統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-17 統計数理

検定法の導出 — 最適な検定の構成

  • ネイマン・ピアソンの基本定理
  • 尤度比検定
  • ワルド型検定
  • スコア型検定

はじめに

「この検定が最強力であることを証明せよ。……どこから手をつければいいの?」

準1級では、「尤度比の大きい順に棄却域に入れる」という結論を、買い物の例えで学びました。予算が有意水準で、満足度が検出力です。1級では、その結論を自分の手で証明します。そして、片側検定がなぜ一様に最強力なのか、ワルド型とスコア型がなぜ同じカイ二乗分布に近づくのかまで、式で説明することが求められます。

実は、この記事の内容は2つの計算に集約されます。1つは「被積分関数が必ず0以上になる」という1行の不等式です。もう1つは対数尤度の2次のテイラー展開です。

そこで登場するのが、今回の主役 ネイマン・ピアソンの基本定理 です。ここから一様最強力検定を導き、さらにテイラー展開で 尤度比検定、ワルド型検定、スコア型検定 の漸近分布を導きます。

前回の記事では、検定を検定関数 φ\varphi として定義し、検出力関数 π(θ)\pi(\theta) で評価しました。今回の記事では、その言葉を使って、最適な検定の構成法を証明まで解説します。

ネイマン・ピアソンの基本定理を証明する

はじめに、定理の完全な形とその証明について解説します。

単純仮説 H0:f=f0H_0: f = f_0 対 H1:f=f1H_1: f = f_1 を考えます。f0,f1f_0, f_1 はデータ全体の密度(または確率関数)です。定理は3つの主張からなります。

φ(x)={1(f1(x)>kf0(x))γ(f1(x)=kf0(x))0(f1(x)<kf0(x))\varphi(x) = \begin{cases} 1 & (f_1(x) > k f_0(x)) \\ \gamma & (f_1(x) = k f_0(x)) \\ 0 & (f_1(x) < k f_0(x)) \end{cases}

【ネイマン・ピアソンの基本定理】

  1. 存在: 任意の 0<α<10 < \alpha < 1 に対して、E0[φ(X)]=αE_0[\varphi(X)] = \alpha を満たす上の形の検定がある
  2. 十分性: 上の形で大きさ α\alpha の検定は、有意水準 α\alpha の最強力検定である
  3. 必要性: 有意水準 α\alpha の最強力検定は、f1≠kf0f_1 \ne k f_0 の上で、ほとんど確実に上の形に一致する

1つずつ見ていきましょう。

1. 存在の証明

a(c)=P0(f1(X)>cf0(X))a(c) = P_0(f_1(X) > c f_0(X)) とおきます。a(c)a(c) は cc の非増加関数で、右連続です。cc を小さい側から近づけた極限との差は P0(f1=cf0)P_0(f_1 = c f_0) です。

そこで、a(k)≤α≤a(k−)a(k) \le \alpha \le a(k-) を満たす kk をとります。a(k−)a(k-) は左極限です。次の γ\gamma を選べば、大きさはちょうど α\alpha です。

γ=α−a(k)a(k−)−a(k)\gamma = \frac{\alpha - a(k)}{a(k-) - a(k)}

買い物で言えば、費用対効果の順に買っていき、最後の1品だけ予算が足りないときは、その品物を一部だけ買う、ということです。

2. 十分性の証明

ここが定理の中心です。φ′\varphi' を有意水準 α\alpha の任意の検定とします。次の被積分関数は、すべての xx で0以上です。

(φ(x)−φ′(x))(f1(x)−kf0(x))≥0\big(\varphi(x) - \varphi'(x)\big)\big(f_1(x) - k f_0(x)\big) \ge 0

なぜでしょうか? 場合分けをします。f1>kf0f_1 > k f_0 なら φ=1\varphi = 1 なので、左の因子は0以上です。f1<kf0f_1 < k f_0 なら φ=0\varphi = 0 なので、左の因子は0以下です。どちらも積は0以上です。f1=kf0f_1 = k f_0 なら積は0です。

これを積分して整理すると、次の不等式を得ます。

E1[φ]−E1[φ′]≥k(E0[φ]−E0[φ′])=k(α−E0[φ′])≥0E_1[\varphi] - E_1[\varphi'] \ge k\big(E_0[\varphi] - E_0[\varphi']\big) = k\big(\alpha - E_0[\varphi']\big) \ge 0

