統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-10 統計数理

尤度と最尤推定

  • 尤度関数
  • 対数尤度関数
  • 有効スコア関数
  • 最尤推定

はじめに

「最尤推定量を求めよって、どこまで書けば満点なの?」

準1級では、対数尤度を微分して0とおき、推定値を計算しました。ところが、論述の答案で「微分して0とおくと θ^=…\hat{\theta} = \dots」とだけ書くと、それでは足りないことがあります。その点が本当に最大なのかを、確かめていないからです。

霧の中の山登りを想像してください。足元が平らな場所を見つけても、そこが山頂とは限りません。尾根の途中かもしれないし、谷底かもしれませんよね。尤度の山でも、同じことが起きます。

実は、最尤推定の理論は、対数尤度を微分した1つの関数に集約されます。この関数の性質を押さえれば、推定量の計算も、次の記事以降の理論も、すべて見通しよく書けるようになります。

そこで登場するのが、今回の主役 有効スコア関数 です。有効スコア関数とは、対数尤度関数を母数で微分した関数で、単にスコア関数とも呼びます。

前回の記事では、情報を失わない要約である十分統計量を学びました。今回の記事では、尤度関数の書き下ろし方、有効スコア関数の性質の証明、そして最尤推定を答案として書き切る方法について解説します。

尤度関数:モデルから式を書き下ろす

はじめに、尤度関数の定義と書き方について解説します。

準1級の復習です。データ x\boldsymbol{x} を固定して、同時確率(密度)を母数 θ\theta の関数と見たものを 尤度関数 と呼び、その対数を 対数尤度関数 と呼びます。

L(θ)=f(x;θ)=∏i=1nf(xi;θ),ℓ(θ)=log⁡L(θ)=∑i=1nlog⁡f(xi;θ)L(\theta) = f(\boldsymbol{x};\theta) = \prod_{i=1}^{n} f(x_i;\theta), \qquad \ell(\theta) = \log L(\theta) = \sum_{i=1}^{n} \log f(x_i;\theta)

尤度は、オーディションの点数のようなものです。審査員はデータで、候補者は θ\theta の値です。「その値が真なら、このデータはどのくらい起きやすいか」で、候補者に点数がつきます。

ここで注意が2つあります。

1つ目は、尤度は θ\theta の確率ではないということです。候補者全員の点数を足しても、1になる保証はありません。例えば、12回中3回当たる二項分布の尤度を pp で積分すると、∫01(123)p3(1−p)9 dp=1/13\int_0^1 \binom{12}{3} p^3 (1-p)^9\,dp = 1/13 です。

2つ目は、尤度の定数倍には意味がないということです。点数は比べるためのものなので、全員に同じ数を掛けても順位は変わりません。例えば、次の2つの実験を比べてみましょう。

【同じ尤度をもつ2つの実験】

  • 12回引くと決めて、3回当たった: L(p)=(123)p3(1−p)9L(p) = \binom{12}{3} p^3 (1-p)^9(二項分布)
  • 3回当たるまで引いて、12回かかった: L(p)=(112)p3(1−p)9L(p) = \binom{11}{2} p^3 (1-p)^9(負の二項分布)

実験の設計は違いますが、尤度はともに p3(1−p)9p^3(1-p)^9 に比例します。したがって、最尤推定値はどちらも p^=1/4\hat{p} = 1/4 です。

1級の腕の見せどころは、複雑な観測の尤度を自分で書くことです。原則は1つだけで、「観測された事象の確率を、そのまま掛ける」です。

例えば、寿命が率 λ\lambda の指数分布に従う部品5個を試験し、2, 3, 5 の時点で3個が故障して、残り2個は6の時点で動いたまま試験を打ち切ったとします。故障した部品の情報は密度 λe−λt\lambda e^{-\lambda t} で、打ち切った部品の情報は「6より長くもった」という確率 e−6λe^{-6\lambda} です。

L(λ)=∏故障λe−λti∏打ち切りe−λcj=λd e−λτL(\lambda) = \prod_{\text{故障}} \lambda e^{-\lambda t_i} \prod_{\text{打ち切り}} e^{-\lambda c_j} = \lambda^{d}\, e^{-\lambda \tau}

d=3d = 3 は故障数で、τ=2+3+5+6+6=22\tau = 2 + 3 + 5 + 6 + 6 = 22 は総試験時間です。微分すると λ^=d/τ=3/22≈0.136\hat{\lambda} = d/\tau = 3/22 \approx 0.136 で、平均寿命の推定値は約7.3です。打ち切りの2個を無視して故障の3個だけで平均すると3.3になり、長生きした部品を捨てたぶん、大きく過小評価してしまいます。

