統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-7 統計数理

連続型分布 — 確率計算への応用

  • 一様分布
  • 正規分布(ガウス分布)
  • 指数分布
  • ガンマ分布
  • ベータ分布
  • コーシー分布
  • 対数正規分布
  • ワイブル分布
  • ロジスティック分布
  • 多変量正規分布

はじめに

「連続型分布の確率密度関数、多すぎて覚えられない……」

1級の範囲に並ぶ連続型分布は10種類です。指数、ワイブル、ガンマ、ベータ、コーシーと、式の形はばらばらに見えます。期待値も分散も全部暗記するとなると、気が遠くなりますよね。

例えば、料理のソースを考えてみましょう。洋食のソースは無数にありますが、料理人が全部を別々に覚えているわけではありません。基本のソースをいくつか作れれば、残りはそこに材料を足した変化形です。

実は、連続型分布も同じです。分布の多くは、一様分布や指数分布の変数変換で作れます。そして、定数やモーメントの計算は、ほとんどがガンマ関数とベータ関数の2つの積分に帰着します。式を暗記しなくても、その場で導けるのです。

そこで登場するのが、今回の主役 核(カーネル)を見抜く という考え方です。確率密度関数の定数を除いた「顔つき」を見て、積分を計算せずに答えを出す技です。

前回の記事では、離散型分布を3つの技で導き直しました。今回の記事では、累積分布関数から作る分布、ガンマ分布とベータ分布、正規分布と対数正規分布、そして多変量正規分布について解説します。

変換で作る分布:一様分布からワイブル分布まで

はじめに、累積分布関数が簡単な式で書ける分布について解説します。

(0,1)(0, 1) の 一様分布 は、期待値 1/21/2、分散 1/121/12 です。変数変換の記事で見たように、UU がこの分布に従うとき、X=F−1(U)X = F^{-1}(U) は累積分布関数 FF の分布に従います。つまり、一様分布は基本のソースです。

【一様分布から作る4つの分布】

分布累積分布関数または生存関数UU からの作り方
指数分布S(x)=e−λxS(x) = e^{-\lambda x}−log⁡(1−U)/λ-\log(1 - U)/\lambda
ワイブル分布S(x)=e−(x/η)mS(x) = e^{-(x/\eta)^m}η{−log⁡(1−U)}1/m\eta\{-\log(1 - U)\}^{1/m}
ロジスティック分布F(x)=1/(1+e−(x−μ)/s)F(x) = 1/(1 + e^{-(x-\mu)/s})μ+slog⁡(U/(1−U))\mu + s\log(U/(1 - U))
コーシー分布F(x)=1/2+(arctan⁡x)/πF(x) = 1/2 + (\arctan x)/\pitan⁡(π(U−1/2))\tan(\pi(U - 1/2))

1つずつ見ていきましょう。

1. 指数分布とワイブル分布

指数分布 は危険率が一定 h(x)=λh(x) = \lambda の分布で、無記憶性をもちます。逆に、S(s+t)=S(s)S(t)S(s + t) = S(s)S(t) を満たす連続な生存関数は、指数分布に限られます。

ワイブル分布 は、指数分布の時間軸を曲げた分布です。TT を平均1の指数分布として X=ηT1/mX = \eta T^{1/m} とします。mm を形状パラメータ、η\eta を尺度パラメータと呼びます。

S(x)=exp⁡(−(xη)m),h(x)=mη(xη)m−1S(x) = \exp\left(-\left(\frac{x}{\eta}\right)^m\right), \qquad h(x) = \frac{m}{\eta}\left(\frac{x}{\eta}\right)^{m-1}

危険率は −log⁡S-\log S の微分から出ます。形状 mm の値で、危険率の振る舞いが変わります。

【形状パラメータと故障の型】

  • m<1m < 1: 危険率が減る。使い始めに壊れやすい初期故障の型
  • m=1m = 1: 危険率が一定。指数分布で、偶発故障の型
  • m>1m > 1: 危険率が増える。古くなるほど壊れやすい摩耗故障の型

