統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-19 統計数理

種々の検定法

  • 二項分布・ポアソン分布など基本的な分布に関する検定
  • 適合度の検定
  • ノンパラメトリック検定

はじめに

「nn が小さい二項分布で正規近似を使ったら、結論が変わるの?」

例えば、不良率20%とされる工程の製品を15個調べて、7個が不良だったとします。正規近似で zz を計算すると、両側のp値は0.01ほどです。一方で、二項分布の確率を直接足すと、0.02から0.04の値が出ます。近似と正確な計算の差が、2倍から4倍もあるのです。

実は、1級で問われるのは、近似の公式ではありません。正確な分布を導く筋道と、近似が成り立つ理由です。局外パラメータがあれば条件付けで消し、カイ二乗の近似はテイラー展開で導き、分布が分からなければ順位に頼る。どれも理屈があります。

そこで登場するのが、今回の主役 二項分布・ポアソン分布など基本的な分布に関する検定、適合度の検定、ノンパラメトリック検定 です。正規分布の外に広がる検定を、3つの視点で整理します。

前回の記事では、正規分布の検定を尤度比から導きました。今回の記事では、正規分布を離れたときの検定の作り方を、導出を中心に解説します。

二項分布・ポアソン分布など基本的な分布に関する検定

はじめに、基本的な分布の正確な検定について解説します。

結論を一言で言うと、十分統計量の正確な分布で判定し、片側なら単調尤度比で最適性が保証される ということです。指数型分布族なら、標本の情報は十分統計量にすべて集まります。例えるなら、クラス全員の答案を見なくても、合計点の記録だけ見れば判定できる、という状況です。

分布十分統計量 TTH0H_0 のもとの分布
ベルヌーイ分布 (p0)(p_0)∑iXi\sum_i X_iB(n,p0)B(n, p_0)
ポアソン分布 (λ0)(\lambda_0)∑iXi\sum_i X_iPo(nλ0)Po(n\lambda_0)
指数分布(率 λ0\lambda_0)2λ0∑iXi2\lambda_0\sum_i X_iχ2(2n)\chi^2(2n)
幾何分布 (p0)(p_0)∑iXi\sum_i X_i負の二項分布

これらはすべて単調尤度比を持つので、片側検定はカーリン・ルービンの定理により一様最強力です。離散型なら、大きさをちょうど α\alpha にするには確率化が要ります。実務では、α\alpha 以下で最大の棄却域を使います。

1つずつ見ていきましょう。

1. 二項分布の検定とベータ分布

X∼B(n,p)X \sim B(n, p) のp値は確率の足し算です。ただし、nn が大きいと項が増えます。そこで便利なのが、ベータ分布との次の関係です。

P(X≥k)=P(Y≤p),Y∼Be(k, n−k+1)P(X \ge k) = P\big(Y \le p\big), \qquad Y \sim Be(k,\ n - k + 1)

証明は順序統計量で一言です。独立な一様乱数 U1,…,UnU_1, \ldots, U_n のうち pp 以下の個数が XX です。「pp 以下が kk 個以上ある」ことと、「小さいほうから kk 番目の U(k)U_{(k)} が pp 以下である」ことは同じです。そして、U(k)U_{(k)} は Be(k,n−k+1)Be(k, n - k + 1) に従います。

ポアソン分布の P(X≥x)=P(χ2(2x)≤2λ)P(X \ge x) = P(\chi^2(2x) \le 2\lambda) と同じ発想です。「回数の分布」と「待ち時間の分布」は、裏表の関係にあります。

2. 両側のp値の定義

離散型の両側検定には、p値の決め方が2通りあります。分布が非対称なので、左右の裾を「同じ極端さ」でそろえられないからです。

【両側のp値の2つの定義】

  1. 2倍法: 観測された側の裾の確率を2倍する(1を超えたら1とする)
  2. 確率順法: 観測値の確率 P(X=x)P(X = x) 以下の確率を持つ値について、確率をすべて足す

例題:二項分布の両側検定

X∼B(15,p)X \sim B(15, p) で x=7x = 7 を観測した。H0:p=0.2H_0: p = 0.2 対 H1:p≠0.2H_1: p \ne 0.2 のp値を、(1) 2倍法、(2) 確率順法、(3) 連続修正なしの正規近似で求めよ。p=0.2p = 0.2 のとき、P(X=0)=0.0352P(X = 0) = 0.0352、P(X=7)=0.0138P(X = 7) = 0.0138、P(X≥7)=0.0181P(X \ge 7) = 0.0181 である。

