統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

2級-1 推測統計の基礎

身近な統計 — データソースと公的統計

  • データソース
  • 公的統計

はじめに

「完全失業率って、誰がどうやって数えているの?」

ニュースでは毎月のように、失業率や物価の数字が流れてきます。でも、日本中の人を毎月1人ずつ訪ねて回っているわけではありません。では、あの数字はどこから来て、どこまで信じてよいのでしょうか?

例えば、「A市は交通事故の件数がB市より多い」と聞くと、A市は危ない街だと感じますよね。ところが、A市の人口がB市の3倍だったらどうでしょうか? 人口あたりで見ると、話が逆になるかもしれません。

実は、統計で最初に確かめるべきことは、計算の方法ではありません。「そのデータは、誰が、何を、どのように数えたものか」です。ここを飛ばすと、どれだけ計算が正確でも、結論がズレてしまいます。

そこで登場するのが、今回の主役 データソース と 公的統計 です。データソースとは、データの出どころのことです。料理で言えば、食材の産地にあたります。公的統計は、その中でも国や自治体が作る、最も基本的な食材です。

前回の記事では、3級の締めくくりとして仮説検定を学びました。今回からは2級に入ります。今回の記事では、社会で統計が果たす役割、データソースの種類、公的統計の仕組みと探し方、そして使うときの注意点について解説します。

社会の中で統計が果たす役割

はじめに、統計が社会で何をしているのかについて解説します。

一言で言うと、統計は「社会の健康診断」です。人の体は、見た目だけでは調子が分かりません。身長、体重、血圧を測って、去年の自分や平均と比べることで、初めて状態がつかめます。社会も同じで、人口、物価、失業者の数を測って比べることで、今どんな状態にあるのかが分かるのです。

具体的に見てみましょう。統計は、次のような場面で実際に使われています。

【統計が使われている場面】

  • 政治: 国勢調査の人口をもとに、衆議院の小選挙区の区割りが見直される
  • 財政: 国から自治体へ配るお金の計算に、人口の統計が使われる
  • 暮らし: 公的年金の額は、物価の統計を反映して改定される
  • 企業: 店を出す場所を、地域の人口や世帯の統計をもとに決める

せっかくなので、別の例も見てみましょう。ある町で「保育所が足りない」という声が上がったとします。声の大きさだけで判断すると、予算の使い道を誤るかもしれません。そこで、地域ごとの子どもの人数と、今後の人口の見通しを調べます。すると、どの地区に何人分の定員が必要かが、数字で議論できるようになります。

このように、勘や経験だけでなく、データという証拠にもとづいて政策を立てる考え方を、EBPM(Evidence-Based Policy Making、証拠にもとづく政策立案)と呼びます。統計は、その土台になる情報です。

以上が、統計が社会で果たす役割についての解説です。

データソースの種類

次に、データの出どころにどんな種類があるのかについて説明します。

データソースは、見る角度によっていくつかに分けられます。1つずつ見ていきましょう。

1. 一次データと二次データ

一次データ は、自分の目的のために自分で集めたデータです。二次データ は、ほかの誰かが別の目的で集めたデータを、借りて使うものです。

料理に例えると、一次データは自分の畑で育てた野菜、二次データはスーパーで買った野菜です。自分の畑なら欲しいものを育てられますが、時間もお金もかかります。買った野菜はすぐ使えますが、どう育てられたかを表示で確かめる必要があります。

例えば、部活の練習時間と成績の関係を知りたくて部員にアンケートをとれば、一次データです。一方で、国が公表している人口の表を使うなら、二次データです。

2. 作られ方による分け方

統計は、作られ方でも3つに分けられます。

【統計の作られ方】

  1. 調査統計: 統計を作るために調査をして得たもの(例:国勢調査、家計調査)
  2. 業務統計: 役所などの業務の記録を集計したもの(例:税関の申告をまとめた貿易統計)
  3. 加工統計: ほかの統計を組み合わせて計算したもの(例:国内総生産 GDP を含む国民経済計算)

