統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-16 統計数理

検定の基礎 — 検定の原理

  • 仮説
  • 検定統計量
  • p値
  • 有意水準
  • 棄却域
  • 第一種の過誤
  • 第二種の過誤
  • 検出力(検定力)
  • 検出力曲線

はじめに

「5%で検定せよ、と言われたのに、棄却域の確率が5%にならない……」

例えば、成功確率0.3とされる試行を12回観測して、成功回数が「X≥7X \ge 7 なら棄却」と決めたとします。計算すると棄却の確率は3.9%です。「X≥6X \ge 6 なら棄却」にすると11.8%です。どちらも5%ではありません。では、ちょうど5%の検定は作れないのでしょうか?

実は、作れます。検定を「棄却するかしないか」ではなく、「どれくらいの確率で棄却するか」を返す関数だと考えればよいのです。そして、そう定義し直すと、第一種の過誤も第二種の過誤も、1本の関数から読み取れるようになります。

そこで登場するのが、今回の主役 検出力関数 です。検出力(検定力)を θ\theta の関数として見たもので、そのグラフが 検出力曲線 です。

前回の記事では、信頼区間を裏返すと検定になることを学びました。今回の記事では、検定を数学の言葉で定義し直し、検出力曲線を式から導いて、p値が確率変数としてどう振る舞うかを証明つきで解説します。

検定を関数として定義する

はじめに、検定の定義を数学の形に整えます。

準1級で学んだ枠組みを、短く思い出しましょう。仮説 は母数についての主張で、母数空間を Θ0\Theta_0 と Θ1\Theta_1 に分けて H0:θ∈Θ0H_0: \theta \in \Theta_0 対 H1:θ∈Θ1H_1: \theta \in \Theta_1 と書きます。データから作る 検定統計量 TT の値のうち、H0H_0 を棄却する範囲が 棄却域 RR です。

1級では、これを1つの関数にまとめます。データ xx に、H0H_0 を棄却する確率を対応させる関数 φ(x)\varphi(x) を 検定関数 と呼びます。

φ:X→[0,1]\varphi : \mathcal{X} \to [0, 1]

φ(x)=1\varphi(x) = 1 なら必ず棄却、φ(x)=0\varphi(x) = 0 なら棄却しません。棄却域 RR による普通の検定は、RR の上で1、外で0という特別な場合です。0と1の間の値をとるものを 確率化検定 と呼びます。

例えるなら、裁判の判決です。ふつうの検定は「有罪か無罪か」を決めます。確率化検定は、判断が境目の事件だけ、くじを引いて決めます。実務では使いませんが、定理の証明では欠かせない道具です。

検定関数のよさは、次の1本の関数にすべて集約されます。

π(θ)=Eθ[φ(X)]\pi(\theta) = E_\theta[\varphi(X)]

π(θ)\pi(\theta) は、真の値が θ\theta のときに棄却する確率で、検出力関数 と呼びます。β\beta は第二種の過誤の確率に使うので、ここでは π\pi と書きます。

【検出力関数から読めるもの】

  • θ∈Θ0\theta \in \Theta_0 のとき: π(θ)\pi(\theta) が 第一種の過誤 の確率
  • θ∈Θ1\theta \in \Theta_1 のとき: 1−π(θ)1 - \pi(\theta) が 第二種の過誤 の確率
  • θ∈Θ1\theta \in \Theta_1 のとき: π(θ)\pi(\theta) が 検出力

ここがポイントです。第一種の過誤の確率も第二種の過誤の確率も、定数ではなく θ\theta の関数です。α\alpha や β\beta という1つの数は、その関数の特定の点を読んだものです。

H0H_0 の上での最大の値を、検定の大きさと呼びます。

大きさ=sup⁡θ∈Θ0π(θ)\text{大きさ} = \sup_{\theta \in \Theta_0} \pi(\theta)

大きさが α\alpha 以下の検定を、有意水準 α\alpha の検定と呼びます。「大きさ」は検定が実際に持つ値、「有意水準」はこちらが決める上限です。冒頭の「X≥7X \ge 7」は、有意水準5%の検定で、大きさは3.9%です。

なぜ H0H_0 の側だけに上限を置くのでしょうか? 検定の原理は、確率的な背理法だからです。「H0H_0 が正しいと仮定すると、めったに起きないことが起きた。だから仮定を疑う」と考えます。裁判の「疑わしきは罰せず」と同じで、H0H_0 の無罪を守る確率を先に固定し、そのうえで有罪を見抜く力を競います。

