4級-9 データの読み方の基礎
箱ひげ図と四分位範囲
- 四分位範囲
- 箱ひげ図
はじめに
「範囲が同じなら、散らばり方も同じってこと?」
もちろん、そんなことはありません。例えば、2つのクラスのテストで、どちらも最低点が20点、最高点が100点だったとしましょう。範囲はどちらも80点です。でも、片方はほとんどの人が60点台に集まっていて、もう片方は20点から100点までまんべんなく広がっているかもしれません。
前回の記事では、範囲が端の2つの値しか見ていないという弱点を学びました。では、途中の値まで見たいときは、どうすればよいのでしょうか? 全員の点数を読み上げるのは大変です。
実は、データを小さい順に並べて「4等分」するだけで、この悩みはかなり解決します。区切りの値をいくつか見るだけで、データがどのあたりに集まっているのかが分かるのです。
そこで登場するのが、今回の主役 四分位範囲 と 箱ひげ図 です。四分位範囲は、データの真ん中の半分がどれくらい広がっているかを表す数です。箱ひげ図は、4等分の様子を箱と線で描いたグラフです。
今回の記事では、四分位数の求め方から、四分位範囲の計算、箱ひげ図の読み方、そして箱ひげ図を使ったグループの比べ方までを解説します。
四分位数:データを4等分する
はじめに、データを4等分する四分位数について解説します。
四分位数(quartile) は、データを小さい順に並べて4等分したときの、3つの区切りの値です。
【3つの四分位数】
- 第1四分位数: 小さいほうから約25%の位置にある値
- 第2四分位数: ちょうど真ん中、50%の位置にある値。中央値と同じ
- 第3四分位数: 小さいほうから約75%の位置にある値
背の順に並んだ列を、4つの班に分ける場面を想像してください。班を分けるには、列の3か所に区切りを入れますよね。この区切りの位置に立つ3人が、第1四分位さん、第2四分位さん、第3四分位さんです。どの班にも、ほぼ同じ人数が入ります。
求め方は、前々回に学んだ中央値を3回使うだけです。
【四分位数の求め方】
- データを小さい順に並べる
- 全体の中央値を求める。これが第2四分位数
- 中央値より小さい側(下半分)の中央値を求める。これが第1四分位数
- 中央値より大きい側(上半分)の中央値を求める。これが第3四分位数
データの個数が奇数か偶数かで、下半分と上半分の分け方が少し変わります。1つずつ見ていきましょう。
1. 個数が奇数のとき
10点満点の小テストで、9人の点数が次のようだったとします。
3, 4, 5, 6, 7, 7, 8, 9, 10
9個なので、中央値は5番目の7点です。個数が奇数のときは、中央値そのものは下半分にも上半分にも入れません。
【9個のデータの四分位数】
- 第2四分位数: 5番目の値で 7
- 第1四分位数: 下半分は 3, 4, 5, 6 なので、(4 + 5) ÷ 2 = 4.5
- 第3四分位数: 上半分は 7, 8, 9, 10 なので、(8 + 9) ÷ 2 = 8.5
2. 個数が偶数のとき
次に、10人の1週間の勉強時間を見てみましょう。
2, 4, 5, 7, 8, 10, 12, 13, 15, 20(時間)
10個なので、中央値は5番目と6番目の平均で、(8 + 10) ÷ 2 = 9 です。個数が偶数のときは、前半の5個と後半の5個にちょうど分かれます。
【10個のデータの四分位数】
- 第2四分位数: 9
- 第1四分位数: 下半分は 2, 4, 5, 7, 8 なので、真ん中の 5
- 第3四分位数: 上半分は 10, 12, 13, 15, 20 なので、真ん中の 13
補足(ここは読み飛ばしてOK): 四分位数の決め方にはいくつかの流儀があり、表計算ソフトなどでは少し違う値になることがあります。この記事では、中学校の教科書と同じ「奇数のときは中央値を除いて半分に分ける」方法を使います。問題文に求め方の指定があるときは、それに従いましょう。
以上が、四分位数についての解説です。
四分位範囲:真ん中の半分の広がり
次に、四分位数から求める四分位範囲について説明します。
四分位範囲(interquartile range) は、第3四分位数から第1四分位数を引いた値です。公式で書くと、次のようになります。
第1四分位数と第3四分位数の間には、データの真ん中の約半分が入っています。つまり、四分位範囲は「両端の約25%ずつを切り落として、残った真ん中の半分の広がりを測った値」です。前回の写真の例えで言うと、端にいる人たちをいったん外して、中央に固まっている人たちだけが入る横幅を測るイメージです。
数値を入れて計算してみましょう。
【四分位範囲の計算】
- 小テスト: 8.5 − 4.5 = 4 なので、四分位範囲は4点
- 勉強時間: 13 − 5 = 8 なので、四分位範囲は8時間
ここがポイントです。勉強時間のデータで、いちばん長い20時間の人が60時間だったとしましょう。範囲は 20 − 2 = 18 から 60 − 2 = 58 へ大きく増えます。ところが、第3四分位数は13のままなので、四分位範囲は8のまま動きません。
切り落とした端の部分は計算に使っていないので、端の値がどれだけ飛び抜けても影響しないのです。中央値が平均値より外れ値に強かったのと同じように、四分位範囲は範囲より外れ値に強い尺度です。
試験のポイント:四分位範囲は「第3四分位数 − 第1四分位数」です。最大値や最小値を使わないので、外れ値の影響を受けにくい散らばりの尺度です。
以上が、四分位範囲についての説明です。
箱ひげ図:5つの数を1本の絵にする
続いて、箱ひげ図について解説します。
箱ひげ図(box plot) は、最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値の5つの値を、箱と線で表したグラフです。
【箱ひげ図の描き方】
- 数直線の上に5つの値の位置をとる
- 第1四分位数から第3四分位数までを長方形の箱で囲む
- 箱の中の中央値の位置に線を引く