要するに、「わざわざ聞いたもの」「仕事の記録を数えたもの」「それらを材料に計算したもの」です。

3. 公的統計と民間のデータ

公的統計 は、国の行政機関や地方公共団体などが作る統計です。これに対して、企業や業界団体、調査会社が作るデータもあります。例えば、コンビニのレジの記録(POSデータ)や、ポイントカードの購買履歴、スマートフォンの位置情報などです。

民間のデータは、量が多く、更新も速いのが強みです。でも、これには弱点があります。そのお店やサービスを使う人しか記録されないので、社会全体を表しているとは限りません。ポイントカードのデータで「日本人の買い物」を語ると、カードを持たない人が抜け落ちてしまうのです。

以上が、データソースの種類についての説明です。

公的統計の仕組みと探し方

続いて、公的統計の仕組みと、データの探し方について解説します。

公的統計のルールを定めている法律が、統計法 です。統計法は、公的統計を、国民が合理的に判断するための重要な情報と位置づけています。行政のためだけのものではなく、みんなの共有財産だという考え方です。

統計法のもとで、国の統計は次の2つに分かれます。

【国の統計の区分】

  • 基幹統計: 国勢統計や国民経済計算など、特に重要な統計。基幹統計を作るための調査の対象者には、回答の義務がある
  • 一般統計: 基幹統計以外の、行政機関が作る統計

代表的な統計を、表で確かめましょう。いずれも試験の読み取り問題でよく題材になります。

統計作成機関分かること周期と方法
国勢調査総務省人口・世帯の基本的な姿5年ごと、全数調査
労働力調査総務省就業者・失業者、完全失業率毎月、標本調査
家計調査総務省世帯の収入と支出毎月、標本調査
消費者物価指数総務省物価の動き毎月、調べた価格から計算
毎月勤労統計調査厚生労働省賃金・労働時間毎月、標本調査
学校基本調査文部科学省学校数・在学者数毎年、全数調査
国民経済計算内閣府GDP など経済全体の姿四半期・年、加工統計

冒頭の疑問に戻りましょう。完全失業率は、労働力調査で計算されます。全員を数えるのではなく、抽出した世帯に毎月調査をして、全体を推計しているのです。味見の一口で鍋全体の味を判断するのと同じで、3級で学んだ標本調査の考え方が使われています。

では、データはどこで探せばよいのでしょうか? 最初の窓口は、e-Stat(政府統計の総合窓口) です。各省庁の統計が1つのサイトに集められていて、分野や統計名から探し、表をファイルでダウンロードできます。図書館の総合カウンターのような場所だと考えてください。

外国と比べたいときは、国連、OECD(経済協力開発機構)、世界銀行、IMF(国際通貨基金)といった国際機関のデータが使えます。国ごとに異なる定義を、できるだけそろえて公表しているからです。

試験のポイント:国勢調査は5年ごとの全数調査、労働力調査と家計調査は毎月の標本調査です。全数か標本かの区別を押さえましょう。

以上が、公的統計の仕組みと探し方についての解説です。

データを使う前に確かめること

最後に、データを使う前に確かめることを見ていきましょう。

どんなに信頼できるデータでも、読み方を誤れば間違った結論になります。食品のラベルを見るように、数字の前に、まず表示を確かめます。

【データのラベルで確かめること】

  1. 定義: 何を、どう数えたのか
  2. 対象と方法: 全数か標本か、誰が対象か
  3. 時点: いつの値で、どのくらいの周期か
  4. 単位: 万人か千人か、実数か割合か
  5. 調整: 物価の影響や季節の影響を取り除いた値か

具体的に見てみましょう。まず、定義です。完全失業者とは、仕事がなく、仕事を探していて、すぐに働ける人のことです。仕事を探すことをあきらめた人は、ここに入りません。「働いていない人」と「完全失業者」は別物なのです。