左辺は検出力の差です。よって φ\varphi の検出力は φ′\varphi' 以上です。

ここがポイントです。「検定を比べる」という難しそうな問題が、各点の符号の確認に帰着しました。答案でも、この不等式を最初に書けば、残りは一本道です。

3. 必要性と便利な系

φ′\varphi' も最強力なら、上の不等式の左端と右端がともに0になります。k>0k > 0 のとき、被積分関数の積分が0なので、f1≠kf0f_1 \ne k f_0 の上で φ=φ′\varphi = \varphi' がほとんど確実に成り立ちます。

もう1つ、後で使う系を証明しておきます。φ′≡α\varphi' \equiv \alpha(データを見ないくじ)も有意水準 α\alpha の検定なので、十分性より、次が成り立ちます。

E1[φ]≥E1[φ′]=αE_1[\varphi] \ge E_1[\varphi'] = \alpha

つまり、最強力検定の検出力は大きさ以上です。くじ引きには負けません。

例題:確率化を含む最強力検定

XX を1回観測する。H0:X∼Po(1)H_0: X \sim Po(1) 対 H1:X∼Po(3)H_1: X \sim Po(3) の、大きさ0.05の最強力検定を構成し、検出力を求めよ。Po(1)Po(1) では P(X≥4)=0.0190P(X \ge 4) = 0.0190、P(X=3)=0.0613P(X = 3) = 0.0613、Po(3)Po(3) では P(X≥4)=0.3528P(X \ge 4) = 0.3528、P(X=3)=0.2240P(X = 3) = 0.2240 である。

【解答】

尤度比は f1(x)/f0(x)=e−23xf_1(x)/f_0(x) = e^{-2} 3^x で、xx の増加関数である。したがって、基本定理の検定は「xx が大きいとき棄却」の形である。P0(X≥4)=0.0190<0.05<0.0190+0.0613=P0(X≥3)P_0(X \ge 4) = 0.0190 < 0.05 < 0.0190 + 0.0613 = P_0(X \ge 3) なので、x≥4x \ge 4 で棄却し、x=3x = 3 で確率 γ\gamma で棄却する。

大きさの条件 0.0190+0.0613γ=0.050.0190 + 0.0613\gamma = 0.05 より、γ=0.506\gamma = 0.506 である。

検出力は 0.3528+0.506×0.2240=0.4660.3528 + 0.506 \times 0.2240 = 0.466 である。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。H0:X∼N(0,1)H_0: X \sim N(0, 1) 対 H1H_1:密度 12e−∣x∣\frac{1}{2}e^{-|x|} のラプラス分布を、1回の観測で検定します。尤度比は定数倍を除いて次の形です。

f1(x)f0(x)∝exp⁡{(∣x∣−1)22}\frac{f_1(x)}{f_0(x)} \propto \exp\left\{\frac{(|x| - 1)^2}{2}\right\}

これは ∣x∣=1|x| = 1 で最小になり、そこから離れるほど大きくなります。すると棄却域は、∣x∣−1|x| - 1 の絶対値が大きい範囲、つまり ∣x∣|x| が大きい側と、∣x∣|x| が0に近い側の2か所です。5%の検定を解くと、∣x∣>1.995|x| > 1.995 または ∣x∣<0.005|x| < 0.005 となります。ラプラス分布は中心が尖っているので、0のごく近くもまた H1H_1 の証拠なのです。定理が言うのは「裾を棄却せよ」ではなく、「尤度比の大きいところを棄却せよ」です。

以上が、ネイマン・ピアソンの基本定理についての解説です。

単調尤度比から一様最強力検定へ

次に、片側の複合仮説に進みます。

基本定理は単純仮説どうしの話でした。しかし、実際に知りたいのは H0:θ≤θ0H_0: \theta \le \theta_0 対 H1:θ>θ0H_1: \theta > \theta_0 のような複合仮説です。ここで効いてくるのが 単調尤度比 です。

θ′<θ′′\theta' < \theta'' のとき、比 f(x;θ′′)/f(x;θ′)f(x; \theta'')/f(x; \theta') が統計量 T(x)T(x) の非減少関数であるとき、この分布族は TT について単調尤度比を持つと言います。

