4級-8 データの読み方の基礎
散らばりの尺度 — 最小値・最大値・範囲
- 最小値
- 最大値
- 範囲(レンジ)
はじめに
「平均点は同じ70点なのに、あのクラスとは全然ちがう気がする……」
テストの結果を見て、こう感じたことはありませんか? 実は、この感覚も正しいです。平均値が同じでも、データの中身がまったく違うことはよくあります。
例えば、2つのクラスから5人ずつ選んで、テストの点数を並べたとしましょう。
【2つのクラスの点数】
- Aクラス: 66点、68点、70点、72点、74点
- Bクラス: 30点、55点、70点、95点、100点
平均値を計算すると、どちらも70点です。中央値も、どちらも70点です。代表値だけを見れば、この2つのクラスは同じに見えます。でも、Aクラスはみんなが70点の近くにいるのに、Bクラスは30点の人も100点の人もいます。同じクラスとはとても言えませんよね。
実は、代表値が教えてくれるのはデータの「中心」だけです。データがどれくらい広がっているかは、別の数字で見る必要があります。この広がりのことを 散らばり と呼びます。
そこで登場するのが、今回の主役 範囲 です。範囲とは、データの端から端までの長さを1つの数で表したものです。
前回の記事では、データの中心を表す代表値を学びました。今回の記事では、散らばりを最も単純にとらえる 最小値、最大値、範囲 の求め方と、その弱点について解説します。
最小値と最大値:データの両端を見る
はじめに、最小値と最大値について解説します。
最小値(minimum) はデータの中で最も小さい値、最大値(maximum) はデータの中で最も大きい値です。背の順に並んだとき、列の先頭に立つ人と、いちばん後ろに立つ人の身長だと考えてください。
冒頭の点数で見てみましょう。Aクラスの最小値は66点、最大値は74点です。Bクラスの最小値は30点、最大値は100点です。両端を見るだけで、2つのクラスの違いがはっきり見えてきました。
実は、私たちは毎日この2つの値を使っています。天気予報の「最低気温」と「最高気温」です。「今日の最低気温は22℃、最高気温は31℃」というのは、1日の気温のデータの最小値と最大値を伝えています。朝と昼で何を着るかを決めるには、平均の気温よりも両端のほうが役に立ちますよね。
せっかくなので、表から読み取る例も見てみましょう。次の表は、あるお店の1週間の来店者数です。
| 曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 来店者数(人) | 32 | 28 | 35 | 30 | 41 | 58 | 52 |
最も少ないのは火曜日の28人、最も多いのは土曜日の58人です。したがって、最小値は28人、最大値は58人です。答えるのは「火曜日」や「土曜日」ではなく、28や58という値のほうです。前回の最頻値と同じで、「どこか」と「いくつか」を取り違えないようにしましょう。
以上が、最小値と最大値についての解説です。
範囲:最大値から最小値を引く
次に、両端の値から求める範囲について説明します。
範囲(range) は、最大値から最小値を引いた値です。カタカナで レンジ とも言います。公式で書くと、次のようになります。
イメージは、全員を1枚の写真に収めるのに必要な横幅です。データの1つ1つを数直線の上に立つ人だと思ってください。みんなが近くに固まっていれば、写真の横幅は狭くてすみます。遠くに離れて立っている人がいれば、横幅を広げないと全員が入りません。
具体的に計算してみましょう。
【2つのクラスの範囲】
- Aクラス: 74 − 66 = 8 なので、範囲は8点
- Bクラス: 100 − 30 = 70 なので、範囲は70点
平均値は同じ70点なのに、範囲には8点と70点という大きな差が出ました。つまり、範囲が小さいほどデータはまとまっていて、範囲が大きいほどデータは散らばっています。冒頭のモヤモヤが、ようやく数字になりましたね。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。2軒のラーメン店で、5回の待ち時間を記録しました。
| 回 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
|---|---|---|---|---|---|
| A店(分) | 8 | 10 | 12 | 9 | 11 |
| B店(分) | 2 | 5 | 25 | 3 | 15 |
どちらも平均値は10分です。しかし、範囲はA店が 12 − 8 = 4 で4分、B店が 25 − 2 = 23 で23分です。お昼休みに行くなら、「だいたい10分」と読めるA店のほうが安心ですよね。範囲は、こうした「読みやすさ」の違いも教えてくれます。
計算で気をつけたいのは、マイナスの値が混ざるときです。例えば、冬のある日の最低気温が−3℃、最高気温が8℃なら、範囲は 8 − (−3) = 11 で11℃です。8と3を見て5℃としないようにしましょう。
例題:2つのお店の散らばりを比べる
次の表は、2つのパン屋さんの6日間の売上個数です。どちらのお店のほうが、売上個数の散らばりが大きいでしょうか?
