統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

2級-7 推測統計の基礎

カテゴリカルデータ — 度数表と2元クロス表

  • 度数表
  • 2元クロス表

はじめに

「朝ごはんを毎日食べる人は、テストの合格率が高いって本当?」

こんな話を聞いたことはありませんか? これを確かめたくても、前回の相関係数は使えません。「毎日食べる」「食べない」「合格」「不合格」は数値ではないので、足すことも平均をとることもできないからです。

数値にならないデータは、世の中にたくさんあります。血液型、職業、賛成か反対か、買ったか買わなかったか。アンケートの答えの多くは、こうした質的変数です。

実は、質的変数の関係を調べるのに、難しい計算はいりません。やることは、「数えて、表にして、比率を比べる」だけです。ただし、比率の分母を1つ間違えるだけで、結論がまったく変わってしまいます。

そこで登場するのが、今回の主役 度数表 と 2元クロス表 です。度数表は1つの質的変数を、2元クロス表は2つの質的変数を組み合わせて整理する表です。

前回の記事では、量的変数の関係を散布図と相関で調べました。今回の記事では、度数表の作り方、2元クロス表の読み方、比率による関連の見方、そして第3の変数の落とし穴について解説します。

度数表:質的変数を1つ整理する

はじめに、度数表について解説します。

度数表 は、質的変数のカテゴリごとに、度数(個数)をまとめた表です。量的変数の度数分布表のカテゴリ版です。投票の開票のように、「正の字」で数えて並べるイメージです。

例えば、ある学校の生徒200人に、通学手段を聞いたとします。

通学手段度数相対度数
徒歩450.225
自転車750.375
電車600.300
バス200.100
合計2001.000

相対度数は、度数を合計で割った割合です。この表から、最も多いのは自転車だと分かります。つまり、最頻値は自転車です。質的変数では、平均値は求められません。

度数表を作るときは、次の2点に注意します。

【度数表の注意点】

  1. カテゴリはもれなく、重複なく: すべての回答がどれか1つに入るようにする
  2. 順序のあるカテゴリは順番どおりに: 「満足」から「不満」のように並べる

せっかくなので、順序のある例も見てみましょう。お店の満足度を200人に聞きました。

満足度不満やや不満ふつうやや満足満足
度数1535705030
累積相対度数0.0750.2500.6000.8501.000

順序があれば、累積にも意味が生まれます。累積相対度数が初めて0.5を超えるのは「ふつう」なので、中央値は「ふつう」です。一方で、通学手段のように順序のないカテゴリでは、累積しても意味がありません。並べる順番を変えれば、値が変わってしまうからです。

以上が、度数表についての解説です。

2元クロス表:2つの質的変数を組み合わせる

次に、2元クロス表について説明します。

2元クロス表 は、2つの質的変数を行と列に置き、すべての組み合わせの度数を数えた表です。3級で学んだクロス集計表と同じものです。「2元」は、変数が2つという意味です。行と列のカテゴリの数を使って、2×2表、3×2表のように呼びます。

冒頭の疑問を調べるために、200人を調べたとしましょう。

合格不合格計
毎日食べる9624120
毎日は食べない404080
計13664200

表の見方を整理しましょう。

【2元クロス表の各部分】

  • セル: 行と列が交わる1つのマス。96は「毎日食べる」かつ「合格」の人数
  • 周辺度数: 表の端の合計。120や136のように、片方の変数だけの度数を表す
  • 総度数: 右下の200。全体の人数

ここがポイントです。この表から作れる比率は、3種類あります。分母が違うので、答える問いも違います。

比率分母例答える問い
行の比率行の合計96 ÷ 120 = 80%毎日食べる人のうち、合格者は何%か
列の比率列の合計96 ÷ 136 ≒ 70.6%合格者のうち、毎日食べる人は何%か
全体の比率総度数96 ÷ 200 = 48%全員のうち、毎日食べて合格した人は何%か

