2級-6 推測統計の基礎
散布図と相関
- 散布図
- 相関係数
- 共分散
- 層別した散布図
- 相関行列
- みかけの相関(擬相関)
- 偏相関係数
はじめに
「アイスがよく売れる日は、水の事故も多いらしい。アイスを禁止すれば事故は減る?」
もちろん、そんなはずはありませんよね。どちらも、暑い日に増えるだけです。それでも、データだけを見ると、アイスの売上と水の事故の件数には、はっきりした関係が現れます。
数字は正直ですが、その読み方を誤ると、とんでもない結論にたどり着きます。逆に、本当は関係があるのに、データを混ぜたせいで見えなくなることもあります。
実は、3級で学んだ相関係数には、続きがあります。相関係数を計算したあとに、「その関係は本物か」を確かめる道具があるのです。
そこで登場するのが、今回の主役 層別した散布図 と 偏相関係数 です。層別は、データをグループに分けて見ることです。偏相関係数は、第3の変数の影響を取り除いた相関係数です。
前回の記事では、1つの変数の値を比べるために標準化を学びました。今回の記事では、散布図、共分散、相関係数を確認したうえで、層別した散布図、相関行列、みかけの相関の見抜き方について解説します。
散布図と共分散:2つの変数の連動を測る
はじめに、散布図と共分散について解説します。
散布図 は、2つの量的変数の値の組を、横軸と縦軸の平面に点で打ったグラフです。点の並びが右上がりなら 正の相関、右下がりなら 負の相関、はっきりした傾きがなければ 無相関 と言います。
この「右上がりの度合い」を数にするために、3級で学んだ 共分散 を使います。
記号の意味は、 が 番目の組の値、 がそれぞれの平均値です。言葉で言うと、「2つの偏差を掛けて全部足し、 で割る」です。2級では、分散と同じく で割る形を使います。
なぜ、偏差を掛けるのでしょうか? 散布図に、平均値のところで十字の線を引いて考えてみましょう。平面が4つの部屋に分かれます。
【4つの部屋と偏差の積】
- 右上の部屋: も も平均より上。積はプラス
- 左下の部屋: も も平均より下。積はプラス
- 左上の部屋: は下、 は上。積はマイナス
- 右下の部屋: は上、 は下。積はマイナス
右上と左下に点が多ければ、合計はプラスになります。つまり、2人が「一緒に上がり、一緒に下がる」なら共分散は正です。ダンスのペアが同じ向きに動くか、逆に動くかを数えているイメージです。
例題:共分散と相関係数を求める
5人の勉強時間 (時間)と点数 (点)は次のとおりでした。共分散を求めましょう。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 50 | 55 | 65 | 60 | 70 |
【解き方】
- 平均値を求める: 、
- 偏差を求める: は −2, −1, 0, 1, 2、 は −10, −5, 5, 0, 10
- 偏差の積を合計する: 20 + 5 + 0 + 0 + 20 = 45
- で割る: 45 ÷ 4 = 11.25
答えは11.25です。プラスなので、勉強時間が長い人ほど点数が高い傾向があります。
でも、これには弱点があります。共分散は、単位で値が変わるのです。勉強時間を「分」で測り直すと、 の偏差がすべて60倍になるので、共分散は60倍の675になります。関係の強さは何も変わっていないのに、数字だけが大きくなってしまいました。
以上が、散布図と共分散についての解説です。
相関係数:連動の強さを−1から1で表す
次に、相関係数について説明します。
共分散の弱点を解決するのが、相関係数 です。共分散を、それぞれの標準偏差で割ります。
前回の標準化を思い出してください。相関係数は、 と を両方とも標準化してから共分散をとったものと同じです。物差しをそろえたので、単位が消えます。
先ほどの例題で計算してみましょう。、 なので、次のようになります。
相関係数は0.9です。強い正の相関があります。なお、分母と分子の は打ち消し合うので、 で割る流儀でも は同じ値になります。
相関係数の性質は、試験で繰り返し問われます。1つずつ見ていきましょう。
1. 値の範囲と単位
相関係数は、必ず −1 以上 1 以下です。すべての点が右上がりの直線に乗ると1、右下がりの直線に乗ると −1 です。
また、データを 、 と変換しても、 と が同じ符号なら相関係数は変わりません。 と の符号が逆なら、絶対値はそのままで符号だけが変わります。例えば、勉強時間を分に直しても、点数を100点満点から200点満点に直しても、 は0.9のままです。
2. 測れるのは直線の関係だけ
