統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-9 統計数理

母集団と標本・統計量

  • 十分統計量
  • ネイマンの分解定理
  • 順序統計量

はじめに

「『十分統計量である』って、答案にはどう書けばいいの?」

準1級では、分解定理を使って十分統計量を見つけました。同時密度を2つの因数に分ければ終わりなので、手順は難しくありません。でも、1級の論述ではもう一歩先まで問われます。「分解定理を証明せよ」「この統計量は十分でないことを示せ」という問題です。

引っ越しの荷造りを想像してください。段ボールに入れた荷物だけを運び、残りは処分します。処分してよいと言い切るには、「残った物の中に大事な物が1つもない」と確かめなければいけませんよね。統計量も同じで、データを要約して捨てる以上、捨てた部分に母数の情報がないことを証明する必要があります。

実は、この証明の核心はたった1つです。条件つき確率の中で、母数が約分されて消えるかどうかを見るだけなのです。定理の証明も、十分でないことの証明も、同じ計算でできています。

そこで登場するのが、今回の主役 ネイマンの分解定理 です。もう1つ、標本を並べ替えて見る 順序統計量 も主役です。

前回の記事では、統計量の分布を導きました。今回の記事では、十分統計量の立証の仕方、分解定理の証明、そして順序統計量の分布の導出について解説します。

十分統計量:定義から立証する

はじめに、定義を使って十分性を確かめる手順について解説します。

十分統計量 とは、T=tT = t を与えたときの標本の条件つき分布が、母数 θ\theta によらない統計量 TT のことでした。準1級では、ベルヌーイ分布とポアソン分布の離散型で確かめました。1級では、2つの場面に踏み込みます。連続型の場合と、十分でないことを示す場合です。1つずつ見ていきましょう。

1. 連続型の場合

連続型では P(T=t)=0P(T = t) = 0 なので、条件つき確率ではなく条件つき密度で考えます。具体的に見てみましょう。X1,X2X_1, X_2 が独立に率 λ\lambda の指数分布に従うとき、T=X1+X2T = X_1 + X_2 は十分統計量です。

(x1,x2)(x_1, x_2) を (x1,t)(x_1, t)(t=x1+x2t = x_1 + x_2)に変換すると、ヤコビアンは1です。また、TT はガンマ分布に従います。

fX1,T(x1,t)=λ2e−λt(0<x1<t),fT(t)=λ2t e−λtf_{X_1, T}(x_1, t) = \lambda^2 e^{-\lambda t} \quad (0 < x_1 < t), \qquad f_T(t) = \lambda^2 t\, e^{-\lambda t}

割り算をすると、λ2e−λt\lambda^2 e^{-\lambda t} が約分されて消えます。

fX1∣T(x1∣t)=1t(0<x1<t)f_{X_1 \mid T}(x_1 \mid t) = \frac{1}{t} \qquad (0 < x_1 < t)

T=tT = t を与えると、X1X_1 は (0,t)(0, t) の一様分布です。λ\lambda はどこにもありません。

これは大切な意味をもちます。2日分の売上の合計だけを聞いて、内訳は忘れてしまったとしましょう。それでも、合計 tt を一様乱数で切り分ければ、もとのデータと同じ分布の内訳を作り直せます。つまり、内訳は「λ\lambda を知らなくても再現できるもの」なので、捨てても何も失いません。

2. 十分でないことを示す場合

逆に、十分でないことを示すには、条件つき確率が θ\theta に依存する点を1つ見つければ足ります。全部を調べる必要はありません。

例題:十分統計量でないことを示す

X1,X2X_1, X_2 は独立に平均 λ\lambda のポアソン分布に従う。T=X1+2X2T = X_1 + 2X_2 は λ\lambda の十分統計量でないことを示せ。

