏性 とは、すべての θ\theta で Eθ[θ^]=θE_\theta[\hat{\theta}] = \theta が成り立つことでした。準1級で学んだ MSE=分散+バイアス2\text{MSE} = \text{分散} + \text{バイアス}^2 の分解は、ここでも基本です。1級では、不偏推定量を組み立てる話と、存在しないことを示す話に踏み込みます。1つずつ見ていきましょう。

1. 不偏推定量を組み立てる

体重計の癖を調べて目盛りを補正するように、期待値を計算して補正すれば、不偏推定量が作れます。

具体的に見てみましょう。X∼B(n,p)X \sim B(n, p) で p2p^2 を推定します。p^2=(X/n)2\hat{p}^2 = (X/n)^2 の期待値は p2+p(1−p)/np^2 + p(1-p)/n なので、偏りがあります。そこで、階乗モーメントの E[X(X−1)]=n(n−1)p2E[X(X-1)] = n(n-1)p^2 を使います。

E[X(X−1)n(n−1)]=p2E\left[\frac{X(X-1)}{n(n-1)}\right] = p^2

例えば n=10n = 10、x=4x = 4 なら、不偏推定値は 12/90≈0.13312/90 \approx 0.133 で、p^2=0.16\hat{p}^2 = 0.16 より小さい値です。同じように、ポアソン分布の λ2\lambda^2 は Xˉ2−Xˉ/n\bar{X}^2 - \bar{X}/n で不偏に推定できます。E[Xˉ2]=λ2+λ/nE[\bar{X}^2] = \lambda^2 + \lambda/n だからです。

2. 不偏推定量が存在しないことを示す

不偏推定量は、いつでも存在するわけではありません。例えば、X∼B(n,p)X \sim B(n, p)(0<p<10 < p < 1)のとき、1/p1/p の不偏推定量は存在しません。答案の形で示してみましょう。

【証明】

  1. g(X)g(X) が不偏推定量であると仮定する。すべての pp で次の式が成り立つ
∑x=0ng(x)(nx)px(1−p)n−x=1p\sum_{x=0}^{n} g(x)\binom{n}{x} p^x (1-p)^{n-x} = \frac{1}{p}
  1. 左辺は pp の多項式なので、p→0p \to 0 のとき有限の値 g(0)g(0) に収束する
  2. 右辺は p→0p \to 0 のとき無限大に発散する。これは矛盾である。よって不偏推定量は存在しない

要するに、「期待値が多項式でしか書けないのに、目標が多項式でない」ということです。

逆に、不偏推定量があっても、役に立つとは限りません。X∼Po(λ)X \sim \text{Po}(\lambda) の1個の観測で e−2λe^{-2\lambda} を推定するとしましょう。∑xg(x)λx/x!=e−λ=∑x(−λ)x/x!\sum_x g(x)\lambda^x/x! = e^{-\lambda} = \sum_x (-\lambda)^x/x! の係数を比べると、不偏推定量は g(X)=(−1)Xg(X) = (-1)^X だけです。確率の2乗を推定したいのに、値は 11 か −1-1 にしかなりません。不偏性は絶対の基準ではない、という例です。

以上が、不偏性についての解説です。

一致性:チェビシェフの不等式で立証する

次に、一致性の立証について説明します。

一致性 とは、任意の ε>0\varepsilon > 0 で P(∣θ^n−θ∣≥ε)→0P(|\hat{\theta}_n - \theta| \ge \varepsilon) \to 0 となることでした。データが増えるにつれて、カメラのピントが真の値に合っていくイメージです。立証の道具は3つあります。

【一致性を立証する道具】

  1. チェビシェフの不等式: P(∣θ^n−θ∣≥ε)≤MSE/ε2P(|\hat{\theta}_n - \theta| \ge \varepsilon) \le \text{MSE}/\varepsilon^2 なので、MSE→0\text{MSE} \to 0 を示す
  2. 大数の法則と連続写像定理: 標本モーメントの連続関数なら、そのまま確率収束する
  3. 分布関数の直接計算: 順序統計量などは、確率を直接求める