相関係数が見ているのは、直線に沿った関係だけです。例えば、 が −2, −1, 0, 1, 2 で のとき、 は で完全に決まっています。ところが、点の並びはU字型で、相関係数を計算すると0になります。
「相関係数が0だから関係がない」とは言えません。だから、数字だけでなく、必ず散布図を描いて確かめます。
3. 外れ値に弱い
相関係数は平均と標準偏差を使うので、外れ値に引っ張られます。先ほどの5人に、「12時間勉強したのに20点だった人」を1人加えてみましょう。すると、相関係数は0.9から約 −0.73 へと、符号まで変わります。たった1点が、シーソーを逆に傾けてしまうのです。
補足(ここは読み飛ばしてOK): データの範囲を一部に絞ると、相関係数は小さくなりやすいです。例えば、入学試験の合格者だけで入試の点数と入学後の成績を比べると、全受験者で比べるより相関が弱く見えます。
試験のポイント:相関係数は単位に左右されず、−1から1の値をとり、直線の関係だけを測ります。相関係数が0でも、曲線の関係はあり得ます。
以上が、相関係数についての説明です。
層別した散布図:混ぜると見えなくなるもの
続いて、層別した散布図について解説します。
層別 とは、性別や学年のような別の変数で、データをグループに分けることです。グループごとに色や印を変えて描いた散布図が、層別した散布図 です。
なぜ、グループに分ける必要があるのでしょうか? 果物の味見に例えてみましょう。ミカンとリンゴを1つのミキサーにかけると、どちらの味も分からなくなりますよね。データも同じで、性質の違うグループを混ぜると、それぞれの関係が消えたり、逆向きになったりするのです。
具体的に見てみましょう。ある塾に、基礎クラスと発展クラスがあります。各5人の1週間の勉強時間と点数を調べました。
| クラス | 勉強時間(時間) | 点数 |
|---|---|---|
| 基礎 | 6, 7, 8, 9, 10 | 40, 45, 42, 50, 48 |
| 発展 | 1, 2, 3, 4, 5 | 70, 75, 72, 80, 78 |
10人全員で相関係数を計算すると、約 −0.75 になります。このままだと、「勉強するほど点数が下がる」と読めてしまいます。
ところが、クラスごとに計算すると、どちらも約0.81です。つまり、どちらのクラスの中でも、勉強するほど点数は上がっています。
からくりは、こうです。基礎クラスの生徒は、もともとの点数が低く、勉強時間が長い傾向があります。発展クラスはその逆です。この「クラスの差」が全体の傾向に重なって、右下がりの見かけを作っていたのです。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。2つの工場の製品をまとめると、温度と強度に強い相関が見えることがあります。工場Aは高温で強度が高く、工場Bは低温で強度が低いだけで、工場の中では温度と強度が無関係という場合です。この場合は、層別すると相関が消えます。
このように、層別すると関係が消えたり、向きが逆転したりします。散布図に2つ以上のかたまりが見えたら、層別を疑いましょう。
試験のポイント:全体の相関と層別した相関は、大きさも符号も違うことがあります。散布図のかたまりは、層別の合図です。
以上が、層別した散布図についての解説です。
相関行列:たくさんの変数を一覧する
次に、相関行列について説明します。
変数が3つ以上あると、組み合わせの数だけ相関係数があります。これを一覧にしたものが 相関行列 です。リーグ戦の星取表のように、すべての組み合わせを1枚の表で見られます。
例えば、ある地域の1年間の日別データから、次の相関行列を得たとします。
| 気温 | アイスの売上 | 水の事故 | 温かい飲み物の売上 | |
|---|---|---|---|---|
| 気温 | 1.00 | 0.90 | 0.85 | −0.85 |
| アイスの売上 | 0.90 | 1.00 | 0.80 | −0.70 |
| 水の事故 | 0.85 | 0.80 | 1.00 | −0.60 |
| 温かい飲み物の売上 | −0.85 | −0.70 | −0.60 | 1.00 |
表の見方はシンプルです。行と列が交わるマスに、その2つの変数の相関係数が書かれています。読むときのコツは2つです。
【相関行列の読み方】
- 対角線はすべて1: 自分と自分の相関係数は1
- 対角線の右上と左下は同じ: と の相関は、 と の相関と同じ
つまり、見るべきなのは対角線の片側だけです。この表では、気温とアイスの売上の0.90が最も強い正の相関で、気温と温かい飲み物の売上の −0.85 が最も強い負の相関です。