【解答】

(1) x=7x = 7 は平均 np=3np = 3 より右なので、2×0.0181=0.03612 \times 0.0181 = 0.0361 である。

(2) P(X=x)≤0.0138P(X = x) \le 0.0138 を満たす値を探す。右側では x=7x = 7 と、xx が8以上の値がこれを満たす。左側では最も小さい確率が P(X=0)=0.0352>0.0138P(X = 0) = 0.0352 > 0.0138 なので、左側に該当する値はない。よってp値は P(X≥7)=0.0181P(X \ge 7) = 0.0181 である。

(3) z=(7−3)÷15×0.2×0.8=2.58z = (7 - 3) \div \sqrt{15 \times 0.2 \times 0.8} = 2.58 で、両側のp値は0.0098である。

正規近似は、右に裾の長い分布の裾の確率を、小さく見積もっています。np=3np = 3 は、近似が使える目安の外です。連続修正を入れて (6.5−3)÷1.55=2.26(6.5 - 3) \div 1.55 = 2.26 とすると、p値は0.024となり、正確な値に近づきます。

3. ポアソン分布の検定

ポアソン分布も同様です。X1,…,X5X_1, \ldots, X_5 が Po(λ)Po(\lambda) に従うとき、H0:λ=2H_0: \lambda = 2 対 H1:λ>2H_1: \lambda > 2 を考えます。合計が17なら、T∼Po(10)T \sim Po(10) より P(T≥17)=0.027P(T \ge 17) = 0.027 です。区間推定の記事の関係を使えば、P(χ2(34)≤20)=0.027P(\chi^2(34) \le 20) = 0.027 と計算しても同じです。5%で棄却します。

以上が、基本的な分布の検定についての解説です。

局外パラメータを条件付けで消す

次に、2つのポアソン分布を比べる場面について説明します。

X1∼Po(λ1t1)X_1 \sim Po(\lambda_1 t_1)、X2∼Po(λ2t2)X_2 \sim Po(\lambda_2 t_2) が独立で、t1,t2t_1, t_2 は観測期間です。H0:λ1=λ2H_0: \lambda_1 = \lambda_2 を検定します。問題は、共通の値 λ\lambda が未知で、局外パラメータとして残ることです。

正規分布では、比をとって局外パラメータを消しました。ここでは別の手を使います。十分統計量で条件付ける のです。

例えるなら、2つのチームの得点を比べるとき、試合全体の総得点はいったん脇に置いて、「総得点のうち、どちらのチームが何点取ったか」という配分だけを見るようなものです。試合の点の入りやすさ(局外パラメータ)は、総得点に吸収されます。

例題:ポアソン分布の条件付き検定

上の設定で、S=X1+X2S = X_1 + X_2 とする。(1) S=sS = s のもとでの X1X_1 の条件付き分布を導け。(2) H0H_0 のもとで、この分布が λ\lambda によらないことを確かめよ。(3) A工場は2年間で事故12件、B工場は1年間で事故13件だった。H1:λA<λBH_1: \lambda_A < \lambda_B の検定を、有意水準5%で行え。X∼B(25,2/3)X \sim B(25, 2/3) のとき P(X≤12)=0.0415P(X \le 12) = 0.0415 である。

【解答】

(1) μi=λiti\mu_i = \lambda_i t_i とおく。再生性より S∼Po(μ1+μ2)S \sim Po(\mu_1 + \mu_2) である。0≤x≤s0 \le x \le s に対して、次の式を得る。

P(X1=x∣S=s)=e−μ1μ1xx!⋅e−μ2μ2s−x(s−x)!e−(μ1+μ2)(μ1+μ2)ss!=(sx)(μ1μ1+μ2)x(μ2μ1+μ2)s−xP(X_1 = x \mid S = s) = \frac{\dfrac{e^{-\mu_1}\mu_1^{x}}{x!} \cdot \dfrac{e^{-\mu_2}\mu_2^{s-x}}{(s-x)!}}{\dfrac{e^{-(\mu_1 + \mu_2)}(\mu_1 + \mu_2)^s}{s!}} = \binom{s}{x}\left(\frac{\mu_1}{\mu_1 + \mu_2}\right)^{x}\left(\frac{\mu_2}{\mu_1 + \mu_2}\right)^{s-x}