例題:ワイブル分布の計算

機械の寿命 XX(年)が、形状 mm、尺度 η\eta のワイブル分布に従う。〔1〕E[Xr]E[X^r] を求めよ。〔2〕m=2m = 2、η=10\eta = 10 のとき、E[X]E[X] を求めよ。〔3〕同じ条件で、P(X>5)P(X > 5) と P(X>10∣X>5)P(X > 10 \mid X > 5) を求めよ。

【解答】

〔1〕X=ηT1/mX = \eta T^{1/m} と E[Ta]=∫0∞xae−x dx=Γ(1+a)E[T^{a}] = \int_0^\infty x^a e^{-x}\, dx = \Gamma(1 + a) より、E[Xr]=ηr Γ(1+r/m)E[X^r] = \eta^r\, \Gamma(1 + r/m) である。

〔2〕E[X]=10 Γ(3/2)=10×π2≈8.86E[X] = 10\, \Gamma(3/2) = 10 \times \dfrac{\sqrt{\pi}}{2} \approx 8.86 である。

〔3〕P(X>5)=e−1/4≈0.779P(X > 5) = e^{-1/4} \approx 0.779 である。P(X>10∣X>5)=S(10)/S(5)=e−1+1/4=e−3/4≈0.472P(X > 10 \mid X > 5) = S(10)/S(5) = e^{-1 + 1/4} = e^{-3/4} \approx 0.472 である。

同じ5年でも、新品がもつ確率より、5年使った機械がもつ確率のほうが低いです。m=2>1m = 2 > 1 なので、摩耗の型です。

2. ロジスティック分布とコーシー分布

ロジスティック分布 は、確率のロジットが xx の1次式になる分布です。FF を解き直すと log⁡F(x)1−F(x)=x−μs\log\dfrac{F(x)}{1 - F(x)} = \dfrac{x - \mu}{s} です。微分すると f=F(1−F)/sf = F(1 - F)/s という形になります。左右対称で平均は μ\mu、分散は π2s2/3\pi^2 s^2/3、尖度は1.2で、正規分布より少し裾が重い分布です。

変数変換の記事の結果から、独立な指数分布の比の対数 log⁡(T1/T2)\log(T_1/T_2) が標準ロジスティック分布に従うことも分かります。U=T1/(T1+T2)U = T_1/(T_1 + T_2) が一様分布なので、U/(1−U)U/(1 - U) の対数になるからです。

コーシー分布 は、f(x)=1/{π(1+x2)}f(x) = 1/\{\pi(1 + x^2)\} の分布です。裾が重すぎて、期待値が存在しません。

∫0∞xπ(1+x2) dx=[log⁡(1+x2)2π]0∞=∞\int_0^\infty \frac{x}{\pi(1 + x^2)}\, dx = \left[\frac{\log(1 + x^2)}{2\pi}\right]_0^\infty = \infty

左右対称だから平均は0、とは言えないのです。一方、パーセント点はつねに存在します。中央値は0、四分位数は ±1\pm 1 です。位置を表すには、順番にもとづく特性値を使います。

以上が、変換で作る分布についての解説です。

ガンマ分布とベータ分布:核を見抜く

次に、2つの積分から生まれる分布について説明します。

ガンマ関数 は Γ(α)=∫0∞xα−1e−x dx\Gamma(\alpha) = \int_0^\infty x^{\alpha-1} e^{-x}\, dx です。部分積分で Γ(α+1)=αΓ(α)\Gamma(\alpha + 1) = \alpha\Gamma(\alpha) が出ます。y=βxy = \beta x と置換すると、次の公式が得られます。

∫0∞xα−1e−βx dx=Γ(α)βα\int_0^\infty x^{\alpha-1} e^{-\beta x}\, dx = \frac{\Gamma(\alpha)}{\beta^\alpha}