【答案】

  1. T=2T = 2 となる (x1,x2)(x_1, x_2) は、(2,0)(2, 0) と (0,1)(0, 1) の2通りである
  2. それぞれの確率は、P(2,0)=e−2λλ2/2P(2, 0) = e^{-2\lambda}\lambda^2/2、P(0,1)=e−2λλP(0, 1) = e^{-2\lambda}\lambda である
  3. したがって、次の式を得る
P((X1,X2)=(0,1)∣T=2)=λλ2/2+λ=2λ+2P\big((X_1, X_2) = (0, 1) \mid T = 2\big) = \frac{\lambda}{\lambda^2/2 + \lambda} = \frac{2}{\lambda + 2}
  1. これは λ\lambda に依存する(λ=1\lambda = 1 なら 2/32/3、λ=2\lambda = 2 なら 1/21/2)。よって TT は十分統計量でない

T=2T = 2 と聞いただけでは、「0回と1回」なのか「2回と0回」なのかが分からず、その見分けに λ\lambda の情報が残っているのです。

以上が、十分統計量の立証についての解説です。

ネイマンの分解定理:証明と使い方

次に、ネイマンの分解定理 を証明します。フィッシャー・ネイマンの分解定理とも呼ばれます。

【ネイマンの分解定理】 T(x)T(\boldsymbol{x}) が θ\theta の十分統計量であるための必要十分条件は、同時確率関数(密度)が次の形に書けることである。

f(x;θ)=g(T(x);θ) h(x)f(\boldsymbol{x};\theta) = g\big(T(\boldsymbol{x});\theta\big)\, h(\boldsymbol{x})

イメージは関所です。θ\theta がデータに会いに行くには、必ず TT という関所を通らなければいけません。関所の外の hh には θ\theta が入ってこないので、TT を押さえれば θ\theta の動きはすべて分かります。

1. 離散型の証明

離散型と連続型に分けて、1つずつ見ていきましょう。まずは離散型です。必要性と十分性を分けて書きます。

【証明】

  1. (必要性)TT が十分統計量とする。t=T(x)t = T(\boldsymbol{x}) とおくと、f(x;θ)=Pθ(T=t) P(X=x∣T=t)f(\boldsymbol{x};\theta) = P_\theta(T = t)\, P(\boldsymbol{X} = \boldsymbol{x} \mid T = t) である
  2. 第1因数を g(t;θ)g(t;\theta) とする。第2因数は十分性より θ\theta によらないので、h(x)h(\boldsymbol{x}) とおける
  3. (十分性)分解を仮定する。Pθ(T=t)=∑y:T(y)=tg(t;θ) h(y)=g(t;θ)∑y:T(y)=th(y)P_\theta(T = t) = \sum_{\boldsymbol{y}: T(\boldsymbol{y}) = t} g(t;\theta)\, h(\boldsymbol{y}) = g(t;\theta) \sum_{\boldsymbol{y}: T(\boldsymbol{y}) = t} h(\boldsymbol{y}) である
  4. T(x)=tT(\boldsymbol{x}) = t かつ Pθ(T=t)>0P_\theta(T = t) > 0 のとき、次の式が成り立つ
P(X=x∣T=t)=g(t;θ) h(x)g(t;θ)∑y:T(y)=th(y)=h(x)∑y:T(y)=th(y)P(\boldsymbol{X} = \boldsymbol{x} \mid T = t) = \frac{g(t;\theta)\, h(\boldsymbol{x})}{g(t;\theta) \sum_{\boldsymbol{y}: T(\boldsymbol{y}) = t} h(\boldsymbol{y})} = \frac{h(\boldsymbol{x})}{\sum_{\boldsymbol{y}: T(\boldsymbol{y}) = t} h(\boldsymbol{y})}
  1. 右辺は θ\theta を含まない。T(x)≠tT(\boldsymbol{x}) \ne t のときの条件つき確率は0なので、やはり θ\theta によらない

ここがポイントです。手順3で、T(y)=tT(\boldsymbol{y}) = t の範囲では gg が定数になるので、和の外に出せます。これが約分の正体です。

