統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

4級-11 データの読み方の基礎

時系列データの見方・読み方

  • 時系列データ
  • 折れ線グラフ
  • 増減率
  • 指数
  • 移動平均

はじめに

「売上が前の年より20%アップ! ……でも、それって本当にすごいの?」

ニュースでこんな数字を見たとき、すぐに「すごい」と思ってよいのでしょうか? 例えば、その前の年に売上が半分に落ち込んでいたとしたら、20%増えても元の水準にはまったく届いていません。

売上も気温も人口も、時間とともに変わっていきます。実は、こうしたデータは、どの時点と比べるかで見え方ががらりと変わります。だからこそ、専用の読み方を知っておくことが大切です。

そこで登場するのが、今回の主役 時系列データ です。そして、その読み解きを手伝ってくれる3つの道具が、増減率、指数、移動平均 です。

前回の記事では、クロス集計表で2つの項目の関係を見ました。今回の記事では、時系列データの見方と、3つの道具の使い方について解説します。

時系列データ:時間の順に並んだデータ

はじめに、時系列データとは何かについて解説します。

時系列データ(time series data) は、ある項目を時間の順に記録したデータです。毎日の最高気温、毎月のお店の売上、毎年の人口などが当てはまります。

時系列データの特徴は、順番に意味があることです。クラスの点数は名簿の順番を入れ替えても平均値は変わりませんし、データの意味も変わりません。一方で、時系列データは日記のようなものです。ページの順番を入れ替えたら、何が起きたのか分からなくなってしまいますよね。

時系列データを見るときの基本のグラフが、折れ線グラフ です。横軸に時間、縦軸に値をとって点を線でつなぐと、増えているのか、減っているのかがひと目で分かります。

折れ線グラフを見るときは、次の3つに注目します。

【時系列データの見方】

  1. 全体の傾向: 長い目で見て、増えているのか、減っているのか
  2. くり返す上下: 毎年や毎週、同じ時期に現れる上下があるか
  3. 急な変化: 飛び抜けて大きく動いた時点はないか

例えば、アイスクリームの毎月の売上なら、毎年夏に山ができて、冬に谷ができます。これがくり返す上下で、季節によって毎年現れるので 季節変動 と呼びます。せっかくなので、別の例も見てみましょう。お店の毎日の来店者数なら、週末ごとに山ができます。こちらは1週間でくり返す上下です。

なお、折れ線グラフは縦軸の目盛りに注意が必要です。例えば、売上が98万円から102万円へ変わっただけでも、縦軸を95万円から始めて描くと、急に伸びたように見えます。グラフを見たら、線の傾きの前に目盛りを確かめましょう。

以上が、時系列データについての解説です。

増減率:変化を割合で見る

次に、増減率について説明します。

増減率 は、基準となる時点の値に対して、何%増えたか、減ったかを表す値です。公式で書くと、次のようになります。

増減率(%)=比べる時点の値−基準となる時点の値基準となる時点の値×100\text{増減率(\%)} = \frac{\text{比べる時点の値} - \text{基準となる時点の値}}{\text{基準となる時点の値}} \times 100

言葉で言うと、「変化した量を、元の値で割って、100をかける」です。増えたときはプラス、減ったときはマイナスになります。

なぜ、変化した量だけでは足りないのでしょうか? 例えば、同じ100円の値上げでも、300円のジュースと3,000円のケーキでは重みが違いますよね。ジュースは約33%の値上げで、ケーキは約3%の値上げです。増減率は、元の大きさを考えに入れた変化の物差しです。

具体的に計算してみましょう。あるお店の売上が、400万円から440万円になりました。

(440 − 400) ÷ 400 × 100 = 10

したがって、増減率は10%増です。ところが、翌年は売上が10%減ったとします。440万円の10%は44万円なので、売上は396万円です。10%増えて10%減ったのに、元の400万円には戻りません。基準となる値が変わるので、同じ10%でも金額が違うのです。