この左辺の形 xα−1e−βxx^{\alpha-1} e^{-\beta x} が、ガンマ分布 Ga(α,β)Ga(\alpha, \beta) の核です。確率密度関数は、これを全体の積分で割った f(x)=βαΓ(α)xα−1e−βxf(x) = \dfrac{\beta^\alpha}{\Gamma(\alpha)} x^{\alpha-1} e^{-\beta x} です。

ここがポイントです。ガンマ分布の期待値の積分には、新しい計算は要りません。xrx^r や etxe^{tx} を掛けても核の形は保たれ、α\alpha や β\beta がずれるだけだからです。人の顔つきを見れば親戚だと分かるように、積分の中身の顔つきを見れば、公式が使えると分かります。

E[Xr]=βαΓ(α)⋅Γ(α+r)βα+r=Γ(α+r)Γ(α)βr,M(t)=βαΓ(α)⋅Γ(α)(β−t)α=(ββ−t)αE[X^r] = \frac{\beta^\alpha}{\Gamma(\alpha)} \cdot \frac{\Gamma(\alpha + r)}{\beta^{\alpha + r}} = \frac{\Gamma(\alpha + r)}{\Gamma(\alpha)\beta^r}, \qquad M(t) = \frac{\beta^\alpha}{\Gamma(\alpha)} \cdot \frac{\Gamma(\alpha)}{(\beta - t)^\alpha} = \left(\frac{\beta}{\beta - t}\right)^\alpha

E[Xr]E[X^r] の式は、r>−αr > -\alpha なら実数の rr でも成り立ちます。M(t)M(t) は t<βt < \beta で有限です。

例題:核の公式でモーメントを求める

X∼Ga(3,2)X \sim Ga(3, 2) とする。〔1〕E[1/X]E[1/X] を求めよ。〔2〕V[1/X]V[1/X] を求めよ。〔3〕E[X]E[\sqrt{X}] を求めよ。

【解答】

〔1〕α=3\alpha = 3、β=2\beta = 2、r=−1r = -1 として、E[X−1]=Γ(2)Γ(3)×2=1E[X^{-1}] = \dfrac{\Gamma(2)}{\Gamma(3)} \times 2 = 1 である。

〔2〕E[X−2]=Γ(1)Γ(3)×4=2E[X^{-2}] = \dfrac{\Gamma(1)}{\Gamma(3)} \times 4 = 2 だから、V[1/X]=2−1=1V[1/X] = 2 - 1 = 1 である。

〔3〕E[X1/2]=Γ(7/2)Γ(3)2E[X^{1/2}] = \dfrac{\Gamma(7/2)}{\Gamma(3)\sqrt{2}} である。Γ(7/2)=52⋅32⋅12π\Gamma(7/2) = \dfrac{5}{2} \cdot \dfrac{3}{2} \cdot \dfrac{1}{2}\sqrt{\pi} より、これは 15π162≈1.175\dfrac{15\sqrt{\pi}}{16\sqrt{2}} \approx 1.175 である。

なお、E[X]=3/2E[X] = 3/2 なので 1/E[X]=2/31/E[X] = 2/3 です。E[1/X]=1E[1/X] = 1 とは一致しません。期待値は非線形の関数と順序を入れかえられないのです。

待ち時間との関係も押さえましょう。独立な指数分布 kk 個の和 TkT_k は Ga(k,λ)Ga(k, \lambda) に従います。「Tk≤tT_k \le t」と「時刻 tt までに kk 回以上起こる」は同じ事象なので、次の式が成り立ちます。

P(Tk≤t)=P(N≥k),N∼Po(λt)P(T_k \le t) = P(N \ge k), \qquad N \sim Po(\lambda t)

例えば、λ=1\lambda = 1、k=3k = 3、t=2t = 2 なら、1−e−2(1+2+2)≈0.3231 - e^{-2}(1 + 2 + 2) \approx 0.323 です。積分なしで、ガンマ分布の確率が求まりました。

