4級-12 データの読み方の基礎
確率の基礎と樹形図
- 確率
- 樹形図
はじめに
「当たる確率が1%のくじなら、100回引けば必ず当たるよね?」
こう考えたことはありませんか? 実は、これはまちがいです。当たる確率が毎回1%のくじを100回引いても、1回も当たらないことが約37%もあります。100回引くことを3セット行えば、1セットくらいは全部はずれで終わる計算です。
ここで大切なのは、確率は「結果の約束」ではないということです。確率が教えてくれるのは、あくまで起こりやすさの度合いです。
そこで登場するのが、今回の主役 確率 です。そして、確率を求めるときに、すべての場合を数えもれなく書き出すための道具が 樹形図 です。
前回の記事では、時間とともに変わるデータの読み方を学びました。ここまでは、すでに起きたことのデータを見てきましたが、今回は、これから起きることを数で考えます。今回の記事では、確率の意味と求め方、そして樹形図の使い方について解説します。
確率:起こりやすさを数で表す
はじめに、確率の意味と求め方について解説します。
確率(probability) は、あることがらの起こりやすさを、0から1までの数で表したものです。起こりやすさを測る物差しだと考えてください。物差しの0は「絶対に起こらない」、1は「必ず起こる」です。
さいころのように、どの結果の起こりやすさも同じだと考えられるときは、次の式で確率を求められます。
ここで 場合の数 とは、起こり方が全部で何通りあるかという数のことです。また、どの結果も同じ程度に起こると考えられることを、同様に確からしい と言います。名前は難しそうですが、「ずるのないさいころ」というイメージで大丈夫です。
具体的に見てみましょう。さいころを1回投げるとき、起こりうる目は1から6の6通りです。
【さいころの確率】
- 6の目が出る確率: 1通りなので
- 偶数の目が出る確率: 2, 4, 6 の3通りなので
- 6以下の目が出る確率: 6通りすべてなので
- 7の目が出る確率: 0通りなので
確率は、0より小さくなることも、1より大きくなることもありません。計算の結果が1を超えたら、どこかで間違えています。
もう1つ便利なのが、「起こらない確率」です。起こる場合と起こらない場合を合わせると、すべての場合になります。そのため、次の式が成り立ちます。
例えば、さいころで6の目が出ない確率は、 です。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。袋の中に、赤い玉が3個、白い玉が5個、青い玉が2個入っています。1個取り出すとき、すべての場合は10通りです。赤い玉が出る確率は 、赤い玉が出ない確率は です。確率は、 のような分数のほか、0.3 という小数や、30%という百分率でも表します。
試験のポイント:確率は0以上1以下の数です。「少なくとも1回」や「〜でない」の確率は、1から引くと簡単に求められることがよくあります。
以上が、確率の意味と求め方についての解説です。
確率と相対度数:くり返すと見えてくる
次に、確率とデータのつながりについて説明します。
さいころで6の目が出る確率は です。では、6回投げれば、6の目は必ず1回出るのでしょうか? 実際にやってみると、1回も出ないことも、3回出ることもあります。
ところが、投げる回数を増やしていくと、6の目が出た割合、つまり相対度数が、だんだん に近づいていきます。
味見の例えで考えてみましょう。具だくさんのスープをひと口だけ味見しても、たまたま具が入っただけかもしれません。でも、何回も味見をくり返せば、スープ全体の味が分かってきます。確率も、1回では何が起きるか分かりませんが、たくさん集めると一定の値に落ち着きます。
この性質を使うと、さいころのように「同様に確からしい」とは言えないものでも、確率を考えられます。例えば、画びょうを投げて、針が上を向く確率を調べるとしましょう。画びょうの形は上下で違うので、場合の数では計算できません。そこで、実際に投げてデータを取ります。
| 投げた回数 | 10 | 100 | 1,000 | 5,000 |
|---|---|---|---|---|
| 上を向いた回数 | 7 | 58 | 612 | 3,005 |
| 相対度数 | 0.70 | 0.58 | 0.612 | 0.601 |
回数が少ないうちは大きく揺れますが、増えるにつれて0.6くらいで安定してきました。そこで、この画びょうの針が上を向く確率は約0.6と考えます。
天気予報の降水確率も、このつながりで読めます。降水確率30%は、同じ予報が100回出たら、そのうち約30回は雨が降る(1mm以上の降水がある)という意味です。
ここがポイントです。確率は、くり返したときの全体の割合の話です。「これまでの結果を取り返すように次が決まる」ということはありません。例えば、コインを投げて5回続けて表が出たとしましょう。「次はそろそろ裏だ」と思いたくなりますが、コインには記憶がありません。次に裏が出る確率も、やはり です。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 回数を増やすと相対度数が確率に近づく性質を「大数の法則」と言います。名前は覚えなくて大丈夫です。上の級でくわしく学びます。
試験のポイント:確率 は「6回に必ず1回」という意味ではありません。たくさんくり返したときの割合が に近づくという意味です。
以上が、確率と相対度数についての説明です。
樹形図:もれなく、重なりなく数える
続いて、樹形図について解説します。
確率の式を使うには、すべての場合を数える必要があります。ところが、これが意外と難しいのです。頭の中で数えようとすると、数えもれや、同じものの二重カウントが起きてしまいます。
そこで登場するのが 樹形図(tree diagram) です。樹形図は、起こりうる場合を、木の枝が分かれていくように順番に書き出したものです。駅の路線図で、分かれ道を1つずつたどって、行ける終点をすべて確かめるようなイメージです。
