2級-24 推測統計の基礎
適合度検定と独立性の検定
- 適合度検定
- 独立性の検定
はじめに
「このサイコロ、なんだか6ばかり出ない?」
友達とすごろくをしていて、こう疑ったことはありませんか? 例えば、120回振って1の目が14回、6の目が21回だったとします。1から6まで、きれいに20回ずつにはなりません。でも、ぴったり同じにならないのは当たり前です。どこまでのズレなら許せるのでしょうか?
前回の記事では、「買った・買わない」のような2択の比率を比べました。でも、サイコロの目は6種類あります。部活の種類と朝食の習慣のように、3種類以上の質的変数の関連を調べたいこともありますよね。比率の検定を何度も繰り返すのは大変です。
実は、こうした問題は、「予想した度数と実際の度数のズレ」を1つの数にまとめるだけで解けます。
そこで登場するのが、今回の主役 カイ二乗統計量 です。この物差しを使う検定は、大きく2つあります。
今回の記事では、データが理論どおりの分布に合っているかを調べる 適合度検定 と、2つの質的変数が関連しているかを調べる 独立性の検定 について解説します。
カイ二乗統計量:予想と現実のズレを1つの数に
はじめに、2つの検定に共通するカイ二乗統計量について解説します。
結論を一言で言うと、カイ二乗統計量は、予想と現実の答え合わせの点数です。カテゴリごとに「実際の度数」と「予想した度数」を比べて、ズレを合計します。
はカテゴリ の 観測度数(observed)、 は 期待度数(expected)、 はカテゴリの数です。期待度数とは、帰無仮説が正しいとしたときに予想される度数のことです。「散らばりなどの指標」の記事で登場した、一様な頻度からのずれを表すカイ二乗値は、これの仲間です。
式の中身を、順に見ていきましょう。
【式の読み方】
- : 予想とのズレ
- 2乗する: プラスとマイナスのズレが打ち消し合わないようにする
- で割る: 予想の大きさに対して、ズレがどれだけ大きいかを見る
- 合計する: すべてのカテゴリのズレを1つの数にまとめる
なぜ で割るのでしょうか? 例えば、10人のズレは、予想が20人のときには大事件ですが、予想が1万人のときには誤差です。お小遣いが1,000円増えるのと、年収が1,000円増えるのとでは、重みが違うのと同じです。
具体的に見てみましょう。コインを100回投げて表が60回出たとします。公平なコインなら、期待度数は表も裏も50回です。
ズレがまったくなければ0で、ズレが大きいほど値は大きくなります。そのため、棄却域は必ず上側だけに置きます。 が大きいとき、 のもとでこの値は近似的にカイ二乗分布に従います。
ここで、1つ注意があります。この近似が使えるのは、度数が十分に大きいときです。目安は、すべての期待度数が5以上であることです。5未満のカテゴリがあれば、隣のカテゴリと1つにまとめます。
試験のポイント:計算に使うのは比率ではなく度数です。「30%」のような値は、人数や回数に直してから式に入れます。
以上が、カイ二乗統計量についての解説です。
適合度検定:理論どおりの分布か
次に、適合度検定について説明します。
適合度検定 は、観測された度数の分布が、理論の分布に合っているかを調べる検定です。服の試着に例えると、理論という服がデータという体に合っているかを確かめる作業です。
は「データは理論の分布に従う」です。検定統計量は先ほどの で、自由度はカテゴリの数から1を引いた です。
なぜ1を引くのでしょうか? 度数の合計は決まっているので、 個のカテゴリの度数が決まれば、最後の1つは自動的に決まるからです。自由に動けるのは 個だけなのです。
例題:サイコロの検定
サイコロを120回振ると、次の結果でした。公平なサイコロと言えるかを、有意水準5%で検定しましょう。 です。
| 目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 観測度数 | 14 | 25 | 19 | 17 | 24 | 21 |
【解き方】
- 仮説を立てる: は「どの目も確率 」、 は「 ではない」
- 期待度数を求める: 120 ÷ 6 = 20(どの目も同じ)
- ズレの2乗を合計する: 36 + 25 + 1 + 9 + 16 + 1 = 88
- 検定統計量を計算する:
- 自由度は 6 − 1 = 5。4.4 < 11.07 なので、 を棄却しない
答えは「有意水準5%で、公平でないとは言えない」です。冒頭の疑いは、たまたまの範囲でした。
棄却しないことは、公平だと証明したことにはなりません。あくまで「おかしいという証拠が足りない」という結論です。この点は、これまでの検定と同じです。
例題:ガチャの排出率の検定
せっかくなので、比率が等しくない例も見てみましょう。ノーマル70%、レア25%、スーパーレア5%と公表されているガチャを200回引くと、それぞれ155回、33回、12回でした。公表どおりかを、有意水準5%で検定します。 です。
【解き方】
- 期待度数を求める: 200 × 0.70 = 140、200 × 0.25 = 50、200 × 0.05 = 10
- 検定統計量を計算する:
- 自由度は 3 − 1 = 2。7.79 > 5.99 なので、 を棄却する
答えは「有意水準5%で、公表どおりとは言えない」です。3つの項を見比べると、ズレの主な原因はレアの少なさだと分かります。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 理論の分布の母数をデータから推定したときは、推定した母数の数 の分だけ自由度が減り、 になります。例えば、平均をデータから推定したポアソン分布に6カテゴリで当てはめるなら、自由度は 6 − 1 − 1 = 4 です。
以上が、適合度検定についての説明です。
