4級-7 データの読み方の基礎
代表値 — 平均値・中央値・最頻値
- 平均値
- 中央値
- 最頻値
はじめに
「平均年収のニュース、高すぎない? まわりにそんな人いないけど……」
ニュースで平均年収の数字を見て、こう感じたことはありませんか? 実は、この感覚はまちがっていません。多くの人の実感と「平均」がズレるのには、はっきりした理由があります。
例えば、仲のいい友達7人に、1か月のお小遣いを聞いたとしましょう。6人は1,000円から3,000円でしたが、1人だけ30,000円もらっていました。このとき、平均を計算すると6,000円になります。でも、6,000円以上もらっているのは、その1人だけです。残りの6人からすれば、「平均なんて全然ちがうじゃん」と言いたくなりますよね。
ここで大切なのは、データの中心を1つの数で表す方法は、平均だけではないということです。
そこで登場するのが、今回の主役 代表値 です。代表値とは、データ全体の特徴を1つの数で代表させた値のことです。クラス全員の代わりに学級委員が前に出るように、たくさんの数字の代わりに1つの数字が前に出るイメージです。
前回の記事では、ヒストグラムで分布の形を見ました。今回の記事では、その分布を1つの数で表す3人の代表選手、 平均値、中央値、最頻値 の求め方と、その使い分けについて解説します。
平均値:全部をならして1つの数にする
はじめに、最もよく使われる平均値について解説します。
平均値 は、すべての値を足して、データの個数で割った値です。公式で書くと、次のようになります。
平均値のイメージは「ならす」です。例えば、高さの違う積み木の山がいくつか並んでいるとします。高いところから低いところへ積み木を移して、全部の山を同じ高さにそろえたとき、そのそろった高さが平均値です。
具体的に見てみましょう。5人のテストの点数が、60点、70点、70点、80点、90点だったとします。
【平均値の計算】
- 全部を足す: 60 + 70 + 70 + 80 + 90 = 370
- 個数で割る: 370 ÷ 5 = 74
したがって、平均値は74点です。
せっかくなので、冒頭のお小遣いでも計算してみましょう。7人のお小遣いは、1,000円、1,500円、2,000円、2,000円、2,500円、3,000円、30,000円でした。
合計は42,000円なので、42,000 ÷ 7 = 6,000 となり、平均値は6,000円です。
ここで、1人だけ飛び抜けた30,000円に注目してください。もしこの人が3,000円だったら、合計は15,000円になり、平均値は約2,143円まで下がります。たった1人の値で、平均値が3倍近くも変わってしまうのです。
これが平均値の弱点です。平均値はすべての値を使うので、飛び抜けて大きい値や小さい値に引っ張られます。綱引きで、1人だけ力の強い人が片側にいると、全体がそちらへズルズル動いてしまうようなものです。
このような、他から大きく離れた値を 外れ値 と呼びます。前回のヒストグラムの記事にも登場した、あの外れ値です。
試験のポイント:平均値は、すべての値を使うぶん、外れ値の影響を強く受けます。
以上が、平均値についての解説です。
中央値:真ん中の人を見る
次に、外れ値に強い中央値について説明します。
中央値 は、データを小さい順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる値です。背の順に並んだとき、列の真ん中に立っている人の身長だと考えてください。
求め方は、データの個数が奇数か偶数かで少しだけ変わります。
【中央値の求め方】
- データを小さい順に並べる
- 個数が奇数のとき: 真ん中の値がそのまま中央値
- 個数が偶数のとき: 真ん中の2つの値の平均が中央値
1つずつ見ていきましょう。
1. 個数が奇数のとき
お小遣いのデータは7個なので、奇数です。小さい順に並べると、次のようになります。
1,000円、1,500円、2,000円、2,000円、2,500円、3,000円、30,000円
真ん中は4番目です。前にも後ろにも3人ずついる位置ですね。したがって、中央値は2,000円です。平均値の6,000円より、ずっと実感に近い値になりました。
ここがポイントです。もし30,000円の人が300,000円になっても、列の順番は変わらないので、中央値は2,000円のままです。中央値が見ているのは「順番」だけで、端の人がどれだけ飛び抜けていても動きません。つまり、中央値は外れ値に強いのです。
2. 個数が偶数のとき
では、データが6個のときはどうでしょうか? 例えば、6人の通学時間が次のようだったとします。
5分、10分、15分、25分、30分、50分
偶数のときは、真ん中に立つ人がいません。3番目の15分と4番目の25分の間が真ん中です。そこで、この2つの値の平均をとります。
(15 + 25) ÷ 2 = 20
したがって、中央値は20分です。データの中に20分の人がいなくても、中央値は20分になります。
例題:中央値を求める
次の8個のデータの中央値を求めましょう。
12, 7, 20, 9, 15, 7, 18, 11
【解き方】
- 小さい順に並べる: 7, 7, 9, 11, 12, 15, 18, 20
- 個数は8個で偶数なので、4番目と5番目を見る: 11 と 12
- 2つの平均をとる: (11 + 12) ÷ 2 = 11.5
答えは11.5です。並べ替えを忘れて、元の順番のまま真ん中を見てしまうのが、よくある間違いです。
試験のポイント:中央値を求めるときは、必ず最初に小さい順に並べ替えます。
以上が、中央値についての説明です。
最頻値:いちばん多い値を見る
続いて、最頻値について解説します。
