統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

準1級-2 応用統計の手法

確率分布と母関数

  • 確率関数
  • 確率密度関数
  • 同時確率関数
  • 同時確率密度関数
  • 周辺確率関数
  • 周辺確率密度関数
  • 条件つき確率関数
  • 条件つき確率密度関数
  • 累積分布関数
  • 生存関数
  • モーメント母関数(積率母関数)
  • 確率母関数

はじめに

「分布って、結局どの関数を見れば全部分かるの?」

準1級の問題集を開くと、確率関数、確率密度関数、累積分布関数、生存関数と、よく似た名前の関数が次々に出てきます。さらに同時、周辺、条件つきという言葉まで付くと、もう何が何だか分からなくなりますよね。

例えば、1つの分布を健康診断の結果に例えてみましょう。同じ人の体でも、血液検査の表、レントゲン写真、心電図と、見せ方はいくつもあります。どれも同じ体を別の角度から写したものです。

実は、分布の関数もこれと同じです。名前はたくさんありますが、同じ分布の別の見せ方にすぎません。1つ分かれば、残りは足し算や積分で移り変われます。

そして、見せ方の中には、計算のために作られた特別なものがあります。そこで登場するのが、今回の主役 モーメント母関数 と 確率母関数 です。平均や分散を微分だけで取り出せる、分布の情報の詰まった関数です。

前回の記事では、事象の確率を計算しました。今回の記事では、確率変数の分布を表す関数の整理から始めて、同時・周辺・条件つきの分布、そして2つの母関数の使い方について解説します。

1つの確率変数を表す4つの関数

はじめに、確率変数が1つのときの関数を整理します。

2級で学んだように、確率変数には離散型と連続型があります。離散型の分布を表すのが 確率関数 で、連続型の分布を表すのが 確率密度関数 です。

p(x)=P(X=x),P(a≤X≤b)=∫abf(x) dxp(x) = P(X = x), \qquad P(a \le X \le b) = \int_a^b f(x)\, dx

p(x)p(x) は値 xx をとる確率そのものです。一方、f(x)f(x) は確率そのものではなく、確率の濃さです。積分して初めて確率になります。だから f(x)f(x) は1を超えてもかまいません。どちらも合計すると1で、∑xp(x)=1\sum_x p(x) = 1、∫f(x) dx=1\int f(x)\,dx = 1 を満たします。

地図に例えると、確率関数は「町ごとの人数」で、確率密度関数は「人口密度」です。人口密度は、面積を掛けて初めて人数になります。

次に、離散型でも連続型でも使える関数が2つあります。

F(x)=P(X≤x),S(x)=P(X>x)=1−F(x)F(x) = P(X \le x), \qquad S(x) = P(X > x) = 1 - F(x)

F(x)F(x) が 累積分布関数 で、xx までの確率の累積です。S(x)S(x) が 生存関数 で、xx を超える確率です。生存関数という名前は、XX を寿命と見たときに「時刻 xx でまだ生きている確率」にあたることから来ています。

累積分布関数には、次の性質があります。

【累積分布関数の性質】

  1. 単調に増える(減らない)
  2. x→−∞x \to -\infty で0、x→∞x \to \infty で1に近づく
  3. 右連続である。離散型では階段状になる
  4. 連続型では、微分すると確率密度関数になる: f(x)=F′(x)f(x) = F'(x)

具体的に見てみましょう。バスの待ち時間 XX(分)の確率密度関数が f(x)=0.5e−0.5xf(x) = 0.5 e^{-0.5x}(x≥0x \ge 0)だとします。これは2級で学んだ指数分布です。積分すると F(x)=1−e−0.5xF(x) = 1 - e^{-0.5x} なので、S(x)=e−0.5xS(x) = e^{-0.5x} です。

例えば、2分待っても来ない確率は S(2)=e−1≈0.368S(2) = e^{-1} \approx 0.368 です。1分より長く3分以内に来る確率は F(3)−F(1)=e−0.5−e−1.5≈0.383F(3) - F(1) = e^{-0.5} - e^{-1.5} \approx 0.383 です。

