はじめに
「この区間に真の値が入る確率は95%です、と答案に書いたら減点?」
準1級までは、公式に数値を入れれば信頼区間が求まりました。ところが1級の論述では、「この統計量の分布を導き、信頼区間を構成せよ」と問われます。「その区間の被覆確率を求めよ」と続くこともあります。つまり、区間の中身を自分で組み立てて、性能まで説明する力が必要です。
実は、信頼区間の作り方の基本は3つです。ピボットを解く、検定を裏返す、漸近正規性を使う。この3つです。そして、それぞれ保証の強さが違います。
そこで登場するのが、今回の主役 信頼区間の構成 の理論です。準1級で学んだ 信頼係数 と 被覆確率 の定義から出発して、3つの作り方を証明つきで整理します。
前回の記事では、クラーメル・ラオの不等式とデルタ法を学びました。今回の記事では、その道具も使いながら、信頼区間がなぜ保証を持つのか、保証はどこで崩れるのかについて解説します。
定義を式で言い切る:被覆確率と信頼係数
はじめに、答案の土台になる定義を整理します。
準1級では、信頼区間を輪投げに例えました。杭が真の母数 θ で、投げるたびに動く輪がデータから作った区間です。1級ではこれを、写像として書きます。データ x に Θ の部分集合 C(x) を対応させる規則が、区間推定量です。区間の形なら C(x)=[L(x),U(x)] です。
確率的に動くのは C(X) のほうで、θ は定数です。そのうえで、被覆確率 と 信頼係数 を次のように定めます。
γ(θ)=Pθ(θ∈C(X)),信頼係数=θ∈Θinfγ(θ)
γ(θ) は、真の値が θ のときに区間が θ を含む確率です。信頼係数は、そのいちばん悪い値です。信頼係数が 1−α 以上の区間を、信頼水準 1−α の信頼区間と呼びます。
ここがポイントです。冒頭の答案は、減点されます。データを代入した後の区間 [3.1, 5.2] は、θ を含むか含まないかのどちらかです。確率が語れるのは、代入する前の C(X) についてだけです。工場の保証書が「この製法の製品は95%以上が合格する」と書いているのと同じで、手元の1個に95%の合格があるわけではありません。
では、被覆確率が高ければ、それでよい区間なのでしょうか? 実は、そうとは言えません。次の意地の悪い区間を考えてみましょう。
【くじ引きの区間】
- データを見ずに、確率0.95で当たるくじを引く
- 当たりなら C=R(実数全体)、はずれなら C=∅(空集合)とする
この区間の被覆確率は、どの θ でも0.95です。つまり信頼係数は0.95です。それなのに、何も教えてくれません。だから信頼区間の評価には、もう1つの物差しが要ります。それが区間の長さです。
【信頼区間のよさの2本の物差し】
- 被覆確率: 保証が守られているか。γ(θ)≥1−α がすべての θ で成り立つか
- 区間の長さ: 保証を守ったうえで、どれだけ狭いか
輪投げで言えば、輪を大きくすれば誰でも入ります。腕の見せどころは、小さい輪で同じ成功率を出すことです。
試験のポイント:「信頼水準95%」の説明では、確率の主語を C(X) にします。「同じ手順を繰り返すと、作られる区間のうち95%以上が θ を含む」と書けば正確です。
以上が、被覆確率と信頼係数の定義についての解説です。
作り方①:ピボットと確率積分変換
次に、最も保証が強い作り方であるピボット法について説明します。
ピボットとは、データと θ の関数で、分布が θ によらない量 Q(X,θ) のことです。準1級で学んだとおり、P(a≤Q≤b)=1−α となる a,b を選び、不等式を θ について解くと、被覆確率がちょうど 1−α の区間ができます。
では、ピボットはいつでも見つかるのでしょうか? 連続型なら、答えは「はい」です。根拠は 確率積分変換 です。
T が連続型で、分布関数 Fθ が狭義単調増加なら、次が成り立ちます。
Fθ(T)∼U(0,1)
証明は1行です。0<u<1 に対して、次のように計算できます。
Pθ(Fθ(T)≤u)=Pθ(T≤Fθ−1(u))=Fθ(Fθ−1(u))=u
言葉で言うと、自分の分布関数に通せば、どんな連続型の統計量も一様分布に化ける、ということです。身長でも体重でも、「学年で下から何%か」に直せば、同じ物差しになるのと同じです。
したがって、Fθ(T) は必ずピボットです。さらに、独立な X1,…,Xn の分布関数を Fθ とすると、−logU が指数分布に従うことから、次の万能のピボットが作れます。
−2i=1∑nlogFθ(Xi)∼χ2(2n)
あとは、不等式が θ について解ける形かどうかだけが問題です。
