統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-15 統計数理

区間推定 — 信頼区間の性質

  • 信頼係数
  • 信頼区間の構成
  • 被覆確率

はじめに

「この区間に真の値が入る確率は95%です、と答案に書いたら減点?」

準1級までは、公式に数値を入れれば信頼区間が求まりました。ところが1級の論述では、「この統計量の分布を導き、信頼区間を構成せよ」と問われます。「その区間の被覆確率を求めよ」と続くこともあります。つまり、区間の中身を自分で組み立てて、性能まで説明する力が必要です。

実は、信頼区間の作り方の基本は3つです。ピボットを解く、検定を裏返す、漸近正規性を使う。この3つです。そして、それぞれ保証の強さが違います。

そこで登場するのが、今回の主役 信頼区間の構成 の理論です。準1級で学んだ 信頼係数 と 被覆確率 の定義から出発して、3つの作り方を証明つきで整理します。

前回の記事では、クラーメル・ラオの不等式とデルタ法を学びました。今回の記事では、その道具も使いながら、信頼区間がなぜ保証を持つのか、保証はどこで崩れるのかについて解説します。

定義を式で言い切る:被覆確率と信頼係数

はじめに、答案の土台になる定義を整理します。

準1級では、信頼区間を輪投げに例えました。杭が真の母数 θ\theta で、投げるたびに動く輪がデータから作った区間です。1級ではこれを、写像として書きます。データ xx に Θ\Theta の部分集合 C(x)C(x) を対応させる規則が、区間推定量です。区間の形なら C(x)=[L(x),U(x)]C(x) = [L(x), U(x)] です。

確率的に動くのは C(X)C(X) のほうで、θ\theta は定数です。そのうえで、被覆確率 と 信頼係数 を次のように定めます。

γ(θ)=Pθ(θ∈C(X)),信頼係数=inf⁡θ∈Θγ(θ)\gamma(\theta) = P_\theta\big(\theta \in C(X)\big), \qquad \text{信頼係数} = \inf_{\theta \in \Theta} \gamma(\theta)

γ(θ)\gamma(\theta) は、真の値が θ\theta のときに区間が θ\theta を含む確率です。信頼係数は、そのいちばん悪い値です。信頼係数が 1−α1 - \alpha 以上の区間を、信頼水準 1−α1 - \alpha の信頼区間と呼びます。

ここがポイントです。冒頭の答案は、減点されます。データを代入した後の区間 [3.1, 5.2] は、θ\theta を含むか含まないかのどちらかです。確率が語れるのは、代入する前の C(X)C(X) についてだけです。工場の保証書が「この製法の製品は95%以上が合格する」と書いているのと同じで、手元の1個に95%の合格があるわけではありません。

では、被覆確率が高ければ、それでよい区間なのでしょうか? 実は、そうとは言えません。次の意地の悪い区間を考えてみましょう。

【くじ引きの区間】

  1. データを見ずに、確率0.95で当たるくじを引く
  2. 当たりなら C=RC = \mathbb{R}(実数全体)、はずれなら C=∅C = \emptyset(空集合)とする

この区間の被覆確率は、どの θ\theta でも0.95です。つまり信頼係数は0.95です。それなのに、何も教えてくれません。だから信頼区間の評価には、もう1つの物差しが要ります。それが区間の長さです。

【信頼区間のよさの2本の物差し】

  1. 被覆確率: 保証が守られているか。γ(θ)≥1−α\gamma(\theta) \ge 1 - \alpha がすべての θ\theta で成り立つか
  2. 区間の長さ: 保証を守ったうえで、どれだけ狭いか

輪投げで言えば、輪を大きくすれば誰でも入ります。腕の見せどころは、小さい輪で同じ成功率を出すことです。

試験のポイント:「信頼水準95%」の説明では、確率の主語を C(X)C(X) にします。「同じ手順を繰り返すと、作られる区間のうち95%以上が θ\theta を含む」と書けば正確です。

以上が、被覆確率と信頼係数の定義についての解説です。

作り方①:ピボットと確率積分変換

次に、最も保証が強い作り方であるピボット法について説明します。

ピボットとは、データと θ\theta の関数で、分布が θ\theta によらない量 Q(X,θ)Q(X, \theta) のことです。準1級で学んだとおり、P(a≤Q≤b)=1−αP(a \le Q \le b) = 1 - \alpha となる a,ba, b を選び、不等式を θ\theta について解くと、被覆確率がちょうど 1−α1 - \alpha の区間ができます。