せっかくなので、離散型の例も見てみましょう。サイコロの目 XX では p(x)=1/6p(x) = 1/6 です。累積分布関数は階段で、F(3)=1/2F(3) = 1/2 です。さらに F(3.9)F(3.9) も 1/21/2 です。整数の間では段の高さが変わらないのです。

補足(ここは読み飛ばしてOK): X≥0X \ge 0 のとき、期待値は E[X]=∫0∞S(x) dxE[X] = \int_0^\infty S(x)\, dx と書けます。指数分布なら ∫0∞e−0.5x dx=2\int_0^\infty e^{-0.5x}\,dx = 2 で、平均が2分と分かります。

以上が、1つの確率変数を表す関数についての解説です。

同時分布と周辺分布:2つの変数を並べて見る

次に、確率変数が2つのときを説明します。

2つの確率変数 X,YX, Y を同時に見るときに使うのが、同時確率関数 と 同時確率密度関数 です。

p(x,y)=P(X=x, Y=y),P((X,Y)∈A)=∬Af(x,y) dx dyp(x, y) = P(X = x,\ Y = y), \qquad P((X, Y) \in A) = \iint_A f(x, y)\, dx\, dy

ここから1つの変数だけの分布に戻るには、もう片方を足し切ります。これが 周辺確率関数 と 周辺確率密度関数 です。

pX(x)=∑yp(x,y),fX(x)=∫−∞∞f(x,y) dyp_X(x) = \sum_y p(x, y), \qquad f_X(x) = \int_{-\infty}^{\infty} f(x, y)\, dy

クロス表の右端の合計欄を思い出してください。表の余白(margin)に書くので「周辺」と言います。

具体的に見てみましょう。ある部活の試合で、前半の得点 XX と後半の得点 YY が次の同時確率関数に従うとします。

Y=0Y = 0Y=1Y = 1Y=2Y = 2合計
X=0X = 00.200.150.050.40
X=1X = 10.100.300.200.60
合計0.300.450.251.00

表の見方はシンプルです。中のマスが同時確率で、右端の列が XX の周辺確率関数、下の行が YY の周辺確率関数です。例えば P(Y=1)=0.15+0.30=0.45P(Y = 1) = 0.15 + 0.30 = 0.45 です。

連続型でも同じです。0<x<10 < x < 1、0<y<10 < y < 1 で f(x,y)=x+yf(x, y) = x + y とします。yy を積分で足し切ると、周辺確率密度関数は次のようになります。

fX(x)=∫01(x+y) dy=x+12f_X(x) = \int_0^1 (x + y)\, dy = x + \frac{1}{2}

∫01(x+1/2) dx=1\int_0^1 (x + 1/2)\,dx = 1 となり、確かに確率密度関数です。

注意点が1つあります。周辺分布が2つ分かっても、同時分布は決まりません。表の合計欄だけを見て、中のマスを復元することはできないからです。

以上が、同時分布と周辺分布についての説明です。

条件つき分布と独立

続いて、片方の値が分かったときの分布について解説します。

X=xX = x と分かったもとでの YY の分布が、条件つき確率関数 と 条件つき確率密度関数 です。前回の条件付き確率と同じ発想で、同時を周辺で割ります。

p(y∣x)=p(x,y)pX(x),f(y∣x)=f(x,y)fX(x)p(y \mid x) = \frac{p(x, y)}{p_X(x)}, \qquad f(y \mid x) = \frac{f(x, y)}{f_X(x)}

言葉で言うと、「表の1行だけを切り出して、行の合計が1になるように割り直す」ということです。

先ほどの得点の表で計算してみましょう。前半に得点した試合(X=1X = 1)の行は 0.10、0.30、0.20 で、合計は0.60です。これを0.60で割ると、次のようになります。

