統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

2級-20 推測統計の基礎

2つの母集団の区間推定

  • 正規母集団の母平均の差・母分散の比の区間推定
  • 母比率の差の区間推定

はじめに

「新しい勉強法のクラスのほうが、平均点が5点高かった。これって本当に効果があるの?」

2つのクラスのテストを比べて、新しい勉強法のクラスが5点上回ったとします。すぐに「効果あり」と言いたくなりますよね。でも、たまたま得意な生徒が多かっただけかもしれません。別の年にもう一度比べたら、差は2点かもしれないし、逆転するかもしれません。

実は、2つのグループを比べるときに本当に知りたいのは、それぞれの平均ではなく「差」そのものです。そして、その差にも、前回までと同じように幅があります。

そこで登場するのが、今回の主役 2つの母集団の区間推定 です。平均の差、分散の比、比率の差に網を投げます。そして、網の中に「差がない」を意味する0が入っているかどうかが、判断の決め手になります。

前回の記事では、1つの母集団の区間推定を学びました。今回の記事では、正規母集団の母平均の差・母分散の比の区間推定 と、母比率の差の区間推定 について解説します。信頼係数は、特に断らない限り95%とします。

母平均の差:3つの場合分け

はじめに、最もよく出る母平均の差について解説します。

2つの母集団の平均を μ1,μ2\mu_1, \mu_2 とします。知りたいのは差 μ1−μ2\mu_1 - \mu_2 です。点推定は、標本平均の差 xˉ1−xˉ2\bar{x}_1 - \bar{x}_2 です。

ここで、確率変数の記事で学んだ性質が効きます。独立な2つの確率変数では、差の分散は分散の和です。引き算なのに足し算になる点に注意しましょう。ばらつくものを2つ組み合わせると、差であっても、ばらつきは増えるのです。シーソーの左右が両方ゆれると、高さの差のゆれは大きくなるイメージです。

V[Xˉ1−Xˉ2]=σ12n1+σ22n2V[\bar{X}_1 - \bar{X}_2] = \frac{\sigma_1^2}{n_1} + \frac{\sigma_2^2}{n_2}

あとは分散の扱いで、3つの場合に分かれます。

【母平均の差の場合分け】

  1. 母分散が既知
  2. 母分散は未知だが、等しいと考えられる
  3. 母分散は未知で、等しいとは限らない

1つずつ見ていきましょう。

1. 母分散が既知のとき

正規分布に従うので、1.96を使います。

(xˉ1−xˉ2)±1.96σ12n1+σ22n2(\bar{x}_1 - \bar{x}_2) \pm 1.96\sqrt{\frac{\sigma_1^2}{n_1} + \frac{\sigma_2^2}{n_2}}

例えば、クラスAは25人で平均72点、σ1=10\sigma_1 = 10 です。クラスBは16人で平均66点、σ2=8\sigma_2 = 8 です。標準誤差は 100/25+64/16=8≈2.83\sqrt{100/25 + 64/16} = \sqrt{8} \approx 2.83 なので、6±1.96×2.836 \pm 1.96 \times 2.83 より、約0.46点から約11.54点です。

2. 母分散が未知だが等しいとき

2つの母分散が同じ σ2\sigma^2 だと考えられるなら、2つの標本の情報を合わせて σ2\sigma^2 を推定します。これを プールした分散(合併分散)と呼びます。

sp2=(n1−1)s12+(n2−1)s22n1+n2−2s_p^2 = \frac{(n_1 - 1)s_1^2 + (n_2 - 1)s_2^2}{n_1 + n_2 - 2}

言葉で言うと、「2つの不偏分散を、自由度の重みで平均したもの」です。2つのスープを合わせて味見するようなものです。信頼区間は、自由度 n1+n2−2n_1 + n_2 - 2 のt分布を使います。

(xˉ1−xˉ2)±t0.025(n1+n2−2) sp1n1+1n2(\bar{x}_1 - \bar{x}_2) \pm t_{0.025}(n_1 + n_2 - 2)\ s_p\sqrt{\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2}}

例題:等分散を仮定して差を推定する

新しい勉強法のクラス(10人)は平均72点、不偏分散36でした。従来のクラス(12人)は平均65点、不偏分散25でした。母分散が等しい正規母集団だとして、母平均の差の95%信頼区間を求めましょう。ただし、t0.025(20)=2.086t_{0.025}(20) = 2.086 とします。