最頻値 は、データの中で最も多く現れる値です。英語では モード(mode) と言います。ファッションの「モード」と同じ言葉で、「いちばん流行している値」と考えると覚えやすいです。
例えば、靴屋さんが、1週間に売れた靴のサイズを調べたところ、次のようになりました。
| サイズ(cm) | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売れた足数 | 3 | 8 | 12 | 6 | 1 |
表の見方はシンプルです。上の段がサイズ、下の段がそのサイズの売れた数を表しています。いちばん多く売れたのは26cmの12足なので、最頻値は26cmです。12ではなく26が答えになる点に注意しましょう。最頻値は「個数」ではなく「値」のほうです。
靴屋さんにとって、この情報はとても役に立ちます。平均のサイズが25.8cmだと分かっても、25.8cmの靴は作れません。次に何をたくさん仕入れるかを決めるのに必要なのは、「どのサイズが一番売れたか」です。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。クラスで好きな給食を聞いて、カレーが15人、揚げパンが10人、ラーメンが8人だったとします。このとき最頻値はカレーです。「カレー」は足し算も並べ替えもできないので、平均値も中央値も求められません。数字ではないデータの代表値として使えるのは、最頻値だけです。
一方で、最頻値には注意点もあります。同じ値が1つも重ならないデータでは、最頻値は意味を持ちません。また、1位が2つ並ぶと、最頻値が2つになることもあります。お小遣いのデータでは2,000円が2人で、これが最頻値です。
補足(ここは読み飛ばしてOK): 度数分布表のように階級でまとめられたデータでは、最も度数が大きい階級の階級値を最頻値とします。
以上が、最頻値についての解説です。
3つの代表値を使い分ける
最後に、3つの代表値の使い分けを見ていきましょう。
ここまでの内容を、お小遣いのデータでまとめると次のようになります。
| 代表値 | 見ているもの | お小遣いの例 | 外れ値の影響 |
|---|---|---|---|
| 平均値 | すべての値の合計 | 6,000円 | 受けやすい |
| 中央値 | 真ん中の順番 | 2,000円 | 受けにくい |
| 最頻値 | いちばん多い値 | 2,000円 | 受けにくい |
同じデータなのに、平均値だけが大きく離れていますね。どれが正解というわけではありません。代表値は、知りたいことに合わせて選ぶ道具です。
【代表値の選び方】
- 左右に偏りのない山型のデータ: 平均値、中央値、最頻値はほぼ同じ値になるので、平均値でよい
- 飛び抜けた値があるデータ: 実感に近い中央値を使う
- 一番人気を知りたいとき: 最頻値を使う
では、冒頭の平均年収の話に戻りましょう。
年収のデータでは、ほとんどの人が真ん中あたりにいる一方で、ごく少数の人がとても高い年収を受け取っています。この一部の人に平均値が引っ張られるので、平均値は多くの人の実感より高くなります。だから、年収や貯蓄額を見るときは、中央値も合わせて見ることが大切なのです。
このように、右側に長く裾を引いたデータでは、大きい順に 平均値 > 中央値 > 最頻値 と並ぶことが多いです。
例題:どの代表値を使うか
あるお店の1日の来店者の買い物金額を調べました。ほとんどの人は500円前後でしたが、1人だけ50,000円の買い物をしました。「ふつうのお客さんがいくら買うか」を表す代表値として、最も適切なのはどれでしょうか?
【考え方】
- 50,000円の人が外れ値になっている
- 平均値は、この1人に引っ張られて高くなる
- 「ふつうのお客さん」を表したいので、順番だけを見る中央値が適切
答えは中央値です。
試験のポイント:「外れ値がある」「分布の右に裾が長い」と書かれていたら、平均値より中央値が実態に近いと判断します。
以上が、3つの代表値の使い分けについての説明です。
細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「平均値は全部をならす、中央値は順番を見る、最頻値は数の多さを見る」という点だけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回はデータの中心を1つの数で表す代表値について紹介しました。「平均」という言葉はつい万能に感じますが、見ているものが違えば、同じデータからまったく違う数字が出てきます。大切なのは、数字そのものより「どの代表値を見ているのか」を確かめることです。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 平均値は全部をならした値。すべての値を使うので、外れ値に引っ張られる。
- 中央値は小さい順に並べた真ん中の値。順番だけを見るので、外れ値に強い。
- 最頻値は最も多く現れる値。数字ではないデータでも使える。
- 右に裾が長いデータでは、平均値 > 中央値 > 最頻値 と並ぶことが多い。
キーワードのおさらい
- 代表値: データ全体の特徴を1つの数で表した値
- 平均値: すべての値の合計を個数で割った値
- 中央値: 小さい順に並べたときに真ん中にくる値
- 最頻値(モード): データの中で最も多く現れる値
- 外れ値: 他の値から大きく離れた値
さて、代表値はデータの中心を教えてくれますが、それだけでは分からないことがあります。例えば、平均点が同じ70点でも、全員が70点のクラスと、0点と100点が入り混じったクラスは、まったく別物ですよね。
次回は、データの広がりを数字で表す「最小値・最大値・範囲」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。