例題:確率化検定を作る

X∼B(12,p)X \sim B(12, p) を観測し、H0:p=0.3H_0: p = 0.3 対 H1:p>0.3H_1: p > 0.3 を、大きさがちょうど0.05の検定で調べたい。XX の大きい値から棄却する検定関数を構成せよ。また、p=0.6p = 0.6 での検出力を求めよ。ただし、p=0.3p = 0.3 のとき P(X≥7)=0.0386P(X \ge 7) = 0.0386、P(X=6)=0.0792P(X = 6) = 0.0792、p=0.6p = 0.6 のとき P(X≥7)=0.6652P(X \ge 7) = 0.6652、P(X=6)=0.1766P(X = 6) = 0.1766 である。

【解答】

P0.3(X≥7)=0.0386<0.05<P0.3(X≥6)=0.1178P_{0.3}(X \ge 7) = 0.0386 < 0.05 < P_{0.3}(X \ge 6) = 0.1178 なので、X≥7X \ge 7 では必ず棄却し、X=6X = 6 では確率 γ\gamma で棄却し、X≤5X \le 5 では棄却しない検定を考える。

φ(x)={1(x≥7)γ(x=6)0(x≤5)\varphi(x) = \begin{cases} 1 & (x \ge 7) \\ \gamma & (x = 6) \\ 0 & (x \le 5) \end{cases}

大きさの条件 E0.3[φ(X)]=0.0386+0.0792γ=0.05E_{0.3}[\varphi(X)] = 0.0386 + 0.0792\gamma = 0.05 より、γ=0.0114÷0.0792=0.144\gamma = 0.0114 \div 0.0792 = 0.144 である。

検出力は π(0.6)=0.6652+0.144×0.1766=0.691\pi(0.6) = 0.6652 + 0.144 \times 0.1766 = 0.691 である。

確率化により、検出力が0.665から0.691に上がりました。余っていた予算を、境目の値に回したぶんです。

試験のポイント:「有意水準 α\alpha の検定」は大きさが α\alpha 以下の検定です。第一種の過誤の確率は、複合仮説では θ\theta の関数になるので、sup⁡\sup をとります。

以上が、検定を関数として定義する話についての解説です。

検出力曲線を式から導く

次に、検出力関数を実際に計算して、曲線の性質を調べます。

理想の検定の検出力曲線は、Θ0\Theta_0 の上で0、Θ1\Theta_1 の上で1の階段です。どんな病気も見逃さず、健康な人を決して引っかけない健康診断のようなものです。現実の曲線は、この階段をなめらかにしたS字になります。よい検定とは、階段に近い検定です。

1つずつ見ていきましょう。

1. 片側検定

正規分布 N(μ,σ2)N(\mu, \sigma^2)(σ\sigma 既知)で、H0:μ≤μ0H_0: \mu \le \mu_0 対 H1:μ>μ0H_1: \mu > \mu_0 を考えます。棄却域は n(Xˉ−μ0)/σ>zα\sqrt{n}(\bar{X} - \mu_0)/\sigma > z_\alpha です。δ=n(μ−μ0)/σ\delta = \sqrt{n}(\mu - \mu_0)/\sigma とおくと、n(Xˉ−μ)/σ=Z\sqrt{n}(\bar{X} - \mu)/\sigma = Z が標準正規分布に従うので、次のように計算できます。

π(μ)=P(Z+δ>zα)=Φ(δ−zα)\pi(\mu) = P(Z + \delta > z_\alpha) = \Phi(\delta - z_\alpha)

Φ\Phi は標準正規分布の分布関数です。π\pi は μ\mu の増加関数です。したがって、μ≤μ0\mu \le \mu_0 の中で最大になるのは境目 μ=μ0\mu = \mu_0 で、大きさは π(μ0)=Φ(−zα)=α\pi(\mu_0) = \Phi(-z_\alpha) = \alpha です。

これが、複合仮説 μ≤μ0\mu \le \mu_0 の検定を、単純仮説 μ=μ0\mu = \mu_0 の棄却域で作ってよい理由です。検出力関数の単調性が根拠なのです。

同じ議論は二項分布でも成り立ちます。ここでは証明の見本として、微分を使わない方法を紹介します。独立な一様乱数 U1,…,UnU_1, \ldots, U_n を用意して、Xp=#{i:Ui≤p}X_p = \#\{i : U_i \le p\} とします。Xp∼B(n,p)X_p \sim B(n, p) です。p<p′p < p' なら、すべての結果について Xp≤Xp′X_p \le X_{p'} が成り立ちます。したがって、P(Xp≥k)≤P(Xp′≥k)P(X_p \ge k) \le P(X_{p'} \ge k) です。同じ乱数の上に2つの確率変数を並べて比べるこの手法を、カップリングと呼びます。