具体的に見てみましょう。コインを2回投げるとき、1回目の結果から2回目の結果へ、枝を分けて書きます。
【コインを2回投げるときの樹形図】
- 1回目が表
- 2回目が表 → 表表
- 2回目が裏 → 表裏
- 1回目が裏
- 2回目が表 → 裏表
- 2回目が裏 → 裏裏
枝の先は4つなので、すべての場合は4通りです。ここで、「表が2回」「表と裏が1回ずつ」「裏が2回」の3通りと数えてはいけません。「表裏」と「裏表」は別の結果です。したがって、確率は次のようになります。
【コインを2回投げるときの確率】
- 2回とも表: 1通りなので
- 表と裏が1回ずつ: 2通りなので
- 2回とも裏: 1通りなので
樹形図を見ると、枝の分かれ方が規則的なことにも気づきます。1回目に2本、それぞれから2本に分かれるので、2 × 2 = 4 通りです。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。シャツが3枚、ズボンが2本あるとき、組み合わせは何通りでしょうか? シャツごとに2本へ枝が分かれるので、3 × 2 = 6 通りです。どの枝も同じ本数に分かれるときは、樹形図を全部書かなくても、かけ算で数えられます。
試験のポイント:コイン2枚の「表と裏が1枚ずつ」の確率は ではなく です。場合を数えるときは、1枚目と2枚目を区別します。
以上が、樹形図についての解説です。
樹形図と表で確率を求める
最後に、樹形図を使って、試験に出る形の確率を求めてみましょう。
手順はいつも同じです。
【確率の求め方】
- 樹形図や表で、すべての場合を書き出す
- 求めたいことがらに当てはまるものを数える
- 確率の式に当てはめる
例題:コインを3回投げる
コインを3回投げるとき、表がちょうど2回出る確率と、少なくとも1回は表が出る確率を求めましょう。
【解き方】
- すべての場合を数える: 2 × 2 × 2 = 8 で8通り
- 表がちょうど2回を数える: 表表裏、表裏表、裏表表 の3通り
- 確率を求める:
- 少なくとも1回は表の確率: 「1回も表が出ない」は裏裏裏の1通りなので、
答えは、表がちょうど2回が 、少なくとも1回は表が です。
例題:くじを順番に引く
3本のくじのうち、1本だけが当たりです。AさんとBさんが、この順に1本ずつ引きます。引いたくじは戻しません。先に引くほうが有利でしょうか?
当たりを「当」、はずれを「は1」「は2」として、樹形図を書きます。
【くじの樹形図】
- Aさんが当 → Bさんは は1 か は2
- Aさんが は1 → Bさんは 当 か は2
- Aさんが は2 → Bさんは 当 か は1
枝の先は6通りです。Aさんが当たりを引くのは2通りなので、確率は です。Bさんが当たりを引くのも2通りなので、確率は です。
答えは、「どちらも で、有利不利はない」です。先に引くほうが得に感じますが、樹形図で数えると、くじ引きは順番によらず公平だと分かります。はずれくじを2本に区別して書くのがコツです。
例題:2個のさいころを投げる
大小2個のさいころを投げるとき、目の和が7になる確率を求めましょう。
2個のさいころでは、樹形図の枝が多くなるので、大の目を縦、小の目を横にとった表で考えます。表のマスは 6 × 6 = 36 個で、1マスが1通りの結果です。
【解き方】
- すべての場合を数える: 6 × 6 = 36 で36通り
- 和が7の組を数える: (大, 小)が (1, 6)、(2, 5)、(3, 4)、(4, 3)、(5, 2)、(6, 1) の6通り
- 確率を求める:
答えは です。大が1で小が6の場合と、大が6で小が1の場合は別のマスになることに注意しましょう。
以上が、樹形図と表を使った確率の求め方についての解説です。
細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「すべての場合をもれなく書き出してから、当てはまるものを数える」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は起こりやすさを数で表す確率と、すべての場合を数える樹形図について紹介しました。確率は結果の約束ではなく、くり返したときの割合です。そして、確率を正しく求める鍵は、難しい計算よりも、もれなく数えることにあります。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 確率は起こりやすさの物差し。0は絶対に起こらない、1は必ず起こる。
- 同様に確からしいときは、当てはまる場合の数を、すべての場合の数で割る。
- 起こらない確率は、1から起こる確率を引いて求める。
- くり返すと、相対度数は確率に近づく。ただし、コインに記憶はない。
- 樹形図は枝分かれで書き出す道具。「表裏」と「裏表」は別に数える。
キーワードのおさらい
- 確率: あることがらの起こりやすさを0から1までの数で表したもの
- 場合の数: 起こり方が全部で何通りあるかという数
- 同様に確からしい: どの結果も同じ程度に起こると考えられること
- 樹形図: 起こりうる場合を、枝分かれの形で順番に書き出したもの
さて、これで4級の範囲はひと通り終わりです。ここまでお疲れさまでした。
問いの立て方からデータの集め方、表とグラフ、代表値と散らばり、2つの項目の関係、時系列、そして確率まで、データを読むための基本の道具がそろいました。
3級では、標準偏差、相関係数、確率分布を学び、一部のデータから全体を推測する入口まで進みます。冒頭のくじの約37%も、3級で学ぶ「独立な試行」を使えば計算できます。
3級の最初の記事では、4級で学んだ量的データと質的データをもう一段くわしく見て、「変数と4つの尺度」について紹介します。
それでは、3級の記事へ進んでいきましょう。