2つ目の例を見ましょう。不偏分散は S2=nn−1(m2−m12)S^2 = \frac{n}{n-1}(m_2 - m_1^2) と書けます。2次モーメントが有限なら、大数の法則で m1→μm_1 \to \mu、m2→μ2+σ2m_2 \to \mu^2 + \sigma^2 で、n/(n−1)→1n/(n-1) \to 1 です。したがって S2→σ2S^2 \to \sigma^2 と確率収束します。分布が正規でなくても、4次モーメントがなくても言えるのが、この方法の強みです。

では、最尤推定量はいつでも一致性をもつのでしょうか? 実は、そうとは限りません。

例題:最尤推定量が一致しない例

Xi1,Xi2X_{i1}, X_{i2}(i=1,…,mi = 1, \dots, m)はすべて独立で、N(μi,σ2)N(\mu_i, \sigma^2) に従う。母数は μ1,…,μm,σ2\mu_1, \dots, \mu_m, \sigma^2 である。(1) σ2\sigma^2 の最尤推定量 σ^2\hat{\sigma}^2 を求めよ。(2) m→∞m \to \infty のときの確率収束先を求めよ。(3) 一致推定量を作れ。

【答案】

  1. ℓ=−mlog⁡(2πσ2)−12σ2∑i∑j(xij−μi)2\ell = -m\log(2\pi\sigma^2) - \frac{1}{2\sigma^2}\sum_i\sum_j (x_{ij} - \mu_i)^2 である。μi\mu_i で微分して μ^i=(xi1+xi2)/2\hat{\mu}_i = (x_{i1} + x_{i2})/2 を得る
  2. ∑j(xij−μ^i)2=(xi1−xi2)2/2\sum_j (x_{ij} - \hat{\mu}_i)^2 = (x_{i1} - x_{i2})^2/2 を代入して σ2\sigma^2 で微分すると、σ^2=14m∑i(Xi1−Xi2)2\hat{\sigma}^2 = \frac{1}{4m}\sum_i (X_{i1} - X_{i2})^2 である
  3. Di=Xi1−Xi2D_i = X_{i1} - X_{i2} は独立に N(0,2σ2)N(0, 2\sigma^2) に従うので、大数の法則より 1m∑iDi2→2σ2\frac{1}{m}\sum_i D_i^2 \to 2\sigma^2 と確率収束する
  4. したがって σ^2→σ2/2\hat{\sigma}^2 \to \sigma^2/2 である。一致推定量は、2σ^22\hat{\sigma}^2 である

答えは収束先 σ2/2\sigma^2/2 で、一致推定量は 2σ^22\hat{\sigma}^2 です。これはネイマン・スコットの問題と呼ばれます。

なぜこうなるのでしょうか? データが増えても、母数 μi\mu_i も同じ速さで増えるからです。1つの μi\mu_i を決めるデータは、いつまでも2個しかありません。生徒が増えるたびに先生も増えて、1人の先生が見る生徒の数がずっと2人のままの学校のようなものです。

以上が、一致性についての説明です。

十分性:ラオ・ブラックウェルの定理と完備性

続いて、十分性を使って推定量を改良する方法を解説します。

十分性 とは、推定量が十分統計量の関数であることです。準1級では、ラオ・ブラックウェルの定理を計算に使いました。ここでは証明し、最小の分散まで進みます。

【ラオ・ブラックウェルの定理】 WW を g(θ)g(\theta) の不偏推定量、TT を十分統計量とする。φ(T)=E[W∣T]\varphi(T) = E[W \mid T] は g(θ)g(\theta) の不偏推定量で、V[φ(T)]≤V[W]V[\varphi(T)] \le V[W] である。

【証明】

  1. TT は十分なので、TT を与えたときの標本の分布は θ\theta によらない。よって φ(T)\varphi(T) は θ\theta を含まず、統計量である
  2. 繰り返し期待値の法則より、E[φ(T)]=E[W]=g(θ)E[\varphi(T)] = E[W] = g(\theta) である
  3. 全分散の公式より、V[W]=V[φ(T)]+E[V[W∣T]]≥V[φ(T)]V[W] = V[\varphi(T)] + E[V[W \mid T]] \ge V[\varphi(T)] である

手順1が、十分性の使いどころです。十分でない TT で条件づけると、θ\theta が残ってしまい、推定量になりません。

ただ、この定理は「改良できる」と言っているだけで、「最小である」とは言っていません。そこで必要なのが 完備性 です。統計量 TT が完備であるとは、次が成り立つことです。