よって、X1∣S=sX_1 \mid S = s は B(s,μ1/(μ1+μ2))B(s, \mu_1/(\mu_1 + \mu_2)) に従う。

(2) H0H_0 のもとで成功確率は λt1/(λt1+λt2)=t1/(t1+t2)\lambda t_1/(\lambda t_1 + \lambda t_2) = t_1/(t_1 + t_2) であり、λ\lambda が消える。

(3) s=25s = 25、q=2/(2+1)=2/3q = 2/(2 + 1) = 2/3 である。XAX_A が小さいときに棄却する。条件付きのp値は P(X≤12)=0.0415P(X \le 12) = 0.0415 で、0.05以下なので H0H_0 を棄却する。

答案で一言足すと、よい点があります。どの ss についても条件付きの有意水準が α\alpha なら、SS の分布で平均しても有意水準は α\alpha です。つまり、E[φ∣S]≤αE[\varphi \mid S] \le \alpha なら E[φ]≤αE[\varphi] \le \alpha です。条件付けは、局外パラメータの値によらず第一種の過誤を守ります。

ここがポイントです。同じ発想は2×2の分割表にも使えます。周辺度数で条件付けると超幾何分布が現れます。これがフィッシャーの正確検定で、後の分割表の記事で扱います。

試験のポイント:「局外パラメータを消す」手は3つです。比をとる(tt、FF)、最大化する(尤度比)、十分統計量で条件付ける(ポアソン、分割表)。問題の分布を見て選びます。

以上が、条件付き検定についての説明です。

適合度の検定:カイ二乗を導く

続いて、分布そのものを検定する方法を解説します。

nn 個の観測を kk 個のセルに分類し、度数を N1,…,NkN_1, \ldots, N_k とします。(N1,…,Nk)(N_1, \ldots, N_k) は確率 (p1,…,pk)(p_1, \ldots, p_k) の多項分布に従います。H0:pj=pj0H_0: p_j = p_{j0} を調べるのが 適合度の検定 です。天気予報の「晴れ60%、雨40%」が、実際の出現の割合と合っているか確かめるようなものです。

期待度数を ej=npj0e_j = np_{j0} とします。統計量は2つあります。

X2=∑j=1k(Nj−ej)2ej,G2=2∑j=1kNjlog⁡NjejX^2 = \sum_{j=1}^{k}\frac{(N_j - e_j)^2}{e_j}, \qquad G^2 = 2\sum_{j=1}^{k} N_j\log\frac{N_j}{e_j}

X2X^2 はピアソンのカイ二乗統計量です。G2G^2 は尤度比検定の −2log⁡λ-2\log\lambda です。多項分布の最尤推定値が p^j=Nj/n\hat{p}_j = N_j/n であることから、すぐに導けます。

1つずつ見ていきましょう。

1. 2つの統計量が同じ分布に近づく理由

dj=Nj−ejd_j = N_j - e_j とおくと ∑jdj=0\sum_j d_j = 0 です。Njlog⁡(Nj/ej)N_j\log(N_j/e_j) を dj/ejd_j/e_j についてテイラー展開します。

(ej+dj)log⁡(1+djej)=(ej+dj)(djej−dj22ej2+⋯ )=dj+dj22ej+⋯(e_j + d_j)\log\left(1 + \frac{d_j}{e_j}\right) = (e_j + d_j)\left(\frac{d_j}{e_j} - \frac{d_j^2}{2e_j^2} + \cdots\right) = d_j + \frac{d_j^2}{2e_j} + \cdots

jj について足すと、1次の項は ∑jdj=0\sum_j d_j = 0 で消えます。2倍すると、G2≈∑jdj2/ej=X2G^2 \approx \sum_j d_j^2/e_j = X^2 です。ピアソンの統計量は、尤度比の2次近似だったのです。

