3級-1 データ分析の基本
データの基礎知識 — 変数と4つの尺度
- 量的変数
- 質的変数
- 名義尺度
- 順序尺度
- 間隔尺度
- 比例尺度
はじめに
「血液型を番号にしたら、平均が出せるんじゃない?」
例えば、クラスのアンケートで、血液型を入力しやすいように A型を1、B型を2、O型を3、AB型を4と番号で集めたとします。5人の回答が 1, 1, 2, 3, 4 だったとしましょう。電卓に入れると、平均は2.2と出ます。
でも、「このグループの平均血液型は2.2です」と言われても、何のことか分かりませんよね。計算は合っているのに、結果には意味がないのです。
実は、データには「やってよい計算」と「やっても意味がない計算」があります。数字で書かれているからといって、足したり割ったりしてよいとは限りません。
そこで登場するのが、今回の主役 尺度 です。尺度とは、データの値がどんな性質の「ものさし」で測られているかを表す分類です。ものさしの種類が分かれば、そのデータに何をしてよいかが決まります。
4級では、データを量的データと質的データに分けました。今回から始まる3級では、この分類をもう一段細かくします。今回の記事では、変数の種類と、名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度 の4つの尺度について解説します。
変数:量的変数と質的変数
はじめに、変数という言葉について解説します。
変数(variable) は、調べる相手ごとに値が変わる項目のことです。クラスの名簿を思い浮かべてください。1行が1人の生徒で、身長や血液型の列が並んでいます。この「列」の1つ1つが変数です。
| 生徒 | 身長(cm) | 血液型 | 通学時間(分) |
|---|---|---|---|
| 1 | 158 | A | 15 |
| 2 | 171 | O | 30 |
| 3 | 164 | A | 10 |
変数は、値の性質で2つに分かれます。
【変数の2つの種類】
- 量的変数: 身長や通学時間のように、数量を表す変数
- 質的変数: 血液型や部活のように、種類を表す変数。カテゴリ変数とも呼ぶ
4級の量的データと質的データを、列の名前として言い直したものだと考えてください。
ここで注意が必要です。数字で書かれていても、質的変数のことがあります。例えば、サッカーの背番号です。10番と20番の選手がいても、平均して「15番ぶんの選手」とは言いません。背番号は選手を区別する名札であって、数量ではないからです。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。郵便番号や出席番号も同じです。見分け方はシンプルで、「2つの値を足して2で割ったとき、意味があるか」を考えます。身長なら意味がありますが、郵便番号には意味がありません。
試験のポイント:数字で書かれていても、種類や名札を表すだけなら質的変数です。見た目ではなく、値が何を表しているかで判断します。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 量的変数はさらに、人数や回数のようにとびとびの値をとる離散変数と、身長や時間のように連続した値をとる連続変数に分けられます。
以上が、量的変数と質的変数についての解説です。
質的変数の尺度:名義尺度と順序尺度
次に、質的変数の2つの尺度について説明します。
質的変数は、「順番に意味があるかどうか」で分かれます。1つずつ見ていきましょう。
1. 名義尺度:名札として区別する
名義尺度(nominal scale) は、値が区別のためだけにある尺度です。名札のイメージです。血液型、都道府県、背番号、郵便番号がこれにあたります。
名札は「同じか、違うか」しか教えてくれません。A型とB型のどちらが大きいとは言えませんし、並べ替えても意味がありません。できるのは、種類ごとの人数を数えることと、最も多い値、つまり最頻値を見ることです。
冒頭の血液型の平均2.2に意味がなかったのは、名義尺度に足し算をしてしまったからです。番号の振り方を変えれば、平均はいくらでも変わってしまいます。
2. 順序尺度:順番だけ分かる
順序尺度(ordinal scale) は、値の順番に意味がある尺度です。かけっこの順位、成績の A・B・C、「とても満足」から「とても不満」までの5段階評価がこれにあたります。
順序尺度の大切な特徴は、順番は分かるが、間の幅はそろっていないことです。
例えば、マラソンの結果を考えてください。1位と2位の差が1秒で、2位と3位の差が10分だったとしても、順位の上ではどちらも「1つ違い」です。階段の段差がバラバラなのに、段の数だけを数えているようなものです。
順番に意味があるので、順序尺度では中央値が使えます。具体的に見てみましょう。5段階の満足度に7人が 2, 3, 3, 4, 4, 4, 5 と答えたとします。小さい順に並んでいるので、真ん中の4番目を見て、中央値は4です。
補足(ここは読み飛ばしてOK): アンケートの5段階評価の平均を出している報告は、実際にはよく見かけます。1と2の間と4と5の間が等しいと見なす、便宜上の扱いです。尺度の分類としては順序尺度なので、平均は本来の使い方ではないと覚えておきましょう。
以上が、名義尺度と順序尺度についての説明です。
量的変数の尺度:間隔尺度と比例尺度
続いて、量的変数の2つの尺度について解説します。
量的変数は、「0が本当に『何もない』を表すかどうか」で分かれます。これも1つずつ見ていきましょう。
1. 間隔尺度:差には意味があるが、比には意味がない
間隔尺度(interval scale) は、目盛りの間隔がそろっていて、差に意味がある尺度です。ただし、0は「ここを基準にしよう」と決めた約束にすぎません。代表は、摂氏の気温と西暦です。
貯金箱で考えてみましょう。貯金0円は「お金が何もない」状態です。一方で、気温0℃は「温度が何もない」状態ではありません。水が凍る温度を、人間が0と決めただけです。
ここがポイントです。0が約束にすぎないと、「何倍」という比に意味がなくなります。