以上が、尤度関数についての解説です。

有効スコア関数:2つの等式を証明する

次に、最尤法の理論の中心である有効スコア関数について説明します。

有効スコア関数(efficient score function)は、対数尤度関数の傾きです。

U(θ)=∂ℓ(θ)∂θ=∑i=1nu(Xi;θ),u(x;θ)=∂∂θlog⁡f(x;θ)U(\theta) = \frac{\partial \ell(\theta)}{\partial\theta} = \sum_{i=1}^{n} u(X_i;\theta), \qquad u(x;\theta) = \frac{\partial}{\partial\theta}\log f(x;\theta)

U(θ)=0U(\theta) = 0 が 尤度方程式 です。X\boldsymbol{X} が確率変数なので、U(θ)U(\theta) も確率変数です。ここからが1級の話です。UU は次の2つの等式を満たします。

Eθ[U(θ)]=0,Vθ[U(θ)]=−Eθ[∂U(θ)∂θ]E_\theta[U(\theta)] = 0, \qquad V_\theta[U(\theta)] = -E_\theta\left[\frac{\partial U(\theta)}{\partial\theta}\right]

イメージはシーソーです。真の θ\theta の位置で対数尤度の傾きを測ると、データしだいで右上がりにも右下がりにもなります。でも、平均するとちょうど釣り合って、傾きは0です。

等式には、次の 正則条件 が必要です。

【正則条件】

  1. f(x;θ)>0f(x;\theta) > 0 となる xx の範囲(台)が θ\theta によらない
  2. ff は θ\theta について2回微分できる
  3. ∫f dx\int f\,dx を θ\theta で2回微分するとき、微分と積分の順序を交換できる

【証明】

  1. ∫f(x;θ) dx=1\int f(x;\theta)\,dx = 1 を θ\theta で微分する。∂f/∂θ=uf\partial f/\partial\theta = u f なので、∫uf dx=0\int u f\,dx = 0、すなわち Eθ[u]=0E_\theta[u] = 0 である
  2. ∫uf dx=0\int u f\,dx = 0 をもう一度 θ\theta で微分すると、∫(∂u/∂θ)f dx+∫u (∂f/∂θ) dx=0\int (\partial u/\partial\theta) f\,dx + \int u\,(\partial f/\partial\theta)\,dx = 0 である
  3. 第2項は ∫u2f dx\int u^2 f\,dx なので、Eθ[u2]=−Eθ[∂u/∂θ]E_\theta[u^2] = -E_\theta[\partial u/\partial\theta] を得る
  4. UU は独立な u(Xi;θ)u(X_i;\theta) の和なので、Eθ[U]=0E_\theta[U] = 0 で、Vθ[U]=nEθ[u2]=−Eθ[∂U/∂θ]V_\theta[U] = n E_\theta[u^2] = -E_\theta[\partial U/\partial\theta] である

この Eθ[u2]E_\theta[u^2] が、準1級で学んだフィッシャー情報量 I(θ)I(\theta) です。スコアの揺れの大きさが、データのもつ情報の量になっています。

具体的に見てみましょう。ポアソン分布では u=x/λ−1u = x/\lambda - 1 です。E[u]=λ/λ−1=0E[u] = \lambda/\lambda - 1 = 0 で、V[u]=V[X]/λ2=1/λV[u] = V[X]/\lambda^2 = 1/\lambda です。もう一方も −E[∂u/∂λ]=E[X]/λ2=1/λ-E[\partial u/\partial\lambda] = E[X]/\lambda^2 = 1/\lambda で、確かに一致します。

別の例も見てみましょう。正則条件が崩れる U(0,θ)U(0, \theta) では、台の中で u=−1/θu = -1/\theta です。つまり E[u]=−1/θ≠0E[u] = -1/\theta \ne 0 で、等式が成り立ちません。台が θ\theta とともに動くので、手順1の微分で積分の端の項が余分に出るからです。

例題:スコア関数の性質を確かめる

密度 f(x;θ)=(x/θ) e−x2/(2θ)f(x;\theta) = (x/\theta)\,e^{-x^2/(2\theta)}(x>0x > 0、θ>0\theta > 0)からの大きさ nn の標本について、有効スコア関数 U(θ)U(\theta) を求め、Eθ[U]=0E_\theta[U] = 0 を確かめよ。さらに Vθ[U]V_\theta[U] を求めよ。