2. 両側検定と不偏性

次は H0:μ=μ0H_0: \mu = \mu_0 対 H1:μ≠μ0H_1: \mu \ne \mu_0 です。棄却域は ∣Z0∣>zα/2|Z_0| > z_{\alpha/2} で、Z0=n(Xˉ−μ0)/σZ_0 = \sqrt{n}(\bar{X} - \mu_0)/\sigma です。z=zα/2z = z_{\alpha/2} と書くと、検出力関数は次の形になります。

π(δ)=Φ(δ−z)+Φ(−δ−z)\pi(\delta) = \Phi(\delta - z) + \Phi(-\delta - z)

δ\delta で微分すると、ϕ\phi を標準正規分布の密度として、π′(δ)=ϕ(δ−z)−ϕ(δ+z)\pi'(\delta) = \phi(\delta - z) - \phi(\delta + z) です。δ>0\delta > 0 なら ∣δ−z∣<δ+z|\delta - z| < \delta + z なので、π′(δ)>0\pi'(\delta) > 0 です。π\pi は偶関数なので、δ=0\delta = 0 で最小値 α\alpha をとる、谷の形になります。

具体的に見てみましょう。α=0.05\alpha = 0.05 の数値は次のとおりです。

δ\delta−1-10123
両側検定0.1700.0500.1700.5160.851
右片側検定0.0040.0500.2590.6390.912

表の見方を説明します。δ>0\delta > 0 の側では、右片側検定のほうが強力です。予算の全部を右に張っているからです。その代わり、δ=−1\delta = -1 では検出力が0.004と、α\alpha より小さくなります。

有意水準 α\alpha の検定のうち、Θ1\Theta_1 のどの点でも π(θ)≥α\pi(\theta) \ge \alpha を満たすものを、不偏検定 と呼びます。何もデータを見ずに確率 α\alpha のくじで棄却するだけでも、検出力は α\alpha です。不偏性は「くじ引きには負けない」という、最低限の品質です。右片側検定は、両側の対立仮説に対しては不偏ではありません。

また、Θ1\Theta_1 の各点で n→∞n \to \infty のとき検出力が1に近づく検定を、一致検定と呼びます。固定した μ≠μ0\mu \ne \mu_0 では ∣δ∣=n ∣μ−μ0∣/σ→∞|\delta| = \sqrt{n}\,|\mu - \mu_0|/\sigma \to \infty なので、上の式より π→1\pi \to 1 です。

例題:検出力関数を閉じた形で求める

X1,…,X6X_1, \ldots, X_6 は U(0,θ)U(0, \theta) に独立に従う。H0:θ≤1H_0: \theta \le 1 対 H1:θ>1H_1: \theta > 1 を、棄却域 X(6)>cX_{(6)} > c で検定する。(1) 検出力関数を求めよ。(2) 大きさが0.05となる cc(0<c<10 < c < 1)を求めよ。(3) θ=1.2\theta = 1.2 の検出力を求めよ。

【解答】

(1) X(6)≤cX_{(6)} \le c は全部の XiX_i が cc 以下ということなので、θ>c\theta > c のとき Pθ(X(6)≤c)=(c/θ)6P_\theta(X_{(6)} \le c) = (c/\theta)^6 である。よって、次の式を得る。

π(θ)={0(θ≤c)1−(c/θ)6(θ>c)\pi(\theta) = \begin{cases} 0 & (\theta \le c) \\ 1 - (c/\theta)^6 & (\theta > c) \end{cases}

(2) π\pi は θ\theta の非減少関数なので、Θ0\Theta_0 での最大は θ=1\theta = 1 のときの 1−c61 - c^6 である。1−c6=0.051 - c^6 = 0.05 より、c=0.951/6=0.9915c = 0.95^{1/6} = 0.9915 である。

(3) π(1.2)=1−0.95÷1.26=1−0.318=0.682\pi(1.2) = 1 - 0.95 \div 1.2^6 = 1 - 0.318 = 0.682 である。