具体的に見てみましょう。ある日の気温が10℃、次の日が20℃だったとします。「昨日より10℃高い」は正しい表現です。しかし、「昨日の2倍暑い」とは言えません。同じ気温を華氏で表すと50度と68度になり、比は 68 ÷ 50 = 1.36 倍に変わってしまうからです。単位を変えただけで変わる比は、温度そのものの性質を表していません。
西暦も同じです。2000年は1000年の「2倍の年」ではありません。一方で、「1000年の差がある」という言い方は意味を持ちます。
2. 比例尺度:比にも意味がある
比例尺度(ratio scale) は、0が「何もない」を表し、差だけでなく比にも意味がある尺度です。比尺度とも呼ばれます。身長、体重、金額、時間、個数がこれにあたります。
例えば、身長150cmの人は、75cmの子どもの2倍の背丈です。インチに直すと約59.1インチと約29.5インチですが、比はやはり2倍です。単位を変えても比が変わらないのが、比例尺度の特徴です。
要するに、間隔尺度と比例尺度の違いは「2倍と言ってよいか」です。
試験のポイント:摂氏の気温は間隔尺度で、差には意味がありますが比には意味がありません。「0があるから比例尺度」と早合点しないようにしましょう。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 温度でも、理論上これ以上は下がらない温度を0とする絶対温度(ケルビン)は比例尺度です。テストの得点は、0点でも学力がゼロとは言えないので、間隔尺度として扱うのが一般的です。
以上が、間隔尺度と比例尺度についての解説です。
4つの尺度の見分け方
最後に、4つの尺度の見分け方を見ていきましょう。
4つの尺度は、できることが1段ずつ増える階段になっています。名義尺度さんは区別しかできませんが、順序尺度さんは順番も分かり、間隔尺度さんは差も分かり、比例尺度さんは比まで分かります。上の段は、下の段のことがすべてできます。
| 尺度 | 変数 | 区別 | 順番 | 差 | 比 | 使える代表値 | 例 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 名義尺度 | 質的 | ○ | × | × | × | 最頻値 | 血液型、郵便番号 |
| 順序尺度 | 質的 | ○ | ○ | × | × | 最頻値、中央値 | 順位、5段階評価 |
| 間隔尺度 | 量的 | ○ | ○ | ○ | × | 最頻値、中央値、平均値 | 摂氏の気温、西暦 |
| 比例尺度 | 量的 | ○ | ○ | ○ | ○ | 最頻値、中央値、平均値 | 身長、金額 |
迷ったときは、次の3つの質問を順番に当てはめます。
【尺度を見分ける3つの質問】
- 順番に意味があるか? なければ名義尺度
- 値の差に意味があるか? なければ順序尺度
- 0が「何もない」を表し、「2倍」と言えるか? 言えなければ間隔尺度、言えれば比例尺度
例題:尺度を見分ける
次の4つの変数は、それぞれどの尺度でしょうか?
電話番号の市外局番、水泳大会の順位、生まれた年(西暦)、1か月のお小遣いの金額
【解き方】
- 市外局番: 順番に意味がないので、名義尺度
- 水泳大会の順位: 順番に意味はあるが、1位と2位の差と2位と3位の差はそろっていないので、順序尺度
- 生まれた年(西暦): 差に意味はあるが、0年が「何もない」ではないので、間隔尺度
- お小遣いの金額: 0円は「何もない」で、2倍と言えるので、比例尺度
例題:使える代表値を選ぶ
ラーメン店の味の評価を「星1つ」から「星5つ」で集めました。このデータの中心を表す代表値として、尺度の考え方から最も適切なのはどれでしょうか?
【考え方】
- 星の数は順番に意味があるが、星1つと星2つの差が星4つと星5つの差と等しいとは言えない
- したがって順序尺度である
- 順序尺度は順番を使えるので、中央値が適切
答えは中央値です。最頻値も使えますが、平均値は差がそろっていることを前提にした値なので、本来の使い方ではありません。
試験のポイント:「平均値が使えるのは量的変数」「中央値は順序尺度から」「最頻値はどの尺度でも」と整理しておきましょう。
以上が、4つの尺度の見分け方についての説明です。
細かい例を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「名札、順番、差、比の順に、できることが増える」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は変数の種類と4つの尺度について紹介しました。データは数字の顔をしていても、その中身はさまざまです。計算を始める前に「これは何のものさしか」を確かめるだけで、平均血液型のような意味のない数字を防げます。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 変数は名簿の列のようなもので、量的変数と質的変数に分かれる。
- 質的変数は、名札の名義尺度と、順番が分かる順序尺度に分かれる。
- 量的変数は、差に意味がある間隔尺度と、比にも意味がある比例尺度に分かれる。
- 摂氏の0℃は約束の基準なので、「2倍暑い」とは言えない。
- 数字で書かれていても質的変数のことがある。見た目で決めない。
キーワードのおさらい
- 量的変数: 数量を表す変数。身長、通学時間など
- 質的変数: 種類を表す変数。血液型、部活など
- 名義尺度: 区別のためだけにある尺度。血液型、郵便番号など
- 順序尺度: 順番に意味があるが、間隔はそろっていない尺度。順位、5段階評価など
- 間隔尺度: 差に意味があるが、0は約束の基準で比に意味がない尺度。摂氏の気温、西暦など
- 比例尺度: 0が「何もない」を表し、比にも意味がある尺度。身長、金額など
さて、変数の種類が分かったところで、次はそのデータをどう集めるかです。全校生徒の考えを知りたいとき、全員に聞くべきでしょうか、それとも一部に聞けば十分でしょうか?
次回は、「母集団と標本」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。