例題:ピボットの導出から区間まで
X1,…,Xn は密度 f(x;θ)=θxθ−1(0<x<1、θ>0)に独立に従う。T=−∑ilogXi とする。(1) 2θT の分布を導け。(2) θ の信頼水準 1−α の信頼区間を構成せよ。(3) n=10、T=5 のとき、95%信頼区間を求めよ。χ0.9752(20)=9.59、χ0.0252(20)=34.17 とする。
【解答】
(1) Yi=−logXi とおく。y>0 に対して、
P(Yi>y)=P(Xi<e−y)=∫0e−yθxθ−1dx=e−θy
よって Yi は率 θ の指数分布に従う。Wi=2θYi とおくと P(Wi>w)=e−w/2 なので、Wi∼χ2(2) である。カイ二乗分布の再生性より、2θT=∑iWi∼χ2(2n) である。
(2) 分布が θ によらないので 2θT はピボットである。P(χ1−α/22(2n)≤2θT≤χα/22(2n))=1−α の不等式を θ について解いて、次を得る。
2Tχ1−α/22(2n)≤θ≤2Tχα/22(2n)
(3) 代入すると、9.59÷10=0.959、34.17÷10=3.417 である。答えは [0.959, 3.417] である。
最尤推定値 n/T=2 の左右で、幅が同じでない点に注意しましょう。分布が非対称なら、区間も非対称です。
長さを最短にする条件
さて、a,b の選び方は1通りではありません。等裾(両側に α/2 ずつ)は便利な約束ですが、最短とは限りません。そこで、長さを最小にする条件を導きます。
Q の密度を g、分布関数を G とします。制約 G(b)−G(a)=1−α を微分すると、g(b)db=g(a)da です。つまり、db/da=g(a)/g(b) が成り立ちます。
【区間の長さと最短の条件】
- 位置型(長さが b−a に比例): dad(b−a)=g(b)g(a)−1=0 より、g(a)=g(b)
- 尺度型(長さが 1/a−1/b に比例): −a21+b21g(b)g(a)=0 より、a2g(a)=b2g(b)
位置型の条件は、「密度の同じ高さで切る」ということです。z や t は左右対称なので、等裾がそのまま最短になります。
一方で、母分散の区間 [S/b,S/a](S は偏差平方和、ピボットは S/σ2)は尺度型です。具体的に見てみましょう。n=11、S=40 とします。自由度10のカイ二乗分布で数値を解くと、次のようになります。
| 切り方 | a | b | 区間 | 長さ |
|---|
| 等裾 | 3.25 | 20.48 | [1.95, 12.32] | 10.37 |
| 最短 | 3.89 | 27.27 | [1.47, 10.29] | 8.83 |
同じ95%でも、長さが15%ほど縮みました。ただし、計算の手間が増えるので、実務と試験の既定は等裾です。「最短にせよ」と指定されたときに、この条件を使います。
せっかくなので、別の例も見てみましょう。U(0,θ) のピボット Q=X(n)/θ は、密度 g(q)=nqn−1(0<q<1)を持ちます。尺度型なので長さは 1/a−1/b に比例します。bn−an=1−α から db/da=(a/b)n−1 なので、次の式を得ます。
dad(a1−b1)=a2bn+1an+1−bn+1<0
a を増やすほど短くなるので、端の b=1、a=α1/n が最短です。これが準1級で使った区間 [X(n), X(n)α−1/n] で、最短性がここで証明できました。
以上が、ピボット法についての説明です。
作り方②:検定を裏返す
続いて、離散型でも使える作り方を解説します。
結論を一言で言うと、信頼区間とは、検定で棄却されなかった θ0 の集まり です。
例えるなら、面接で候補者を1人ずつ呼ぶようなものです。θ0=1 さん、θ0=2 さん、と順に「このデータと矛盾しませんか」と検定にかけます。不合格にならなかった候補者の名簿が、信頼区間です。
各 θ0 について、H0:θ=θ0 の有意水準 α の検定があるとします。その受容域(棄却しない範囲)を A(θ0) とします。
C(x)={θ:x∈A(θ)}
こう定めると、C は信頼水準 1−α の信頼区間です。証明は定義を読み替えるだけです。
Pθ(θ∈C(X))=Pθ(X∈A(θ))≥1−α
逆に、信頼区間 C があれば、A(θ0)={x:θ0∈C(x)} が有意水準 α の検定を与えます。区間と検定は、同じものを裏表から見ているのです。
補足(ここは読み飛ばしてOK):