| 日 | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 北店(個) | 45 | 52 | 48 | 50 | 47 | 58 |
| 南店(個) | 30 | 72 | 41 | 65 | 38 | 54 |
【解き方】
- 北店の最小値と最大値を探す: 最小値45個、最大値58個
- 北店の範囲を求める: 58 − 45 = 13
- 南店の最小値と最大値を探す: 最小値30個、最大値72個
- 南店の範囲を求める: 72 − 30 = 42
- 範囲を比べる: 13 より 42 のほうが大きい
答えは南店です。ちなみに、平均値はどちらも50個です。平均値だけを見ていたら、この違いには気づけません。
試験のポイント:範囲は「最大値 − 最小値」で求める1つの数です。日常の言葉のように「66点から74点まで」という区間を答えるのではなく、差の8点を答えます。
以上が、範囲についての説明です。
範囲の弱点:端の2つしか見ていない
最後に、範囲の弱点を見ていきましょう。
範囲は計算がとても簡単で、データの広がりをひと目で伝えられます。でも、これには弱点があります。
【範囲の2つの弱点】
- 外れ値の影響をまともに受ける
- 途中の値がどう並んでいるかは分からない
1つずつ見ていきましょう。
1. 外れ値の影響をまともに受ける
ある人の7日間の通学時間が、次のようだったとします。
20分、21分、22分、22分、23分、24分、25分
範囲は 25 − 20 = 5 で5分です。ところが、最後の日に電車が遅れて、25分が65分になったとしましょう。すると、範囲は 65 − 20 = 45 で45分になります。たった1日の出来事で、範囲が9倍になってしまいました。
写真の例えで言うと、全員が固まって立っているのに、1人だけ遠くに離れた人がいる状態です。その1人を入れるためだけに、写真の横幅を一気に広げることになります。
一方で、前回学んだ中央値は22分のまま動きません。範囲は外れ値そのものを計算に使うので、その影響をまともに受けてしまうのです。
2. 途中の値がどう並んでいるかは分からない
もう1つの弱点は、端の2つ以外の値をまったく見ていないことです。次の2つのデータを比べてください。
【範囲が同じ2つのデータ】
- データC: 10, 50, 50, 50, 50, 50, 90
- データD: 10, 20, 35, 50, 65, 80, 90
どちらも最小値は10、最大値は90なので、範囲は80です。平均値も中央値も50で同じです。それなのに、データCはほとんどの値が50に集まっていて、データDはまんべんなく広がっています。
要するに、範囲はクラスの様子を、列の先頭の人といちばん後ろの人の2人だけに聞いているようなものです。間にいる人たちのことは何も分かりません。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 度数分布表のように階級でまとめたデータでは、元の値が分からないので、最小値、最大値、範囲の正確な値は求められません。「150cm以上155cm未満の階級に2人いる」と分かっても、その2人が何cmなのかは表からは読み取れないためです。
試験のポイント:範囲は最大値と最小値だけで決まります。そのため、外れ値が1つ加わるだけで大きく変わり、範囲が同じでも散らばり方が同じとは限りません。
以上が、範囲の弱点についての解説です。
細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「範囲は端から端までの長さで、端の2つしか見ていない」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回はデータの散らばりを最も単純にとらえる、最小値、最大値、範囲について紹介しました。平均値が同じでも、データの広がりはまったく違うことがあります。中心を見たら、次は広がりも見る。これがデータを読むときの基本の順番です。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 代表値は中心しか教えてくれない。広がりを見るには散らばりの尺度が必要。
- 最小値と最大値は、データの両端の値。天気予報の最低気温と最高気温と同じ考え方。
- 範囲は「最大値 − 最小値」。全員を写真に収めるのに必要な横幅のようなもの。
- 範囲は端の2つしか見ていないので、外れ値に弱く、途中の並びも分からない。
キーワードのおさらい
- 散らばり: データが中心のまわりにどれくらい広がっているかということ
- 最小値: データの中で最も小さい値
- 最大値: データの中で最も大きい値
- 範囲(レンジ): 最大値から最小値を引いた値
さて、範囲は端の2つしか見ていませんでした。では、途中の値の様子まで含めて、データの広がりを表すにはどうすればよいでしょうか?
次回は、データを4等分して分布を要約する「箱ひげ図と四分位範囲」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。