3級-11 データ分析の基本
2変数の散らばり — 共分散と相関係数
- 共分散
- 相関係数
はじめに
「勉強時間が長い人ほど、テストの点も高いって本当?」
こう聞かれたら、どう答えますか? 散布図を描けば、点が右上がりに並んでいるかどうかは目で確かめられます。でも、「どれくらい強い関係なのか」を人に伝えるには、見た目の印象だけでは足りません。去年のクラスと今年のクラスで、どちらの関係が強いかを比べることもできません。
実は、散布図の点の並び方は、1つの数で表せます。しかも、その材料は前回の記事で使った偏差です。
そこで登場するのが、今回の主役 共分散 と 相関係数 です。2つの変数がどれだけ一緒に動くかを、数字にする道具です。
前回の記事では、分散と標準偏差で1つの変数の散らばりを表しました。今回の記事では、それを2つの変数に広げて、共分散と相関係数の意味と計算について解説します。
散布図を4つの部屋に分ける
はじめに、関係を数にするためのアイデアについて解説します。
前に学んだ散布図に、 の平均値の縦線と の平均値の横線を引いてみましょう。十字の線で、散布図は4つの部屋に分かれます。
【4つの部屋】
- 右上: も も平均より大きい。偏差はプラス × プラス
- 左下: も も平均より小さい。偏差はマイナス × マイナス
- 左上: は小さく は大きい。偏差はマイナス × プラス
- 右下: は大きく は小さい。偏差はプラス × マイナス
ここがポイントです。 の偏差と の偏差を掛けると、右上と左下の部屋の点はプラスに、左上と右下の部屋の点はマイナスになります。
二人三脚を想像してください。2人の足が同じ向きに出れば前へ進み、逆の向きに出れば転びます。偏差の積も同じで、2つの変数が同じ向きにズレた点はプラスの票を、逆の向きにズレた点はマイナスの票を投じるのです。
右上がりの散布図なら、ほとんどの点が右上と左下の部屋に入るので、積の合計はプラスに大きくなります。右下がりなら、マイナスに大きくなります。全部の部屋にまんべんなく散らばっていれば、プラスとマイナスが打ち消し合って、0に近づきます。
以上が、関係を数にするためのアイデアについての解説です。
共分散:偏差の積を平均する
次に、共分散について説明します。
偏差の積の平均が 共分散 です。公式は次のとおりです。
はデータの組の数、 と は 番目の人の2つの値、 と はそれぞれの平均値です。言葉で言うと、「 の偏差と の偏差を人ごとに掛けて、全部足して、人数で割る」です。
分散の式と見比べてください。分散は偏差を自分自身と掛けましたが、共分散は相手の偏差と掛けます。「共に」散らばる様子を見る分散、というわけです。
具体的に見てみましょう。5人の1日の勉強時間 と、テストの点数 です。
| 人 | x(時間) | y(点) | x の偏差 | y の偏差 | 偏差の積 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 40 | −2 | −20 | 40 |
| 2 | 2 | 60 | −1 | 0 | 0 |
| 3 | 3 | 50 | 0 | −10 | 0 |
| 4 | 4 | 70 | 1 | 10 | 10 |
| 5 | 5 | 80 | 2 | 20 | 40 |
の平均値は3時間、 の平均値は60点です。偏差の積の合計は90なので、共分散は 90 ÷ 5 = 18 です。プラスなので、右上がりの関係があると分かります。
【共分散の符号の意味】
- 正: が大きいほど も大きい傾向。これを 正の相関 と言う
- 負: が大きいほど は小さい傾向。これを 負の相関 と言う
- 0に近い: 直線的な傾向が見られない。これを 無相関 と言う
でも、これには弱点があります。勉強時間の単位を「時間」から「分」に変えてみましょう。 の値がすべて60倍になるので、共分散も60倍の1,080になります。関係の強さは何も変わっていないのに、数字だけが大きくなってしまいました。
つまり、共分散の符号は頼りになりますが、大きさは単位しだいで変わるので、強さの比較には使えないのです。
以上が、共分散についての説明です。
相関係数:単位に左右されない数
続いて、相関係数について解説します。
共分散の弱点は、単位に左右されることでした。それなら、単位の影響を割り算で取り除けばよいのです。共分散をそれぞれの標準偏差で割ったものが 相関係数 です。
は共分散、 と はそれぞれの標準偏差です。言葉で言うと、前回の記事の「標準化」をしてから偏差の積を平均したものと同じです。ものさしをそろえたあとで、息の合い具合を測るイメージです。
先ほどの例で計算してみましょう。
【相関係数の計算】
- の分散: (4 + 1 + 0 + 1 + 4) ÷ 5 = 2
- の分散: (400 + 0 + 100 + 100 + 400) ÷ 5 = 200
- 標準偏差の積:
- 相関係数: 18 ÷ 20 = 0.9
強い正の相関があると言えます。勉強時間の単位を分に変えても、共分散と の標準偏差がどちらも60倍になって打ち消し合うので、相関係数は0.9のままです。
相関係数には、覚えておくべき性質があります。
【相関係数の性質】
- 必ず −1 以上 1 以下の値をとる
- 1 のときはすべての点が右上がりの直線上に、−1 のときは右下がりの直線上に並ぶ
- 単位を変えても値は変わらない
- と を入れ替えても値は変わらない
- どちらかの変数に負の数を掛けると、符号だけが逆になる
数字の読み方の目安は、次のとおりです。絶対の基準ではなく、分野によって変わります。
【相関の強さの目安( の絶対値)】
- 0.7以上: 強い相関
- 0.4〜0.7: 中程度の相関
- 0.2〜0.4: 弱い相関
- 0.2未満: ほとんど相関がない
例題:相関係数を求める
変数 の標準偏差が4、変数 の標準偏差が5、共分散が −12 でした。相関係数はいくつでしょうか? また、 の値をすべて10倍すると、共分散と相関係数はどうなるでしょうか?