では、ピボットはいつでも見つかるのでしょうか? 連続型なら、答えは「はい」です。根拠は 確率積分変換 です。

TT が連続型で、分布関数 FθF_\theta が狭義単調増加なら、次が成り立ちます。

Fθ(T)∼U(0,1)F_\theta(T) \sim U(0, 1)

証明は1行です。0<u<10 < u < 1 に対して、次のように計算できます。

Pθ(Fθ(T)≤u)=Pθ(T≤Fθ−1(u))=Fθ(Fθ−1(u))=uP_\theta\big(F_\theta(T) \le u\big) = P_\theta\big(T \le F_\theta^{-1}(u)\big) = F_\theta\big(F_\theta^{-1}(u)\big) = u

言葉で言うと、自分の分布関数に通せば、どんな連続型の統計量も一様分布に化ける、ということです。身長でも体重でも、「学年で下から何%か」に直せば、同じ物差しになるのと同じです。

したがって、Fθ(T)F_\theta(T) は必ずピボットです。さらに、独立な X1,…,XnX_1, \ldots, X_n の分布関数を FθF_\theta とすると、−log⁡U-\log U が指数分布に従うことから、次の万能のピボットが作れます。

−2∑i=1nlog⁡Fθ(Xi)∼χ2(2n)-2\sum_{i=1}^{n} \log F_\theta(X_i) \sim \chi^2(2n)

あとは、不等式が θ\theta について解ける形かどうかだけが問題です。

例題:ピボットの導出から区間まで

X1,…,XnX_1, \ldots, X_n は密度 f(x;θ)=θxθ−1f(x; \theta) = \theta x^{\theta - 1}(0<x<10 < x < 1、θ>0\theta > 0)に独立に従う。T=−∑ilog⁡XiT = -\sum_i \log X_i とする。(1) 2θT2\theta T の分布を導け。(2) θ\theta の信頼水準 1−α1 - \alpha の信頼区間を構成せよ。(3) n=10n = 10、T=5T = 5 のとき、95%信頼区間を求めよ。χ0.9752(20)=9.59\chi^2_{0.975}(20) = 9.59、χ0.0252(20)=34.17\chi^2_{0.025}(20) = 34.17 とする。

【解答】

(1) Yi=−log⁡XiY_i = -\log X_i とおく。y>0y > 0 に対して、

P(Yi>y)=P(Xi<e−y)=∫0e−yθxθ−1 dx=e−θyP(Y_i > y) = P(X_i < e^{-y}) = \int_0^{e^{-y}} \theta x^{\theta - 1}\, dx = e^{-\theta y}

よって YiY_i は率 θ\theta の指数分布に従う。Wi=2θYiW_i = 2\theta Y_i とおくと P(Wi>w)=e−w/2P(W_i > w) = e^{-w/2} なので、Wi∼χ2(2)W_i \sim \chi^2(2) である。カイ二乗分布の再生性より、2θT=∑iWi∼χ2(2n)2\theta T = \sum_i W_i \sim \chi^2(2n) である。

(2) 分布が θ\theta によらないので 2θT2\theta T はピボットである。P(χ1−α/22(2n)≤2θT≤χα/22(2n))=1−αP(\chi^2_{1 - \alpha/2}(2n) \le 2\theta T \le \chi^2_{\alpha/2}(2n)) = 1 - \alpha の不等式を θ\theta について解いて、次を得る。

χ1−α/22(2n)2T≤θ≤χα/22(2n)2T\frac{\chi^2_{1 - \alpha/2}(2n)}{2T} \le \theta \le \frac{\chi^2_{\alpha/2}(2n)}{2T}

(3) 代入すると、9.59÷10=0.9599.59 \div 10 = 0.959、34.17÷10=3.41734.17 \div 10 = 3.417 である。答えは [0.959, 3.417] である。

最尤推定値 n/T=2n / T = 2 の左右で、幅が同じでない点に注意しましょう。分布が非対称なら、区間も非対称です。

長さを最短にする条件

さて、a,ba, b の選び方は1通りではありません。等裾(両側に α/2\alpha/2 ずつ)は便利な約束ですが、最短とは限りません。そこで、長さを最小にする条件を導きます。