すべての θ で Eθ[g(T)]=0⇒すべての θ で Pθ(g(T)=0)=1\text{すべての } \theta \text{ で } E_\theta[g(T)] = 0 \quad \Rightarrow \quad \text{すべての } \theta \text{ で } P_\theta(g(T) = 0) = 1

言葉で言うと、「TT の関数で0を不偏に推定する方法は、0そのものしかない」ということです。これは、TT の関数である不偏推定量がただ1つだという意味になります。

【レーマン・シェフェの定理】 TT を完備十分統計量とする。φ(T)\varphi(T) が g(θ)g(\theta) の不偏推定量なら、φ(T)\varphi(T) は UMVU である。

【証明】

  1. 任意の不偏推定量 WW をとり、φ∗(T)=E[W∣T]\varphi^*(T) = E[W \mid T] とおく。ラオ・ブラックウェルの定理より、V[φ∗(T)]≤V[W]V[\varphi^*(T)] \le V[W] である
  2. φ∗(T)−φ(T)\varphi^*(T) - \varphi(T) は TT の関数で、期待値は0である。完備性より φ∗=φ\varphi^* = \varphi(確率1)である
  3. したがって V[φ(T)]≤V[W]V[\varphi(T)] \le V[W] である

どの下書きから清書しても、同じ1枚の完成原稿にたどり着く、というイメージです。

完備性の確かめ方を、2つ見てみましょう。

【完備性の確かめ方】

  • ポアソン分布の T=∑iXiT = \sum_i X_i: ∑tg(t)(nλ)t/t!=0\sum_t g(t)(n\lambda)^t/t! = 0 がすべての λ>0\lambda > 0 で成り立つと、べき級数の係数はすべて0で、g(t)=0g(t) = 0
  • U(0,θ)U(0, \theta) の T=X(n)T = X_{(n)}: ∫0θg(t) tn−1 dt=0\int_0^\theta g(t)\, t^{n-1}\,dt = 0 がすべての θ\theta で成り立つと、θ\theta で微分して g(θ)θn−1=0g(\theta)\theta^{n-1} = 0 となり、g=0g = 0(ほとんどいたるところ)

一般に、指数型分布族では、母数の動く範囲が開集合を含むなら、∑it(Xi)\sum_i t(X_i) は完備十分統計量です。したがって、正規分布の Xˉ\bar{X} と S2S^2 は UMVU です。また、U(0,θ)U(0, \theta) では n+1nX(n)\frac{n+1}{n}X_{(n)} が UMVU です。

UMVU を求める道は2つです。完備十分統計量の関数で不偏なものを直接見つけるか、簡単な不偏推定量を完備十分統計量で条件づけるかです。

例題:ポアソン分布の e−λe^{-\lambda} の UMVU

X1,…,XnX_1, \dots, X_n は独立に Po(λ)\text{Po}(\lambda) に従う。P(X=0)=e−λP(X = 0) = e^{-\lambda} の UMVU を求めよ。n=10n = 10、∑ixi=15\sum_i x_i = 15 のときの値を、最尤推定値と比べよ。

【答案】

  1. T=∑iXiT = \sum_i X_i は分解定理より十分で、上で示したとおり完備である
  2. W=1{X1=0}W = \mathbf{1}\{X_1 = 0\} とおくと、E[W]=e−λE[W] = e^{-\lambda} で不偏である
  3. T=tT = t を与えたとき、X1X_1 は二項分布 B(t,1/n)B(t, 1/n) に従う。よって E[W∣T=t]=(1−1/n)tE[W \mid T = t] = (1 - 1/n)^t である
  4. レーマン・シェフェの定理より、(1−1/n)T(1 - 1/n)^T が UMVU である
  5. 値は 0.915≈0.2060.9^{15} \approx 0.206 である。最尤推定値は、不変性より e−1.5≈0.223e^{-1.5} \approx 0.223 である

答えは (1−1/n)T(1 - 1/n)^T で、値は約0.206です。検算として、ポアソン分布の確率母関数から E[(1−1/n)T]=exp⁡{nλ(−1/n)}=e−λE[(1 - 1/n)^T] = \exp\{n\lambda(-1/n)\} = e^{-\lambda} と確かめられます。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 完備十分統計量と、分布が母数によらない統計量は独立です(バスーの定理)。σ2\sigma^2 を固定すると Xˉ\bar{X} は μ\mu の完備十分統計量で、S2S^2 の分布は μ\mu によらないので、2つは独立です。標本分布の記事の定理の、もう1つの証明です。