2. 自由度が k − 1 になる理由

Zj=(Nj−ej)/ejZ_j = (N_j - e_j)/\sqrt{e_j} とおくと、X2=∑jZj2X^2 = \sum_j Z_j^2 です。多項分布の分散と共分散は Var(Nj)=npj(1−pj)\mathrm{Var}(N_j) = np_j(1 - p_j)、Cov(Ni,Nj)=−npipj\mathrm{Cov}(N_i, N_j) = -np_ip_j です。ベクトル u=(p1,…,pk)⊤u = (\sqrt{p_1}, \ldots, \sqrt{p_k})^\top を使うと、ZZ の共分散行列は次の形です。

Σ=I−uu⊤\Sigma = I - uu^\top

∣u∣2=∑jpj=1|u|^2 = \sum_j p_j = 1 なので、Σ\Sigma は uu に直交する k−1k - 1 次元の空間への正射影です。多次元の中心極限定理より、ZZ は、標準正規ベクトルをこの空間に射影したものに分布収束します。その長さの2乗は χ2(k−1)\chi^2(k - 1) に従います。

言葉で言うと、合計が nn に固定されているので、kk 個の度数のうち自由に動けるのは k−1k - 1 個です。席替えで最後の1人は座る席が決まっている、というイメージです。uu の方向の成分は、制約 ∑jNj=n\sum_j N_j = n によって消えるのです。

k=2k = 2 で確かめましょう。N1=XN_1 = X、N2=n−XN_2 = n - X なら、次のようになります。

X2=(X−np)2np+(X−np)2n(1−p)=(X−np)2np(1−p)=z2X^2 = \frac{(X - np)^2}{np} + \frac{(X - np)^2}{n(1 - p)} = \frac{(X - np)^2}{np(1 - p)} = z^2

3. 母数を推定するとき

pj=pj(θ)p_j = p_j(\theta) で、θ\theta が qq 次元の未知の母数なら、セルの度数から最尤推定した θ^\hat{\theta} を代入して ej=npj(θ^)e_j = np_j(\hat{\theta}) とします。このとき、自由度は k−1−qk - 1 - q です。推定が ZZ の動ける方向をさらに qq 次元減らすからです。尤度比検定の言葉で言うと、全体の次元 k−1k - 1 から H0H_0 の次元 qq を引いた値です。

補足(ここは読み飛ばしてOK): セルに分ける前の個々のデータから最尤推定すると、極限の分布は χ2(k−1−q)\chi^2(k - 1 - q) からずれ、χ2(k−1−q)\chi^2(k - 1 - q) と χ2(k−1)\chi^2(k - 1) の間になることが知られています。自由度の公式は、セルの度数による推定が前提です。

例題:遺伝型の適合度

ある遺伝子の3つの型 AA、Aa、aa の度数が、200人で 70、80、50 だった。ハーディ・ワインベルクの仮説 pAA=θ2p_{AA} = \theta^2、pAa=2θ(1−θ)p_{Aa} = 2\theta(1 - \theta)、paa=(1−θ)2p_{aa} = (1 - \theta)^2 を検定する。(1) θ\theta の最尤推定量を導け。(2) X2X^2 の値と自由度を求め、有意水準5%で検定せよ。χ0.052(1)=3.84\chi^2_{0.05}(1) = 3.84 とする。

【解答】

(1) 度数を a,b,ca, b, c とすると、対数尤度は定数を除いて次の式である。

ℓ(θ)=(2a+b)log⁡θ+(b+2c)log⁡(1−θ)\ell(\theta) = (2a + b)\log\theta + (b + 2c)\log(1 - \theta)

ℓ′(θ)=0\ell'(\theta) = 0 を解いて、θ^=(2a+b)/(2n)\hat{\theta} = (2a + b)/(2n) である。これはAの遺伝子の割合である。

(2) θ^=220÷400=0.55\hat{\theta} = 220 \div 400 = 0.55 である。期待度数は 200×0.3025=60.5200 \times 0.3025 = 60.5、200×0.495=99200 \times 0.495 = 99、200×0.2025=40.5200 \times 0.2025 = 40.5 である。

X2=9.5260.5+19299+9.5240.5=7.37X^2 = \frac{9.5^2}{60.5} + \frac{19^2}{99} + \frac{9.5^2}{40.5} = 7.37