「の中で」の前に来るものが分母です。例えば、「日本人の中の東京都民の割合」と「東京都民の中の日本人の割合」は、まったく違う数字ですよね。これらは、3級で学んだ条件付き確率と同じ考え方です。

例題:比率の分母を読み分ける

上の表から、次の割合を求めましょう。

  1. 毎日は食べない人のうち、不合格の人の割合
  2. 不合格の人のうち、毎日は食べない人の割合

【解き方】

  1. 分母は「毎日は食べない人」の80人: 40 ÷ 80 = 50%
  2. 分母は「不合格の人」の64人: 40 ÷ 64 = 62.5%

答えは、順に50%と62.5%です。分子はどちらも同じ40人ですが、分母が違うので値が変わります。

試験のポイント:クロス表の割合の問題では、「〜のうち」の部分が分母です。問題文を読んだら、先に分母に印をつけましょう。

以上が、2元クロス表についての説明です。

比率を比べて関連を読む

続いて、2つの変数の関連の読み方について解説します。

関連があるとは、一方の変数のカテゴリによって、もう一方の変数の分かれ方が違うことです。これを確かめるには、原因と考える側のカテゴリごとに比率を比べます。多くの場合、原因側を行に置いて、行の比率を比べます。

先ほどの表で、行の比率を計算してみましょう。

合格不合格計
毎日食べる80%20%100%
毎日は食べない50%50%100%
全体68%32%100%

毎日食べる人の合格率は80%、そうでない人は50%です。行によって比率が違うので、朝食と合否には関連があると言えそうです。

もし関連がなければ、どうなるのでしょうか? どの行でも、合格率は全体と同じ68%になるはずです。2つの変数に関連がないこの状態を、独立 と呼びます。独立のときに、各セルに入るはずの度数を 期待度数 と言います。

期待度数=行の合計×列の合計総度数\text{期待度数} = \frac{\text{行の合計} \times \text{列の合計}}{\text{総度数}}

言葉で言うと、「行の人数に、全体でのその列の割合を掛ける」です。「毎日食べる」かつ「合格」なら、120人の68%で、120×136÷200=81.6120 \times 136 \div 200 = 81.6 人です。

例題:期待度数と比べる

朝食の表で、すべてのセルの期待度数を求め、実際の度数と比べましょう。

【解き方】

  1. 「毎日食べる・合格」: 120 × 136 ÷ 200 = 81.6
  2. 「毎日食べる・不合格」: 120 × 64 ÷ 200 = 38.4
  3. 「毎日は食べない・合格」: 80 × 136 ÷ 200 = 54.4
  4. 「毎日は食べない・不合格」: 80 × 64 ÷ 200 = 25.6

実際の度数は 96, 24, 40, 40 です。「毎日食べる・合格」は期待より14.4人多く、「毎日は食べない・合格」は期待より14.4人少なくなっています。

この「実際と期待のズレ」は、散らばりの記事で学んだカイ二乗値と同じ発想です。ズレが偶然の範囲かどうかは、独立性の検定の記事で判定します。ここでは、ズレが大きいほど関連が強いと押さえておきましょう。

せっかくなので、関連がない例も見てみましょう。ある店で、平日の客100人のうち30人、休日の客200人のうち60人がデザートを注文したとします。どちらも30%で、行の比率が同じです。人数は休日のほうが2倍多いのに、曜日と注文には関連がありません。度数ではなく、比率で比べることが大切なのです。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 2×2表の関連の強さを表す指標に、オッズ比があります。「合格者 ÷ 不合格者」を行ごとに求めて比をとります。朝食の例では、(96 ÷ 24) ÷ (40 ÷ 40) = 4 です。関連がなければ1になります。