QQ の密度を gg、分布関数を GG とします。制約 G(b)−G(a)=1−αG(b) - G(a) = 1 - \alpha を微分すると、g(b) db=g(a) dag(b)\,db = g(a)\,da です。つまり、db/da=g(a)/g(b)db/da = g(a)/g(b) が成り立ちます。

【区間の長さと最短の条件】

  • 位置型(長さが b−ab - a に比例): d(b−a)da=g(a)g(b)−1=0\dfrac{d(b - a)}{da} = \dfrac{g(a)}{g(b)} - 1 = 0 より、g(a)=g(b)g(a) = g(b)
  • 尺度型(長さが 1/a−1/b1/a - 1/b に比例): −1a2+1b2g(a)g(b)=0-\dfrac{1}{a^2} + \dfrac{1}{b^2}\dfrac{g(a)}{g(b)} = 0 より、a2g(a)=b2g(b)a^2 g(a) = b^2 g(b)

位置型の条件は、「密度の同じ高さで切る」ということです。zz や tt は左右対称なので、等裾がそのまま最短になります。

一方で、母分散の区間 [S/b,S/a][S/b, S/a](SS は偏差平方和、ピボットは S/σ2S/\sigma^2)は尺度型です。具体的に見てみましょう。n=11n = 11、S=40S = 40 とします。自由度10のカイ二乗分布で数値を解くと、次のようになります。

切り方aabb区間長さ
等裾3.2520.48[1.95, 12.32]10.37
最短3.8927.27[1.47, 10.29]8.83

同じ95%でも、長さが15%ほど縮みました。ただし、計算の手間が増えるので、実務と試験の既定は等裾です。「最短にせよ」と指定されたときに、この条件を使います。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。U(0,θ)U(0, \theta) のピボット Q=X(n)/θQ = X_{(n)}/\theta は、密度 g(q)=nqn−1g(q) = nq^{n-1}(0<q<10 < q < 1)を持ちます。尺度型なので長さは 1/a−1/b1/a - 1/b に比例します。bn−an=1−αb^n - a^n = 1 - \alpha から db/da=(a/b)n−1db/da = (a/b)^{n-1} なので、次の式を得ます。

dda(1a−1b)=an+1−bn+1a2bn+1<0\frac{d}{da}\left(\frac{1}{a} - \frac{1}{b}\right) = \frac{a^{n+1} - b^{n+1}}{a^2 b^{n+1}} < 0

aa を増やすほど短くなるので、端の b=1b = 1、a=α1/na = \alpha^{1/n} が最短です。これが準1級で使った区間 [X(n), X(n)α−1/n][X_{(n)},\ X_{(n)} \alpha^{-1/n}] で、最短性がここで証明できました。

以上が、ピボット法についての説明です。

作り方②:検定を裏返す

続いて、離散型でも使える作り方を解説します。

結論を一言で言うと、信頼区間とは、検定で棄却されなかった θ0\theta_0 の集まり です。

例えるなら、面接で候補者を1人ずつ呼ぶようなものです。θ0=1\theta_0 = 1 さん、θ0=2\theta_0 = 2 さん、と順に「このデータと矛盾しませんか」と検定にかけます。不合格にならなかった候補者の名簿が、信頼区間です。

各 θ0\theta_0 について、H0:θ=θ0H_0: \theta = \theta_0 の有意水準 α\alpha の検定があるとします。その受容域(棄却しない範囲)を A(θ0)A(\theta_0) とします。

C(x)={θ:x∈A(θ)}C(x) = \{\theta : x \in A(\theta)\}

こう定めると、CC は信頼水準 1−α1 - \alpha の信頼区間です。証明は定義を読み替えるだけです。

Pθ(θ∈C(X))=Pθ(X∈A(θ))≥1−αP_\theta\big(\theta \in C(X)\big) = P_\theta\big(X \in A(\theta)\big) \ge 1 - \alpha

逆に、信頼区間 CC があれば、A(θ0)={x:θ0∈C(x)}A(\theta_0) = \{x : \theta_0 \in C(x)\} が有意水準 α\alpha の検定を与えます。区間と検定は、同じものを裏表から見ているのです。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 検定が一様最強力なら、裏返した片側信頼限界は、誤った値を含む確率が最も小さくなります。これを一様最精密と呼びます。検定のよさが、区間のよさに移るわけです。