P(Y=0∣X=1)=16,P(Y=1∣X=1)=12,P(Y=2∣X=1)=13P(Y = 0 \mid X = 1) = \frac{1}{6}, \quad P(Y = 1 \mid X = 1) = \frac{1}{2}, \quad P(Y = 2 \mid X = 1) = \frac{1}{3}

前半に得点できなかった試合では P(Y=2∣X=0)=0.05÷0.40=0.125P(Y = 2 \mid X = 0) = 0.05 \div 0.40 = 0.125 です。前半の調子が後半にも続いていますね。

そして、どの x,yx, y でも同時が周辺の積になるとき、XX と YY は独立です。

p(x,y)=pX(x) pY(y)またはf(x,y)=fX(x) fY(y)p(x, y) = p_X(x)\, p_Y(y) \qquad \text{または} \qquad f(x, y) = f_X(x)\, f_Y(y)

このとき、条件つき分布は周辺分布と一致します。得点の表では P(X=1,Y=0)=0.10P(X = 1, Y = 0) = 0.10 に対して 0.60×0.30=0.180.60 \times 0.30 = 0.18 なので、独立ではありません。

例題:三角形の上の一様分布

0<y<x<10 < y < x < 1 の範囲で f(x,y)=2f(x, y) = 2 とします。周辺確率密度関数 fX(x)f_X(x)、fY(y)f_Y(y) と、条件つき確率密度関数 f(y∣x)f(y \mid x) を求め、独立かどうか答えましょう。

【解き方】

  1. xx を固定すると yy の範囲は 0<y<x0 < y < x なので、fX(x)=∫0x2 dy=2xf_X(x) = \int_0^x 2\, dy = 2x
  2. yy を固定すると xx の範囲は y<x<1y < x < 1 なので、fY(y)=∫y12 dx=2(1−y)f_Y(y) = \int_y^1 2\, dx = 2(1 - y)
  3. 条件つきは f(y∣x)=2÷2x=1/xf(y \mid x) = 2 \div 2x = 1/x(0<y<x0 < y < x)
  4. fX(x)fY(y)=4x(1−y)f_X(x) f_Y(y) = 4x(1-y) は2と等しくないので、独立ではない

答えは、fX(x)=2xf_X(x) = 2x、fY(y)=2(1−y)f_Y(y) = 2(1-y)、f(y∣x)=1/xf(y \mid x) = 1/x で、独立ではありません。X=xX = x のもとで、YY は (0,x)(0, x) の一様分布になっています。

試験のポイント:積分の範囲は、f(x,y)f(x, y) が正になる領域の形で決まります。領域が長方形でないなら、それだけで独立ではありません。yy のとれる範囲が xx によって変わるからです。

以上が、条件つき分布と独立についての解説です。

モーメント母関数:分布を1つの関数に詰める

次に、計算のための関数であるモーメント母関数について説明します。

モーメント母関数(積率母関数、moment generating function)は、次の関数です。

MX(t)=E[etX]M_X(t) = E\left[e^{tX}\right]

tt は実数の変数で、00 の近くで期待値が有限なときに定義します。なぜこんな奇妙なものを考えるのでしょうか? etXe^{tX} をテイラー展開すると、理由が見えます。

MX(t)=E[1+tX+t2X22!+⋯ ]=1+E[X] t+E[X2]2! t2+⋯M_X(t) = E\left[1 + tX + \frac{t^2 X^2}{2!} + \cdots\right] = 1 + E[X]\, t + \frac{E[X^2]}{2!}\, t^2 + \cdots

E[X]E[X] や E[X2]E[X^2] が、tt のべきの係数として順に並んでいます。圧縮ファイルのように、分布の情報が1つの関数に詰まっているのです。取り出すには、微分して t=0t = 0 を入れます。

MX′(0)=E[X],MX′′(0)=E[X2],V[X]=MX′′(0)−MX′(0)2M_X'(0) = E[X], \qquad M_X''(0) = E[X^2], \qquad V[X] = M_X''(0) - M_X'(0)^2