指数型分布族 f(x;θ)=h(x)c(θ)exp⁡{w(θ)T(x)}f(x; \theta) = h(x) c(\theta) \exp\{w(\theta) T(x)\} は、ww が増加関数なら単調尤度比を持ちます。比を計算すると exp⁡{(w(θ′′)−w(θ′))T(x)}\exp\{(w(\theta'') - w(\theta')) T(x)\} の定数倍になり、TT の増加関数だからです。正規分布の平均、二項分布、ポアソン分布の標本合計は、どれもこの形です。

例えるなら、どのお店に行っても費用対効果の順位表が同じ、という状況です。順位表が同じなら、買い物リストも同じになります。

定理(カーリン・ルービン):TT について単調尤度比を持つ分布族で、次の検定を考える。

φ(x)={1(T(x)>c)γ(T(x)=c)0(T(x)<c),Eθ0[φ(X)]=α\varphi(x) = \begin{cases} 1 & (T(x) > c) \\ \gamma & (T(x) = c) \\ 0 & (T(x) < c) \end{cases}, \qquad E_{\theta_0}[\varphi(X)] = \alpha

このとき、φ\varphi は H0:θ≤θ0H_0: \theta \le \theta_0 対 H1:θ>θ0H_1: \theta > \theta_0 の有意水準 α\alpha の一様最強力検定で、検出力関数 π(θ)\pi(\theta) は非減少である。

証明の筋道は3段です。

【証明の3段】

  1. 単純仮説への帰着: θ1>θ0\theta_1 > \theta_0 を固定する。単調尤度比より、φ\varphi は θ0\theta_0 対 θ1\theta_1 の基本定理の形をしている。よって、Eθ0[φ′]≤αE_{\theta_0}[\varphi'] \le \alpha を満たす検定の中で最強力である。φ\varphi は θ1\theta_1 の値に依存しないので、すべての θ1>θ0\theta_1 > \theta_0 で最強力である
  2. 検出力の単調性: θ′<θ′′\theta' < \theta'' を固定する。φ\varphi は θ′\theta' 対 θ′′\theta'' の基本定理の形でもあり、その大きさは π(θ′)\pi(\theta') である。前の節の系より、π(θ′′)≥π(θ′)\pi(\theta'') \ge \pi(\theta') である
  3. 複合仮説の処理: 2 より、sup⁡θ≤θ0π(θ)=π(θ0)=α\sup_{\theta \le \theta_0} \pi(\theta) = \pi(\theta_0) = \alpha なので、φ\varphi は有意水準 α\alpha の検定である。一方、H0H_0 の有意水準 α\alpha の検定は、すべて Eθ0[φ′]≤αE_{\theta_0}[\varphi'] \le \alpha を満たすので、1 の比較の対象に含まれる

ここがポイントです。基本定理を2回使っています。1回目は「最強力であること」に、2回目は「複合仮説の大きさが境目で決まること」にです。

では、両側の対立仮説ではどうでしょうか? θ1>θ0\theta_1 > \theta_0 に最強力な検定は TT の右側を棄却し、θ2<θ0\theta_2 < \theta_0 に最強力な検定は左側を棄却します。基本定理の必要性より、最強力検定はこの形にほとんど確実に限られるので、両方を同時に満たす検定はありません。したがって、一様最強力検定は一般に存在しません。そのときは、前回の不偏性の制約を加えた一様最強力不偏検定や、次の節の尤度比検定に進みます。

例題:一様最強力検定の導出

X1,…,X6X_1, \ldots, X_6 は密度 f(x;θ)=θxθ−1f(x; \theta) = \theta x^{\theta - 1}(0<x<10 < x < 1、θ>0\theta > 0)に独立に従う。(1) H0:θ≤1H_0: \theta \le 1 対 H1:θ>1H_1: \theta > 1 の有意水準5%の一様最強力検定を求めよ。(2) 検出力関数を、カイ二乗分布で表せ。(3) θ=2\theta = 2 の検出力を求めよ。χ0.952(12)=5.226\chi^2_{0.95}(12) = 5.226、P(χ2(12)≤10.45)=0.424P(\chi^2(12) \le 10.45) = 0.424 とする。

