統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

3級-9 データ分析の基本

代表値とその利用法

  • 平均値
  • 中央値
  • 最頻値

はじめに

「A組の平均点は70点、B組は80点。だから学年全体の平均は75点だよね?」

すんなり納得してしまいそうですが、この計算には落とし穴があります。もしA組が30人で、B組が10人だったらどうでしょうか? 学年全体で見ると、A組の点数のほうが多く混ざっているはずです。

実は、平均値の計算そのものは簡単でも、使いこなすのは意外とむずかしいのです。人数の違いを見落としたり、分布の形を無視したり、平均をとってはいけないデータを平均したりすると、数字は正しくても結論を誤ります。

そこで登場するのが、今回の主役 代表値の使いこなし です。4級では平均値、中央値、最頻値の3人の代表選手の求め方を学びました。3級では、この3人を場面に合わせて起用し、データの特徴を説明できるようになることを目指します。

前回の記事では、移動平均でギザギザをならしました。今回の記事では、平均値の公式と性質、加重平均、そして代表値の選び方について解説します。

平均値をΣで書く

はじめに、平均値の公式と性質について解説します。

4級で学んだとおり、平均値はすべての値を足して個数で割った値です。3級では、これを記号で書きます。nn 個のデータ x1,x2,…,xnx_1, x_2, \dots, x_n の平均値 xˉ\bar{x} は、次の式で表します。

xˉ=1n∑i=1nxi\bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i

xˉ\bar{x} は「エックスバー」と読みます。∑\sum は「シグマ」と読み、i=1i = 1 から i=ni = n まで全部足すという意味です。言葉で言うと、全部足して nn で割るだけで、4級の計算と同じです。

では、平均値にはどんな性質があるのでしょうか? それぞれの値から平均値を引いた xi−xˉx_i - \bar{x} を 偏差 と言います。平均値からのズレです。実は、偏差を全部足すと、必ず0になります。

∑i=1n(xi−xˉ)=0\sum_{i=1}^{n} (x_i - \bar{x}) = 0

イメージは、シーソーです。数直線の板の上に、データの値の位置に同じ重さのおもりを置いたとします。平均値は、この板がちょうど釣り合う支点の位置です。左のズレと右のズレが、ぴったり打ち消し合います。

具体的に見てみましょう。3, 5, 6, 10, 11 の平均値は、35 ÷ 5 = 7 です。偏差は −4, −2, −1, 3, 4 で、足すと 0 になります。

次に、全部の値を同じルールで変換したときの動きを見ます。全員が高さ5cmの台に乗れば、平均身長も5cm高くなります。全部の値を2倍すれば、平均値も2倍です。式で書くと、次のようになります。

yi=axi+bのときyˉ=axˉ+by_i = a x_i + b \quad \text{のとき} \quad \bar{y} = a \bar{x} + b

例えば、気温を摂氏から華氏に直す式は y=1.8x+32y = 1.8x + 32 です。摂氏の平均気温が20度なら、華氏の平均気温は 1.8 × 20 + 32 = 68 度です。全部の日を計算し直さなくても、平均値だけ変換すれば済みます。中央値と最頻値も、同じ変換で同じように動きます。

試験のポイント:すべての値を aa 倍して bb を足すと、平均値も aa 倍して bb を足した値になります。

以上が、平均値の公式と性質についての解説です。

加重平均:個数の違いを計算に入れる

次に、加重平均について説明します。

冒頭の問題に戻りましょう。A組30人の平均点が70点、B組10人の平均点が80点のとき、学年全体の平均点はいくつでしょうか?

