統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

3級-8 データ分析の基本

時系列データ — 指数と移動平均

  • 時系列グラフ
  • 指数(指標)
  • 移動平均

はじめに

「今月のアイスの売上、先月の2倍! これは絶好調でしょ?」

そう喜びたくなりますが、少し待ってください。6月から7月にかけてアイスがよく売れるのは、毎年のことかもしれません。去年の7月と比べたら、むしろ減っている可能性もあります。

実は、時間の流れにそって並んだ数字には、いくつもの動きが重なっています。長い目で見た流れ、季節ごとの波、たまたまのブレです。これらを分けて見ないと、「絶好調」も「不調」も見誤ります。

そこで登場するのが、今回の主役 指数 と 移動平均 です。指数は基準をそろえて比べる道具、移動平均はギザギザをならして流れを見る道具です。どちらも4級で顔を合わせましたが、3級では計算と読み取りをもう一歩深めます。

前回の記事では、クロス集計表で2つの変数を同時に見ました。今回の記事では、時間とともに変わるデータの読み方について解説します。

時系列グラフ:4つの動きに分けて読む

はじめに、時系列グラフの読み方について解説します。

時系列データ は、時間の順に並んだデータです。毎月の売上、毎日の気温、毎年の人口などがこれにあたります。これを、横軸に時間、縦軸に値をとって折れ線で結んだものが 時系列グラフ です。4級で学んだ折れ線グラフのうち、時間の流れを表すものと考えてください。

時系列グラフのギザギザは、1つの原因でできているわけではありません。例えば、登山道を思い浮かべてください。全体としては上り坂で、ところどころに大きな起伏があり、足元には小石が転がっています。時系列データも同じで、大きさの違う動きが重なっています。

【時系列データの4つの動き】

  1. 傾向変動(トレンド): 長い期間で見た、上がる・下がるの流れ
  2. 季節変動: 1年周期でくり返す波。夏にアイスが売れるなど
  3. 循環変動: 数年単位のゆるやかな上下。景気の波など
  4. 不規則変動: ほかのどれにも当てはまらない、たまたまのブレ

ここがポイントです。季節変動があるデータでは、隣の月と比べるだけでは調子の良し悪しが分かりません。そこで、4級で学んだ 前年同月比 の出番です。去年の同じ月と比べれば、季節の波の影響を除けます。計算の土台は、これも4級で学んだ増減率です。

増減率(%)=比較する時点の値−もとの時点の値もとの時点の値×100\text{増減率(%)} = \frac{\text{比較する時点の値} - \text{もとの時点の値}}{\text{もとの時点の値}} \times 100

分子は「どれだけ増えたか」、分母は「もとの値」です。言葉で言うと、もとの値の何%ぶん増えたかを表します。

具体的に見てみましょう。あるアイス店の売上が、次のようだったとします。

年月2024年7月2025年6月2025年7月
売上(万円)250160240

2025年7月を2つの方法で比べます。

【2つの比べ方】

  • 前月比: (240 − 160) ÷ 160 × 100 = 50 より、50%の増加
  • 前年同月比: (240 − 250) ÷ 250 × 100 = −4 より、4%の減少

同じ240万円でも、前月と比べれば大幅な増加で、去年と比べれば減少です。この店の調子を表すのは、季節の波を除いた前年同月比のほうです。

試験のポイント:季節変動のあるデータの比較では、前月比より前年同月比が適切です。

もう1つ、グラフの見方にも注意があります。縦軸の目盛りが0から始まっていないと、わずかな変化でも大きく見えます。時系列グラフを読むときは、線の形だけでなく、軸の数字も確かめましょう。

以上が、時系列グラフの読み方についての解説です。

指数:基準を100にそろえて比べる

次に、指数について説明します。

指数 は、ある時点の値を基準の100として、他の時点の値を表した数です。公式で書くと、次のようになります。

指数=比較時点の値基準時点の値×100\text{指数} = \frac{\text{比較時点の値}}{\text{基準時点の値}} \times 100

基準にする時点を 基準時点 と言います。イメージは、徒競走のスタートラインです。走る人の位置がばらばらだと、誰が速いのか分かりません。全員のスタートを100にそろえると、そこからの伸びだけを比べられます。