ベータ分布 Be(a,b)Be(a, b) の核は xa−1(1−x)b−1x^{a-1}(1-x)^{b-1} です。変数変換の記事で示した B(a,b)=Γ(a)Γ(b)/Γ(a+b)B(a, b) = \Gamma(a)\Gamma(b)/\Gamma(a+b) を使うと、同じ技が使えます。

E[Xr]=B(a+r,b)B(a,b)=Γ(a+r) Γ(a+b)Γ(a) Γ(a+b+r)E[X^r] = \frac{B(a + r, b)}{B(a, b)} = \frac{\Gamma(a + r)\, \Gamma(a + b)}{\Gamma(a)\, \Gamma(a + b + r)}

r=1r = 1 で E[X]=aa+bE[X] = \dfrac{a}{a+b}、r=2r = 2 で E[X2]=a(a+1)(a+b)(a+b+1)E[X^2] = \dfrac{a(a+1)}{(a+b)(a+b+1)} です。差をとると、分散 ab(a+b)2(a+b+1)\dfrac{ab}{(a+b)^2(a+b+1)} が出ます。

試験のポイント:積分の中身が核の形をしていたら、計算せずに公式に帰着させます。答案には「Ga(α+r,β)Ga(\alpha + r, \beta) の確率密度関数の積分が1であることから」と理由を書きます。

以上が、ガンマ分布とベータ分布についての説明です。

正規分布と対数正規分布:平方完成の技

続いて、正規分布の系統について解説します。

正規分布(ガウス分布)の定数 2π\sqrt{2\pi} は、次の積分から来ています。2乗して極座標に移るのが定番です。

I2=∬e−(x2+y2)/2 dx dy=∫02π∫0∞e−r2/2 r dr dθ=2πI^2 = \iint e^{-(x^2 + y^2)/2}\, dx\, dy = \int_0^{2\pi} \int_0^\infty e^{-r^2/2}\, r\, dr\, d\theta = 2\pi

ここで I=∫e−x2/2 dxI = \int e^{-x^2/2}\, dx です。Γ(1/2)=π\Gamma(1/2) = \sqrt{\pi} も、置換すればこの積分から出ます。

モーメント母関数は 平方完成 で求めます。指数の部分は、次のように変形できます。

tx−(x−μ)22σ2=−(x−μ−σ2t)22σ2+μt+σ2t22tx - \frac{(x - \mu)^2}{2\sigma^2} = -\frac{(x - \mu - \sigma^2 t)^2}{2\sigma^2} + \mu t + \frac{\sigma^2 t^2}{2}

第1項は N(μ+σ2t,σ2)N(\mu + \sigma^2 t, \sigma^2) の核なので、積分すると定数が打ち消し合います。etxe^{tx} を掛けても、釣り鐘の山が横へ移動するだけで、山の形は変わらないのです。残るのは M(t)=exp⁡(μt+σ2t2/2)M(t) = \exp(\mu t + \sigma^2 t^2/2) です。ここでも、核を見抜く技が働きました。

対数正規分布 は、Y∼N(μ,σ2)Y \sim N(\mu, \sigma^2) に対する X=eYX = e^Y の分布です。すると E[Xr]=E[erY]E[X^r] = E[e^{rY}] は YY のモーメント母関数そのものです。積分を1回もせずに、すべてのモーメントが出ます。

E[Xr]=exp⁡(rμ+r2σ22)E[X^r] = \exp\left(r\mu + \frac{r^2\sigma^2}{2}\right)

よって、平均は eμ+σ2/2e^{\mu + \sigma^2/2}、分散は e2μ+σ2(eσ2−1)e^{2\mu + \sigma^2}(e^{\sigma^2} - 1) です。中央値は単調変換で保たれるので eμe^\mu です。最頻値は確率密度関数の対数を微分して、eμ−σ2e^{\mu - \sigma^2} です。