正規分布のS字と違って、θ≤c\theta \le c で検出力がぴったり0になるのが特徴です。

以上が、検出力曲線の導出についての説明です。

p値を確率変数として見る

最後に、p値の数学的な性質を見ていきましょう。

p値 は、準1級では「H0H_0 のもとで、観測値かそれより極端な値が出る確率」と学びました。1級では、次の定義も押さえます。有意水準ごとの棄却域 RαR_\alpha が、α\alpha を小さくすると縮むように並んでいるとき、p値は次の値です。

p(x)=inf⁡{α:x∈Rα}p(x) = \inf\{\alpha : x \in R_\alpha\}

言葉で言うと、「このデータを棄却できる、いちばん厳しい有意水準」です。TT が大きいほど棄却する検定で、H0H_0 が単純仮説なら、tt を観測したときのp値は PH0(T≥t)P_{H_0}(T \ge t) と一致します。

そして、データから計算するので、p値それ自体が確率変数 です。例えるなら、学年順位です。「帰無仮説の世界の生徒全員の中で、上から何%の位置にいるか」がp値です。順位なので、全員を並べれば0%から100%まで均等に散らばります。これを定理にしたものが次の主張です。

定理1:H0H_0 が単純仮説で、TT の分布関数 FF が連続かつ狭義単調増加なら、H0H_0 のもとで p(X)∼U(0,1)p(X) \sim U(0, 1) である。

証明です。p(X)=1−F(T)p(X) = 1 - F(T) です。前回の確率積分変換より F(T)∼U(0,1)F(T) \sim U(0, 1) なので、1−F(T)1 - F(T) も U(0,1)U(0, 1) に従います。

定理2:離散型の場合や複合仮説の場合でも、θ∈Θ0\theta \in \Theta_0 なら、0<u<10 < u < 1 に対して Pθ(p(X)≤u)≤uP_\theta(p(X) \le u) \le u である。

証明です。複合仮説のp値は p(x)=sup⁡θ∈Θ0Pθ(T≥t)p(x) = \sup_{\theta \in \Theta_0} P_\theta(T \ge t) と定めます。固定した θ∈Θ0\theta \in \Theta_0 について G(t)=Pθ(T≥t)G(t) = P_\theta(T \ge t) とおくと、p(X)≥G(T)p(X) \ge G(T) です。よって、Pθ(p(X)≤u)≤Pθ(G(T)≤u)P_\theta(p(X) \le u) \le P_\theta(G(T) \le u) です。G(t)≤uG(t) \le u を満たす最小の tt を t∗t^* とすると、GG は単調なので G(T)≤uG(T) \le u は T≥t∗T \ge t^* と同じで、その確率は G(t∗)≤uG(t^*) \le u です。

ここがポイントです。定理2の不等式こそ、「p≤αp \le \alpha なら棄却」という判定で第一種の過誤が α\alpha 以下に収まる理由です。

具体的に見てみましょう。X∼B(4,0.5)X \sim B(4, 0.5) を H0H_0 として、右片側のp値を計算します。

xx01234
確率0.06250.25000.37500.25000.0625
p値10.93750.68750.31250.0625

P(p≤0.1)=P(X=4)=0.0625P(p \le 0.1) = P(X = 4) = 0.0625 で、0.1以下です。P(p≤0.5)=0.3125P(p \le 0.5) = 0.3125 も0.5以下です。離散型のp値は一様分布より大きい側に寄ります。だから検定は保守的になります。

せっかくなので、H1H_1 のもとでのp値も見てみましょう。p≤up \le u は有意水準 uu で棄却することと同じなので、Pθ(p≤u)P_\theta(p \le u) は有意水準 uu の検出力そのものです。右片側の zz 検定なら、次の式です。

Pθ(p≤u)=Φ(δ−zu)P_\theta(p \le u) = \Phi(\delta - z_u)

δ=2\delta = 2 のとき、P(p≤0.05)=0.639P(p \le 0.05) = 0.639、P(p≤0.01)=0.372P(p \le 0.01) = 0.372 です。H0H_0 のもとでは平らだったp値の分布が、H1H_1 のもとでは0の近くに集まります。検出力曲線とp値は、同じものを別の角度から見ていたわけです。

例題:p値の統合

3つの独立な研究で、同じ単純仮説 H0H_0 を連続型の統計量で検定すると、p値は0.08、0.10、0.20だった。(1) H0H_0 のもとで −2log⁡p∼χ2(2)-2\log p \sim \chi^2(2) を示せ。(2) W=−2∑i=13log⁡piW = -2\sum_{i=1}^{3} \log p_i の H0H_0 のもとでの分布を求めよ。(3) 上の結果から、WW が大きいとき棄却する検定を、有意水準5%で行え。χ0.052(6)=12.59\chi^2_{0.05}(6) = 12.59 とする。