検定が一様最強力なら、裏返した片側信頼限界は、誤った値を含む確率が最も小さくなります。これを一様最精密と呼びます。検定のよさが、区間のよさに移るわけです。
では、離散型に使いましょう。離散型では Fθ(T) が一様分布になりません。代わりに、次の補題が成り立ちます。
補題:F を離散型の統計量 T の分布関数とすると、0<u<1 に対して P(F(T)≤u)≤u である。
証明です。F(t)≤u を満たす最大の t を t∗ とします。F は単調なので、F(T)≤u は T≤t∗ と同じです。よって確率は F(t∗)≤u です。
この補題により、両裾の確率がともに α/2 より大きい値だけを受容域にすれば、第一種の過誤の確率は α 以下です。裏返すと、次の区間ができます。T が θ の増加とともに大きくなりやすい分布なら、t を観測したときの上下限は次の方程式の解です。
PθL(T≥t)=2α,PθU(T≤t)=2α
ここがポイントです。補題が不等式なので、被覆確率は 1−α 以上 です。離散型では、保証は守れますが、ぴったりにはできません。
例題:ポアソン分布の正確な信頼区間
X∼Po(λ) を1回観測する。(1) 自然数 x について P(X≥x)=P(χ2(2x)≤2λ) を示せ。(2) λ の信頼水準 1−α の信頼区間を、カイ二乗分布の上側パーセント点で表せ。(3) x=7 のとき95%信頼区間を求めよ。
【解答】
(1) 単位時間あたり1回の率で起こるポアソン過程を考える。時間 λ までの発生回数は Po(λ) に従う。x 回目の発生時刻を Y とすると、Y はガンマ分布 Ga(x,1) に従い、2Y∼χ2(2x) である。「時間 λ までに x 回以上起こる」ことと「x 回目の発生が時刻 λ 以前」は同じ事象なので、P(X≥x)=P(Y≤λ)=P(χ2(2x)≤2λ) である。
(2) 下限は P(χ2(2x)≤2λL)=α/2 を解いて、λL=21χ1−α/22(2x) である。上限は、P(X≤x)=1−P(X≥x+1)=P(χ2(2x+2)>2λU)=α/2 を解いて、λU=21χα/22(2x+2) である。ただし x=0 のときは λL=0 とする。
(3) χ0.9752(14)=5.63、χ0.0252(16)=28.85 より、答えは [2.81, 14.42] である。
この区間の被覆確率を、ポアソン確率を足し上げて計算すると、λ=1,3,5,10 で 0.981、0.988、0.980、0.975 です。どれも0.95を上回ります。保証は確実ですが、そのぶん区間は広めです。内容量を割らないように多めに詰めた袋、というイメージです。
以上が、検定を裏返す作り方についての解説です。
作り方③:漸近正規性と保証の崩れ方
最後に、最も手軽な漸近的な区間を見ていきましょう。
前回の記事の漸近正規性を使います。n(θ^−θ)→N(0,σ2(θ)) で、σ^ が σ(θ) の一致推定量なら、スラツキーの定理より次が成り立ちます。
σ^n(θ^−θ)→N(0,1)
したがって、区間 θ^±zα/2σ^/n の被覆確率は、各 θ で 1−α に収束します。ここで「各 θ で」という断りが重要です。
二項分布の Wald 型区間 p^±zα/2p^(1−p^)/n を考えましょう。X=0 のとき、p^=0 なので区間は1点 {0} に潰れます。p>0 を含みません。つまり被覆確率は、次の不等式を満たします。
γ(p)≤Pp(X≥1)=1−(1−p)n
右辺は p→0 で0に近づきます。したがって、どんなに n が大きくても、信頼係数は0です。各 p で被覆確率が0.95に近づくことと、全体の下限が0であることは、矛盾しません。n を増やしても、収束の遅い p が必ず端に残るからです。
例えるなら、地域ごとに順に開通していく道路工事です。どの家もいつかは開通しますが、ある日を切り取れば、必ずどこかに未開通の家があります。収束が θ について一様でないとは、こういうことです。
では、近似をよくするには、どうすればよいでしょうか? 手が2つあります。
【近似を改善する2つの手】
- スコア型: 分散に θ^ を代入せず、θ のまま不等式を解く
- 分散安定化変換: デルタ法で、分散が θ によらなくなる関数 g に変換してから区間を作る
分散安定化の条件を導きます。n(θ^−θ)→N(0,σ2(θ)) なら、デルタ法より n(g(θ^)−g(θ))→N(0,g′(θ)2σ2(θ)) です。分散を定数にしたいので、g′(θ)=c/σ(θ) とします。これを積分した関数が g です。
例題:ポアソン分布の分散安定化