【解答】

(1) T=−∑ilog⁡XiT = -\sum_i \log X_i とする。∏ixiθ−1=e−(θ−1)T\prod_i x_i^{\theta - 1} = e^{-(\theta - 1)T} なので、同時密度は θ6e−(θ−1)T\theta^6 e^{-(\theta - 1)T} である。θ′<θ′′\theta' < \theta'' の比は (θ′′/θ′)6exp⁡{−(θ′′−θ′)T}(\theta''/\theta')^6 \exp\{-(\theta'' - \theta') T\} で、TT の減少関数である。つまり −T-T について単調尤度比を持つ。カーリン・ルービンの定理より、一様最強力検定の棄却域は T<kT < k の形である。

区間推定の記事で示したとおり 2θT∼χ2(12)2\theta T \sim \chi^2(12) である。θ=1\theta = 1 で P(2T<2k)=0.05P(2T < 2k) = 0.05 より、2k=χ0.952(12)=5.2262k = \chi^2_{0.95}(12) = 5.226 である。答えは「−2∑ilog⁡Xi<5.226-2\sum_i \log X_i < 5.226 なら棄却」である。

(2) π(θ)=Pθ(2T<5.226)=P(χ2(12)<5.226 θ)\pi(\theta) = P_\theta(2T < 5.226) = P(\chi^2(12) < 5.226\,\theta) である。

(3) π(2)=P(χ2(12)<10.45)=0.424\pi(2) = P(\chi^2(12) < 10.45) = 0.424 である。

(2) の式は θ\theta の増加関数で、定理の結論とも合っています。

試験のポイント:一様最強力検定の答案は、「単調尤度比の確認 → 定理の適用 → 帰無分布で定数を決める → 検出力」の順に書きます。尤度比の増減の向きを必ず確かめましょう。

以上が、単調尤度比と一様最強力検定についての説明です。

尤度比検定:ウィルクスの定理を導く

続いて、一様最強力検定が使えない場面の汎用の方法を解説します。

複合仮説 H0:θ∈Θ0H_0: \theta \in \Theta_0 に対して、尤度比検定 は次の比が小さいときに棄却します。

λ(x)=sup⁡θ∈Θ0L(θ;x)sup⁡θ∈ΘL(θ;x)\lambda(x) = \frac{\sup_{\theta \in \Theta_0} L(\theta; x)}{\sup_{\theta \in \Theta} L(\theta; x)}

基本定理の比を、それぞれの仮説の最良の値で評価したものだと考えてください。準1級で学んだとおり、Θ\Theta の次元から Θ0\Theta_0 の次元を引いた数を rr とすると、H0H_0 のもとで −2log⁡λ-2\log\lambda は χ2(r)\chi^2(r) に近づきます。これが ウィルクスの定理 です。

ここでは、1次元の H0:θ=θ0H_0: \theta = \theta_0 の場合を導きます。対数尤度を ℓ(θ)\ell(\theta)、1個の観測のフィッシャー情報量を I1(θ)I_1(\theta) とします。正則条件のもとで、θ^\hat{\theta} は ℓ′(θ^)=0\ell'(\hat{\theta}) = 0 を満たし、n(θ^−θ0)→N(0,1/I1(θ0))\sqrt{n}(\hat{\theta} - \theta_0) \to N(0, 1/I_1(\theta_0)) です。

ℓ\ell を θ^\hat{\theta} のまわりでテイラー展開します。θ∗\theta^* は θ0\theta_0 と θ^\hat{\theta} の間の点です。

ℓ(θ0)=ℓ(θ^)+ℓ′(θ^)(θ0−θ^)+12ℓ′′(θ∗)(θ0−θ^)2\ell(\theta_0) = \ell(\hat{\theta}) + \ell'(\hat{\theta})(\theta_0 - \hat{\theta}) + \frac{1}{2}\ell''(\theta^*)(\theta_0 - \hat{\theta})^2

1次の項は0です。したがって、次の式を得ます。

−2log⁡λ=2{ℓ(θ^)−ℓ(θ0)}=−ℓ′′(θ∗)nI1(θ0)⋅{nI1(θ0) (θ^−θ0)}2-2\log\lambda = 2\{\ell(\hat{\theta}) - \ell(\theta_0)\} = \frac{-\ell''(\theta^*)}{n I_1(\theta_0)} \cdot \Big\{\sqrt{n I_1(\theta_0)}\,(\hat{\theta} - \theta_0)\Big\}^2

