準1級-25 応用統計の手法
分散分析と実験計画法
- フィッシャーの三原則
- 1元配置
- 2元配置
- 分散分析表
- 交互作用
- ブロック化
- 乱塊法
- 一部実施要因計画
- 直交配列
- ブロック計画
はじめに
「条件を1つずつ変えて試せば、最高の組み合わせが見つかるんじゃないの?」
例えば、ケーキの焼き方を調べるとしましょう。いつもの「低温・短時間」は60点でした。温度は低温のまま時間だけ長くすると75点に上がったので、時間は「長」に決めます。次に、時間を長のまま温度を上げると55点に下がったので、温度は「低」に決めます。こうして、「低温・長時間」の75点が最高だと結論しました。
でも、試していない組み合わせが1つ残っています。実は、「高温・短時間」は85点だったのです。温度の効き方が時間によって変わるとき、1つずつ変える方法では最高の組み合わせを見逃します。
そこで登場するのが、今回の主役 実験計画法 です。実験計画法とは、限られた回数の実験から、知りたい効果を正しく、効率よく取り出すように、実験の組み方を設計する方法です。その結果を読む道具が 分散分析 です。
前回の記事では、生存時間とニューラルネットワークを学び、回帰の話題を終えました。今回の記事では、2級で学んだ分散分析を構造模型から読み直し、2元配置と交互作用、乱塊法とブロック計画、一部実施要因計画と直交配列まで解説します。
1元配置:分散分析表を構造模型から読み直す
はじめに、実験計画の土台と1元配置について解説します。
2級で学んだ フィッシャーの三原則 を思い出しましょう。
【フィッシャーの三原則】
- 反復: 同じ条件を繰り返す。誤差の大きさを見積もるため
- 無作為化: 実験の順序や割り当てをくじで決める。偏りを誤差に変えるため
- 局所管理: 似た条件をまとめて、その中で比べる。ノイズを減らすため
局所管理の代表が、ブロック化 です。これは後で詳しく見ます。
さて、因子が1つで、 個の水準をそれぞれ 回ずつ繰り返す実験が 1元配置 です。2級では「群間変動と群内変動に分ける」と学びました。準1級では、これをモデルの式で書きます。
は 番目の水準の 回目の値、 は全体の平均、 は水準の効果、 は互いに独立な誤差です。検定したいのは です。
全体の平方和 は、水準の平方和 と誤差の平方和 に分かれます。
は水準ごとの平均、 は全体の平均です。
この分解を表にしたものが 分散分析表 です。ここで、なぜ 比で検定できるのでしょうか? 水準の平均平方(平方和を自由度で割ったもの)を 、誤差の平均平方を として、それぞれの期待値を見ると分かります。 を2乗して期待値をとると、次の式になります。
言葉で言うと、 はつねに誤差の分散を見積もります。一方で、 は効果があるぶんだけ大きくなります。綱引きの審判に例えると、 は基準の物差しで、 は「物差し + 効果」です。 が正しければ比はおよそ1になり、効果があれば1より大きくなります。効果があるときの 比は、前に学んだ非心F分布に従います。
例題:1元配置の分散分析表を作る
3種類の肥料で、4鉢ずつの収量を測りました。
| 肥料 | 収量 | 平均 |
|---|---|---|
| A | 12, 14, 13, 17 | 14 |
| B | 16, 18, 15, 19 | 17 |
| C | 20, 19, 22, 19 | 20 |
分散分析表を作って、有意水準5%で検定しましょう。 です。
【解き方】
- 全体の平均は17なので、
- 水準の中の偏差を2乗して足すと、
- 自由度は 、
- 表にまとめる
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | 比 |
|---|---|---|---|---|
| 肥料 | 72 | 2 | 36 | 10.8 |
| 誤差 | 30 | 9 | 3.33 | |
| 全体 | 102 | 11 |
なので、 を棄却します。答えは、肥料によって収量に差がある、です。
以上が、1元配置についての解説です。
2元配置と交互作用:組み合わせの効果を調べる
次に、因子が2つの実験について説明します。
因子 ( 水準)と因子 ( 水準)のすべての組み合わせで、 回ずつ実験するのが 2元配置 です。ここで主役になるのが 交互作用 です。交互作用とは、一方の因子の効果が、もう一方の因子の水準によって変わることです。
薬の飲み合わせを思い浮かべてください。薬Aも薬Bも単独なら少し効くのに、一緒に飲むと急に強く効くことがあります。これは「Aの効果 + Bの効果」では説明できません。この足し算から外れた分が交互作用です。冒頭のケーキの例も同じで、温度の効果が時間によって逆向きになっていました。
モデルの式は次のとおりです。
と を 主効果、 を交互作用と呼びます。全体の平方和は4つに分かれます。
は、セルの平均の平方和から と を引いて求めます。自由度は次のとおりです。
【2元配置の自由度】
- 因子 :
- 因子 :
- 交互作用:
- 誤差:
- 全体:
交互作用の有無は、水準の平均を線で結んだ図で読み取れます。線が平行なら交互作用はなく、線の間隔が変わったり交差したりしていれば、交互作用があります。