X1,…,Xn は Po(λ) に独立に従う。(1) 漸近分散が λ によらない変換 g を導け。(2) それを用いた信頼水準 1−α の近似信頼区間を構成せよ。(3) n=20、xˉ=2.5 のとき、95%信頼区間を求めよ。
【解答】
(1) 中心極限定理より n(Xˉ−λ)→N(0,λ) である。σ(λ)=λ なので g′(λ)=1/λ とおくと、g(λ)=2λ である。デルタ法より次が成り立つ。
n(2Xˉ−2λ)→N(0,1)
(2) 不等式 ∣2n(Xˉ−λ)∣≤zα/2 を λ について解いて、両辺を2乗する。左端が負にならないとき、次の区間を得る。
(Xˉ−2nzα/2)2≤λ≤(Xˉ+2nzα/2)2
(3) 2.5=1.581、1.96÷(220)=0.219 より、1.3622=1.855、1.8002=3.241 である。答えは [1.86, 3.24] である。
同じデータで、4つの区間を並べてみましょう。
| 区間 | 下限 | 上限 |
|---|
| Wald 型 | 1.81 | 3.19 |
| スコア型 | 1.90 | 3.30 |
| 分散安定化 | 1.86 | 3.24 |
| 正確な区間 | 1.86 | 3.30 |
スコア型は、(xˉ−λ)2≤zα/22λ/n を λ の2次不等式として解いたものです。正確な区間は、合計が Po(nλ) に従うことから、前の節の結果を n で割りました。
n=5 のときの本当の被覆確率は、次のとおりです。
| 真の λ | 0.2 | 0.5 | 1 | 2 |
|---|
| Wald 型 | 0.632 | 0.917 | 0.870 | 0.926 |
| スコア型 | 0.920 | 0.958 | 0.961 | 0.963 |
| 分散安定化 | 0.613 | 0.904 | 0.946 | 0.956 |
| 正確な区間 | 0.981 | 0.986 | 0.980 | 0.975 |
表の見方を説明します。λ が小さいと合計が0になりやすく、Wald 型は潰れて外れます。スコア型は、表のどの値でも0.9以上です。分散安定化は、λ がある程度大きければよいのですが、小さい側では崩れます。正確な区間だけが、0.95を下回りません。
試験のポイント:漸近的な区間について書けるのは「被覆確率が各 θ で 1−α に収束する」までです。「信頼係数が 1−α である」とは書けません。
以上が、漸近的な信頼区間についての解説です。
細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「ピボットは等号、検定の裏返しは以上、漸近は極限」という保証の違いだけ押さえておきましょう。
今回のまとめ
それでは、今回の内容を振り返ります。
今回は信頼区間の3つの構成法と、その保証の強さについて紹介しました。ピボットなら被覆確率はちょうど 1−α、離散型で検定を裏返せば 1−α 以上、漸近正規性なら極限で 1−α です。答案では、どの作り方で、どの保証が得られたのかを言葉にすることが大切です。
今回のポイントを振り返りましょう。
振り返り
- 確率的に動くのは区間で、θ は定数。信頼係数は被覆確率の下限で、最低保証の値。
- 確率積分変換により、連続型なら必ずピボットが作れる。最短の区間は g(a)=g(b) などの条件で決まる。
- 信頼区間は、検定で棄却されなかった値の集まり。離散型の正確な区間はこの方法で作り、被覆確率は 1−α 以上になる。
- 漸近的な区間の収束は各 θ ごとで、一様とは限らない。Wald 型の信頼係数は、どの n でも0である。
- 分散安定化変換は、g′(θ)=c/σ(θ) を積分して求める。
キーワードのおさらい
- 被覆確率: 真の値が θ のとき、区間が θ を含む確率。θ の関数
- 信頼係数: 被覆確率の下限。その区間が保証する最低の確率
- 信頼区間の構成: ピボット法、検定の裏返し、漸近正規性の3つが基本
- ピボット: データと θ の関数で、分布が θ によらない量
- 確率積分変換: 連続型の統計量を自分の分布関数に通すと U(0,1) に従うこと
- 分散安定化変換: 漸近分散が θ によらなくなるようにする変換
さて、信頼区間を裏返すと検定になることが分かりました。では、検定そのものを数学の言葉で書くと、どうなるでしょうか? 「棄却域」も「p値」も、きちんと定義すると見え方が変わります。
次回は、検定を関数として定義し直す「検定の基礎」について紹介します。
それでは、次の記事へ進んでいきましょう。