統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

1級数理-4 統計数理

変数変換 — 変換後の分布の導出

  • 変数変換
  • 確率変数の線形結合

はじめに

「ヤコビアンを掛けるのは覚えた。でも、補助変数はどう選べばいいの?」

準1級では、変換の公式に当てはめて分布を求めました。ところが1級の問題では、変換が単調でなかったり、1つの統計量の分布を求めるために、自分で変数を1つ足さなければならなかったりします。

例えば、引っ越しを想像してください。荷物の総量は、どの部屋に移しても変わりません。しかし、狭い部屋に押し込めば詰まり具合は高くなり、広い部屋に広げれば低くなります。

実は、確率の変換もこれと同じです。確率の総量は変わらず、間取りに合わせて密度だけが変わります。変数変換の公式は、すべて「小さな領域の確率は変換で変わらない」という保存則から出てきます。ここが分かれば、手順は機械的です。

そこで登場するのが、今回の主役 変数変換 の証明と、確率変数の線形結合 の行列による扱いです。

前回の記事では、分布の特性値を学びました。今回の記事では、1変数の公式の証明、補助変数の選び方、和・積・比の分布の導出、そして線形結合の分布について解説します。

1変数の変数変換:公式を証明する

はじめに、1変数の公式を証明します。

XX の確率密度関数を fXf_X とします。gg が狭義単調で微分可能なとき、Y=g(X)Y = g(X) の確率密度関数は次の式です。

fY(y)=fX(g−1(y))∣ddyg−1(y)∣f_Y(y) = f_X(g^{-1}(y)) \left|\frac{d}{dy} g^{-1}(y)\right|

証明は、累積分布関数を経由します。gg が増加なら、次のようになります。

FY(y)=P(X≤g−1(y))=FX(g−1(y))F_Y(y) = P(X \le g^{-1}(y)) = F_X(g^{-1}(y))

yy で微分すると、合成関数の微分で公式が出ます。gg が減少なら、不等号の向きが逆になるので FY(y)=1−FX(g−1(y))F_Y(y) = 1 - F_X(g^{-1}(y)) です。微分すると前にマイナスが付きますが、g−1g^{-1} の微分が負なので、全体は正です。2つの場合を1つにまとめたものが、絶対値です。

具体的に見てみましょう。XX が標準コーシー分布 f(x)=1/{π(1+x2)}f(x) = 1/\{\pi(1 + x^2)\} に従うとき、Y=1/XY = 1/X は1対1の変換です。x=1/yx = 1/y、∣dx/dy∣=1/y2|dx/dy| = 1/y^2 を入れると、次のようになります。

fY(y)=1π(1+1/y2)⋅1y2=1π(1+y2)f_Y(y) = \frac{1}{\pi(1 + 1/y^2)} \cdot \frac{1}{y^2} = \frac{1}{\pi(1 + y^2)}

標準コーシー分布の逆数は、また標準コーシー分布です。

gg が単調でないときは、定義域を単調な区間に切り分けます。1つの yy に対応する xx を x1,x2,…x_1, x_2, \dots とすると、それぞれの枝の寄与を足せばよいのです。

fY(y)=∑ifX(xi)∣dxidy∣f_Y(y) = \sum_i f_X(x_i) \left|\frac{dx_i}{dy}\right|

例えば、一定の速さで回る観覧車を考えます。角度 Θ\Theta が (0,2π)(0, 2\pi) の一様分布に従うとき、高さ Y=cos⁡ΘY = \cos\Theta の分布はどうなるでしょうか? −1<y<1-1 < y < 1 の1つの値に、θ=arccos⁡y\theta = \arccos y と 2π−arccos⁡y2\pi - \arccos y の2つの枝が対応します。どちらの枝でも ∣dθ/dy∣=1/1−y2|d\theta/dy| = 1/\sqrt{1 - y^2} です。

fY(y)=2×12π×11−y2=1π1−y2f_Y(y) = 2 \times \frac{1}{2\pi} \times \frac{1}{\sqrt{1 - y^2}} = \frac{1}{\pi\sqrt{1 - y^2}}

y=±1y = \pm 1 の近くで密度が大きくなります。観覧車は、てっぺんと一番下の近くでは高さがほとんど変わらないので、そこに長くとどまって見えるのです。

もう1つ、1級で欠かせない変換があります。確率積分変換 です。FF が連続で狭義増加のとき、X∼FX \sim F なら U=F(X)U = F(X) は (0,1)(0, 1) の一様分布に従います。

例題:確率積分変換

XX の累積分布関数 FF は連続で狭義増加とする。〔1〕U=F(X)U = F(X) が (0,1)(0, 1) の一様分布に従うことを示せ。〔2〕T=−log⁡(1−F(X))T = -\log(1 - F(X)) の分布を求めよ。〔3〕XX の危険率が h(x)=xh(x) = x(x>0x > 0)のとき、X2/2X^2/2 の分布を答えよ。

【解答】

〔1〕0<u<10 < u < 1 について、P(F(X)≤u)=P(X≤F−1(u))=F(F−1(u))=uP(F(X) \le u) = P(X \le F^{-1}(u)) = F(F^{-1}(u)) = u である。これは一様分布の累積分布関数である。

〔2〕t>0t > 0 について、P(T≤t)=P(U≤1−e−t)=1−e−tP(T \le t) = P(U \le 1 - e^{-t}) = 1 - e^{-t} である。よって TT は平均1の指数分布に従う。