では、離散型に使いましょう。離散型では Fθ(T)F_\theta(T) が一様分布になりません。代わりに、次の補題が成り立ちます。

補題:FF を離散型の統計量 TT の分布関数とすると、0<u<10 < u < 1 に対して P(F(T)≤u)≤uP(F(T) \le u) \le u である。

証明です。F(t)≤uF(t) \le u を満たす最大の tt を t∗t^* とします。FF は単調なので、F(T)≤uF(T) \le u は T≤t∗T \le t^* と同じです。よって確率は F(t∗)≤uF(t^*) \le u です。

この補題により、両裾の確率がともに α/2\alpha/2 より大きい値だけを受容域にすれば、第一種の過誤の確率は α\alpha 以下です。裏返すと、次の区間ができます。TT が θ\theta の増加とともに大きくなりやすい分布なら、tt を観測したときの上下限は次の方程式の解です。

PθL(T≥t)=α2,PθU(T≤t)=α2P_{\theta_L}(T \ge t) = \frac{\alpha}{2}, \qquad P_{\theta_U}(T \le t) = \frac{\alpha}{2}

ここがポイントです。補題が不等式なので、被覆確率は 1−α1 - \alpha 以上 です。離散型では、保証は守れますが、ぴったりにはできません。

例題:ポアソン分布の正確な信頼区間

X∼Po(λ)X \sim Po(\lambda) を1回観測する。(1) 自然数 xx について P(X≥x)=P(χ2(2x)≤2λ)P(X \ge x) = P(\chi^2(2x) \le 2\lambda) を示せ。(2) λ\lambda の信頼水準 1−α1 - \alpha の信頼区間を、カイ二乗分布の上側パーセント点で表せ。(3) x=7x = 7 のとき95%信頼区間を求めよ。

【解答】

(1) 単位時間あたり1回の率で起こるポアソン過程を考える。時間 λ\lambda までの発生回数は Po(λ)Po(\lambda) に従う。xx 回目の発生時刻を YY とすると、YY はガンマ分布 Ga(x,1)Ga(x, 1) に従い、2Y∼χ2(2x)2Y \sim \chi^2(2x) である。「時間 λ\lambda までに xx 回以上起こる」ことと「xx 回目の発生が時刻 λ\lambda 以前」は同じ事象なので、P(X≥x)=P(Y≤λ)=P(χ2(2x)≤2λ)P(X \ge x) = P(Y \le \lambda) = P(\chi^2(2x) \le 2\lambda) である。

(2) 下限は P(χ2(2x)≤2λL)=α/2P(\chi^2(2x) \le 2\lambda_L) = \alpha/2 を解いて、λL=12χ1−α/22(2x)\lambda_L = \frac{1}{2}\chi^2_{1 - \alpha/2}(2x) である。上限は、P(X≤x)=1−P(X≥x+1)=P(χ2(2x+2)>2λU)=α/2P(X \le x) = 1 - P(X \ge x + 1) = P(\chi^2(2x + 2) > 2\lambda_U) = \alpha/2 を解いて、λU=12χα/22(2x+2)\lambda_U = \frac{1}{2}\chi^2_{\alpha/2}(2x + 2) である。ただし x=0x = 0 のときは λL=0\lambda_L = 0 とする。

(3) χ0.9752(14)=5.63\chi^2_{0.975}(14) = 5.63、χ0.0252(16)=28.85\chi^2_{0.025}(16) = 28.85 より、答えは [2.81, 14.42] である。

この区間の被覆確率を、ポアソン確率を足し上げて計算すると、λ=1,3,5,10\lambda = 1, 3, 5, 10 で 0.981、0.988、0.980、0.975 です。どれも0.95を上回ります。保証は確実ですが、そのぶん区間は広めです。内容量を割らないように多めに詰めた袋、というイメージです。

以上が、検定を裏返す作り方についての解説です。

作り方③:漸近正規性と保証の崩れ方

最後に、最も手軽な漸近的な区間を見ていきましょう。

前回の記事の漸近正規性を使います。n(θ^−θ)→N(0,σ2(θ))\sqrt{n}(\hat{\theta} - \theta) \to N(0, \sigma^2(\theta)) で、σ^\hat{\sigma} が σ(θ)\sigma(\theta) の一致推定量なら、スラツキーの定理より次が成り立ちます。

n(θ^−θ)σ^→N(0,1)\frac{\sqrt{n}(\hat{\theta} - \theta)}{\hat{\sigma}} \to N(0, 1)