自由度は 3−1−1=13 - 1 - 1 = 1 である。7.37>3.847.37 > 3.84 なので、H0H_0 を棄却する。

同じデータで G2G^2 を計算すると7.40で、X2X^2 とほぼ同じ値です。

以上が、適合度の検定についての解説です。

ノンパラメトリック検定:分布によらない仕組み

最後に、分布の形を仮定しない検定を見ていきましょう。

ノンパラメトリック検定 の核心は、H0H_0 のもとで統計量の分布が、母集団の分布 FF によらないことです。これを分布によらない(distribution-free)性質と呼びます。証明の型は3つあります。

【分布によらない3つの仕組み】

  1. 符号にする: 中央値より上か下かだけを見る。分布は二項分布に帰着する
  2. 順位にする: 値を順位に置き換える。分布は順列の一様分布に帰着する
  3. 分布関数を通す: 確率積分変換で一様分布に帰着する

運動会の順位に例えると分かりやすいです。タイムの測り方がどんな単位でも、測定器が歪んでいても、「何番目か」は変わりません。分布の形という厄介者が、順位にすると消えるのです。

1つずつ見ていきましょう。

1. 符号検定

連続型の分布で H0H_0:中央値 =m0= m_0 とします。Xi>m0X_i > m_0 となる個数 BB は、FF の形によらず B(n,1/2)B(n, 1/2) に従います。例えば、10人中8人で測定値が基準を上回れば、片側のp値は P(B≥8)=0.0547P(B \ge 8) = 0.0547 です。これが 符号検定 です。

2. 順位和の検定

X1,…,XmX_1, \ldots, X_m と Y1,…,YnY_1, \ldots, Y_n が独立で、H0H_0:2つの分布は同じ連続型の分布 FF であるとします。N=m+nN = m + n 個の値は同じ分布からの独立な標本なので、交換可能です。よって、XX たちが占める順位の組は、(Nm)\binom{N}{m} 通りのどれも等確率です。FF は式に現れません。

XX の順位の和を WW とします。WW は、{1,…,N}\{1, \ldots, N\} から mm 個を非復元抽出した和です。有限母集団の平均は (N+1)/2(N + 1)/2、分散は (N2−1)/12(N^2 - 1)/12 です。非復元抽出の公式より、次の結果を得ます。

E[W]=m(N+1)2,Var(W)=m⋅N2−112⋅N−mN−1=mn(N+1)12E[W] = \frac{m(N + 1)}{2}, \qquad \mathrm{Var}(W) = m \cdot \frac{N^2 - 1}{12} \cdot \frac{N - m}{N - 1} = \frac{mn(N + 1)}{12}

具体的に見てみましょう。m=3m = 3、n=4n = 4 なら、組は35通りで、E[W]=12E[W] = 12、Var(W)=8\mathrm{Var}(W) = 8 です。最小の W=6W = 6 は1通り(順位1、2、3)、W=7W = 7 も1通り(1、2、4)なので、P(W≤7)=2/35=0.057P(W \le 7) = 2/35 = 0.057 です。分布は整数の組み合わせの数え上げだけで決まります。

順位検定の詳しい性質は、後のノンパラメトリック法の記事で扱います。

3. コルモゴロフ・スミルノフ検定

適合度の検定は、連続型のデータでもセルに分ければ使えます。しかし、分け方で結果が変わります。連続型のまま調べるのが、次の統計量です。

Dn=sup⁡x ∣Fn(x)−F0(x)∣D_n = \sup_{x}\,\big|F_n(x) - F_0(x)\big|

FnF_n は経験分布関数、F0F_0 は H0H_0 の分布関数です。F0F_0 が連続なら、DnD_n の分布は F0F_0 によりません。証明です。Ui=F0(Xi)U_i = F_0(X_i) は確率積分変換により U(0,1)U(0, 1) に従います。u=F0(x)u = F_0(x) と置き換えると、Fn(x)F_n(x) は UiU_i の経験分布関数 Gn(u)G_n(u) に等しいので、次の式になります。