以上が、十分性についての解説です。

有効性と推定量の相対効率

最後に、有効性の立証と推定量の比較を見ていきましょう。

有効性 とは、不偏推定量の分散が クラーメル・ラオの下限 に一致することです。g(θ)g(\theta) の不偏推定量の分散の下限は g′(θ)2/{nI(θ)}g'(\theta)^2/\{nI(\theta)\} で、準1級で学びました。下限の証明は、2つ先の記事で行います。ここでは、立証の手順を確認します。

【有効性の立証手順】

  1. 1個の観測のフィッシャー情報量 I(θ)I(\theta) を計算する
  2. 不偏推定量 TT の分散を計算する
  3. V[T]V[T] と下限が等しいことを確かめる

もっと速い判定法もあります。証明の中で分かるのですが、下限の等号は、スコアが TT の1次式で書けるときに限り成り立ちます。

U(θ)=a(θ) {T−g(θ)}U(\theta) = a(\theta)\,\{T - g(\theta)\}

例えば、ポアソン分布なら U(λ)=(n/λ)(Xˉ−λ)U(\lambda) = (n/\lambda)(\bar{X} - \lambda) なので、Xˉ\bar{X} は有効です。

ここで、よくある誤解を解いておきましょう。UMVU は、下限に届くとは限りません。さきほどの (1−1/n)T(1 - 1/n)^T の分散は、確率母関数から e−2λ(eλ/n−1)e^{-2\lambda}(e^{\lambda/n} - 1) です。下限は λe−2λ/n\lambda e^{-2\lambda}/n なので、ex−1>xe^x - 1 > x より、分散は下限より真に大きいのです。n=10n = 10、λ=1.5\lambda = 1.5 なら、比は約0.927です。つまり、「UMVU である」と「有効である」は別の主張です。

2つの推定量の比較には、推定量の相対効率 を使います。不偏推定量 T1,T2T_1, T_2 について、T1T_1 に対する T2T_2 の相対効率は次のとおりです。

e(T2,T1)=V[T1]V[T2]e(T_2, T_1) = \frac{V[T_1]}{V[T_2]}

1より小さければ、T2T_2 のほうが悪いということです。車の燃費の比べ方に似ていて、「同じ精度を出すのに必要な標本の大きさの比」と読めます。

例題:指数分布の2つの不偏推定量

平均 θ\theta の指数分布からの大きさ nn の標本について、T1=XˉT_1 = \bar{X}、T2=nX(1)T_2 = nX_{(1)} とする。(1) ともに不偏であることを示せ。(2) T1T_1 に対する T2T_2 の相対効率を求めよ。(3) T1T_1 が有効であることを示せ。

【答案】

  1. E[T1]=θE[T_1] = \theta である。また、P(X(1)>x)=e−nx/θP(X_{(1)} > x) = e^{-nx/\theta} より X(1)X_{(1)} は平均 θ/n\theta/n の指数分布に従うので、E[T2]=θE[T_2] = \theta である
  2. V[T1]=θ2/nV[T_1] = \theta^2/n、V[T2]=n2×θ2/n2=θ2V[T_2] = n^2 \times \theta^2/n^2 = \theta^2 なので、e(T2,T1)=1/ne(T_2, T_1) = 1/n である
  3. log⁡f=−log⁡θ−x/θ\log f = -\log\theta - x/\theta より、U(θ)=(n/θ2)(Xˉ−θ)U(\theta) = (n/\theta^2)(\bar{X} - \theta) である。スコアが Xˉ\bar{X} の1次式なので、Xˉ\bar{X} は有効である

答えは 1/n1/n です。T2T_2 は分散が nn によらないので、一致性ももちません。最小値だけを使うのは、データ1個分の働きしかしないのです。

次に、標本が大きいときの比較です。この場面では、漸近分散の比である 漸近相対効率 を使います。標本中央値の漸近分散を導きましょう。母集団の中央値を mm、その点の密度を f(m)>0f(m) > 0 とします。