右辺の2つの因子を見ましょう。θ^\hat{\theta} の一致性と大数の法則より、最初の因子は1に確率収束します。波かっこの中は N(0,1)N(0, 1) に分布収束します。スラツキーの定理より、全体は標準正規分布の2乗、つまり χ2(1)\chi^2(1) に分布収束します。

言葉で言うと、山頂の近くの対数尤度は放物線で、高さの差は水平距離の2乗に比例する ということです。距離が正規分布に従うので、高さの差はカイ二乗分布に従います。

rr 次元でも筋道は同じです。2次形式 (θ^−θ0)⊤I(θ^−θ0)(\hat{\theta} - \theta_0)^\top I (\hat{\theta} - \theta_0) が χ2(r)\chi^2(r) に近づくことを使います。局外パラメータがあっても、自由度は H0H_0 が固定した母数の個数です。

以上が、尤度比検定についての解説です。

ワルド型とスコア型:同じ放物線の3つの読み方

最後に、ワルド型検定とスコア型検定を導いて、3つの関係を見ていきましょう。

放物線の山を3人で調べる場面を想像してください。

【3人の測り方】

  • ワルドさん: 山頂 θ^\hat{\theta} から基準 θ0\theta_0 までの水平距離を測る
  • 尤度比さん: 山頂と基準の地点の高さの差を測る
  • スコアさん: 基準の地点に立って、足元の傾きを測る

式で書くと次の3つです。U(θ)=ℓ′(θ)U(\theta) = \ell'(\theta) はスコア関数、I(θ)=nI1(θ)I(\theta) = n I_1(\theta) は標本全体のフィッシャー情報量です。

W=(θ^−θ0)2I(θ^),LR=2{ℓ(θ^)−ℓ(θ0)},S=U(θ0)2I(θ0)W = (\hat{\theta} - \theta_0)^2 I(\hat{\theta}), \qquad LR = 2\{\ell(\hat{\theta}) - \ell(\theta_0)\}, \qquad S = \frac{U(\theta_0)^2}{I(\theta_0)}

ワルド型検定 の漸近分布は、n(θ^−θ0)→N(0,1/I1(θ0))\sqrt{n}(\hat{\theta} - \theta_0) \to N(0, 1/I_1(\theta_0)) と、I1(θ^)→I1(θ0)I_1(\hat{\theta}) \to I_1(\theta_0) から直ちに分かります。

スコア型検定 は、U(θ0)=∑i∂θlog⁡f(Xi;θ0)U(\theta_0) = \sum_i \partial_\theta \log f(X_i; \theta_0) が独立な項の和であることを使います。各項の平均は0、分散は I1(θ0)I_1(\theta_0) なので、中心極限定理より U(θ0)/nI1(θ0)→N(0,1)U(\theta_0)/\sqrt{n I_1(\theta_0)} \to N(0, 1) です。2乗すれば S→χ2(1)S \to \chi^2(1) です。

では、3つの関係はどうなっているのでしょうか? UU を θ^\hat{\theta} のまわりで展開すると、次の式になります。

U(θ0)=U(θ^)+ℓ′′(θ∗)(θ0−θ^)=−ℓ′′(θ∗)(θ^−θ0)U(\theta_0) = U(\hat{\theta}) + \ell''(\theta^*)(\theta_0 - \hat{\theta}) = -\ell''(\theta^*)(\hat{\theta} - \theta_0)

つまり U(θ0)≈I(θ0)(θ^−θ0)U(\theta_0) \approx I(\theta_0)(\hat{\theta} - \theta_0) です。これを SS に代入すると、S≈I(θ0)(θ^−θ0)2S \approx I(\theta_0)(\hat{\theta} - \theta_0)^2 で、WW や LRLR と同じ形になります。H0H_0 のもとで、3つの差は0に確率収束します。

ここがポイントです。ぴったり放物線なら、距離の2乗に情報量を掛けた値も、高さの差の2倍も、傾きの2乗を情報量で割った値も、完全に同じ数です。3つの違いは、放物線からのズレの部分にしかありません。