2. 連続型の証明

連続型では、前回の記事の補助変数さんに再び来てもらいます。x\boldsymbol{x} と (t,v)(t, \boldsymbol{v}) が1対1に対応するように補助変数 V\boldsymbol{V} を足し、ヤコビアンを J(t,v)J(t, \boldsymbol{v}) とします。分解を仮定すると、次のようになります。

fT,V(t,v;θ)=g(t;θ) h(x(t,v)) ∣J(t,v)∣f_{T, \boldsymbol{V}}(t, \boldsymbol{v};\theta) = g(t;\theta)\, h\big(\boldsymbol{x}(t, \boldsymbol{v})\big)\, |J(t, \boldsymbol{v})|

v\boldsymbol{v} で積分すれば fT(t;θ)=g(t;θ)∫h∣J∣ dvf_T(t;\theta) = g(t;\theta)\int h|J|\,d\boldsymbol{v} です。割り算をすると gg が約分され、V\boldsymbol{V} の条件つき密度は h∣J∣/∫h∣J∣ dvh|J|/\int h|J|\,d\boldsymbol{v} となって、θ\theta が消えます。逆向きは、fT,V=fT⋅fV∣Tf_{T,\boldsymbol{V}} = f_T \cdot f_{\boldsymbol{V} \mid T} の右辺を ∣J∣|J| で割り、もとの変数に戻すだけです。

補足(ここは読み飛ばしてOK): 上の証明は、1対1の滑らかな変換がとれる場合のものです。完全に一般の場合は測度論の道具を使います。試験では、離散型の証明と連続型の考え方を書ければ十分です。

3. 分解定理の使い方

具体例を3つ見てみましょう。どれも準1級より一歩進んだ例です。

【分解定理の適用例】

  1. U(θ1,θ2)U(\theta_1, \theta_2): 同時密度は (θ2−θ1)−n 1{θ1≤x(1)} 1{x(n)≤θ2}(\theta_2 - \theta_1)^{-n}\,\mathbf{1}\{\theta_1 \le x_{(1)}\}\,\mathbf{1}\{x_{(n)} \le \theta_2\} なので、(X(1),X(n))(X_{(1)}, X_{(n)}) が十分統計量
  2. 形状 α\alpha、率 β\beta のガンマ分布: 同時密度は {βα/Γ(α)}n(∏ixi)α−1e−β∑ixi\{\beta^\alpha/\Gamma(\alpha)\}^n (\prod_i x_i)^{\alpha-1} e^{-\beta\sum_i x_i} なので、(∏iXi,∑iXi)(\prod_i X_i, \sum_i X_i) が十分統計量
  3. U(θ,θ+1)U(\theta, \theta + 1): 同時密度は 1{θ≤x(1)} 1{x(n)≤θ+1}\mathbf{1}\{\theta \le x_{(1)}\}\,\mathbf{1}\{x_{(n)} \le \theta + 1\} なので、(X(1),X(n))(X_{(1)}, X_{(n)}) が十分統計量

3つ目に注目してください。母数は1つなのに、十分統計量は2次元です。母数の数と十分統計量の次元は、一致するとは限りません。

一般に、f(x;θ)=h(x) c(θ)exp⁡{∑j=1mηj(θ) tj(x)}f(x;\theta) = h(x)\,c(\theta)\exp\{\sum_{j=1}^{m} \eta_j(\theta)\, t_j(x)\} の形の 指数型分布族 では、同時密度が {∏ih(xi)} c(θ)nexp⁡{∑jηj(θ)∑itj(xi)}\{\prod_i h(x_i)\}\, c(\theta)^n \exp\{\sum_j \eta_j(\theta) \sum_i t_j(x_i)\} となります。したがって、(∑it1(Xi),…,∑itm(Xi))(\sum_i t_1(X_i), \dots, \sum_i t_m(X_i)) が十分統計量です。密度をこの形に書き直せたら、分解は終わったも同然です。

では、どこまで小さく要約できるのでしょうか? 任意の十分統計量の関数として書ける十分統計量を、最小十分統計量 と呼びます。判定には、次の基準が便利です。

f(x;θ)f(y;θ) が θ によらない  ⟺  T(x)=T(y)\frac{f(\boldsymbol{x};\theta)}{f(\boldsymbol{y};\theta)} \text{ が } \theta \text{ によらない} \iff T(\boldsymbol{x}) = T(\boldsymbol{y})