具体的に見てみましょう。ポアソン分布 Po(λ)Po(\lambda) のモーメント母関数を求めます。

M(t)=∑x=0∞etx e−λλxx!=e−λ∑x=0∞(λet)xx!=exp⁡(λ(et−1))M(t) = \sum_{x=0}^{\infty} e^{tx}\, \frac{e^{-\lambda} \lambda^x}{x!} = e^{-\lambda} \sum_{x=0}^{\infty} \frac{(\lambda e^t)^x}{x!} = \exp\left(\lambda (e^t - 1)\right)

微分すると M′(t)=λetM(t)M'(t) = \lambda e^t M(t) なので、M′(0)=λM'(0) = \lambda です。もう1回微分すると M′′(0)=λ+λ2M''(0) = \lambda + \lambda^2 で、分散は λ+λ2−λ2=λ\lambda + \lambda^2 - \lambda^2 = \lambda です。2級で覚えた「期待値と分散が等しい」が、微分だけで出てきました。

モーメント母関数の強みは、次の2つです。

【モーメント母関数の2つの強み】

  1. 一意性: モーメント母関数が一致すれば、分布も一致する
  2. 独立な和: X,YX, Y が独立なら MX+Y(t)=MX(t) MY(t)M_{X+Y}(t) = M_X(t)\, M_Y(t)

2つ目は、et(X+Y)=etXetYe^{t(X+Y)} = e^{tX} e^{tY} と、独立なら積の期待値が期待値の積になることから出ます。この2つを組み合わせると、和の分布が分かります。

例えば、独立な X∼Po(2)X \sim Po(2)、Y∼Po(3)Y \sim Po(3) の和は、次のようになります。

MX+Y(t)=exp⁡(2(et−1))exp⁡(3(et−1))=exp⁡(5(et−1))M_{X+Y}(t) = \exp(2(e^t - 1)) \exp(3(e^t - 1)) = \exp(5(e^t - 1))

これは Po(5)Po(5) のモーメント母関数です。一意性より、X+Y∼Po(5)X + Y \sim Po(5) と分かります。和の分布を直接足し上げなくても、関数の積を見るだけで答えが出るのです。

例題:指数分布の平均と分散

f(x)=λe−λxf(x) = \lambda e^{-\lambda x}(x≥0x \ge 0)のモーメント母関数を求め、期待値と分散を計算しましょう。

【解き方】

  1. t<λt < \lambda のとき M(t)=∫0∞λe−(λ−t)x dx=λλ−tM(t) = \int_0^\infty \lambda e^{-(\lambda - t)x}\, dx = \dfrac{\lambda}{\lambda - t}
  2. 微分する: M′(t)=λ(λ−t)2M'(t) = \dfrac{\lambda}{(\lambda - t)^2}、M′′(t)=2λ(λ−t)3M''(t) = \dfrac{2\lambda}{(\lambda - t)^3}
  3. t=0t = 0 を入れる: M′(0)=1λM'(0) = \dfrac{1}{\lambda}、M′′(0)=2λ2M''(0) = \dfrac{2}{\lambda^2}
  4. 分散は 2λ2−1λ2=1λ2\dfrac{2}{\lambda^2} - \dfrac{1}{\lambda^2} = \dfrac{1}{\lambda^2}

答えは、期待値 1/λ1/\lambda、分散 1/λ21/\lambda^2 です。

主な分布のモーメント母関数は、次のとおりです。

分布モーメント母関数
二項分布 B(n,p)B(n, p)(1−p+pet)n(1 - p + p e^t)^n
ポアソン分布 Po(λ)Po(\lambda)exp⁡(λ(et−1))\exp(\lambda(e^t - 1))
正規分布 N(μ,σ2)N(\mu, \sigma^2)exp⁡(μt+σ2t2/2)\exp(\mu t + \sigma^2 t^2 / 2)
指数分布λ/(λ−t)\lambda / (\lambda - t)(t<λt < \lambda)