【解き方】

  1. プールした分散: (9×36+11×25)÷20=599÷20=29.95(9 \times 36 + 11 \times 25) \div 20 = 599 \div 20 = 29.95
  2. 標準誤差: 29.95×(1/10+1/12)≈2.343\sqrt{29.95 \times (1/10 + 1/12)} \approx 2.343
  3. 自由度: 10+12−2=2010 + 12 - 2 = 20
  4. 幅: 2.086×2.343≈4.892.086 \times 2.343 \approx 4.89

答えは、7±4.897 \pm 4.89 より、約2.11点から約11.89点です。区間全体が0より上にあるので、新しい勉強法のほうが平均が高いと言えそうです。

3. 母分散が未知で等しいとは限らないとき

等分散を仮定できないときは、それぞれの不偏分散を使います。この方法を ウェルチの方法 と呼びます。標準誤差はかんたんですが、自由度は次の式で近似します。

(xˉ1−xˉ2)±t0.025(ν)s12n1+s22n2,ν≈(s12n1+s22n2)2(s12/n1)2n1−1+(s22/n2)2n2−1(\bar{x}_1 - \bar{x}_2) \pm t_{0.025}(\nu)\sqrt{\frac{s_1^2}{n_1} + \frac{s_2^2}{n_2}}, \qquad \nu \approx \frac{\left(\dfrac{s_1^2}{n_1} + \dfrac{s_2^2}{n_2}\right)^2}{\dfrac{(s_1^2/n_1)^2}{n_1 - 1} + \dfrac{(s_2^2/n_2)^2}{n_2 - 1}}

ν\nu(ニュー)は整数にならないので、最も近い整数で表を読みます。さきほどの例なら、標準誤差は 3.6+2.083≈2.384\sqrt{3.6 + 2.083} \approx 2.384 で、ν≈17.6\nu \approx 17.6 です。18として t0.025(18)=2.101t_{0.025}(18) = 2.101 を使うと、7±5.017 \pm 5.01 より、約1.99点から約12.01点になります。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 同じ人を前後で測るような「対応のある」データでは、ここまでの式は使いません。1人ごとの差をとって、1つの標本として母平均の区間推定をします。例えば、6人の変化が 4, 5, −1, 6, 4, 4 なら、平均は約3.67、標準偏差は約2.42で、t0.025(5)=2.571t_{0.025}(5) = 2.571 から、約1.12から約6.21です。

試験のポイント:「母分散は未知だが等しい」なら自由度 n1+n2−2n_1 + n_2 - 2 のプールした分散です。問題文の前提を読むことが、場合分けのすべてです。

以上が、母平均の差の区間推定についての解説です。

母分散の比:F分布で割合を測る

次に、ばらつきを比べる方法について説明します。

例えば、2台の機械のうち、どちらが均一な製品を作るかを比べたいとします。分散は「差」ではなく「比」で比べます。ばらつきは何倍か、という見方です。

標本分布の記事で学んだF分布の関係を使います。

S12/σ12S22/σ22 ∼ F(n1−1, n2−1)\frac{S_1^2 / \sigma_1^2}{S_2^2 / \sigma_2^2} \ \sim\ F(n_1 - 1,\ n_2 - 1)

これを σ12/σ22\sigma_1^2 / \sigma_2^2 について解くと、95%信頼区間が得られます。

s12s22⋅1F0.025(n1−1, n2−1)≤σ12σ22≤s12s22⋅F0.025(n2−1, n1−1)\frac{s_1^2}{s_2^2} \cdot \frac{1}{F_{0.025}(n_1 - 1,\ n_2 - 1)} \le \frac{\sigma_1^2}{\sigma_2^2} \le \frac{s_1^2}{s_2^2} \cdot F_{0.025}(n_2 - 1,\ n_1 - 1)

言葉で言うと、「不偏分散の比を、下限は F で割り、上限は自由度を入れ替えた F を掛ける」となります。下側の点は、F分布の「自由度を入れ替えて逆数」の性質から出てきます。

