3級-7 データ分析の基本
2変数データの集計 — クロス集計表
- クロス集計表(2元の度数分布表)
はじめに
「合格者の72%が塾に通っていた! だから塾に行けば合格できる?」
こんな広告を見たら、気持ちが動いてしまいますよね。でも、この数字だけでは、塾に通った人のうち何%が合格したのかは分かりません。もともと受験生の多くが塾に通っていたなら、合格者の多くが塾生なのは当たり前です。
実は、2つの項目を一緒に見るときは、「何を全体として割合を出すのか」で、数字の意味がまるで変わります。
そこで登場するのが、今回の主役 クロス集計表 です。4級では、クロス集計表の見方と、行比率と列比率を学びました。前回の記事では、1つの変数を度数分布表にまとめました。今回の記事では、2つの変数を一度に数える 2元の度数分布表 としてクロス集計表を作り直し、数字の向きをまちがえずに読み取る方法について解説します。
クロス集計表を作る
はじめに、クロス集計表の作り方について解説します。
クロス集計表(cross table) は、2つの変数の値の組み合わせごとに、度数を数えた表です。前回の度数分布表が1列の棚だとすれば、クロス集計表は、縦と横に区切られた格子状の棚です。靴箱のように、縦の位置と横の位置の両方で入る場所が決まります。
このため、2元の度数分布表 とも呼ばれます。「2元」は、2つの変数で分けるという意味です。
具体的に見てみましょう。10人の生徒の、部活の種類と朝食の習慣を調べました。
| 生徒 | 部活 | 朝食 |
|---|---|---|
| 1 | 運動部 | 毎日 |
| 2 | 文化部 | 毎日 |
| 3 | 運動部 | 毎日 |
| 4 | 運動部 | ときどき |
| 5 | 文化部 | ときどき |
| 6 | 文化部 | 毎日 |
| 7 | 運動部 | 毎日 |
| 8 | 文化部 | ときどき |
| 9 | 運動部 | 毎日 |
| 10 | 文化部 | ときどき |
【クロス集計表の作り方】
- 一方の変数の値を行に、もう一方の変数の値を列に並べる
- 1人ずつ、組み合わせのマスに印を付けて数える
- 行ごと、列ごとの合計を端に書く
- 全体の合計が人数と一致するか確かめる
できあがった表は、次のとおりです。
| 部活 | 毎日 | ときどき | 合計 |
|---|---|---|---|
| 運動部 | 4 | 1 | 5 |
| 文化部 | 2 | 3 | 5 |
| 合計 | 6 | 4 | 10 |
表の中のマスの1つ1つを セル と呼びます。右端と下端の合計は 周辺度数 と言います。周辺度数は、それぞれ1つの変数だけで数えた度数と同じです。運動部5人、文化部5人というのが、部活だけの度数分布表にあたります。
表の縦の項目と横の項目は入れ替えても構いません。ただし、原因と考えるものを行に置き、結果と考えるものを列に置くと、後で比率を読みやすくなります。
以上が、クロス集計表の作り方についての解説です。
3つの比率と読み取り
次に、クロス集計表の比率の読み方について説明します。
人数が違うグループを比べるには、度数のままではなく比率に直します。ここで、4級で学んだ行比率と列比率が活躍します。比率には3種類あります。
【クロス集計表の3つの比率】
- 全体比率: セルの度数 ÷ 全体の合計
- 行比率: セルの度数 ÷ その行の合計
- 列比率: セルの度数 ÷ その列の合計
要するに、「分母を何にするか」が違います。
冒頭の塾の例で計算してみましょう。受験生200人の結果が、次のようだったとします。
| 合格 | 不合格 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 塾あり | 72 | 48 | 120 |
| 塾なし | 28 | 52 | 80 |
| 合計 | 100 | 100 | 200 |
塾ありで合格した72人のセルを、3つの見方で読みます。
| 比率 | 計算 | 読み方 |
|---|---|---|
| 全体比率 | 72 ÷ 200 = 0.36 | 受験生全体の36%が「塾あり・合格」 |
| 行比率 | 72 ÷ 120 = 0.60 | 塾に通った人の60%が合格 |
| 列比率 | 72 ÷ 100 = 0.72 | 合格者の72%が塾に通っていた |
同じ72人なのに、36%、60%、72%と3つの数字が出ました。広告が使ったのは、一番大きく見える列比率です。
では、塾の効果らしきものを見たいときは、どの比率を見ればよいでしょうか? 答えは行比率です。「塾に通った人のうち何%が合格したか」と「通わなかった人のうち何%が合格したか」を比べます。
塾あり: 72 ÷ 120 = 60%、塾なし: 28 ÷ 80 = 35%
この25ポイントの差が、比べるべき数字です。比べたいグループを分母に置くのが原則です。
もちろん、これは観察研究なので、差のすべてが塾のおかげとは言えません。実験の記事で学んだように、もともとの学習意欲の違いが混ざっている可能性があります。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。「交通事故の7割は晴れの日に起きている」という話があったとします。晴れの日は危険なように聞こえますよね。しかし、これは事故を分母にした比率です。晴れの日がもともと多ければ、事故が晴れの日に多いのは当然です。危険かどうかを知るには、「晴れの日1日あたりの事故件数」と「雨の日1日あたりの事故件数」のように、天気を分母にして比べる必要があります。
ここがポイントです。「AのうちBの割合」と「BのうちAの割合」は、まったく別の数字です。
例題:比率の向きを見分ける
ある町の200人に、自転車に乗るかどうかと、ヘルメットを持っているかを聞きました。
| ヘルメットあり | ヘルメットなし | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 自転車に乗る | 30 | 90 | 120 |
| 乗らない | 10 | 70 | 80 |
| 合計 | 40 | 160 | 200 |
「自転車に乗る人のうち、ヘルメットを持つ人の割合」と、「ヘルメットを持つ人のうち、自転車に乗る人の割合」を、それぞれ求めましょう。