例題:指数分布の3つの統計量

X1,…,XnX_1, \ldots, X_n は率 λ\lambda の指数分布に独立に従う。H0:λ=λ0H_0: \lambda = \lambda_0 を検定する。r=λ0xˉr = \lambda_0 \bar{x} とおく。(1) LRLR、WW、SS を nn と rr で表せ。(2) 同じ問題を平均 θ=1/λ\theta = 1/\lambda で書き直すと、3つの統計量はどう変わるか。(3) n=25n = 25、λ0=1\lambda_0 = 1、xˉ=1.4\bar{x} = 1.4 のとき、それぞれの値を求め、有意水準5%で判定せよ。χ0.052(1)=3.84\chi^2_{0.05}(1) = 3.84 とする。

【解答】

(1) ℓ(λ)=nlog⁡λ−λnxˉ\ell(\lambda) = n\log\lambda - \lambda n\bar{x} である。U(λ)=n/λ−nxˉU(\lambda) = n/\lambda - n\bar{x}、λ^=1/xˉ\hat{\lambda} = 1/\bar{x}、I(λ)=n/λ2I(\lambda) = n/\lambda^2 である。よって、次の結果を得る。

LR=2n(r−1−log⁡r),W=n(1−r)2,S=n(1−r)2LR = 2n(r - 1 - \log r), \qquad W = n(1 - r)^2, \qquad S = n(1 - r)^2

計算の例を示す。W=(1/xˉ−λ0)2⋅nxˉ2=n(1−λ0xˉ)2W = (1/\bar{x} - \lambda_0)^2 \cdot n\bar{x}^2 = n(1 - \lambda_0\bar{x})^2 である。S=n2(1/λ0−xˉ)2⋅λ02/n=n(1−r)2S = n^2(1/\lambda_0 - \bar{x})^2 \cdot \lambda_0^2 / n = n(1 - r)^2 である。

(2) ℓ(θ)=−nlog⁡θ−nxˉ/θ\ell(\theta) = -n\log\theta - n\bar{x}/\theta で、U(θ)=−n/θ+nxˉ/θ2U(\theta) = -n/\theta + n\bar{x}/\theta^2、θ^=xˉ\hat{\theta} = \bar{x}、I(θ)=n/θ2I(\theta) = n/\theta^2 である。LRLR は最大値の比なので変わらない。SS は計算すると n(r−1)2n(r - 1)^2 で変わらない。WW だけが次のように変わる。

Wθ=(xˉ−θ0)2⋅nxˉ2=n(1−1r)2W_\theta = (\bar{x} - \theta_0)^2 \cdot \frac{n}{\bar{x}^2} = n\left(1 - \frac{1}{r}\right)^2

(3) r=1.4r = 1.4 である。S=W=25×0.16=4.00S = W = 25 \times 0.16 = 4.00、LR=50(0.4−0.3365)=3.18LR = 50(0.4 - 0.3365) = 3.18、Wθ=25×0.0816=2.04W_\theta = 25 \times 0.0816 = 2.04 である。χ0.052(1)=3.84\chi^2_{0.05}(1) = 3.84 と比べると、SS と WW は棄却、LRLR と WθW_\theta は棄却しない。

同じデータ、同じ仮説でも、判定が割れました。r−1−log⁡rr - 1 - \log r を r=1r = 1 のまわりで展開すると (r−1)2/2(r - 1)^2/2 なので、r→1r \to 1 では3つが一致します。今回は r=1.4r = 1.4 と離れているので、ズレが見えたのです。

この問題には正確な検定もあります。H0H_0 のもとで 2λ0nXˉ∼χ2(2n)2\lambda_0 n\bar{X} \sim \chi^2(2n) なので、値は 2×25×1.4=702 \times 25 \times 1.4 = 70 です。自由度50の上側確率を2倍すると、両側のp値は0.065です。5%では棄却しません。

【3つの検定の比べ方】

  • ワルド型: θ^\hat{\theta} だけで計算できる。母数の変換で値が変わる
  • 尤度比検定: 両方のモデルの最大化が必要。母数の変換で値が変わらない
  • スコア型: θ0\theta_0 だけで計算できる。母数の変換で値が変わらない