例えば、2020年に800円だったラーメンが2025年に920円に、200円だった牛乳が250円になったとします。

  • ラーメン: 920 ÷ 800 × 100 = 115
  • 牛乳: 250 ÷ 200 × 100 = 125

値上がりの金額はラーメンのほうが大きいですが、指数で比べると、値上がりの割合は牛乳のほうが大きいと分かります。このように、水準や単位の違うものの変化を比べられるのが、指数の強みです。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。ニュースでよく聞く 消費者物価指数 は、たくさんの品目の値段を、家計で使う金額の割合に応じた重みをつけて1つにまとめた指数です。物価という見えないものの状態を測る目印になります。このような、状態を判断する目印となる数値を 指標 と呼びます。指数は、代表的な指標の1つです。

3級の指数の問題では、次の2点が問われます。

1. ポイントと%は別もの

指数の差は「ポイント」で表します。例えば、指数が120から132に上がったとします。差は12ポイントですが、上昇率は (132 − 120) ÷ 120 × 100 = 10 より、10%です。12%ではありません。100を基準にした目盛りの差と、直前の値に対する割合は、別の数です。

2. 基準時点は変えられる

指数の基準時点を別の年に変えたいときは、すべての指数を新しい基準時点の指数で割って、100倍します。もとの金額が分からなくても計算できます。

例題:指数を読み取る

ある店の年間売上の指数(2020年 = 100)は、次のとおりでした。

年20202021202220232024
指数100104110121132

(1) 2024年の売上は2020年の何%増しでしょうか? (2) 2023年から2024年の上昇率は約何%でしょうか? (3) 2022年を100とすると、2024年の指数はいくつでしょうか?

【解き方】

  1. 基準の2020年が100なので、132 − 100 = 32 より、32%増し
  2. 直前の値で割る: (132 − 121) ÷ 121 × 100 ≒ 9.1 より、約9.1%
  3. 新しい基準で割る: 132 ÷ 110 × 100 = 120

(2) は「11ポイント上昇」と「約9.1%上昇」の違いに注意しましょう。基準時点と比べるときだけ、ポイントの差がそのまま%になります。

試験のポイント:指数どうしの変化率は、指数の差ではなく、比で計算します。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 1年目に10%、2年目に20%増えたとき、2年で 1.1 × 1.2 = 1.32 倍です。1年あたりの平均の伸びは15%ではありません。同じ率を2回掛けて1.32になる数は1.32の平方根で、約1.149なので、約14.9%です。このように掛け算でならす平均を幾何平均と呼びます。

以上が、指数についての説明です。

移動平均:ギザギザをならして流れを見る

最後に、移動平均を見ていきましょう。

移動平均 は、連続するいくつかの値の平均を、1時点ずつずらしながら求めたものです。平均に使う値の個数を 項数 と言います。

毎日体重を量る場面を考えてください。1日ごとの数字は、水分や食事で上下します。そこで「直近の数日の平均」を毎日計算すれば、やせているのか太っているのかという流れが見えてきます。連続する数日分だけが見える窓を、1日ずつ右へ滑らせていくイメージです。

3項移動平均の公式は、次のとおりです。

yˉt=yt−1+yt+yt+13\bar{y}_t = \frac{y_{t-1} + y_t + y_{t+1}}{3}

yty_t は時点 tt の値、yˉt\bar{y}_t は時点 tt の移動平均です。言葉で言うと、前の時点・その時点・次の時点の3つを平均して、真ん中の時点に置きます。

具体的に見てみましょう。

月1234567
売上(万円)12181521241827
3項移動平均−1518202123−

2月の値は (12 + 18 + 15) ÷ 3 = 15、3月の値は (18 + 15 + 21) ÷ 3 = 18 です。もとの売上は上がったり下がったりしていますが、移動平均は 15, 18, 20, 21, 23 と、右肩上がりの流れをはっきり示しています。

ただし、1月と7月には値がありません。前か後ろの値が足りないからです。一般に、nn 個のデータの kk 項移動平均は、n−k+1n - k + 1 個になります。

では、項数はどう決めればよいのでしょうか?