【標本中央値の漸近分布の導出】

  1. {標本中央値≤m+t/n}\{\text{標本中央値} \le m + t/\sqrt{n}\} は、ほぼ「m+t/nm + t/\sqrt{n} 以下の個数が n/2n/2 以上」という事象である
  2. その個数は B(n,qn)B(n, q_n) に従い、qn≈1/2+f(m) t/nq_n \approx 1/2 + f(m)\,t/\sqrt{n} である
  3. 二項分布の正規近似より、確率は Φ(2f(m) t)\Phi(2f(m)\,t) に近づく

つまり、n(標本中央値−m)\sqrt{n}(\text{標本中央値} - m) は N(0,1/{4f(m)2})N(0, 1/\{4f(m)^2\}) に分布収束します。これを平均と比べましょう。

分布平均の分散中央値の漸近分散平均に対する中央値の相対効率
正規分布 N(μ,σ2)N(\mu, \sigma^2)σ2/n\sigma^2/nπσ2/(2n)\pi\sigma^2/(2n)2/π≈0.642/\pi \approx 0.64
ラプラス分布(尺度1)2/n2/n1/n1/n2

正規分布では平均が勝ち、ラプラス分布では中央値が2倍有利です。どの推定量がよいかは、分布しだいなのです。

試験のポイント:相対効率は、分子と分母の取り違えが最も多い失点です。「どちらに対するどちらの効率か」を答案に明記しましょう。

以上が、有効性と推定量の相対効率についての解説です。

細かい定理の名前を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「不偏推定量を十分統計量で条件づけると改良でき、完備なら最良になる」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は、推定量のよさを立証する手順を紹介しました。「いい車ですよ」という言葉を信じるのではなく、整備記録を確かめるのが1級の答案です。基準ごとに道具が決まっているので、問題文の「示せ」を見たら、まず道具を選びましょう。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 不偏性は期待値の計算で立証する。不偏推定量が存在しないことや、役に立たないこともある。
  • 一致性は MSE→0\text{MSE} \to 0、または大数の法則と連続写像定理で立証する。母数が増え続けると最尤推定量でも一致しない。
  • ラオ・ブラックウェルの定理で改良し、完備性があればレーマン・シェフェの定理で UMVU が得られる。
  • 有効性の判定は、スコアが TT の1次式になるかを見る。UMVU が下限に届くとは限らない。
  • 推定量の相対効率は分散の比。中央値と平均の優劣は分布で決まる。

キーワードのおさらい

  • 不偏性: すべての母数の値で、推定量の期待値が真の値に一致する性質
  • 一致性: 標本が大きくなると、推定量が真の値に確率収束する性質
  • 十分性: 推定量が十分統計量の関数である性質
  • 完備性: TT の関数で期待値がいつも0になるものが、0だけである性質
  • 一様最小分散不偏推定量(UMVU): 母数がどの値でも分散が最小の不偏推定量
  • 有効性: 不偏推定量の分散がクラーメル・ラオの下限に一致する性質
  • 推定量の相対効率: 2つの不偏推定量の分散の比
  • 漸近相対効率: 2つの推定量の漸近分散の比

さて、ここまでは1つのモデルの中で、母数をどう推定するかを考えました。では、そもそもモデルが複数あるとき、どれを選べばよいのでしょうか?

次回は、カルバック・ライブラー情報量からAICを導き、クロスバリデーションと比べる話を紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. X∼B(8,p)X \sim B(8, p) で x=4x = 4 だった。p2p^2 の不偏推定値として正しいものはどれか。
問2. U(0,θ)U(0, \theta) からの標本が 2, 3, 5, 8 のとき、θ\theta の UMVU の値として正しいものはどれか。
問3. X1,…,X5X_1, \dots, X_5 は独立に Po(λ)\text{Po}(\lambda) に従い、∑ixi=3\sum_i x_i = 3 だった。e−λe^{-\lambda} の UMVU の値に最も近いものはどれか。
問4. U(0,θ)U(0, \theta) からの大きさ4の標本について、54X(4)\frac{5}{4}X_{(4)} に対する 2Xˉ2\bar{X} の相対効率として正しいものはどれか。
問5. UMVU とクラーメル・ラオの下限の関係として、最も適切なものはどれか。