【解答】

(1) 定理1より p∼U(0,1)p \sim U(0, 1) である。w>0w > 0 に対して、P(−2log⁡p>w)=P(p<e−w/2)=e−w/2P(-2\log p > w) = P(p < e^{-w/2}) = e^{-w/2} である。これは自由度2のカイ二乗分布の生存関数である。

(2) 3つのp値は独立なので、再生性より W∼χ2(6)W \sim \chi^2(6) である。

(3) W=−2(log⁡0.08+log⁡0.10+log⁡0.20)=12.88W = -2(\log 0.08 + \log 0.10 + \log 0.20) = 12.88 である。12.88>12.5912.88 > 12.59 なので、H0H_0 を棄却する。

1つずつでは5%で有意でない結果が、3つ合わせると有意になりました。弱い証拠も、独立に積み重なれば強い証拠になるのです。この統合法をフィッシャーの方法と呼びます。

試験のポイント:H0H_0 のもとで p∼U(0,1)p \sim U(0, 1) は、連続型かつ単純仮説のときの結論です。論述では、この条件を書いたうえで確率積分変換に帰着させます。

以上が、p値の性質についての解説です。

細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「検定は関数で、よさは検出力関数で測る」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は検定を検定関数として定義し直し、検出力関数とp値の性質を導きました。2種類の過誤も、有意水準も、検出力も、すべて π(θ)\pi(\theta) という1本の曲線の読み方の違いです。p値も、この曲線と裏表の関係にあります。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 検定はデータを棄却確率に写す関数。確率化検定を使えば、大きさをちょうど α\alpha にできる。
  • 検出力関数 π(θ)\pi(\theta) は、Θ0\Theta_0 で第一種の過誤の確率、Θ1\Theta_1 で検出力を表す。
  • 片側検定の大きさは、検出力関数の単調性により、境目の θ0\theta_0 で決まる。
  • 両側 zz 検定は不偏で、右片側検定は両側の対立仮説に対して不偏ではない。
  • p値は確率変数。連続型の単純仮説では U(0,1)U(0, 1) に従い、一般には P(p≤u)≤uP(p \le u) \le u が成り立つ。

キーワードのおさらい

  • 仮説: 母数についての主張。Θ0\Theta_0 と Θ1\Theta_1 で表す
  • 検定統計量: 判断に使う、データから計算する量
  • 棄却域: H0H_0 を棄却するデータの範囲
  • 有意水準: 検定の大きさの上限として決める値
  • 第一種の過誤: H0H_0 が真なのに棄却する誤り
  • 第二種の過誤: H1H_1 が真なのに棄却しない誤り
  • 検出力(検定力): H1H_1 が真のときに棄却する確率
  • 検出力曲線: 検出力を θ\theta の関数として描いた曲線
  • p値: そのデータを棄却できる最小の有意水準
  • 検定関数: データに棄却する確率を対応させる関数

さて、検定のよさを測る物差しが手に入りました。すると、次の問いが自然に浮かびます。同じ大きさの検定の中で、検出力がいちばん高い検定はどれでしょうか? そして、それを式で作ることはできるのでしょうか?

次回は、「ネイマン・ピアソンの基本定理」から尤度比検定、ワルド型検定、スコア型検定までを導く「検定法の導出」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 検出力関数 π(θ)\pi(\theta) の説明として、正しいものはどれか。
問2. X∼B(10,p)X \sim B(10, p) で H0:p=0.2H_0: p = 0.2 対 H1:p>0.2H_1: p > 0.2 を、大きさがちょうど0.05の確率化検定で調べる。p=0.2p = 0.2 で P(X≥5)=0.0328P(X \ge 5) = 0.0328、P(X=4)=0.0881P(X = 4) = 0.0881 である。X=4X = 4 のときに棄却する確率 γ\gamma に最も近いものはどれか。
問3. U(0,θ)U(0, \theta) からの大きさ5の標本で、H0:θ≤1H_0: \theta \le 1 対 H1:θ>1H_1: \theta > 1 を、大きさ0.05の棄却域 X(5)>cX_{(5)} > c で検定する。θ=1.25\theta = 1.25 の検出力に最も近いものはどれか。
問4. σ=10\sigma = 10 の正規母集団で、n=25n = 25 の両側 zz 検定(z0.025=1.96z_{0.025} = 1.96)を行う。真の平均が μ0+4\mu_0 + 4 のときの検出力に最も近いものはどれか。
問5. 単純仮説 H0H_0 を連続型の統計量で検定する。H0H_0 が正しいとき、p値が0.2以上0.5以下になる確率として、正しいものはどれか。