なお、比率の違いを面積で見せるグラフが、3級で学んだモザイク図です。

試験のポイント:行の比率が行によって同じなら関連なし(独立)、違えば関連ありと読みます。期待度数は 行の合計 × 列の合計 ÷ 総度数 です。

以上が、関連の読み方についての解説です。

第3の変数に気をつける

最後に、クロス表の落とし穴を見ていきましょう。

前回の記事では、層別すると相関が逆転する例を見ました。実は、同じことがクロス表でも起こります。

例えば、2つの塾の合格実績を比べるとします。

受験者合格者合格率
A塾1004343%
B塾1007777%

B塾のほうが、ずっと優れているように見えますね。ところが、受験した学校の難しさで分けると、話が変わります。

易しい学校難しい学校
A塾20人中19人(95%)80人中24人(30%)
B塾80人中72人(90%)20人中5人(25%)

なんと、易しい学校でも難しい学校でも、合格率はA塾のほうが高いのです。部分で見るとA塾が勝ち、全体で見るとB塾が勝ちました。このように、層に分けたときと合計したときで関係が逆転する現象を、シンプソンのパラドックス と呼びます。

なぜでしょうか? A塾の生徒の8割が難しい学校を受けていて、B塾の生徒の8割が易しい学校を受けているからです。つまり、全体の合格率の差は、塾の教え方ではなく、受験先の違いを映していたのです。重い荷物を背負って走った人と、手ぶらで走った人のタイムを比べていたようなものです。

冒頭の朝ごはんの話も、同じ目で見直してみましょう。「毎日食べる人は合格率が高い」のは本当でも、朝食が原因だとは限りません。生活のリズムが整っている人は、朝食も食べて、勉強時間も長いのかもしれません。クロス表が示すのは関連であり、因果関係ではありません。

第3の変数が疑われるときは、その変数で層に分けて、層ごとにクロス表を作って比べます。これは、散布図の層別と同じ考え方です。

以上が、クロス表の落とし穴についての説明です。

細かい呼び方を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「質的変数の関連は、分母をそろえた比率で比べる」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は質的変数の関連を調べる度数表と2元クロス表について紹介しました。やることは、数えて、表にして、比率を比べるだけです。ただし、その比率の分母が何なのかで、答えている問いがまったく変わります。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 度数表は質的変数をカテゴリごとに数えた表。順序があるときだけ、累積や中央値に意味がある。
  • 2元クロス表は2つの質的変数のすべての組み合わせを数えた表。
  • 比率は行、列、全体の3種類。「〜のうち」が分母になる。
  • 行の比率がどの行でも同じなら関連なし(独立)。期待度数と実際の度数のズレで関連を見る。
  • 全体と層で関係が逆転することがある。関連は因果ではない。

キーワードのおさらい

  • 度数表: 質的変数のカテゴリごとに度数をまとめた表
  • 2元クロス表: 2つの質的変数のすべての組み合わせの度数を数えた表
  • 周辺度数: クロス表の行や列の合計
  • 独立: 2つの変数に関連がない状態
  • 期待度数: 独立のときに各セルに入るはずの度数
  • シンプソンのパラドックス: 層別したときと合計したときで関係が逆転する現象

さて、ここまでの記事で、データの記述の道具がそろいました。次は、関係を見るだけでなく、一方の変数からもう一方の値を予測してみましょう。

次回は、3級で学んだ回帰直線をさらに掘り下げる「単回帰と予測」について紹介します。その線は、どれくらい信用できるのでしょうか?

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 100人に5段階の満足度を聞いたところ、低いほうから順に度数が 10, 15, 30, 25, 20 であった。中央値が入るカテゴリとして正しいものはどれか。
問2. 1年生は賛成45人・反対15人、2年生は賛成30人・反対30人であった。賛成の人のうち、1年生の割合として正しいものはどれか。
問3. 1年生は賛成45人・反対15人、2年生は賛成30人・反対30人であった。学年と賛否が独立であるときの、「1年生・賛成」の期待度数として正しいものはどれか。
問4. 男性50人のうち30人、女性70人のうち42人がある商品を購入した。性別と購入の関連についての説明として最も適切なものはどれか。
問5. 2つの病院の治療の成功率を調べると、軽症の患者でも重症の患者でも病院Aのほうが高かったが、全患者では病院Bのほうが高かった。最も適切な説明はどれか。