【答案】

  1. log⁡f=log⁡x−log⁡θ−x2/(2θ)\log f = \log x - \log\theta - x^2/(2\theta) より、u=−1θ+x22θ2u = -\dfrac{1}{\theta} + \dfrac{x^2}{2\theta^2} で、U(θ)=−nθ+∑iXi22θ2U(\theta) = -\dfrac{n}{\theta} + \dfrac{\sum_i X_i^2}{2\theta^2} である
  2. Y=X2Y = X^2 と変換すると、YY の密度は 12θe−y/(2θ)\frac{1}{2\theta}e^{-y/(2\theta)} で、平均 2θ2\theta の指数分布である
  3. E[X2]=2θE[X^2] = 2\theta より、E[u]=−1/θ+2θ/(2θ2)=0E[u] = -1/\theta + 2\theta/(2\theta^2) = 0 である。よって Eθ[U]=0E_\theta[U] = 0 である
  4. V[X2]=4θ2V[X^2] = 4\theta^2 より、V[u]=4θ2/(4θ4)=1/θ2V[u] = 4\theta^2/(4\theta^4) = 1/\theta^2 で、Vθ[U]=n/θ2V_\theta[U] = n/\theta^2 である

答えは Vθ[U]=n/θ2V_\theta[U] = n/\theta^2 です。−E[∂u/∂θ]=−1/θ2+2θ/θ3=1/θ2-E[\partial u/\partial\theta] = -1/\theta^2 + 2\theta/\theta^3 = 1/\theta^2 でも、同じ値になります。

最後に、母数が複数ある場合です。関心のある母数 θ\theta のほかに、じゃまな母数 η\eta(局外母数)があるとします。このとき、θ\theta のスコアには η\eta の不確かさの影響が混ざるので、その分を取り除いた次の量を考えます。

U~θ=Uθ−Iθη Iηη−1 Uη\tilde{U}_\theta = U_\theta - I_{\theta\eta}\, I_{\eta\eta}^{-1}\, U_\eta

IθηI_{\theta\eta} などは、スコアの共分散行列の成分です。これは、UθU_\theta を UηU_\eta に回帰したときの残差にあたります。

例えば、yi=α+βxi+εiy_i = \alpha + \beta x_i + \varepsilon_i(σ2\sigma^2 既知)で、β\beta に関心があるとしましょう。Uα=∑iεi/σ2U_\alpha = \sum_i \varepsilon_i/\sigma^2、Uβ=∑ixiεi/σ2U_\beta = \sum_i x_i\varepsilon_i/\sigma^2 で、Iβα/Iαα=xˉI_{\beta\alpha}/I_{\alpha\alpha} = \bar{x} です。代入すると、U~β=∑i(xi−xˉ)εi/σ2\tilde{U}_\beta = \sum_i (x_i - \bar{x})\varepsilon_i/\sigma^2 となります。その分散は Sxx/σ2S_{xx}/\sigma^2 で、逆数は最小二乗推定量の分散 σ2/Sxx\sigma^2/S_{xx} に一致します。切片が分からないぶん、β\beta の情報が ∑ixi2/σ2\sum_i x_i^2/\sigma^2 から Sxx/σ2S_{xx}/\sigma^2 に減ったのです。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 「有効スコア」は efficient score の訳で、局外母数がないときは対数尤度の微分そのものです。局外母数があるときは、上の残差を指す本もあります。試験では問題文の定義を確かめましょう。

以上が、有効スコア関数についての説明です。

最尤推定:答案を書き切る

続いて、最尤推定 を答案として書き切る手順を解説します。

【最尤推定の答案の手順】

  1. 尤度関数と対数尤度関数を、母数の範囲とともに書く
  2. 台が母数で決まるなら微分を使わず、尤度の形を直接見る
  3. 尤度方程式 U(θ)=0U(\theta) = 0 を解く
  4. 求めた点が最大であることを示す

手順4の方法は、主に3つあります。全域で ℓ′′(θ)<0\ell''(\theta) < 0 を示す(凹関数なら、尤度方程式の解は最大点です)。U(θ)U(\theta) の符号の変化を調べる。解が複数あるなら、尤度の値を比べる。