例えば、μ=0\mu = 0、σ=1\sigma = 1 なら、最頻値0.368、中央値1、平均1.649です。最頻値 << 中央値 << 平均となり、右に裾を引く形が式からも読み取れます。また、独立な対数正規分布の積は、対数をとると正規分布の和なので、再び対数正規分布です。

以上が、正規分布と対数正規分布についての解説です。

多変量正規分布:線形変換で考える

最後に、多変量正規分布 Np(μ,Σ)N_p(\boldsymbol{\mu}, \Sigma) を見ていきましょう。

独立に標準正規分布に従う pp 個の変数を並べたベクトルを Z\boldsymbol{Z} とし、Σ=AA⊤\Sigma = AA^\top となる行列 AA で X=μ+AZ\boldsymbol{X} = \boldsymbol{\mu} + A\boldsymbol{Z} とします。これが多変量正規分布です。Σ\Sigma が正則なら、変数変換の公式から、準1級で見た確率密度関数が出ます。部品の Z\boldsymbol{Z} を、線形変換で組み立てたものと考えると、性質はすべて見通せます。

モーメント母関数は、t⊤X\boldsymbol{t}^\top\boldsymbol{X} が1変量の正規分布 N(t⊤μ,t⊤Σt)N(\boldsymbol{t}^\top\boldsymbol{\mu}, \boldsymbol{t}^\top\Sigma\boldsymbol{t}) に従うことから出ます。

M(t)=E[et⊤X]=exp⁡(t⊤μ+12t⊤Σt)M(\boldsymbol{t}) = E[e^{\boldsymbol{t}^\top\boldsymbol{X}}] = \exp\left(\boldsymbol{t}^\top\boldsymbol{\mu} + \frac{1}{2}\boldsymbol{t}^\top\Sigma\boldsymbol{t}\right)

ここから、2つの性質が証明できます。

【多変量正規分布の性質の証明】

  1. 線形変換: BX+bB\boldsymbol{X} + \boldsymbol{b} のモーメント母関数を計算すると、平均 Bμ+bB\boldsymbol{\mu} + \boldsymbol{b}、分散 BΣB⊤B\Sigma B^\top の多変量正規分布の形になる。周辺分布はその特別な場合である
  2. 無相関なら独立: 共分散の部分が0なら、t⊤Σt\boldsymbol{t}^\top\Sigma\boldsymbol{t} が変数ごとに分かれ、モーメント母関数が積に分かれる

性質2は、同時分布が多変量正規分布であるときだけの話です。周辺分布がそれぞれ正規分布というだけでは、無相関でも独立とは言えません。

条件付き分布は、行列の公式を暗記しなくても、回帰の発想で導けます。2変量で見てみましょう。

例題:親子の身長

父の身長 XX と息子の身長 YY が2変量正規分布に従い、平均は170と172、標準偏差はどちらも6、相関係数は ρ=0.5\rho = 0.5 とする。〔1〕W=Y−βXW = Y - \beta X(β=ρσY/σX\beta = \rho\sigma_Y/\sigma_X)が XX と独立であることを示し、X=xX = x のもとでの YY の条件付き分布を求めよ。〔2〕X=182X = 182 のとき、YY の条件付き平均と分散を求めよ。〔3〕P(Y>185∣X=182)P(Y > 185 \mid X = 182) を求めよ。

【解答】

〔1〕(X,W)(X, W) は (X,Y)(X, Y) の線形変換だから2変量正規分布に従う。Cov[X,W]=ρσXσY−βσX2=0\mathrm{Cov}[X, W] = \rho\sigma_X\sigma_Y - \beta\sigma_X^2 = 0 なので、性質2より独立である。V[W]=σY2−2βρσXσY+β2σX2=σY2(1−ρ2)V[W] = \sigma_Y^2 - 2\beta\rho\sigma_X\sigma_Y + \beta^2\sigma_X^2 = \sigma_Y^2(1 - \rho^2) である。Y=βX+WY = \beta X + W で WW は XX と独立だから、次を得る。