【解き方】
- 公式に入れる:
- を10倍すると、共分散は10倍の −120 になる
- の標準偏差も10倍の40になるので、 で変わらない
答えは、相関係数 −0.6、10倍しても相関係数は変わらず、共分散だけが10倍になります。
試験のポイント:単位を変えたり値を正の数倍したりしても、相関係数は変わりません。共分散は変わります。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 共分散と分散を で割って定義しても、分母が打ち消されるので、相関係数の値は同じです。
以上が、相関係数についての解説です。
相関係数の落とし穴
最後に、相関係数を読むときの注意点を見ていきましょう。
便利な相関係数ですが、万能ではありません。1つずつ見ていきましょう。
1. 直線の関係しか測れない
相関係数は、直線定規のようなものです。曲がった関係は測れません。
例えば、部屋の温度と過ごしやすさの点数を調べたとします。温度が10度、15度、20度、25度、30度のとき、点数は2, 4, 5, 4, 2でした。ちょうどよい温度で点数が最も高くなる、はっきりした関係があります。ところが、相関係数を計算すると0です。
つまり、 は「直線的な関係がない」という意味で、「関係がない」という意味ではありません。
2. 外れ値に振り回される
せっかくなので、別の例も見てみましょう。4組のデータ (1, 3), (2, 1), (3, 4), (4, 2) の相関係数は0です。ここに1組だけ (10, 10) を加えると、相関係数は0.9に跳ね上がります。たった1人が、綱引きの結果を決めてしまったのです。
3. 傾きの大きさは表さない
相関係数は、点が直線のまわりにどれだけ集まっているかを表します。直線の傾きが急かどうかは表しません。 の上に並ぶ点も、 の上に並ぶ点も、相関係数は1です。
要するに、相関係数を見るときは、必ず散布図も見るということです。数字は要約にすぎず、形は教えてくれません。
試験のポイント:相関係数が0に近くても、曲線の関係があるかもしれません。散布図で確かめます。
以上が、相関係数の落とし穴についての説明です。
細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「偏差の積で一緒に動く様子をとらえ、標準偏差で割って単位を消したものが相関係数」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は2つの変数の関係を数で表す共分散と相関係数について紹介しました。やっていることは、偏差を掛けて足すという単純な作業です。その結果、散布図の点の並びが −1 から 1 の1つの数になり、違うデータどうしでも比べられるようになりました。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 散布図を平均の十字線で4つの部屋に分けると、偏差の積の符号で点の向きが分かる。
- 共分散は偏差の積の平均。符号は向きを表すが、大きさは単位で変わる。
- 相関係数は共分散を2つの標準偏差で割った値。−1 から 1 の間で、単位に左右されない。
- 相関係数が測るのは直線の関係だけ。 でも曲線の関係はありうる。
- 外れ値の影響が大きいので、必ず散布図も確かめる。
キーワードのおさらい
- 共分散: 2つの変数の偏差の積の平均
- 相関係数: 共分散を2つの標準偏差の積で割った値。−1 以上 1 以下
- 正の相関: 一方が大きいほど他方も大きい傾向
- 負の相関: 一方が大きいほど他方は小さい傾向
- 無相関: 直線的な傾向が見られないこと
さて、ここまでは散らばりを数字で表してきました。しかし今回学んだように、数字だけでは見えない形があります。
次回は、「散らばりのグラフ表現」について紹介します。ヒストグラムや箱ひげ図で、データの姿をもう一度この目で見直します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。