さきほどの例題の分布で書いてみましょう。U(θ)=(n/θ2)(θ^−θ)U(\theta) = (n/\theta^2)(\hat{\theta} - \theta)(θ^=∑ixi2/(2n)\hat{\theta} = \sum_i x_i^2/(2n))と変形すると、θ<θ^\theta < \hat{\theta} で U>0U > 0、θ>θ^\theta > \hat{\theta} で U<0U < 0 です。ここで ℓ\ell は増加から減少に変わるので、θ^\hat{\theta} は最大点です。ℓ′′(θ^)<0\ell''(\hat{\theta}) < 0 を1点で確かめただけでは、局所的な最大しか言えない点に注意しましょう。

では、確認をしないと何が起きるのでしょうか? 位置母数 θ\theta のコーシー分布 f=1/[π{1+(x−θ)2}]f = 1/[\pi\{1 + (x-\theta)^2\}] で、データが −3,3-3, 3 の2個だとします。尤度方程式を解くと、解は θ=0\theta = 0 と θ=±8≈±2.83\theta = \pm\sqrt{8} \approx \pm 2.83 の3つです。ところが、ℓ(0)≈−4.61\ell(0) \approx -4.61 に対して、ℓ(±8)≈−3.58\ell(\pm\sqrt{8}) \approx -3.58(定数を除く)です。θ=0\theta = 0 は山頂ではなく谷底でした。冒頭の霧の山が、本当に現れたわけです。

例題:遺伝子型の頻度を推定する

3つの型の確率が θ2\theta^2、2θ(1−θ)2\theta(1-\theta)、(1−θ)2(1-\theta)^2(0<θ<10 < \theta < 1)で、度数が n1,n2,n3n_1, n_2, n_3(n=n1+n2+n3n = n_1 + n_2 + n_3)である。θ\theta の最尤推定量を導け。(n1,n2,n3)=(30,50,20)(n_1, n_2, n_3) = (30, 50, 20) のときの値も求めよ。

【答案】

  1. 定数を除いて、ℓ(θ)=alog⁡θ+blog⁡(1−θ)\ell(\theta) = a\log\theta + b\log(1-\theta) である。ここで a=2n1+n2a = 2n_1 + n_2、b=n2+2n3b = n_2 + 2n_3 である
  2. U(θ)=a/θ−b/(1−θ)=0U(\theta) = a/\theta - b/(1-\theta) = 0 を解くと、θ^=a/(a+b)=(2n1+n2)/(2n)\hat{\theta} = a/(a + b) = (2n_1 + n_2)/(2n) である
  3. ℓ′′(θ)=−a/θ2−b/(1−θ)2<0\ell''(\theta) = -a/\theta^2 - b/(1-\theta)^2 < 0 なので ℓ\ell は凹関数で、θ^\hat{\theta} は最大点である(a,b>0a, b > 0 のとき)
  4. 値は (60+50)/200=0.55(60 + 50)/200 = 0.55 である

答えは θ^=(2n1+n2)/(2n)\hat{\theta} = (2n_1 + n_2)/(2n) で、値は0.55です。数え方の意味は素直で、全部で 2n2n 個ある遺伝子のうちの片方の型の割合です。

次に、微分が効かない場合です。1つずつ見ていきましょう。

1. 尤度に折れ目がある場合

ラプラス分布 f=12e−∣x−θ∣f = \frac{1}{2}e^{-|x-\theta|} では、ℓ(θ)=−∑i∣xi−θ∣+定数\ell(\theta) = -\sum_i |x_i - \theta| + \text{定数} です。これはデータ点で折れる折れ線で、θ\theta より大きいデータの個数が小さいデータの個数を上回る間は増加します。したがって、最尤推定量は標本中央値です。

データが 1, 3, 7 なら θ^=3\hat{\theta} = 3 です。データが偶数個のときは、中央の2つの値の間で傾きが0になるので、その間のすべての値が最尤推定値です。最尤推定値は1つとは限りません。

2. 台が母数で決まる場合

密度 f(x;α,c)=αcαx−α−1f(x;\alpha, c) = \alpha c^\alpha x^{-\alpha-1}(x≥cx \ge c)のパレート分布を考えます。L=αncnα(∏ixi)−α−1 1{c≤x(1)}L = \alpha^n c^{n\alpha} (\prod_i x_i)^{-\alpha-1}\,\mathbf{1}\{c \le x_{(1)}\} は cc について増加なので、まず c^=x(1)\hat{c} = x_{(1)} です。これを代入して α\alpha を微分すると、α^=n/∑ilog⁡(xi/c^)\hat{\alpha} = n/\sum_i \log(x_i/\hat{c}) です。