補足(ここは読み飛ばしてOK): 局外パラメータがあるときは、H0H_0 のもとの最尤推定値を θ~\tilde{\theta} として、S=U(θ~)⊤I(θ~)−1U(θ~)S = U(\tilde{\theta})^\top I(\tilde{\theta})^{-1} U(\tilde{\theta}) と定めます。WW は、ψ\psi を調べたい母数として (ψ^−ψ0)⊤{I(θ^)−1}ψψ−1(ψ^−ψ0)(\hat{\psi} - \psi_0)^\top \{I(\hat{\theta})^{-1}\}_{\psi\psi}^{-1}(\hat{\psi} - \psi_0) です。どちらも χ2(r)\chi^2(r) に近づきます。

試験のポイント:導出の核は「ℓ\ell の2次展開」「スコアの中心極限定理」「スラツキーの定理」の3つです。これらの順に書けば、3つの検定の漸近分布はどれも導けます。

以上が、ワルド型検定とスコア型検定についての解説です。

細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「最適性は1行の不等式から、漸近分布は2次のテイラー展開から」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は基本定理の証明から始めて、一様最強力検定と、漸近的な3つの検定を導きました。有限標本の最適性は、各点の符号を見る不等式で決まります。大標本の近似は、対数尤度の放物線で決まります。検定の理論の骨格は、この2本です。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 基本定理の証明の中心は、(φ−φ′)(f1−kf0)≥0(\varphi - \varphi')(f_1 - k f_0) \ge 0 という各点の不等式。
  • 系として、最強力検定の検出力は大きさ以上である。これが検出力の単調性を導く。
  • 単調尤度比があれば、片側の複合仮説に一様最強力検定がある。両側には一般にない。
  • 尤度比検定の −2log⁡λ-2\log\lambda は、2次のテイラー展開で χ2(r)\chi^2(r) に近づくことが導ける。
  • ワルド型は距離、尤度比は高さ、スコア型は傾き。同じ放物線の3つの読み方で、H0H_0 のもとで漸近的に一致する。

キーワードのおさらい

  • ネイマン・ピアソンの基本定理: 単純仮説どうしの最強力検定は尤度比で決まるという定理
  • 単調尤度比: 尤度比がある統計量の単調関数になる性質
  • 一様最強力検定: 対立仮説のすべての点で検出力が最大の検定
  • 尤度比検定: 仮説の中の最大尤度と全体の最大尤度の比で判定する検定
  • ワルド型検定: 最尤推定値と基準の距離で判定する検定
  • スコア型検定: 基準の点でのスコア関数の大きさで判定する検定

さて、道具がそろいました。次は、これを最も身近な分布に当てはめます。tt 検定や FF 検定は、誰かが思いついた式ではありません。尤度比から必然的に出てくる式です。

次回は、tt 検定と FF 検定を尤度比から導く「正規分布に関する検定」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 両側の対立仮説に一様最強力検定が一般に存在しない理由として、最も適切なものはどれか。
問2. XX を1回観測し、H0:X∼Po(2)H_0: X \sim Po(2) 対 H1:X∼Po(5)H_1: X \sim Po(5) の大きさ0.05の最強力検定を作る。Po(2)Po(2) で P(X≥6)=0.0166P(X \ge 6) = 0.0166、P(X=5)=0.0361P(X = 5) = 0.0361 である。X=5X = 5 のときに棄却する確率 γ\gamma に最も近いものはどれか。
問3. 密度 θxθ−1\theta x^{\theta - 1}(0<x<10 < x < 1)からの大きさ9の標本で、H0:θ≤1H_0: \theta \le 1 対 H1:θ>1H_1: \theta > 1 の有意水準5%の一様最強力検定は「−2∑ilog⁡Xi<9.39-2\sum_i \log X_i < 9.39 なら棄却」である。P(χ2(18)≤18.78)=0.595P(\chi^2(18) \le 18.78) = 0.595 のとき、θ=2\theta = 2 の検出力に最も近いものはどれか。
問4. 率 λ\lambda の指数分布で H0:λ=1H_0: \lambda = 1 を検定する。n=16n = 16、xˉ=0.5\bar{x} = 0.5 のとき、尤度比検定の統計量 LRLR の値に最も近いものはどれか。log⁡2=0.693\log 2 = 0.693 とする。
問5. 3つの漸近検定の説明として、正しいものはどれか。