平均値の定義に立ち返って、全員の合計点を全員の人数で割ります。平均点 × 人数 = 合計点 なので、次のようになります。

【全体の平均の計算】

  1. A組の合計: 70 × 30 = 2,100
  2. B組の合計: 80 × 10 = 800
  3. 全体の平均: (2,100 + 800) ÷ 40 = 72.5

答えは72.5点で、75点ではありません。濃さの違う砂糖水を混ぜるときと同じです。量の多いほうの濃さに、全体の濃さが近づきます。

このように、それぞれの値に重みをつけて求める平均を 加重平均 と言います。値 xix_i の重みを wiw_i とすると、公式は次のとおりです。

xˉw=∑iwixi∑iwi\bar{x}_w = \frac{\sum_{i} w_i x_i}{\sum_{i} w_i}

分子は「値 × 重み」の合計、分母は重みの合計です。先ほどの例なら、値が平均点、重みが人数でした。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。度数分布表から平均値を求める計算も、実は加重平均です。前に学んだように、階級値が値、度数が重みにあたります。階級の中の値を階級値で置きかえるので、求まるのは近似値です。

例題:度数分布表から代表値を求める

20人の通学時間を調べて、次の度数分布表にまとめました。平均値、中央値を含む階級、最頻値を求めましょう。

階級(分)0以上10未満10以上20未満20以上30未満30以上40未満
階級値5152535
度数41051

【解き方】

  1. 階級値 × 度数を合計する: 5 × 4 + 15 × 10 + 25 × 5 + 35 × 1 = 330
  2. 度数の合計で割る: 330 ÷ 20 = 16.5
  3. 中央値は10番目と11番目の平均。度数を足していくと 4, 14 となるので、どちらも「10以上20未満」に入る
  4. 最も度数が大きい階級の階級値が最頻値: 15

答えは、平均値16.5分、中央値を含む階級は10分以上20分未満、最頻値15分です。

試験のポイント:人数の違うグループの平均は、平均どうしを足して割らず、合計を求めてから全体の個数で割ります。

以上が、加重平均についての説明です。

分布の形と3つの代表値

続いて、分布の形と代表値の関係について解説します。

ヒストグラムの形が分かれば、3つの代表値の大小関係も見当がつきます。平均値は裾のほうへ引っ張られる、と覚えてください。綱引きで、片側の端に力の強い人がいると、綱の真ん中がそちらへ動くイメージです。一方、最頻値はいつも山の頂上にいます。中央値はその間に入ることが多いです。

分布の形代表値の関係(多くの場合)例
左右対称の山型平均値 ≒ 中央値 ≒ 最頻値同じ年齢の人の身長
右に裾が長い平均値 > 中央値 > 最頻値年収、貯蓄額
左に裾が長い平均値 < 中央値 < 最頻値簡単なテストの点数

例えば、簡単なテストでは、多くの人が高得点に集まり、一部の人だけが低い点をとります。この低い点に引っ張られて、平均値は最頻値より低くなります。

例題:大小関係を確かめる

20人が1か月に読んだ本の冊数を調べました。平均値、中央値、最頻値の大小はどうなるでしょうか?

冊数012310
人数96311

【解き方】

  1. 平均値: (0 × 9 + 1 × 6 + 2 × 3 + 3 × 1 + 10 × 1) ÷ 20 = 25 ÷ 20 = 1.25
  2. 中央値: 10番目と11番目の平均。0冊が9人なので、どちらも1冊で、中央値は1
  3. 最頻値: 人数が最も多い0冊

したがって、平均値 > 中央値 > 最頻値 です。10冊の1人が右に長い裾を作り、平均値を引っ張っています。

もう1つ、注意すべき形があります。山が2つある分布です。例えば、親子連れが集まるイベントの参加者の年齢は、子どもの山と親の山に分かれます。このとき平均値は谷の部分に落ちて、「平均年齢の人はほとんどいない」ということが起こります。山が2つあるデータでは、グループに分けてから代表値を求めましょう。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 採点競技で、最高点と最低点を除いて平均をとることがあります。これは刈り込み平均と呼ばれ、外れ値の影響を弱める工夫です。

以上が、分布の形と代表値の関係についての解説です。

データの種類と目的で選ぶ

最後に、代表値の選び方を見ていきましょう。

選ぶときの判断材料は2つです。データの種類と、知りたいことです。

1. データの種類で選ぶ

前に学んだ4つの尺度によって、使える代表値が決まります。

尺度例使える代表値
名義尺度血液型、好きな色最頻値
順序尺度成績の5段階、満足度最頻値、中央値
間隔尺度・比例尺度気温、身長、金額最頻値、中央値、平均値

血液型には順番がなく、足し算もできないので、最頻値しか使えません。成績の段階には順番があるので、中央値が使えます。ただし、段階の間隔が等しいとは限らないので、平均値には注意が必要です。