これが成り立つ TT は、最小十分統計量です。例えば、ベルヌーイ分布では比が {p/(1−p)}∑ixi−∑iyi\{p/(1-p)\}^{\sum_i x_i - \sum_i y_i} なので、pp によらないのは ∑ixi=∑iyi\sum_i x_i = \sum_i y_i のときだけです。したがって、当たりの回数が最小十分統計量です。

例題:2母数の指数分布の十分統計量

密度 f(x;a,b)=1be−(x−a)/bf(x;a,b) = \frac{1}{b}e^{-(x-a)/b}(x≥ax \ge a、b>0b > 0)からの大きさ nn の標本について、(a,b)(a, b) の十分統計量を求めよ。aa が既知のとき、bb が既知のときはどうなるかも述べよ。

【答案】

  1. 同時密度は、指示関数を使って次のように書ける
∏i=1nf(xi;a,b)=b−nexp⁡{−∑ixi−nab}1{x(1)≥a}\prod_{i=1}^{n} f(x_i;a,b) = b^{-n} \exp\left\{-\frac{\sum_i x_i - na}{b}\right\} \mathbf{1}\{x_{(1)} \ge a\}
  1. 右辺全体が x(1)x_{(1)} と ∑ixi\sum_i x_i と母数の関数である。h(x)=1h(\boldsymbol{x}) = 1 として、分解定理より (X(1),∑iXi)(X_{(1)}, \sum_i X_i) が十分統計量である
  2. aa が既知なら、指示関数は未知の bb を含まないので hh に入り、∑iXi\sum_i X_i が十分統計量である
  3. bb が既知なら、e−∑ixi/be^{-\sum_i x_i/b} が hh に入り、X(1)X_{(1)} が十分統計量である

答えは順に (X(1),∑iXi)(X_{(1)}, \sum_i X_i)、∑iXi\sum_i X_i、X(1)X_{(1)} です。何が未知かで、関所の場所が変わります。

試験のポイント:どの因数が gg でどの因数が hh かを、答案に明示しましょう。範囲が母数で決まるときは、指示関数を必ず書きます。

以上が、ネイマンの分解定理についての解説です。

順序統計量:分布を導く

最後に、順序統計量の分布の導出を見ていきましょう。

順序統計量 とは、標本を小さい順に並べ替えた X(1)≤⋯≤X(n)X_{(1)} \le \dots \le X_{(n)} でした。運動会の徒競走で、ゴールした順に並び直した列だと思ってください。以下、母集団は連続型で、分布関数を FF、密度を ff とします。1つずつ見ていきましょう。

1. 同時密度

標本空間は、xπ(1)<⋯<xπ(n)x_{\pi(1)} < \dots < x_{\pi(n)} となる n!n! 個の領域に分かれます。どの領域も、並べ替えによって y1<⋯<yny_1 < \dots < y_n に1対1で写り、ヤコビアンの絶対値は1です。n!n! 個の領域からの寄与はすべて同じなので、次の式が成り立ちます。

f(1,…,n)(y1,…,yn)=n!∏i=1nf(yi)(y1<⋯<yn)f_{(1, \dots, n)}(y_1, \dots, y_n) = n! \prod_{i=1}^{n} f(y_i) \qquad (y_1 < \dots < y_n)

2. k番目の密度を導く

準1級では、組分けの読み方で密度を覚えました。答案では、分布関数から導きます。{X(k)≤x}\{X_{(k)} \le x\} は「xx 以下の値が kk 個以上ある」という事象で、xx 以下の個数は二項分布 B(n,F(x))B(n, F(x)) に従います。

P(X(k)≤x)=∑j=kn(nj)F(x)j{1−F(x)}n−jP(X_{(k)} \le x) = \sum_{j=k}^{n} \binom{n}{j} F(x)^j \{1 - F(x)\}^{n-j}

これを xx で微分します。aj=j(nj)Fj−1(1−F)n−ja_j = j\binom{n}{j}F^{j-1}(1-F)^{n-j} とおくと、(n−j)(nj)=(j+1)(nj+1)(n-j)\binom{n}{j} = (j+1)\binom{n}{j+1} より、第 jj 項の微分は (aj−aj+1)f(a_j - a_{j+1})f です。和をとると隣どうしが打ち消し合い、akfa_k f だけが残ります(an+1=0a_{n+1} = 0)。

f(k)(x)=n!(k−1)! (n−k)! F(x)k−1{1−F(x)}n−kf(x)f_{(k)}(x) = \frac{n!}{(k-1)!\,(n-k)!}\, F(x)^{k-1} \{1 - F(x)\}^{n-k} f(x)