次に、単位です。冒頭の交通事故の例で、A市は120件で人口30万人、B市は80件で人口10万人だったとします。

  • A市: 120 ÷ 30 × 10 = 人口10万人あたり40件
  • B市: 80 ÷ 10 × 10 = 人口10万人あたり80件

件数はA市が多いのに、人口あたりではB市が2倍です。規模の違う地域を比べるときは、件数のような実数ではなく、「人口あたり」のような割合に直すことが大切です。

最後に、調整です。お金の数字には 名目値 と 実質値 があります。名目値は表示された金額そのもの、実質値は物価の変化を取り除いた値です。

実質値=名目値物価指数×100\text{実質値} = \frac{\text{名目値}}{\text{物価指数}} \times 100

物価指数は、基準の時点を100として物価の水準を表した数です。この式は、「今の金額が、基準の時点の物価で言えばいくらの値打ちか」を計算しています。

また、毎月のデータには季節の波があります。例えば、アイスの売上は8月に増えて、1月に減ります。そのため、月次の統計は、前年の同じ月と比べるか、季節の波を取り除いた 季節調整値 で見るのが基本です。

例題:完全失業率を計算する

ある年の架空の数値として、15歳以上人口が11,000万人、就業者が6,800万人、完全失業者が200万人だったとします。完全失業率を求めましょう。

【解き方】

  1. 定義を確かめる: 完全失業率は、労働力人口に占める完全失業者の割合。労働力人口は、就業者と完全失業者の合計
  2. 労働力人口を求める: 6,800 + 200 = 7,000(万人)
  3. 割合を求める: 200 ÷ 7,000 × 100 ≒ 2.9(%)

答えは約2.9%です。15歳以上人口で割って約1.8%としてしまうのが、よくある間違いです。率の計算では、分母が何かを必ず確かめます。

例題:名目と実質を比べる

ある人の月給は、基準の年に300,000円で、消費者物価指数は100でした。今年の月給は315,000円で、消費者物価指数は110です。実質の月給は増えたでしょうか?

【解き方】

  1. 今年の月給を実質値に直す: 315,000 ÷ 110 × 100 ≒ 286,364(円)
  2. 基準の年と比べる: 286,364 ÷ 300,000 ≒ 0.955

答えは、実質では約4.5%の減少です。名目の月給は5%増えましたが、物価が10%上がったので、買えるものはむしろ減っています。

試験のポイント:割合の読み取りでは、分母を確かめます。金額の比較では、名目か実質かを確かめます。

以上が、データを使う前に確かめることについての説明です。

細かい統計の名前を全部覚えられなくても問題ありません。ここでは、「数字を見たら、誰が、何を、どう数えたのかを確かめる」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回はデータの出どころであるデータソースと、その基本となる公的統計について紹介しました。統計は社会の健康診断であり、その結果を正しく読むには、測り方を知っておく必要があります。分析の出発点は計算ではなく、データのラベルを読むことです。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 統計は社会の健康診断。政策も企業の判断も、データという証拠にもとづいて行われる。
  • データは、一次と二次、調査・業務・加工、公的と民間といった角度で分けられる。
  • 公的統計は統計法のもとで作られ、e-Stat で探せる。
  • 国勢調査は5年ごとの全数調査、労働力調査や家計調査は毎月の標本調査。
  • 使う前に、定義、対象、時点、単位、調整の5つを確かめる。

キーワードのおさらい

  • データソース: データの出どころ
  • 公的統計: 国の行政機関や地方公共団体などが作る統計
  • 基幹統計: 統計法で定められた、特に重要な国の統計
  • 一次データ・二次データ: 自分で集めたデータと、他者が集めたデータ
  • 調査統計・業務統計・加工統計: 調査で得た統計、業務の記録の集計、ほかの統計から計算した統計
  • 名目値・実質値: 表示された金額と、物価の変化を取り除いた値

さて、データを手に入れたら、次にすることは何でしょうか? 数字の列をいくら眺めても、全体の姿は見えてきません。

次回は、データの種類に合わせてグラフを選び、分布の形を言葉で表す「データの分布の記述」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 日本に住むすべての人と世帯を対象に、5年ごとに実施される統計調査として正しいものはどれか。
問2. 就業者が6,400万人、完全失業者が160万人、15歳以上人口が10,500万人のとき、完全失業率に最も近いものはどれか。
問3. 統計の作られ方の分類のうち、加工統計の例として最も適切なものはどれか。
問4. 公的統計についての説明として、最も適切なものはどれか。
問5. ある人の月給が260,000円から273,000円に増え、同じ期間に消費者物価指数が100から104に上がった。実質の月給の変化として最も適切なものはどれか。