増減率は、何と比べるかも大切です。

【よく使う比べ方】

  • 前月比: 1か月前と比べる
  • 前年比: 1年前と比べる
  • 前年同月比: 1年前の同じ月と比べる

季節変動があるデータでは、前年同月比が役に立ちます。例えば、アイスクリームの販売数が8月は5,000個、9月は3,500個だったとします。前月比は−30%で、大きく落ち込んだように見えます。でも、前の年の9月が3,200個だったなら、前年同月比は約9.4%増です。涼しくなって減っただけで、売れ行きはむしろ好調だったのです。

例題:増減率を求める

ある遊園地の来場者数は、1年目が500人、2年目が600人、3年目が450人でした。2年目と3年目の前年比の増減率を求めましょう。

【解き方】

  1. 2年目は1年目が基準: (600 − 500) ÷ 500 × 100 = 20
  2. 3年目は2年目が基準: (450 − 600) ÷ 600 × 100 = −25

答えは、2年目が20%増、3年目が25%減です。3年目の割る数が500ではなく600になる点に注意しましょう。

試験のポイント:増減率の分母は、必ず基準となる時点の値です。「何と比べて」の「何」で割ります。

以上が、増減率についての説明です。

指数:基準を100にしてそろえる

続いて、指数について解説します。

指数 は、基準となる時点の値を100として、比べる時点の値を表したものです。

指数=比べる時点の値基準となる時点の値×100\text{指数} = \frac{\text{比べる時点の値}}{\text{基準となる時点の値}} \times 100

イメージは、マラソンのスタートラインをそろえることです。大きさの違う2つのものは、そのままでは伸び方を比べにくいです。そこで、全員を同じ「100」の線に並べて、どれだけ進んだかを見るのです。

具体的に見てみましょう。大きなA店と小さなB店の売上を、1年目を基準にして指数にします。

年1年目2年目3年目
A店の売上(万円)200230260
B店の売上(万円)506575
A店の指数100115130
B店の指数100130150

例えば、A店の3年目は 260 ÷ 200 × 100 = 130 です。売上の金額ではA店がずっと大きいのですが、指数を見ると、伸び方はB店のほうが大きいと分かります。

読み方はシンプルです。指数が130なら基準の1.3倍、つまり基準より30%増です。指数が90なら基準より10%減です。

ここで間違えやすいのが、基準以外の時点どうしの比較です。B店の指数は2年目から3年目へ、130から150になりました。これは20の増加ですが、「20%増」ではありません。増減率は (150 − 130) ÷ 130 × 100 = 約15.4 で、約15.4%増です。指数の差がそのまま%になるのは、基準の100と比べるときだけです。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。ニュースでよく聞く 消費者物価指数 は、ふだんの買い物の値段をまとめて、基準の年を100として表したものです。これが110なら、物の値段が基準の年より全体で10%上がったということです。

例題:指数を読み取る

次の表は、あるお店の売上を、1年目を100とした指数で表したものです。1年目の売上は300万円でした。

年1年目2年目3年目4年目
指数10010411099

3年目の売上と、3年目から4年目の増減率を求めましょう。

【解き方】

  1. 3年目の売上: 300 × 110 ÷ 100 = 330 なので、330万円
  2. 3年目から4年目の増減率: (99 − 110) ÷ 110 × 100 = −10

答えは、3年目の売上が330万円、増減率が10%減です。99 − 110 = −11 から「11%減」としないようにしましょう。

試験のポイント:指数の値は基準を100としたものです。基準以外の時点どうしを比べるときは、増減率の公式で計算し直します。

以上が、指数についての解説です。

移動平均:細かい上下をならす

最後に、移動平均について見ていきましょう。

時系列データが細かく上下をくり返していると、全体として増えているのかが見えにくくなります。そこで使うのが移動平均です。

移動平均(moving average) は、決まった個数の平均を、時点を1つずつずらしながら求めていく方法です。

イメージは、3つ分だけ見える窓です。データの列の上に窓を置いて、窓の中の3つの平均をとります。次に窓を1つ右へずらして、また平均をとります。これをくり返すのです。平均値の記事で学んだ「ならす」を、少しずつ場所を変えながら行うと考えてください。