補足(ここは読み飛ばしてOK): モーメント母関数は、どの分布にもあるわけではありません。例えば、後の記事で学ぶコーシー分布には存在しません。そのときは、eitXe^{itX} の期待値である特性関数を使います。特性関数はどの分布にも存在します。

試験のポイント:与えられた M(t)M(t) を表と見比べて分布を当てる問題が定番です。正規分布なら、tt の係数が平均で、t2t^2 の係数の2倍が分散です。

以上が、モーメント母関数についての説明です。

確率母関数:0以上の整数を数える分布の道具

最後に、確率母関数を見ていきましょう。

確率母関数 は、0,1,2,…0, 1, 2, \dots の値をとる確率変数のための関数です。

GX(s)=E[sX]=∑k=0∞p(k) skG_X(s) = E\left[s^X\right] = \sum_{k=0}^{\infty} p(k)\, s^k

これは、確率 p(0),p(1),p(2),…p(0), p(1), p(2), \dots を ss のべきの係数に並べた多項式です。いわば確率の整理棚で、sks^k の棚に P(X=k)P(X = k) がしまってあります。

棚から情報を取り出す方法は、次のとおりです。

【確率母関数から取り出せるもの】

  1. 確率: P(X=k)P(X = k) は sks^k の係数。G(k)(0)/k!G^{(k)}(0) / k! でも求まる
  2. 合計: G(1)=1G(1) = 1
  3. 期待値: G′(1)=E[X]G'(1) = E[X]
  4. 階乗モーメント: G′′(1)=E[X(X−1)]G''(1) = E[X(X - 1)]

分散は V[X]=G′′(1)+G′(1)−G′(1)2V[X] = G''(1) + G'(1) - G'(1)^2 で求まります。s=ets = e^t を入れると MX(t)=GX(et)M_X(t) = G_X(e^t) となるので、2つの母関数は親戚です。独立な和が積になる性質も同じです。

具体的に見てみましょう。サイコロ1個の確率母関数は (s+s2+⋯+s6)/6(s + s^2 + \cdots + s^6) / 6 です。サイコロ2個の和の確率母関数は、これを2乗したものです。

G(s)=(s+s2+⋯+s6)236=s2+2s3+3s4+⋯+6s7+⋯+s1236G(s) = \frac{(s + s^2 + \cdots + s^6)^2}{36} = \frac{s^2 + 2s^3 + 3s^4 + \cdots + 6s^7 + \cdots + s^{12}}{36}

s7s^7 の係数は 6/366/36 なので、和が7になる確率は 1/61/6 です。場合の数の数え上げが、多項式の展開に置きかわりました。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。ベルヌーイ試行1回の確率母関数は 1−p+ps1 - p + ps です。独立に nn 回の和なら (1−p+ps)n(1 - p + ps)^n で、これが二項分布の確率母関数です。ポアソン分布なら G(s)=exp⁡(λ(s−1))G(s) = \exp(\lambda(s - 1)) です。

例題:確率母関数から平均と分散を求める

確率母関数が G(s)=(1+2s+s2)/4G(s) = (1 + 2s + s^2)/4 である確率変数 XX について、P(X=1)P(X = 1)、期待値、分散を求めましょう。

【解き方】

  1. ss の係数を読む: P(X=1)=2/4=1/2P(X = 1) = 2/4 = 1/2
  2. 微分する: G′(s)=(2+2s)/4G'(s) = (2 + 2s)/4 なので E[X]=G′(1)=1E[X] = G'(1) = 1
  3. もう1回微分する: G′′(s)=2/4G''(s) = 2/4 なので G′′(1)=1/2G''(1) = 1/2
  4. 分散は 1/2+1−12=1/21/2 + 1 - 1^2 = 1/2

答えは、P(X=1)=1/2P(X = 1) = 1/2、期待値1、分散 1/21/2 です。実は G(s)={(1+s)/2}2G(s) = \{(1 + s)/2\}^2 なので、XX は二項分布 B(2,1/2)B(2, 1/2) に従っています。