独立性の検定:2つの変数に関連はあるか
続いて、独立性の検定について解説します。
独立性の検定 は、クロス表の2つの質的変数が独立かどうかを調べる検定です。2元クロス表の記事では、表を眺めて関連を探しました。今回は、その関連がたまたまなのかを判定します。
適合度検定との違いは、期待度数の作り方です。今回は理論の分布がないので、「2つが独立なら」と考えて、表の中から期待度数を作ります。確率の記事で学んだように、独立なら が成り立つのでした。これを度数に直すと、次の式になります。
例えば、全体の70%が朝食を毎日食べているなら、独立であれば、どの部活でも70%が食べているはずです。運動部が80人なら、56人が期待度数です。「全体の割合を、どのグループにも同じように配る」というイメージです。
検定統計量は、すべてのマスについてズレを合計した で、 行 列の表の自由度は次のようになります。
行の合計と列の合計が決まっていると、最後の行と最後の列は自動的に決まります。自由に動けるのは マスだけなのです。
例題:部活と朝食の関連
200人の高校生を調べると、次の表のようになりました。部活の種類と朝食の習慣は独立かを、有意水準5%で検定しましょう。 です。
| 運動部 | 文化部 | 帰宅部 | 計 | |
|---|---|---|---|---|
| 毎日食べる | 64 | 42 | 34 | 140 |
| 毎日ではない | 16 | 18 | 26 | 60 |
| 計 | 80 | 60 | 60 | 200 |
【解き方】
- 仮説を立てる: は「部活と朝食は独立」、 は「独立ではない」
- 期待度数を求める: 毎日食べるの行は 140 × 80 ÷ 200 = 56、42、42。毎日ではないの行は 24、18、18
- 検定統計量を計算する:
- 自由度は (2 − 1) × (3 − 1) = 2。8.89 > 5.99 なので、 を棄却する
答えは「有意水準5%で、部活と朝食には関連がある」です。
ただし、この結果から「運動部に入れば朝食を食べるようになる」とは言えません。検定が示すのは関連の有無だけで、原因と結果の向きは分からないのです。
試験のポイント:独立性の検定の自由度は 、適合度検定の自由度は です。「マスの数 − 1」としないように注意します。
以上が、独立性の検定についての解説です。
2×2の表と比率の差の検定
最後に、最もよく出る2×2の表を見ていきましょう。
2行2列のクロス表では、自由度は1です。さらに、 を一度に計算できる便利な式があります。各マスの度数を 、総数を とすると、次のようになります。
分子の は、たすき掛けの差です。2つの変数が独立なら、この差は0に近づきます。
具体的に見てみましょう。前回の記事の広告の例を、クロス表に直します。
| 購入した | しなかった | 計 | |
|---|---|---|---|
| 広告A | 60 | 140 | 200 |
| 広告B | 66 | 234 | 300 |
| 計 | 126 | 374 | 500 |
たすき掛けの差は 60 × 234 − 140 × 66 = 4,800 です。これを式に入れると、次のようになります。
より大きいので棄却します。
ここがポイントです。前回の比率の差の検定では、 でした。この2乗はほぼ4.07で、 と一致します。棄却域の境目も です。つまり、2×2の表の独立性の検定と、両側の比率の差の検定は、同じものを別の角度から見ているのです。同じ山を東から登るか、西から登るかの違いだと考えてください。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 度数が少ないときは、ズレを少し小さめに見積もる イェーツの補正 を使うことがあります。分子を とする方法です。この例では が3.66になり、境目を下回ります。ソフトの出力を読むときは、補正の有無を確かめましょう。
以上が、2×2の表についての説明です。
細かい計算が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「期待度数を作って、ズレを で測る」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回はカイ二乗統計量を使う2つの検定を紹介しました。どちらも「予想と現実の答え合わせ」で、違うのは予想の作り方だけです。理論から作れば適合度検定、表の合計から作れば独立性の検定になります。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- カイ二乗統計量は、期待度数と観測度数のズレを1つにまとめた数。大きいほど に不利で、棄却域は上側だけ。
- 適合度検定は、理論から期待度数を作る。自由度は 。
- 独立性の検定は、行と列の合計から期待度数を作る。自由度は 。
- 期待度数は5以上が目安。計算には比率ではなく度数を使う。
- 2×2の表の は、比率の差の検定の の2乗に等しい。
キーワードのおさらい
- カイ二乗統計量: 観測度数と期待度数のズレを合計した検定統計量
- 観測度数: 実際に観測された度数
- 期待度数: 帰無仮説が正しいとしたときに予想される度数
- 適合度検定: 度数の分布が理論の分布に合っているかを調べる検定
- 独立性の検定: クロス表の2つの変数が独立かを調べる検定
さて、ここまでの検定は「違いがあるか」「関連があるか」を調べるものでした。でも、家賃を決めるのは広さだけではありません。駅からの距離や築年数など、複数の要因を同時に考えたいときはどうすればよいでしょうか?
次回は、単回帰を複数の変数に広げる「回帰分析 — 重回帰モデル」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。