【項数の選び方】

  • 項数を増やす: 線はなめらかになるが、急な変化に鈍くなり、両端で失う値が増える
  • 項数を減らす: 変化に敏感だが、ギザギザが残りやすい
  • 季節変動を消したい: 周期と同じ項数にする。四半期データなら4項、月次データなら12項

最後の点が、特に重要です。周期と同じ項数なら、どの窓にも春夏秋冬が1つずつ入るので、季節の波が打ち消されます。

ある店の四半期ごとの売上で確かめてみましょう。

四半期12345678
売上(万円)3050402034544424

4項移動平均は 35, 36, 37, 38, 39 となり、波が消えて、1期に1万円ずつ伸びる傾向変動が見えました。一方、3項移動平均は約 40, 36.7, 31.3, 36, 44, 40.7 で、波が残ったままです。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 4項のように項数が偶数だと、平均の位置が2つの時点の間に来ます。隣り合う移動平均をさらに平均して、時点にそろえる方法があります。また、ニュースの「直近7日間の平均」は、真ん中ではなく最新の時点に平均を置く書き方です。

例題:移動平均を求める

ある店の7日間の来店者数は、41, 35, 38, 46, 40, 52, 44 人でした。5項移動平均はいくつ求まり、最初の値と最後の値はいくらでしょうか?

【解き方】

  1. 個数を求める: 7 − 5 + 1 = 3 個
  2. 最初の5日を平均する: (41 + 35 + 38 + 46 + 40) ÷ 5 = 40
  3. 最後の5日を平均する: (38 + 46 + 40 + 52 + 44) ÷ 5 = 44

答えは、3個求まり、最初が40人、最後が44人です。

試験のポイント:移動平均はデータのギザギザをならし、傾向変動を見やすくします。その代わり、両端の値は求まりません。

以上が、移動平均についての説明です。

細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「指数は基準をそろえる、移動平均は波をならす」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は時系列データの読み方として、時系列グラフ、指数、移動平均について紹介しました。時間とともに動く数字は、それだけを見ても意味が分かりません。「何と比べるか」と「どの動きを見たいのか」を決めて、はじめて読めるようになります。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 時系列データは、傾向変動・季節変動・循環変動・不規則変動が重なってできている。
  • 季節の波があるデータは、前月比より前年同月比で比べる。
  • 指数は基準時点を100にそろえる道具。指数どうしの変化率は比で計算する。
  • 移動平均は窓を滑らせて平均する道具。周期と同じ項数にすると季節の波が消える。

キーワードのおさらい

  • 時系列グラフ: 横軸に時間をとり、値の変化を折れ線で表したグラフ
  • 指数: 基準時点の値を100として他の時点の値を表した数
  • 指標: 状態を判断するための目印となる数値
  • 移動平均: 連続する値の平均を1時点ずつずらして求めたもの
  • 項数: 移動平均で平均に使う値の個数

さて、移動平均では平均の力を借りてギザギザをならしました。では、その平均そのものは、どこまで使いこなせているでしょうか? 人数の違う2つのクラスの平均を、そのまま足して2で割ってよいのでしょうか?

次回は、「代表値とその利用法」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. ある商品の売上は2020年に500万円、2024年に640万円だった。2020年を基準時点(100)とするとき、2024年の指数として正しいものはどれか。
問2. ある指数が150から165に上がった。このときの説明として正しいものはどれか。
問3. 次のデータの3項移動平均を時間順に求めたとき、最後の値として正しいものはどれか。4, 7, 10, 9, 14
問4. 毎年同じパターンの季節変動がある月次の売上データから、長期的な傾向を見るための方法として、最も適切なものはどれか。
問5. 2015年を100とした指数が、2020年に125、2025年に150だった。2020年を100に変えたとき、2025年の指数として正しいものはどれか。