したがって、区間 θ^±zα/2 σ^/n\hat{\theta} \pm z_{\alpha/2}\,\hat{\sigma}/\sqrt{n} の被覆確率は、各 θ\theta で 1−α1 - \alpha に収束します。ここで「各 θ\theta で」という断りが重要です。

二項分布の Wald 型区間 p^±zα/2p^(1−p^)/n\hat{p} \pm z_{\alpha/2}\sqrt{\hat{p}(1 - \hat{p})/n} を考えましょう。X=0X = 0 のとき、p^=0\hat{p} = 0 なので区間は1点 {0}\{0\} に潰れます。p>0p > 0 を含みません。つまり被覆確率は、次の不等式を満たします。

γ(p)≤Pp(X≥1)=1−(1−p)n\gamma(p) \le P_p(X \ge 1) = 1 - (1 - p)^n

右辺は p→0p \to 0 で0に近づきます。したがって、どんなに nn が大きくても、信頼係数は0です。各 pp で被覆確率が0.95に近づくことと、全体の下限が0であることは、矛盾しません。nn を増やしても、収束の遅い pp が必ず端に残るからです。

例えるなら、地域ごとに順に開通していく道路工事です。どの家もいつかは開通しますが、ある日を切り取れば、必ずどこかに未開通の家があります。収束が θ\theta について一様でないとは、こういうことです。

では、近似をよくするには、どうすればよいでしょうか? 手が2つあります。

【近似を改善する2つの手】

  1. スコア型: 分散に θ^\hat{\theta} を代入せず、θ\theta のまま不等式を解く
  2. 分散安定化変換: デルタ法で、分散が θ\theta によらなくなる関数 gg に変換してから区間を作る

分散安定化の条件を導きます。n(θ^−θ)→N(0,σ2(θ))\sqrt{n}(\hat{\theta} - \theta) \to N(0, \sigma^2(\theta)) なら、デルタ法より n(g(θ^)−g(θ))→N(0,g′(θ)2σ2(θ))\sqrt{n}(g(\hat{\theta}) - g(\theta)) \to N(0, g'(\theta)^2 \sigma^2(\theta)) です。分散を定数にしたいので、g′(θ)=c/σ(θ)g'(\theta) = c / \sigma(\theta) とします。これを積分した関数が gg です。

例題:ポアソン分布の分散安定化

X1,…,XnX_1, \ldots, X_n は Po(λ)Po(\lambda) に独立に従う。(1) 漸近分散が λ\lambda によらない変換 gg を導け。(2) それを用いた信頼水準 1−α1 - \alpha の近似信頼区間を構成せよ。(3) n=20n = 20、xˉ=2.5\bar{x} = 2.5 のとき、95%信頼区間を求めよ。

【解答】

(1) 中心極限定理より n(Xˉ−λ)→N(0,λ)\sqrt{n}(\bar{X} - \lambda) \to N(0, \lambda) である。σ(λ)=λ\sigma(\lambda) = \sqrt{\lambda} なので g′(λ)=1/λg'(\lambda) = 1/\sqrt{\lambda} とおくと、g(λ)=2λg(\lambda) = 2\sqrt{\lambda} である。デルタ法より次が成り立つ。

n(2Xˉ−2λ)→N(0,1)\sqrt{n}\big(2\sqrt{\bar{X}} - 2\sqrt{\lambda}\big) \to N(0, 1)

(2) 不等式 ∣2n(Xˉ−λ)∣≤zα/2|2\sqrt{n}(\sqrt{\bar{X}} - \sqrt{\lambda})| \le z_{\alpha/2} を λ\sqrt{\lambda} について解いて、両辺を2乗する。左端が負にならないとき、次の区間を得る。

(Xˉ−zα/22n)2≤λ≤(Xˉ+zα/22n)2\left(\sqrt{\bar{X}} - \frac{z_{\alpha/2}}{2\sqrt{n}}\right)^2 \le \lambda \le \left(\sqrt{\bar{X}} + \frac{z_{\alpha/2}}{2\sqrt{n}}\right)^2

(3) 2.5=1.581\sqrt{2.5} = 1.581、1.96÷(220)=0.2191.96 \div (2\sqrt{20}) = 0.219 より、1.3622=1.8551.362^2 = 1.855、1.8002=3.2411.800^2 = 3.241 である。答えは [1.86, 3.24] である。