ドミノ倒しのように、途中の項がすべて消えるのが、この計算のおもしろいところです。

さらに、U=F(X)U = F(X) は U(0,1)U(0, 1) に従います(確率積分変換)。FF は増加関数で順序を保つので、どんな連続分布でも F(X(k))∼Beta(k,n−k+1)F(X_{(k)}) \sim \text{Beta}(k, n-k+1) です。

3. 2つの順序統計量の同時密度

j<kj < k、x<yx < y のとき、nn 人を5組に分ける形で次の式が得られます。

f(j,k)(x,y)=n!  F(x)j−1{F(y)−F(x)}k−j−1{1−F(y)}n−kf(x)f(y)(j−1)! (k−j−1)! (n−k)!f_{(j,k)}(x, y) = \frac{n!\; F(x)^{j-1} \{F(y) - F(x)\}^{k-j-1} \{1 - F(y)\}^{n-k} f(x) f(y)}{(j-1)!\,(k-j-1)!\,(n-k)!}

5組とは、xx より下、ちょうど xx、xx と yy の間、ちょうど yy、yy より上です。

例題:範囲の分布を導く

U(0,1)U(0, 1) からの大きさ nn の標本の範囲 R=X(n)−X(1)R = X_{(n)} - X_{(1)} について、(1) 密度を導け。(2) n=4n = 4 のとき P(R>0.5)P(R > 0.5) を求めよ。

【答案】

  1. j=1j = 1、k=nk = n とすると、(X(1),X(n))(X_{(1)}, X_{(n)}) の同時密度は n(n−1)(y−x)n−2n(n-1)(y - x)^{n-2}(0<x<y<10 < x < y < 1)である
  2. r=y−xr = y - x、s=xs = x と変換する。ヤコビアンは1で、範囲は 0<s<1−r0 < s < 1 - r である
  3. ss を積分して、fR(r)=∫01−rn(n−1)rn−2 ds=n(n−1) rn−2(1−r)f_R(r) = \int_0^{1-r} n(n-1) r^{n-2}\,ds = n(n-1)\, r^{n-2}(1 - r)(0<r<10 < r < 1)を得る。これは Beta(n−1,2)\text{Beta}(n-1, 2) である
  4. n=4n = 4 なら fR(r)=12r2(1−r)f_R(r) = 12 r^2 (1 - r) である。P(R>0.5)=∫0.51(12r2−12r3) dr=[4r3−3r4]0.51=1−0.3125=0.6875P(R > 0.5) = \int_{0.5}^{1} (12r^2 - 12r^3)\,dr = [4r^3 - 3r^4]_{0.5}^{1} = 1 - 0.3125 = 0.6875 となる

答えは n(n−1)rn−2(1−r)n(n-1)r^{n-2}(1-r) と0.6875です。ここでも補助変数 ss が活躍しました。

4. 指数分布の間隔

指数分布では、順序統計量の間隔にきれいな性質があります。率 λ\lambda の指数分布の標本で、X(0)=0X_{(0)} = 0 として次の量を考えます。

Di=(n−i+1)(X(i)−X(i−1))(i=1,…,n)D_i = (n - i + 1)\big(X_{(i)} - X_{(i-1)}\big) \qquad (i = 1, \dots, n)

すると、D1,…,DnD_1, \dots, D_n は独立に率 λ\lambda の指数分布に従います。証明は次の3行です。

【証明】

  1. (X(1),…,X(n))(X_{(1)}, \dots, X_{(n)}) の同時密度は n! λne−λ∑ix(i)n!\,\lambda^n e^{-\lambda\sum_i x_{(i)}} である
  2. ∑ix(i)=∑i(n−i+1)(x(i)−x(i−1))=∑idi\sum_i x_{(i)} = \sum_i (n - i + 1)(x_{(i)} - x_{(i-1)}) = \sum_i d_i である
  3. x↦dx \mapsto d の変換は三角行列で、対角成分の積は n!n! である。よって D\boldsymbol{D} の同時密度は λne−λ∑idi\lambda^n e^{-\lambda\sum_i d_i} となる