例題:母分散の比の信頼区間

さきほどの2つのクラス(n1=10n_1 = 10、s12=36s_1^2 = 36、n2=12n_2 = 12、s22=25s_2^2 = 25)について、母分散の比 σ12/σ22\sigma_1^2 / \sigma_2^2 の95%信頼区間を求めましょう。ただし、F0.025(9,11)=3.59F_{0.025}(9, 11) = 3.59、F0.025(11,9)=3.91F_{0.025}(11, 9) = 3.91 とします。

【解き方】

  1. 不偏分散の比: 36÷25=1.4436 \div 25 = 1.44
  2. 下限: 1.44÷3.59≈0.401.44 \div 3.59 \approx 0.40
  3. 上限: 1.44×3.91≈5.631.44 \times 3.91 \approx 5.63

答えは、約0.40から約5.63です。

区間は1を含みます。比が1とは、母分散が等しいということです。したがって、「母分散が等しい」という仮定と矛盾しないと読めます。

ここがポイントです。差を見るときの基準は0でしたが、比を見るときの基準は1です。

また、この区間はとても広いですよね。標本が10個前後では、分散の比はほとんど絞り込めません。「1を含むから等しいと確定した」ではなく、「違うとは言い切れない」という意味です。

以上が、母分散の比の区間推定についての説明です。

母比率の差:2つの割合を比べる

続いて、割合を比べる方法を見ていきましょう。

例えば、2種類のチラシのどちらが来店につながるかを比べたいとします。n1n_1 人のうち x1x_1 人、n2n_2 人のうち x2x_2 人が反応したとき、それぞれの標本比率を p^1,p^2\hat{p}_1, \hat{p}_2 とします。

nn が大きければ、それぞれの比率は正規分布で近似でき、差の分散は分散の和です。平均の差と同じ形になります。

(p^1−p^2)±1.96p^1(1−p^1)n1+p^2(1−p^2)n2(\hat{p}_1 - \hat{p}_2) \pm 1.96\sqrt{\frac{\hat{p}_1(1 - \hat{p}_1)}{n_1} + \frac{\hat{p}_2(1 - \hat{p}_2)}{n_2}}

例題:チラシの反応率の差

チラシAは200人中60人、チラシBは300人中60人が反応しました。母比率の差の95%信頼区間を求めましょう。

【解き方】

  1. 標本比率: p^1=0.3\hat{p}_1 = 0.3、p^2=0.2\hat{p}_2 = 0.2 で、差は0.1
  2. 分散の和: 0.3×0.7÷200+0.2×0.8÷300≈0.001580.3 \times 0.7 \div 200 + 0.2 \times 0.8 \div 300 \approx 0.00158
  3. 標準誤差: 0.00158≈0.0398\sqrt{0.00158} \approx 0.0398
  4. 幅: 1.96×0.0398≈0.0781.96 \times 0.0398 \approx 0.078

答えは、0.1±0.0780.1 \pm 0.078 より、0.022から0.178です。区間が0を含まないので、チラシAのほうが反応率が高いと言えそうです。差は最小で2.2ポイント、最大で17.8ポイントと読めます。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。同じ差0.1でも、人数が20人と30人だと、標準誤差は 10\sqrt{10} 倍の約0.126になります。幅は約0.25で、区間は−0.15から0.35まで広がり、0を含みます。差の大きさが同じでも、人数によって結論が変わるのです。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 2つの比率が等しいかどうかの検定では、2つを合わせた比率で標準誤差を計算することがあります。区間推定では「等しい」と仮定しないので、それぞれの比率をそのまま使います。

以上が、母比率の差の区間推定についての解説です。

区間の読み方:0と1が判断の基準

最後に、求めた区間から何が言えるのかを見ていきましょう。

3つの区間推定は、基準の値を含むかどうかで読みます。

調べるもの基準の値含まないとき含むとき
母平均の差0平均に差があると言える差があるとは言えない
母比率の差0比率に差があると言える差があるとは言えない
母分散の比1分散が違うと言える違うとは言えない

健康診断の基準値のようなものです。基準の値が区間の外にあれば「要注意」、中にあれば「今回は判断できない」と読みます。「差がないと証明された」ではないことに注意しましょう。この読み方は、この後の仮説検定とちょうど対応します。