例題:2元配置の分散分析
肥料(:2水準)と水やりの回数(:3水準)の組み合わせで、2回ずつ実験しました。
| 10, 12 | 14, 16 | 18, 20 | |
| 12, 14 | 20, 22 | 30, 28 |
交互作用を検定しましょう。 です。
【解き方】
- セルの平均は、 が 11, 15, 19、 が 13, 21, 29。全体の平均は18
- 水準の平均は、 が 15, 21、 が 12, 18, 24
- 、
- セルの平方和は なので、
- 各セルの中の平方和はどれも2なので、
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | 比 |
|---|---|---|---|---|
| 108 | 1 | 108 | 54 | |
| 288 | 2 | 144 | 72 | |
| 32 | 2 | 16 | 8 | |
| 誤差 | 12 | 6 | 2 | |
| 全体 | 440 | 11 |
交互作用の 比は なので有意です。 と の差が 2, 6, 10 と広がっていることと合っています。つまり、水やりが多いほど肥料の差が大きいのです。交互作用が有意なときは、主効果だけを語らず、組み合わせごとに結果を述べます。
試験のポイント:繰り返しのない2元配置()では、 で誤差の自由度がありません。交互作用がないと仮定して、 にあたる部分を誤差とみなします。
以上が、2元配置と交互作用についての説明です。
乱塊法とブロック計画:ノイズを取り除く
続いて、局所管理を実験の形にする方法を解説します。
ブロック化 は、実験の場を似た条件のまとまりに分けることでした。乱塊法 は、ブロックの中で、すべての処理を無作為に割り当てる実験です。乱塊は「乱(無作為)」と「塊(ブロック)」という意味です。
畑が斜面にあるとしましょう。上の段と下の段では、土の質が違います。肥料Aを上の段だけに使うと、肥料の差か土の差か分かりません。そこで、段ごとに3種類の肥料をくじで割り当てます。どの段でも全種類を比べるので、段の差は打ち消されます。
モデルは、繰り返しのない2元配置と同じ形です。処理の数を 、ブロックの数を とします。
が処理の効果、 がブロックの効果です。誤差の自由度は です。ブロックの平方和を誤差から取り除けるのが、この方法の強みです。
例題:乱塊法の効果を確かめる
3種類の肥料を、土の質が違う4つの区画で試しました。
| 肥料 | 区画1 | 区画2 | 区画3 | 区画4 | 平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 21 | 24 | 27 | 32 | 26 |
| B | 23 | 27 | 32 | 34 | 29 |
| C | 26 | 30 | 33 | 39 | 32 |
全体の平方和は 、処理の平方和は 、ブロックの平方和は です。乱塊法としての 比と、ブロックを無視して1元配置で分析したときの 比を比べましょう。
【解き方】
- 乱塊法の誤差: 、自由度 、平均平方は約0.89
- 乱塊法の 比: で、 を超える
- 1元配置の誤差: 、自由度9、平均平方は約25.6
- 1元配置の 比: で、 を超えない
答えは、乱塊法では有意で、1元配置では有意になりません。同じデータでも、区画の差が誤差に混ざると、肥料の差が埋もれてしまうのです。誤差の自由度は3つ減りますが、ノイズが大きく減るなら十分に得をします。
ところで、ブロックの中に全処理が入らないこともあります。例えば、7種類のスープの味を比べたいのに、1人が味の違いを判断できるのは3種類までだとします。1人が1つのブロックです。このように、ブロックの大きさが処理の数より小さいものを 不完備ブロック と呼びます。全処理が入る乱塊法は 完備ブロック です。
割り当てをでたらめに決めると、比べやすい組とそうでない組ができます。そこで、どの処理の組も同じ回数だけ同じブロックに入るように組みます。これが 釣合い型不完備ブロック計画(BIBD)です。こうしたブロックの組み方を ブロック計画 と呼びます。処理の数を 、ブロックの数を 、ブロックの大きさを 、各処理の反復数を 、各組が同じブロックに入る回数を とすると、次の2つの条件が必要です。
1つ目は「総区画数の数え方が2通りある」という式です。2つ目は、ある処理に注目して、同じブロックに入る相手の延べ人数を2通りに数えた式です。例えば、スープの例で 、、 なら、、 です。どの2種類のスープも、ちょうど1人に比べてもらえます。
補足(ここは読み飛ばしてOK): ブロックの要因が2つあるときは、ラテン方格法を使います。行と列の両方に各処理が1回ずつ入るように並べる計画です。
以上が、乱塊法とブロック計画についての解説です。
一部実施要因計画と直交配列:回数を減らす
最後に、因子が多いときの実験の組み方を見ていきましょう。
2水準の因子が 個あると、すべての組み合わせは 通りです。これを 完全実施要因計画 と呼びます。因子が7個なら 回です。とても全部はできません。
そこで、組み合わせの一部だけを実施するのが 一部実施要因計画 です。全種類の味見をせず、代表の数皿で料理全体を判断するようなものです。もちろん、代償があります。