Y∣X=x ∼ N(μY+β(x−μX),  σY2(1−ρ2))Y \mid X = x \ \sim\ N\left(\mu_Y + \beta(x - \mu_X),\ \ \sigma_Y^2(1 - \rho^2)\right)

〔2〕β=0.5\beta = 0.5 より、平均は 172+0.5×12=178172 + 0.5 \times 12 = 178、分散は 36×0.75=2736 \times 0.75 = 27 である。

〔3〕z=(185−178)/27≈1.35z = (185 - 178)/\sqrt{27} \approx 1.35 より、確率は約0.089である。

父が平均より12cm高くても、息子の予想は平均より6cmの高さです。これが、後の記事で学ぶ平均への回帰です。条件付き分散が xx によらないことも、多変量正規分布の特徴です。

以上が、多変量正規分布についての解説です。

細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「分布は変換で作られ、計算は核を見抜いて公式に帰着させる」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は10種類の連続型分布を、変換と核という2つの視点で整理しました。基本のソースが分かれば、残りは変化形です。式を丸ごと覚えるのではなく、その場で導けることが、1級の強みになります。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 指数・ワイブル・ロジスティック・コーシーは、一様分布の変換で作れる。ワイブル分布は形状 mm で故障の型が変わる。
  • ガンマ分布とベータ分布のモーメントは、核を見抜くと積分なしで求まる。
  • 正規分布のモーメント母関数は平方完成で出て、対数正規分布のモーメントはその値そのものである。
  • 多変量正規分布は線形変換で考える。無相関なら独立で、条件付き分布は回帰で導ける。

キーワードのおさらい

  • 一様分布: 区間のどの値も同じ濃さの分布。他の分布の入り口
  • 正規分布(ガウス分布): M(t)=exp⁡(μt+σ2t2/2)M(t) = \exp(\mu t + \sigma^2 t^2/2) の分布
  • 指数分布: 危険率が一定の分布。無記憶性をもつ
  • ガンマ分布: 核が xα−1e−βxx^{\alpha-1} e^{-\beta x} の分布。指数分布の和を含む
  • ベータ分布: 核が xa−1(1−x)b−1x^{a-1}(1-x)^{b-1} の分布。(0,1)(0, 1) の値をとる
  • コーシー分布: 1/{π(1+x2)}1/\{\pi(1 + x^2)\} の分布。期待値が存在しない
  • 対数正規分布: 対数が正規分布に従う分布。E[Xr]=exp⁡(rμ+r2σ2/2)E[X^r] = \exp(r\mu + r^2\sigma^2/2)
  • ワイブル分布: 危険率が xm−1x^{m-1} に比例する分布。寿命の分析で使う
  • ロジスティック分布: ロジットが xx の1次式になる分布
  • 多変量正規分布: 独立な標準正規分布の線形変換で作られる分布

さて、これで主な分布がそろいました。次は、これらの分布から作った統計量の分布です。tt 分布やカイ二乗分布は、どのように導かれるのでしょうか?

次回は、標本分布の導出について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 形状 m=3m = 3、尺度 η=2\eta = 2 のワイブル分布の、x=2x = 2 における危険率として正しいものはどれか。
問2. 標準ロジスティック分布(μ=0\mu = 0、s=1s = 1)の上側10%点に最も近いものはどれか。
問3. X∼Ga(4,2)X \sim Ga(4, 2)(確率密度関数 f(x)∝x3e−2xf(x) \propto x^3 e^{-2x})のとき、E[1/X]E[1/X] として正しいものはどれか。
問4. log⁡X∼N(1,2)\log X \sim N(1, 2)(平均1、分散2)のとき、E[X]E[X] として正しいものはどれか。
問5. (X,Y)(X, Y) が2変量正規分布に従い、σY=5\sigma_Y = 5、ρ=0.8\rho = 0.8 である。X=xX = x のもとでの YY の条件付き分散として正しいものはどれか。