- 箱の端から最小値まで、箱の端から最大値まで、線を伸ばす
この線が「ひげ」です。箱の長さが四分位範囲に、ひげの端から端までが範囲にあたります。横向きにも縦向きにも描きます。
例えば、勉強時間のデータなら、箱は5時間から13時間まで、箱の中の線は9時間、左のひげは2時間まで、右のひげは20時間までです。
読み方の基本は、「区切られた4つの部分には、それぞれデータの約25%が入っている」ということです。
【箱ひげ図の4つの部分】
- 左のひげ: 最小値から第1四分位数まで。約25%
- 箱の左側: 第1四分位数から中央値まで。約25%
- 箱の右側: 中央値から第3四分位数まで。約25%
- 右のひげ: 第3四分位数から最大値まで。約25%
ここでよくある間違いが、「箱やひげが長い部分ほど、人数が多い」という読み方です。実は逆で、どの部分にも同じくらいの人数が入っています。4つの班の人数は同じで、班が立っている場所の広さだけが違うと考えてください。同じ人数が狭い場所にいれば、そこはデータが密集しています。広い場所にいれば、データはまばらです。
分布の形も読み取れます。右のひげが長く、中央値が箱の左に寄っていれば、右に裾が長い分布です。ヒストグラムの記事で学んだ、右に裾を引く山の形が、箱ひげ図ではこの姿になります。
ただし、箱ひげ図から分からないこともあります。データの個数は読み取れません。また、2つの山があるかどうかも分かりません。そうした形まで見たいときは、ヒストグラムの出番です。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 箱ひげ図には、平均値を「+」などの印で書き加えることがあります。また、外れ値を点で別に描き、ひげをその手前で止める描き方もあります。外れ値の決め方は3級で学びます。
試験のポイント:箱ひげ図の4つの部分には、長さに関係なく、それぞれデータの約25%が入っています。
以上が、箱ひげ図についての解説です。
箱ひげ図でグループを比べる
最後に、箱ひげ図の一番の得意技、グループの比較を見ていきましょう。
箱ひげ図は1本がとても細いので、何本も並べて描けます。ヒストグラムを3つ並べて見比べるのは大変ですが、箱ひげ図ならクラスごと、月ごとの違いが一度に分かります。健康診断の結果表のように、たくさんの情報を要点だけにして横に並べるイメージです。
比べるときは、次の順番で見るのがおすすめです。
【箱ひげ図を比べる順番】
- 中央値の線: どちらの中心が高いか
- 箱の長さ: どちらの真ん中の半分が広がっているか
- ひげの長さ: 端のデータがどこまで伸びているか
例題:箱ひげ図の値を読み取る
あるテストについて、1組と2組(どちらも40人)の箱ひげ図から、次の値を読み取りました。
| 組 | 最小値 | 第1四分位数 | 中央値 | 第3四分位数 | 最大値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1組 | 35 | 50 | 60 | 70 | 90 |
| 2組 | 40 | 55 | 65 | 72 | 85 |
次のうち、正しいものはどれでしょうか?
- ア: 四分位範囲は1組のほうが大きい
- イ: 1組の半数以上が65点以上である
- ウ: 2組で55点未満の人は約20人である
【解き方】
- アを調べる: 1組は 70 − 50 = 20、2組は 72 − 55 = 17。1組のほうが大きいので正しい
- イを調べる: 1組の中央値は60点。60点以上なら約半数と言えるが、65点以上が半数以上とは言えないので誤り
- ウを調べる: 55点は2組の第1四分位数。これより下は約25%で、40人の約25%は約10人。20人は誤り
答えはアです。ちなみに、中央値を比べると2組のほうが5点高く、範囲は1組が55点、2組が45点です。全体として、2組のほうが点数が高く、まとまっていると読み取れます。
試験のポイント:「半数以上が〜点以上」と聞かれたら中央値を、「約4分の1が〜点以下」と聞かれたら第1四分位数を見ます。
以上が、箱ひげ図を使った比較についての解説です。
細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「データを4等分する3つの区切りと、4つの部分には同じくらいの数のデータが入る」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回はデータを4等分して分布を要約する、四分位範囲と箱ひげ図について紹介しました。範囲は両端の2人にしか話を聞きませんでしたが、四分位数は列の途中の3か所にも話を聞きます。たった5つの値で、分布の姿がかなり見えるようになるのです。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 四分位数は、データを4等分する3つの区切りの値。第2四分位数は中央値と同じ。
- 第1四分位数は下半分の中央値、第3四分位数は上半分の中央値として求める。
- 四分位範囲は真ん中の半分の広がり。端の値を使わないので、外れ値に強い。
- 箱ひげ図の4つの部分には、長さに関係なく約25%ずつのデータが入る。
- 箱ひげ図は細いので、たくさんのグループを並べて比べられる。
キーワードのおさらい
- 四分位数: データを小さい順に並べて4等分したときの3つの区切りの値
- 四分位範囲: 第3四分位数から第1四分位数を引いた値
- 箱ひげ図: 最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値を箱と線で表したグラフ
さて、ここまでは1つの項目のデータを見てきました。でも、「学年によって、入っている部活に違いはあるのか?」のように、2つの項目の関係を知りたいこともありますよね。
次回は、2つの項目を同時に見る「クロス集計表」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。