水準を と で表して、3因子 を4回で調べるとします。 の水準を と の積に等しく決めると、次の組み合わせになります。
| 実験 | |||
|---|---|---|---|
| 1 | |||
| 2 | |||
| 3 | |||
| 4 |
の列と の列は同じです。したがって、 の主効果と の交互作用は区別できません。これを 交絡(別名の関係)と呼びます。全部の列をかけると1になるので、 と書き、これを 定義関係 と呼びます。両辺に をかけると で、、 も同じように出ます(2乗は になる)。
要するに、主効果を読むには、交互作用が無視できることが前提です。
例題:2水準の一部実施の主効果
上の4回の実験の結果は、順に 10, 18, 12, 24 でした。主効果を求めましょう。
【解き方】
- の主効果: の平均 から の平均 を引いて10
- の主効果:
- の主効果:
答えは順に10, 4, 2です。ただし、 の10は、正確には と を足し合わせた効果です。
こうした計画を手軽に作る道具が 直交配列 です。直交配列表は、どの2列をとっても、水準の組み合わせが同じ回数ずつ現れる表です。総当たり戦の対戦表のように、誰と誰の組み合わせも公平に出てくるイメージです。この性質のおかげで、ある因子の効果を計算するとき、他の因子の効果が打ち消されます。
同じ構造をもつ標準の表が です。水準を1と2で書き、どの2列をとっても (1, 1), (1, 2), (2, 1), (2, 2) が1回ずつ現れます。
| 実験 | 1列 | 2列 | 3列 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 1 | 1 |
| 2 | 1 | 2 | 2 |
| 3 | 2 | 1 | 2 |
| 4 | 2 | 2 | 1 |
| 成分 |
の4は実験回数、 は2水準の列が3つあることを意味します。
【直交配列表の使い方】
- 実験回数と列数で表を選ぶ。 なら8回の実験で、列は7本
- 因子を列に割り付ける
- 調べたい交互作用の列は空けておく。 の列と の列の交互作用は、成分 の列に現れる
- 何も割り付けない列は、誤差の見積もりに使う
例えば、 の1列に 、2列に を割り付けたら、 は成分 の3列に現れます。もし3列に因子 を入れると、 と が交絡します。 の全体の自由度は で、各列の自由度が1なので、主効果と交互作用を合わせて7個までしか調べられません。 回を8回に減らす代わりに、調べる効果を絞っているのです。
試験のポイント:定義関係から別名を求める問題が出ます。効果の文字に定義関係をかけて、2回出た文字を消します。例えば なら、 に をかけて が別名です。
以上が、一部実施要因計画と直交配列についての解説です。
細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「組み合わせを調べないと交互作用は見えない」「ブロック化でノイズを除く」「回数を減らすと効果が交絡する」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は、分散分析表の読み方と、効率のよい実験の組み方について紹介しました。実験は「やってから分析」ではなく、「分析できるように組む」ものです。どんな計画も、知りたい効果と、ノイズや他の効果を分ける工夫でできています。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 1元配置の 比は、「物差し + 効果」と物差しの比。 は誤差の分散を見積もる。
- 2元配置では、平方和が主効果と交互作用と誤差に分かれる。交互作用の自由度は 。
- 乱塊法はブロックの中で全処理を無作為に割り当てる。ブロックの平方和を誤差から除ける。
- 釣合い型不完備ブロック計画は 、 を満たす。
- 一部実施要因計画は回数を減らす代わりに、効果が交絡する。直交配列表はそれを手軽に組む道具。
キーワードのおさらい
- フィッシャーの三原則: 反復、無作為化、局所管理
- 1元配置: 因子が1つの実験
- 2元配置: 因子が2つの実験。すべての組み合わせを実施する
- 分散分析表: 要因ごとの平方和、自由度、平均平方、 比をまとめた表
- 交互作用: 一方の因子の効果が、もう一方の水準によって変わること
- ブロック化: 実験の場を似た条件のまとまりに分けること
- 乱塊法: ブロックの中で全処理を無作為に割り当てる実験
- 一部実施要因計画: 組み合わせの一部だけを実施する計画
- 直交配列: どの2列でも水準の組み合わせが同じ回数ずつ現れる配列
- ブロック計画: 処理をブロックへ割り当てる組み方。釣合い型不完備ブロック計画など
さて、実験はこちらが条件を決められました。では、全国の世帯のように、すでにある集団の一部を調べるときはどうでしょうか? 集団の大きさが決まっていると、これまでの誤差の式にも修正が要ります。
次回は、有限母集団からの抽出と、各種の標本抽出法を扱う「標本調査法」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。