【解き方】
- 前者の分母は「自転車に乗る人」: 30 ÷ 120 = 0.25
- 後者の分母は「ヘルメットを持つ人」: 30 ÷ 40 = 0.75
答えは、25%と75%です。「〜のうち」の「〜」が分母になります。問題文のこの言葉に線を引くと、まちがえません。
試験のポイント:比率の問題は、「〜のうち」を見つけて分母を決めます。行比率と列比率の取り違えは、選択肢の定番です。
以上が、比率の読み方についての説明です。
2つの変数に関連はあるか
続いて、2つの変数の関連の見方について解説します。
関連がある とは、一方の変数の値によって、もう一方の比率が変わることです。逆に、どの行でも行比率がそろっていれば、関連はないと考えます。
冒頭の塾の表を、次のように変えてみましょう。
| 合格 | 不合格 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 塾あり | 60 | 60 | 120 |
| 塾なし | 40 | 40 | 80 |
| 合計 | 100 | 100 | 200 |
行比率は、塾ありも塾なしも50%です。全体の合格率も50%です。この場合、塾の有無と合否には関連がないと読み取れます。
一方で、度数だけを見ると、合格者は塾ありのほうが60人と多いですよね。これは塾ありの人数が多いだけです。度数ではなく比率で見ることの大切さが分かります。
前々回のモザイク図で言えば、横線がまっすぐ通っている状態です。クロス集計表は数字で、モザイク図は形で、同じことを見ています。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 関連の強さを数で確かめる方法は、2級で学ぶカイ二乗検定につながります。また、全体で見た比率の大小が、グループに分けて見ると逆転することがあります。集計の前に、第3の変数がないかも考えるとよいでしょう。
以上が、関連の見方についての解説です。
量的変数のクロス集計表
最後に、量的変数でクロス集計表を作る方法を見ていきましょう。
ここまでの例は質的変数でした。量的変数でも、度数分布表と同じように階級に分ければ、クロス集計表が作れます。前々回の散布図を、方眼に区切ってマスごとに点を数えたものだと考えてください。
具体的に見てみましょう。40人の数学と英語の得点を、3つの階級に分けて数えました。
| 数学 \ 英語 | 0〜39点 | 40〜69点 | 70〜100点 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 0〜39点 | 6 | 3 | 1 | 10 |
| 40〜69点 | 4 | 12 | 4 | 20 |
| 70〜100点 | 0 | 5 | 5 | 10 |
| 合計 | 10 | 20 | 10 | 40 |
左上から右下への斜めのマスに、度数が集まっていますね。これは、数学の得点が高い人ほど英語の得点も高い傾向を示します。表では数学の得点が下へ行くほど高くなるので、散布図の右上がりと同じ意味です。
条件を満たす人数は、マスを足し合わせて求めます。
例題:2元の度数分布表を読む
先ほどの40人の表について、数学も英語も40点以上の人は何人でしょうか? また、それは全体の何%でしょうか?
【解き方】
- 数学40点以上の行は、40〜69点と70〜100点の2行
- 英語40点以上の列は、40〜69点と70〜100点の2列
- 4つのセルを足す: 12 + 4 + 5 + 5 = 26
- 全体で割る: 26 ÷ 40 = 0.65
答えは、26人で65%です。
例題:欠けたセルを埋める
次の表で、アとイに入る値を求めましょう。
| 犬派 | 猫派 | どちらでもない | 合計 | |
|---|---|---|---|---|
| 1組 | 14 | ア | 6 | 30 |
| 2組 | イ | 15 | 5 | 35 |
| 合計 | 29 | 25 | 11 | 65 |
【解き方】
- 1組の行から: 30 − 14 − 6 = 10 なので、アは10
- 2組の行から: 35 − 15 − 5 = 15 なので、イは15
- 列の合計で検算する: 10 + 15 = 25、14 + 15 = 29 で一致する
答えは、アが10、イが15です。行でも列でも合計が使えるので、穴埋めは必ず検算ができます。
以上が、量的変数のクロス集計表についての説明です。
細かい呼び方を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「比率は分母を決めてから読む」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は2変数のデータをクロス集計表にまとめ、読み取る方法について紹介しました。同じセルからでも、分母を変えるだけで違う数字が出てきます。人を動かす数字を見たときは、「何のうちの何%か」を確かめる習慣をつけましょう。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- クロス集計表は格子状の棚。2つの変数の組み合わせごとに度数を数える。
- 比率には全体比率、行比率、列比率の3種類があり、分母が違う。
- 「〜のうち」の「〜」が分母。グループを比べるときは、比べたいグループを分母に置く。
- 行比率がどの行でもそろっていれば、2つの変数に関連はない。
- 量的変数も、階級に分ければクロス集計表にできる。
キーワードのおさらい
- クロス集計表(2元の度数分布表): 2つの変数の組み合わせごとに度数を数えた表
- セル: 表の中の1つ1つのマス
- 周辺度数: 行ごと、列ごとの合計
- 全体比率: セルの度数を全体の合計で割った値
- 行比率: セルの度数をその行の合計で割った値
- 列比率: セルの度数をその列の合計で割った値
さて、ここまでの表やグラフは、ある時点のデータを切り取ったものでした。では、売上や物価のように、時間とともに動き続けるデータはどう読めばよいでしょうか?
次回は、「時系列データ」について、指数と移動平均を紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。