ここで、気温の行に注目してください。ほかの3つの変数のすべてと、強い関係があります。ほかの変数どうしの相関の裏に、気温が隠れていそうですね。
以上が、相関行列についての説明です。
みかけの相関と偏相関係数:第3の変数を取り除く
最後に、みかけの相関と偏相関係数を見ていきましょう。
3級で学んだように、2つの変数に直接の関係がないのに、第3の変数の影響で相関が現れることがあります。これを みかけの相関(擬相関) と呼びます。冒頭のアイスと水の事故がその例で、気温という黒幕が、裏で2人を同時に動かしています。操り人形の2体が同じ動きをしても、人形どうしが話し合っているわけではありません。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。小学生の靴のサイズと漢字テストの点数には、正の相関があります。でも、足が大きいから漢字が書けるわけではありません。学年という第3の変数が、どちらも押し上げているのです。
では、黒幕の影響をどうやって取り除くのでしょうか? 一番分かりやすいのは、同じ学年の子どもだけで比べることです。これは層別です。でも、気温のような量的変数は、きれいに層に分けられません。
そこで使うのが 偏相関係数 です。第3の変数 の影響を取り除いたときの、 と の相関係数です。
記号の意味は、 が と の相関係数、 が と の相関係数、 が と の相関係数です。
言葉で言うと、分子は「 と の相関から、 を経由した分を引いたもの」です。 が を通じて生まれた相関の分だと考えてください。要するに、「もし気温が同じ日どうしで比べたら、どれくらい相関が残るか」を計算しています。
例題:偏相関係数を求める
先ほどの相関行列を使い、アイスの売上を 、水の事故を 、気温を とします。気温の影響を取り除いた偏相関係数を求めましょう。
【解き方】
- 必要な値を読む: 、、
- 分子を計算する:
- 分母を計算する:
- 割り算をする:
答えは約0.15です。もとの相関係数0.80が、気温の影響を取り除くと0.15まで小さくなりました。つまり、アイスと水の事故の相関のほとんどは、気温によるみかけの相関だったと考えられます。
一方で、相関と因果は別物です。偏相関係数が大きく残っていても、それだけで「原因と結果」が示されたわけではありません。まだ測っていない別の黒幕がいるかもしれないからです。
試験のポイント:偏相関係数の公式に数値を入れる問題が出ます。、、 のどれが取り除く変数かを確かめてから代入します。
以上が、みかけの相関と偏相関係数についての説明です。
公式を一度で覚えられなくても問題ありません。ここでは、「相関を見たら、裏に第3の変数がいないかを疑う」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は2つの変数の関係を見る散布図と相関について紹介しました。相関係数は便利ですが、計算して終わりではありません。散布図を描き、グループに分け、黒幕を探して、初めてその関係が本物かどうかが判断できます。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 共分散は偏差の積の平均。連動の向きは分かるが、単位で値が変わる。
- 相関係数は共分散を標準偏差で割った値。−1から1の間で、直線の関係だけを測る。
- 層別すると、関係が消えたり逆転したりする。ミカンとリンゴを一緒にしない。
- 相関行列は、すべての組み合わせの星取表。対角線は1で、左右対称。
- みかけの相関の黒幕は、偏相関係数であぶり出せる。
キーワードのおさらい
- 散布図: 2つの量的変数の組を点で打ったグラフ
- 共分散: 2つの変数の偏差の積の合計を で割った値
- 相関係数: 共分散をそれぞれの標準偏差で割った、−1から1の値
- 層別した散布図: グループごとに分けて描いた散布図
- 相関行列: 複数の変数の相関係数を一覧にした表
- みかけの相関(擬相関): 第3の変数の影響で現れる、直接の関係のない相関
- 偏相関係数: 第3の変数の影響を取り除いた相関係数
さて、ここまでは数値のデータの関係を見てきました。でも、「朝ごはんを食べるかどうか」と「テストに合格したかどうか」のように、数値ではないデータの関係は、相関係数では測れません。
次回は、質的変数どうしの関連を表で調べる「カテゴリカルデータ」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。