同じデータで、4つの区間を並べてみましょう。

区間下限上限
Wald 型1.813.19
スコア型1.903.30
分散安定化1.863.24
正確な区間1.863.30

スコア型は、(xˉ−λ)2≤zα/22 λ/n(\bar{x} - \lambda)^2 \le z_{\alpha/2}^2\,\lambda / n を λ\lambda の2次不等式として解いたものです。正確な区間は、合計が Po(nλ)Po(n\lambda) に従うことから、前の節の結果を nn で割りました。

n=5n = 5 のときの本当の被覆確率は、次のとおりです。

真の λ\lambda0.20.512
Wald 型0.6320.9170.8700.926
スコア型0.9200.9580.9610.963
分散安定化0.6130.9040.9460.956
正確な区間0.9810.9860.9800.975

表の見方を説明します。λ\lambda が小さいと合計が0になりやすく、Wald 型は潰れて外れます。スコア型は、表のどの値でも0.9以上です。分散安定化は、λ\lambda がある程度大きければよいのですが、小さい側では崩れます。正確な区間だけが、0.95を下回りません。

試験のポイント:漸近的な区間について書けるのは「被覆確率が各 θ\theta で 1−α1 - \alpha に収束する」までです。「信頼係数が 1−α1 - \alpha である」とは書けません。

以上が、漸近的な信頼区間についての解説です。

細かい計算を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「ピボットは等号、検定の裏返しは以上、漸近は極限」という保証の違いだけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は信頼区間の3つの構成法と、その保証の強さについて紹介しました。ピボットなら被覆確率はちょうど 1−α1 - \alpha、離散型で検定を裏返せば 1−α1 - \alpha 以上、漸近正規性なら極限で 1−α1 - \alpha です。答案では、どの作り方で、どの保証が得られたのかを言葉にすることが大切です。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 確率的に動くのは区間で、θ\theta は定数。信頼係数は被覆確率の下限で、最低保証の値。
  • 確率積分変換により、連続型なら必ずピボットが作れる。最短の区間は g(a)=g(b)g(a) = g(b) などの条件で決まる。
  • 信頼区間は、検定で棄却されなかった値の集まり。離散型の正確な区間はこの方法で作り、被覆確率は 1−α1 - \alpha 以上になる。
  • 漸近的な区間の収束は各 θ\theta ごとで、一様とは限らない。Wald 型の信頼係数は、どの nn でも0である。
  • 分散安定化変換は、g′(θ)=c/σ(θ)g'(\theta) = c / \sigma(\theta) を積分して求める。

キーワードのおさらい

  • 被覆確率: 真の値が θ\theta のとき、区間が θ\theta を含む確率。θ\theta の関数
  • 信頼係数: 被覆確率の下限。その区間が保証する最低の確率
  • 信頼区間の構成: ピボット法、検定の裏返し、漸近正規性の3つが基本
  • ピボット: データと θ\theta の関数で、分布が θ\theta によらない量
  • 確率積分変換: 連続型の統計量を自分の分布関数に通すと U(0,1)U(0, 1) に従うこと
  • 分散安定化変換: 漸近分散が θ\theta によらなくなるようにする変換

さて、信頼区間を裏返すと検定になることが分かりました。では、検定そのものを数学の言葉で書くと、どうなるでしょうか? 「棄却域」も「p値」も、きちんと定義すると見え方が変わります。

次回は、検定を関数として定義し直す「検定の基礎」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 二項分布の Wald 型の95%信頼区間の説明として、最も適切なものはどれか。
問2. 率 θ\theta の指数分布から大きさ8の標本をとると、合計が20だった。χ0.9752(16)=6.91\chi^2_{0.975}(16) = 6.91、χ0.0252(16)=28.85\chi^2_{0.025}(16) = 28.85 のとき、θ\theta の95%信頼区間に最も近いものはどれか。
問3. U(0,θ)U(0, \theta) から大きさ2の標本をとると、最大値は5だった。ピボット X(2)/θX_{(2)}/\theta による、長さが最短の90%信頼区間に最も近いものはどれか。
問4. ポアソン分布に従う XX を1回観測すると x=0x = 0 だった。λ\lambda の正確な95%上側信頼限界に最も近いものはどれか。
問5. 平均 θ\theta の指数分布の標本平均 Xˉ\bar{X} について、漸近分散が θ\theta によらなくなる変換 gg として、正しいものはどれか。