試験のポイント:モーメント母関数は t=0t = 0、確率母関数は s=1s = 1 で微分します。また、G′′(1)G''(1) は E[X2]E[X^2] ではなく E[X(X−1)]E[X(X-1)] です。

以上が、確率母関数についての説明です。

細かい計算が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「分布の関数は同じものの別の見せ方」「母関数は微分で平均と分散を取り出し、和を積に変える道具」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は分布を表すさまざまな関数と、2つの母関数について紹介しました。名前の多さに圧倒されますが、確率を「そのまま書く」「累積する」「残りを見る」「足し切る」「割り直す」「べきの係数に詰める」という、見せ方の違いにすぎません。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 確率関数は確率そのもの、確率密度関数は確率の濃さ。累積分布関数と生存関数は、合わせると1になる。
  • 同時分布を足し切ると周辺分布になる。表の合計欄のイメージ。
  • 同時を周辺で割ると条件つき分布になる。表の1行を切り出して割り直すイメージ。
  • モーメント母関数は分布の圧縮ファイル。t=0t = 0 で微分すればモーメントが取り出せ、独立な和は積になる。
  • 確率母関数は確率の整理棚。sks^k の係数が確率で、s=1s = 1 で微分する。

キーワードのおさらい

  • 確率関数: 離散型で、値 xx をとる確率を表す関数 p(x)p(x)
  • 確率密度関数: 連続型で、積分すると確率になる関数 f(x)f(x)
  • 累積分布関数: F(x)=P(X≤x)F(x) = P(X \le x)
  • 生存関数: S(x)=P(X>x)=1−F(x)S(x) = P(X > x) = 1 - F(x)
  • 同時確率関数: 離散型で、2つの変数の値の組の確率を表す関数
  • 同時確率密度関数: 連続型で、積分すると組の確率になる関数
  • 周辺確率関数: 同時確率関数をもう片方について足し切ったもの
  • 周辺確率密度関数: 同時確率密度関数をもう片方について積分したもの
  • 条件つき確率関数: 同時確率関数を周辺確率関数で割ったもの
  • 条件つき確率密度関数: 同時確率密度関数を周辺確率密度関数で割ったもの
  • モーメント母関数(積率母関数): M(t)=E[etX]M(t) = E[e^{tX}]。微分するとモーメントが得られる
  • 確率母関数: G(s)=E[sX]G(s) = E[s^X]。sks^k の係数が P(X=k)P(X = k)

さて、母関数から取り出せるのは平均と分散だけではありません。3次、4次のモーメントからは、分布のゆがみやとがり具合が分かります。分布を数個の数字で要約するには、どんな量を見ればよいのでしょうか?

次回は、歪度・尖度・相関係数・条件つき期待値といった「分布の特性値」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 確率変数 XX の確率密度関数が f(x)=3x2f(x) = 3x^2(0<x<10 < x < 1)であるとき、生存関数の値 S(1/2)S(1/2) として正しいものはどれか。
問2. P(X=0,Y=0)=0.1P(X=0,Y=0)=0.1、P(X=0,Y=1)=0.3P(X=0,Y=1)=0.3、P(X=1,Y=0)=0.2P(X=1,Y=0)=0.2、P(X=1,Y=1)=0.4P(X=1,Y=1)=0.4 であるとき、P(Y=1∣X=1)P(Y=1 \mid X=1) として正しいものはどれか。
問3. モーメント母関数が M(t)=exp⁡(3t+2t2)M(t) = \exp(3t + 2t^2) である分布として正しいものはどれか。
問4. 独立な確率変数 X∼Po(1.5)X \sim Po(1.5)、Y∼Po(2.5)Y \sim Po(2.5) について、P(X+Y=0)P(X + Y = 0) に最も近いものはどれか。
問5. 確率母関数が G(s)=0.2+0.5s+0.3s2G(s) = 0.2 + 0.5s + 0.3s^2 である確率変数の分散として正しいものはどれか。