これは指数分布の無記憶性を式にしたものです。1個が壊れた瞬間、残りの部品は新品に戻ったのと同じです。

例えば、平均12か月で壊れる部品を4個同時に使い始めたとしましょう。X(i)=∑l≤iDl/(n−l+1)X_{(i)} = \sum_{l \le i} D_l/(n - l + 1) なので、最後の1個が壊れるまでの期待値は 12×(1/4+1/3+1/2+1)=2512 \times (1/4 + 1/3 + 1/2 + 1) = 25 か月です。最初の1個は 12÷4=312 \div 4 = 3 か月で壊れます。

試験のポイント:順序統計量の問題は、「分布関数から攻める」「組分けで書く」「指数分布なら間隔に分ける」の3つの型で解けます。

以上が、順序統計量の分布についての解説です。

細かい証明を忘れてしまっても問題ありません。ここでは、「十分性とは母数が約分で消えること」「順序統計量は分布関数から導くこと」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は、十分統計量の立証、ネイマンの分解定理の証明、順序統計量の分布の導出を紹介しました。段ボールに入れた荷物だけで足りると言い切れるのは、条件つき分布から母数が消えるからです。分解定理は、その計算を一般化したものでした。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 十分性の立証は、条件つき分布から母数が消えるかを見る。否定するなら、依存する点を1つ見つければよい。
  • ネイマンの分解定理の証明の核心は、T=tT = t の範囲で gg が定数になり、約分されること。
  • 指数型分布族では ∑itj(Xi)\sum_i t_j(X_i) が十分統計量。母数の数と十分統計量の次元は一致するとは限らない。
  • 順序統計量の分布関数は二項分布の和で書け、微分すると途中の項が消えて密度が出る。
  • 指数分布の順序統計量の間隔は、重みをつけると独立な指数分布になる。

キーワードのおさらい

  • 十分統計量: 与えたときの標本の条件つき分布が母数によらない統計量
  • ネイマンの分解定理: f=g(T;θ) h(x)f = g(T;\theta)\,h(\boldsymbol{x}) と分解できることが十分性の必要十分条件だという定理
  • 指数型分布族: 密度が h(x) c(θ)exp⁡{∑jηj(θ) tj(x)}h(x)\,c(\theta)\exp\{\sum_j \eta_j(\theta)\, t_j(x)\} の形をした分布の族
  • 最小十分統計量: 任意の十分統計量の関数として書ける十分統計量
  • 順序統計量: 標本を小さい順に並べ替えた X(1),…,X(n)X_{(1)}, \dots, X_{(n)}
  • 確率積分変換: F(X)F(X) が U(0,1)U(0, 1) に従うという性質

さて、情報を失わない要約が分かりました。では、その要約から母数の値をどう決めればよいのでしょうか?

次回は、尤度関数からスコア関数を導き、最尤推定を答案として書き切る方法を紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 独立なベルヌーイ変数 X1,…,X4X_1, \dots, X_4(成功確率 pp)について、P(X1=1∣∑iXi=1)P(X_1 = 1 \mid \sum_i X_i = 1) として正しいものはどれか。
問2. U(θ,2θ)U(\theta, 2\theta)(θ>0\theta > 0)からの大きさ nn の標本について、θ\theta の十分統計量として正しいものはどれか。
問3. N(θ,θ2)N(\theta, \theta^2)(θ>0\theta > 0)からの大きさ nn の標本について、θ\theta の十分統計量として正しいものはどれか。
問4. U(0,1)U(0, 1) からの大きさ5の標本の範囲 R=X(5)−X(1)R = X_{(5)} - X_{(1)} の期待値として、正しいものはどれか。
問5. 平均6の指数分布からの大きさ3の標本について、E[X(2)]E[X_{(2)}] として正しいものはどれか。