データが 2, 3, 4, 8 なら、c^=2\hat{c} = 2 で、α^=4/(log⁡1.5+log⁡2+log⁡4)≈1.61\hat{\alpha} = 4/(\log 1.5 + \log 2 + \log 4) \approx 1.61 です。片方を先に最大化してから、もう片方を解く方法を覚えておきましょう。

例題:尤度方程式を数値で解く

ゼロが観測されないポアソン分布 P(X=x)=e−λλx/{x! (1−e−λ)}P(X = x) = e^{-\lambda}\lambda^x/\{x!\,(1 - e^{-\lambda})\}(x=1,2,…x = 1, 2, \dots)がある。(1) xˉ\bar{x} を使って尤度方程式を書け。(2) xˉ=2\bar{x} = 2 のとき、λ0=2\lambda_0 = 2 から始めて、ニュートン法で λ^\hat{\lambda} を小数第2位まで求めよ。

【答案】

  1. ℓ(λ)/n=−λ+xˉlog⁡λ−log⁡(1−e−λ)+定数\ell(\lambda)/n = -\lambda + \bar{x}\log\lambda - \log(1 - e^{-\lambda}) + \text{定数} を微分して整理すると、次の式を得る
U(λ)n=xˉλ−11−e−λ=0\frac{U(\lambda)}{n} = \frac{\bar{x}}{\lambda} - \frac{1}{1 - e^{-\lambda}} = 0
  1. U′(λ)/n=−xˉ/λ2+e−λ/(1−e−λ)2U'(\lambda)/n = -\bar{x}/\lambda^2 + e^{-\lambda}/(1 - e^{-\lambda})^2 を使い、λnew=λ−U(λ)/U′(λ)\lambda_{\text{new}} = \lambda - U(\lambda)/U'(\lambda) を繰り返す
  2. λ\lambda の値は、2→1.509→1.590→1.594→1.5942 \to 1.509 \to 1.590 \to 1.594 \to 1.594 と進む

答えは約1.59です。λ/(1−e−λ)\lambda/(1 - e^{-\lambda}) は増加関数なので、xˉ>1\bar{x} > 1 なら解はただ1つです。xˉ=λ/(1−e−λ)\bar{x} = \lambda/(1 - e^{-\lambda}) は、標本平均と母平均をそろえた式でもあります。

試験のポイント:解が陽に書けない問題でも、「尤度方程式を書く」「解の一意性を示す」までは必ず答案にできます。

以上が、最尤推定の答案の書き方についての解説です。

不変性と十分統計量との関係

最後に、最尤推定量がもつ2つの構造を見ていきましょう。

1つ目は 不変性 です。θ^\hat{\theta} が最尤推定量なら、g(θ)g(\theta) の最尤推定量は g(θ^)g(\hat{\theta}) です。円で測って一番高い買い物は、ドルで測っても一番高いですよね。1対1の変換では山頂の位置が動かないので、これは当然です。

gg が1対1でないときは、τ=g(θ)\tau = g(\theta) の尤度を、L∗(τ)=sup⁡θ:g(θ)=τL(θ)L^*(\tau) = \sup_{\theta: g(\theta) = \tau} L(\theta) と定めます。

【不変性の証明】

  1. τ^=g(θ^)\hat{\tau} = g(\hat{\theta}) とおく。θ^\hat{\theta} は g(θ)=τ^g(\theta) = \hat{\tau} の範囲に含まれるので、L∗(τ^)≥L(θ^)L^*(\hat{\tau}) \ge L(\hat{\theta}) である
  2. 任意の τ\tau について、L∗(τ)=sup⁡θ:g(θ)=τL(θ)≤sup⁡θL(θ)=L(θ^)L^*(\tau) = \sup_{\theta: g(\theta) = \tau} L(\theta) \le \sup_\theta L(\theta) = L(\hat{\theta}) である
  3. したがって L∗(τ)≤L∗(τ^)L^*(\tau) \le L^*(\hat{\tau}) で、τ^\hat{\tau} は L∗L^* の最大点である

具体的に見てみましょう。身長が正規分布に従い、μ^=170\hat{\mu} = 170、σ^=5\hat{\sigma} = 5 だったとします。180を超える確率は2つの母数の関数で、1対1ではありません。それでも、その最尤推定値は 1−Φ((180−170)/5)=1−Φ(2)≈0.0231 - \Phi((180 - 170)/5) = 1 - \Phi(2) \approx 0.023 です。