具体的に見てみましょう。次の表は、あるお店の7か月の売上と、3か月の移動平均です。

月1月2月3月4月5月6月7月
売上(万円)10161319162219
3か月の移動平均−1316161919−

【移動平均の計算】

  1. 1月〜3月の平均: (10 + 16 + 13) ÷ 3 = 13。真ん中の2月の位置に書く
  2. 2月〜4月の平均: (16 + 13 + 19) ÷ 3 = 16。真ん中の3月の位置に書く
  3. 同じように、窓を1つずつずらしていく

元の売上はジグザグに上下していますが、移動平均は13、16、16、19、19と、なだらかに増えています。細かい上下が消えて、全体の傾向が見えてきました。これが移動平均の力です。

計算の結果は、窓の真ん中の時点に書きます。そのため、両端には値がなく、7個のデータから移動平均は5個しか求められません。

平均する個数は、くり返しの長さに合わせるのが基本です。毎日のデータで週末に山ができるなら7日、毎月のデータで季節変動があるなら12か月の移動平均をとります。すると、1回分のくり返しが窓の中にそろうので、上下が打ち消し合って傾向だけが残ります。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 12か月のように平均する個数が偶数のときは、真ん中の時点がなくなるので、もうひと手間かけます。やり方は3級で学びます。

試験のポイント:移動平均は、細かい上下や季節変動をならして、全体の傾向を見るために使います。

以上が、移動平均についての解説です。

細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「増減率は割合で、指数は基準をそろえて、移動平均はならして見る」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は時系列データと、それを読み解く増減率、指数、移動平均について紹介しました。時間とともに変わるデータでは、「いくつか」だけでなく、「何と比べてか」が大切です。比べる相手を確かめる習慣が、数字の印象に振り回されないための第一歩です。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 時系列データは時間の順に並んだデータ。日記のように順番に意味がある。
  • 折れ線グラフでは、全体の傾向、くり返す上下、急な変化を見る。
  • 増減率は変化を元の値で割る。10%増えて10%減っても、元には戻らない。
  • 指数は基準を100にそろえたスタートライン。指数の差と増減率は別物。
  • 移動平均は窓をずらして平均をとり、細かい上下をならす。

キーワードのおさらい

  • 時系列データ: ある項目を時間の順に記録したデータ
  • 折れ線グラフ: 時間とともに変わる値を点と線で表すグラフ
  • 季節変動: 季節によって毎年くり返される上下
  • 増減率: 基準となる時点の値に対して増減した割合
  • 指数: 基準となる時点の値を100として表した値
  • 移動平均: 決まった個数の平均を、時点をずらしながら求める方法

さて、ここまでは、すでに手元にあるデータを読んできました。でも、くじ引きやさいころのように、まだ起きていないことはどう考えればよいでしょうか?

次回は、4級の最後の記事です。起こりやすさを数で表す「確率」と、それを数える道具の「樹形図」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. ある商品の販売数が、先月の250個から今月の300個に増えた。先月に対する増減率として正しいものはどれか。
問2. ある町の人口を、ある年を100とした指数で表すと、5年後は96だった。基準の年の人口が20,000人のとき、5年後の人口として正しいものはどれか。
問3. 指数が、ある年に125、その次の年に150だった。この2年の間の増減率として正しいものはどれか。
問4. 次の5個の時系列データについて、3項の移動平均を求めたときの最初の値として正しいものはどれか。9, 15, 12, 6, 18
問5. 季節によって大きく上下する毎月の売上データから、長い目で見た傾向を読み取りたい。最も適切な方法はどれか。