Dn=sup⁡0≤u≤1 ∣Gn(u)−u∣D_n = \sup_{0 \le u \le 1}\,\big|G_n(u) - u\big|

右辺に F0F_0 は残っていません。これで分布の表は1つで済みます。

例題:一様分布への適合

次の10個の値が U(0,1)U(0, 1) に従うかを、コルモゴロフ・スミルノフ検定で調べよ。有意水準5%の棄却の境目は0.409とする。

0.08, 0.17, 0.21, 0.28, 0.33, 0.45, 0.52, 0.56, 0.60, 0.64

【解答】

FnF_n は階段関数なので、sup⁡\sup は各点の跳びの前後で達成される。ii 番目の値 x(i)x_{(i)} について、i/10−x(i)i/10 - x_{(i)} と x(i)−(i−1)/10x_{(i)} - (i - 1)/10 の最大を調べればよい。最大は i=10i = 10 のときの 1−0.64=0.361 - 0.64 = 0.36 である。よって D10=0.36D_{10} = 0.36 である。0.36<0.4090.36 < 0.409 なので、H0H_0 を棄却しない。

値は全部0.64以下で、右側がすっぽり空いています。それでも10個では棄却されません。nDn\sqrt{n} D_n の極限分布の5%点は約1.36なので、境目はおよそ 1.36/n1.36/\sqrt{n} です。nn が小さいと、この検定はかなり鈍いのです。

試験のポイント:検定統計量の分布が FF によらないことを示すには、「符号」「順位」「確率積分変換」のどれに帰着するかを書きます。計算より、この1文が答案の中心です。

以上が、ノンパラメトリック検定についての解説です。

細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「正確な分布、条件付け、順位という3つの逃げ道がある」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は正規分布の外の検定を、導出の視点で整理しました。分布が分かるなら十分統計量の正確な分布を使い、局外パラメータがあるなら条件付けで消します。多項分布ではテイラー展開でカイ二乗を導き、分布の形が分からないなら順位に置き換えます。場面は違っても、「H0H_0 のもとの分布を確定させる」という目的は同じです。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 指数型分布族の片側検定は、十分統計量の正確な分布で作れて、一様最強力になる。
  • 離散型の両側のp値には、2倍法と確率順法がある。npnp が小さいと、正規近似は大きくずれる。
  • ポアソン分布の比較は、合計で条件付けると二項分布に帰着する。
  • ピアソンの X2X^2 は尤度比 G2G^2 の2次近似。自由度は k−1−qk - 1 - q で、射影の次元から導ける。
  • 分布によらない検定は、符号、順位、確率積分変換のどれかに帰着する。

キーワードのおさらい

  • 二項分布・ポアソン分布など基本的な分布に関する検定: 十分統計量の正確な分布による検定
  • 条件付き検定: 十分統計量で条件付けて、局外パラメータを消す検定
  • 適合度の検定: 度数が想定した確率に合うかを調べる検定
  • ノンパラメトリック検定: 分布の形を仮定しない検定
  • 符号検定: 基準より上の個数を二項分布で調べる検定
  • コルモゴロフ・スミルノフ検定: 経験分布関数と想定の分布関数の最大の差で調べる検定

さて、検定の基本の道具はすべてそろいました。前回の kk 群の FF 検定に戻りましょう。因子が2つになったら、どう分解すればよいでしょうか? 差があると分かったら、どの群とどの群の差かを、どう判定すればよいでしょうか?

次回は、交互作用、共分散分析、多重比較までを導く「分散分析」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. X1,…,X4X_1, \ldots, X_4 が Po(λ)Po(\lambda) に独立に従う。H0:λ=1H_0: \lambda = 1 のもとで、合計 TT について P(T≥9)P(T \ge 9) に等しいものはどれか。
問2. 独立な X1∼Po(λt1)X_1 \sim Po(\lambda t_1)、X2∼Po(λt2)X_2 \sim Po(\lambda t_2) で、t1=1t_1 = 1、t2=3t_2 = 3 である。X1+X2=8X_1 + X_2 = 8 のもとでの X1X_1 の条件付き分布として、正しいものはどれか。
問3. 対立遺伝子が3種類あると、遺伝型は6種類になる。ハーディ・ワインベルクの仮説では、3つの遺伝子頻度のうち自由な母数は2個である。セルの度数から最尤推定したとき、適合度検定の自由度として正しいものはどれか。
問4. m=5m = 5、n=7n = 7 の2標本で、H0H_0 のもとでのウィルコクソン順位和 WW の平均と分散の組として、正しいものはどれか。
問5. コルモゴロフ・スミルノフの統計量 DnD_n の分布が、連続な F0F_0 によらない理由として、最も適切なものはどれか。