ただし、不変性は不偏性を保ちません。例えば、S2S^2 が不偏でも SS は不偏でないように、関数をとると期待値はずれます。「最尤推定量は不偏」とは言えないのです。

2つ目は、十分統計量との関係です。分解定理より ℓ(θ)=log⁡g(T;θ)+log⁡h(x)\ell(\theta) = \log g(T;\theta) + \log h(\boldsymbol{x}) で、第2項は θ\theta によりません。つまり、対数尤度の山の形は TT だけで決まります。

θ^=arg⁡max⁡θ log⁡g(T;θ)\hat{\theta} = \arg\max_\theta\, \log g(T;\theta)

したがって、最尤推定量がただ1つなら、それは十分統計量の関数です。先ほどの打ち切りの例では、(d,τ)(d, \tau) が十分統計量で、λ^=d/τ\hat{\lambda} = d/\tau はその関数になっています。

なお、最尤推定量が1つでないと、話は少し変わります。U(θ,θ+1)U(\theta, \theta + 1) では、尤度は x(n)−1≤θ≤x(1)x_{(n)} - 1 \le \theta \le x_{(1)} で一定の1です。この区間の中のどの点も最尤推定値で、十分統計量と無関係な選び方もできます。その場合は、十分統計量の関数である最尤推定量が「選べる」という言い方が正確です。

以上が、不変性と十分統計量との関係についての解説です。

細かい例を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「スコアの平均は0、分散は情報量」「最大の確認まで書いて答案は完成」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は、尤度関数を書き下ろし、有効スコア関数の性質を証明して、最尤推定を答案として書き切る方法を紹介しました。尤度方程式の解は、霧の山の平らな場所にすぎません。山頂だと確かめるところまでが、最尤推定です。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 尤度は確率ではなく、定数倍に意味がない。複雑な観測でも、観測された事象の確率をそのまま掛ければ書ける。
  • 有効スコア関数は対数尤度の傾き。正則条件のもとで、平均は0で、分散は2階微分の期待値の符号を変えたものに等しい。
  • 最尤推定の答案は、尤度方程式を解いたあとに最大の確認まで書く。解が複数のこともある。
  • 折れ目のある尤度や、台が母数で決まる尤度では、微分に頼らず形を直接見る。
  • 不変性は成り立つが不偏性は保たれない。最尤推定量がただ1つなら十分統計量の関数である。

キーワードのおさらい

  • 尤度関数: データを固定し、同時確率(密度)を母数の関数と見たもの
  • 対数尤度関数: 尤度関数の対数。独立な標本では各観測の対数密度の和
  • 有効スコア関数: 対数尤度関数を母数で微分した関数
  • 尤度方程式: 有効スコア関数を0とおいた方程式
  • 正則条件: 台が母数によらず、微分と積分を交換できるなどの条件
  • 局外母数: 関心はないが、モデルに含まれていて未知の母数
  • 最尤推定: 尤度関数を最大にする値を推定値とする方法

さて、最尤法は強力ですが、推定量の作り方はこれだけではありません。尤度が書けないとき、分布を仮定したくないときは、どうすればよいのでしょうか?

次回は、モーメント法、最小二乗法、線形推定(BLUE)など、最尤法以外の推定法について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 率 λ\lambda の指数分布に従う部品5個を試験した。1, 2, 3 の時点で3個が故障し、残り2個は5の時点で打ち切った。λ\lambda の最尤推定値として正しいものはどれか。
問2. スコアの期待値が0になることの証明について、最も適切なものはどれか。
問3. 密度 f(x;θ)=2θx e−θx2f(x;\theta) = 2\theta x\, e^{-\theta x^2}(x>0x > 0)からの大きさ5の標本で、∑ixi2=20\sum_i x_i^2 = 20 だった。θ\theta の最尤推定値として正しいものはどれか。
問4. 平均 λ=4\lambda = 4 のポアソン分布からの大きさ n=20n = 20 の標本について、真の λ\lambda で評価した有効スコア U(λ)U(\lambda) の分散として正しいものはどれか。
問5. 位置母数 θ\theta のラプラス分布 f=12e−∣x−θ∣f = \frac{1}{2}e^{-|x-\theta|} からのデータが 2, 5, 9, 14 のとき、θ\theta の最尤推定値として正しいものはどれか。