ここで、ありがちな読み間違いを1つ紹介します。2つの平均の信頼区間をそれぞれ作り、重なっているかどうかで判断する方法です。

さきほどのクラスAとBで確かめましょう。平均の信頼区間は、それぞれ次のようになります。

【それぞれの95%信頼区間】

  • クラスA: 72±1.96×272 \pm 1.96 \times 2 より、68.08から75.92
  • クラスB: 66±1.96×266 \pm 1.96 \times 2 より、62.08から69.92

2つの区間は68.08から69.92で重なっています。でも、差の信頼区間は約0.46から約11.54で、0を含みません。差の標準誤差は、標準誤差の単純な足し算より小さいからです。

差を調べたいなら、差の信頼区間を作りましょう。それぞれの区間の重なりで判断してはいけません。

例題:区間から判断する

ある製品の改良前後で、平均の差(改良後 − 改良前)の95%信頼区間が −0.8 から 3.2 でした。この結果の読み方として適切なものを考えましょう。

【考え方】

  1. 差の基準の値は0
  2. 区間は0を含んでいる
  3. 平均に差があるとは言えないが、差がないと証明されたわけでもない

答えは、「信頼係数95%で、差があるとは言えない」です。

試験のポイント:差は0、比は1が基準です。区間が基準を含まないとき、有意な差があると読みます。

以上が、区間の読み方についての説明です。

細かい公式が覚えきれなくても問題ありません。ここでは、「差の分散は分散の足し算、見るのは0か1を含むかどうか」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は2つの母集団を比べる区間推定について紹介しました。2つの平均に差があっても、それは標本の結果です。差にも幅をつけることで、「たまたま」と「本物」を見分けられます。これが、統計で比べるということです。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 差の分散は、分散の足し算。ばらつくもの同士の差は、ばらつきが増える。
  • 母平均の差は、既知なら zz、等分散なら自由度 n1+n2−2n_1 + n_2 - 2 のプールした分散、等分散でなければウェルチの方法。
  • 母分散の比はF分布で求める。基準は1で、自由度の入れ替えに注意する。
  • 母比率の差は、それぞれの比率の分散を足して正規近似する。
  • 基準の値を含むかどうかで判断する。含むときは「差があるとは言えない」と読む。

キーワードのおさらい

  • 母平均の差の区間推定: 2つの標本平均の差を中心に、分散の場合分けに応じて作る区間
  • プールした分散: 2つの不偏分散を自由度の重みで平均した値
  • ウェルチの方法: 等分散を仮定せず、近似の自由度でt分布を使う方法
  • 母分散の比の区間推定: 不偏分散の比とF分布の点から作る区間
  • 母比率の差の区間推定: 標本比率の差を中心に、正規近似で作る区間

さて、区間の読み方として「基準の値を含むかどうか」で判断する話をしました。実は、この判断の考え方を正面からルールにしたものがあります。裁判の判決のように、「疑わしいから有罪」と言えるのは、どんなときでしょうか?

次回は、推測統計のもう1つの柱である「仮説検定の考え方」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 母分散が既知の2つの正規母集団から標本をとった。n1=50n_1 = 50、σ1=10\sigma_1 = 10、n2=40n_2 = 40、σ2=8\sigma_2 = 8 で、標本平均の差は5だった。母平均の差の95%信頼区間として最も適切なものはどれか。
問2. 母分散が等しい2つの正規母集団から、大きさ8と6の標本をとった。不偏分散は20と30である。プールした分散と、t分布の自由度の組として正しいものはどれか。
問3. Aは300人中120人、Bは200人中60人が「はい」と答えた。母比率の差 pA−pBp_A - p_B の95%信頼区間として最も適切なものはどれか。
問4. 母分散の比 σ12/σ22\sigma_1^2 / \sigma_2^2 の95%信頼区間が 0.6 から 3.2 だった。この結果の読み方として、最も適切なものはどれか。
問5. 2つの正規母集団から大きさ10ずつの標本をとり、不偏分散は s12=20s_1^2 = 20、s22=10s_2^2 = 10 だった。σ12/σ22\sigma_1^2 / \sigma_2^2 の95%信頼区間として最も適切なものはどれか。ただし F0.025(9,9)=4.03F_{0.025}(9, 9) = 4.03、F0.05(9,9)=3.18F_{0.05}(9, 9) = 3.18 とする。