2. 知りたいことで選ぶ

3人の代表選手を、それぞれ得意分野を持つ係だと考えてみましょう。

【3人の係の得意分野】

  • 平均さん(総額係): 合計や総量を見積もりたいときに使う。平均値 × 個数 = 合計 が成り立つ
  • 中央さん(ふつうの人係): 「ふつうの人」の水準を知りたいときに使う。外れ値に強い
  • 最頻さん(人気係): 一番多い値を知りたいときに使う。数字でないデータでも使える

例えば、社員旅行の予算を決めるなら、1人あたりの費用の平均値が役に立ちます。総額が分かるからです。一方、「この会社で働くと、ふつうはいくらもらえるのか」を知りたいなら、一部の高い給料に引っ張られない中央値が適切です。同じ給料のデータでも、目的が変われば選ぶ代表値が変わります。

例題:代表値の説明を判定する

ある町の世帯の貯蓄額の分布は右に裾が長く、平均値が1,500万円、中央値が900万円でした。この結果の説明として適切なものはどれでしょうか?

  • A:半数の世帯の貯蓄額は1,500万円以上である
  • B:半数の世帯の貯蓄額は900万円以下である
  • C:最も多い世帯の貯蓄額は1,500万円である

【考え方】

  1. 中央値の意味は「半分がそれ以下、半分がそれ以上」なので、Bが正しい
  2. Aは、中央値の説明に平均値の数字を当てはめた誤り
  3. Cは、最頻値の説明。右に裾が長いので、最頻値はむしろ平均値より小さいことが多い

答えはBです。

試験のポイント:平均値を「半数の人の境目」と読むのは誤りです。半数の境目を表すのは中央値です。

以上が、代表値の選び方についての説明です。

細かい場合分けを忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「平均値は合計に強く、中央値は外れ値に強く、最頻値はどんなデータにも使える」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は代表値を使いこなすための公式と考え方について紹介しました。代表値は、ただ計算するものではありません。データの種類、分布の形、知りたいことに合わせて選び、その値の意味を言葉で説明できて、はじめて役に立ちます。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 平均値はシーソーの釣り合う点。偏差の合計は必ず0になる。
  • すべての値を aa 倍して bb を足すと、平均値も aa 倍して bb を足した値になる。
  • 人数の違うグループの平均は加重平均で求める。度数分布表の平均も同じ考え方。
  • 平均値は裾に引っ張られ、最頻値は山の頂上にいて、中央値は多くの場合その間に入る。
  • 名義尺度なら最頻値。目的が総額なら平均値、ふつうの水準なら中央値。

キーワードのおさらい

  • 平均値: すべての値の合計を個数で割った値
  • 中央値: 小さい順に並べたときに真ん中にくる値
  • 最頻値: データの中で最も多く現れる値
  • 偏差: それぞれの値から平均値を引いた値
  • 加重平均: 値に重みをつけて求める平均

さて、代表値はデータの中心を教えてくれます。しかし、平均値が同じでも、全員が近い値に集まるデータと、大きく散らばるデータでは、まったく別物ですよね。今回登場した偏差を足すと0になってしまうなら、散らばりはどう測ればよいのでしょうか?

次回は、「分散と標準偏差」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. A店で売れた商品は20個で平均価格300円、B店で売れた商品は30個で平均価格400円だった。2店を合わせた平均価格として正しいものはどれか。
問2. あるデータの平均値は12だった。すべての値を2倍して3を足したとき、新しいデータの平均値として正しいものはどれか。
問3. 階級値が10の階級の度数が2、階級値が20の階級の度数が5、階級値が30の階級の度数が3である度数分布表について、平均値として正しいものはどれか。
問4. 左に裾が長い単峰の分布における代表値の関係として、最も適切なものはどれか。
問5. クラス全員の血液型を調べたデータの代表値として、使えるものはどれか。