〔3〕S(x)=e−x2/2S(x) = e^{-x^2/2} だから、−log⁡(1−F(X))=−log⁡S(X)=X2/2-\log(1 - F(X)) = -\log S(X) = X^2/2 である。〔2〕より、平均1の指数分布に従う。

〔2〕は、「累積の危険率で測った寿命は、どんな分布でも平均1の指数分布になる」という意味です。逆に X=F−1(U)X = F^{-1}(U) とすれば、一様乱数から FF に従う乱数が作れます。後の記事のシミュレーションの土台です。なお、FF が階段状の離散型では〔1〕は成り立ちません。

以上が、1変数の公式の証明についての解説です。

多変数の変数変換:補助変数を選ぶ

次に、多変数の場合について説明します。

(X,Y)(X, Y) を (U,V)(U, V) に1対1に変換するとき、公式は fU,V(u,v)=fX,Y(x,y) ∣J∣f_{U,V}(u, v) = f_{X,Y}(x, y)\, |J| でした。JJ は x,yx, y を u,vu, v で偏微分した行列の行列式、ヤコビアンです。

証明の筋道はこうです。(U,V)(U, V) の領域 BB に対応する (X,Y)(X, Y) の領域を AA とすると、確率は等しいので次の式が成り立ちます。

P((U,V)∈B)=∬AfX,Y(x,y) dx dy=∬BfX,Y(x(u,v),y(u,v)) ∣J∣ du dvP((U, V) \in B) = \iint_A f_{X,Y}(x, y)\, dx\, dy = \iint_B f_{X,Y}(x(u, v), y(u, v))\, |J|\, du\, dv

右の等号は、重積分の変数変換です。どんな BB でも成り立つので、右の積分の中身が (U,V)(U, V) の確率密度関数です。小さな長方形が小さな平行四辺形に写り、その面積比が ∣J∣|J| なのです。

ほしいのが UU だけのときは、もう1つの変数 VV を自分で足します。これが補助変数です。

【補助変数の選び方】

  1. 変換が1対1になる
  2. x,yx, y を u,vu, v で解きやすい
  3. できれば UU と独立になりそうな形にする(和に対して比、半径に対して角度など)

例題:ガンマ分布の和と比

X∼Ga(a,1)X \sim Ga(a, 1)、Y∼Ga(b,1)Y \sim Ga(b, 1) は独立とする。ただし Ga(a,1)Ga(a, 1) の確率密度関数は xa−1e−x/Γ(a)x^{a-1} e^{-x}/\Gamma(a)(x>0x > 0)である。U=X+YU = X + Y、V=X/(X+Y)V = X/(X + Y) とする。〔1〕(U,V)(U, V) の同時確率密度関数を求めよ。〔2〕UU と VV は独立で、U∼Ga(a+b,1)U \sim Ga(a + b, 1)、V∼Be(a,b)V \sim Be(a, b) であることを示せ。〔3〕B(a,b)=Γ(a)Γ(b)/Γ(a+b)B(a, b) = \Gamma(a)\Gamma(b)/\Gamma(a + b) を示せ。

【解答】

〔1〕逆に解くと x=uvx = uv、y=u(1−v)y = u(1 - v) で、範囲は u>0u > 0、0<v<10 < v < 1 である。J=v⋅(−u)−u(1−v)=−uJ = v \cdot (-u) - u(1 - v) = -u より ∣J∣=u|J| = u である。代入して整理すると、次を得る。

fU,V(u,v)=(uv)a−1{u(1−v)}b−1e−uΓ(a)Γ(b) u=ua+b−1e−uΓ(a+b)⋅Γ(a+b)Γ(a)Γ(b) va−1(1−v)b−1f_{U,V}(u, v) = \frac{(uv)^{a-1} \{u(1-v)\}^{b-1} e^{-u}}{\Gamma(a)\Gamma(b)}\, u = \frac{u^{a+b-1} e^{-u}}{\Gamma(a+b)} \cdot \frac{\Gamma(a+b)}{\Gamma(a)\Gamma(b)}\, v^{a-1}(1-v)^{b-1}

〔2〕〔1〕は uu だけの関数と vv だけの関数の積で、範囲も長方形だから、UU と VV は独立である。前の因子は Ga(a+b,1)Ga(a+b, 1) の確率密度関数で積分は1だから、後の因子が VV の確率密度関数である。これは Be(a,b)Be(a, b) である。

〔3〕後の因子を vv で積分すると1だから、∫01va−1(1−v)b−1 dv=Γ(a)Γ(b)/Γ(a+b)\int_0^1 v^{a-1}(1-v)^{b-1}\, dv = \Gamma(a)\Gamma(b)/\Gamma(a+b) である。

変数変換だけで、ベータ関数の公式まで証明できました。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。X,YX, Y が独立に N(0,1)N(0, 1) に従うとき、極座標 x=rcos⁡θx = r\cos\theta、y=rsin⁡θy = r\sin\theta に変換します。∣J∣=r|J| = r なので、次のようになります。

fR,Θ(r,θ)=12πe−(x2+y2)/2 r=12π⋅re−r2/2f_{R,\Theta}(r, \theta) = \frac{1}{2\pi} e^{-(x^2 + y^2)/2}\, r = \frac{1}{2\pi} \cdot r e^{-r^2/2}

Θ\Theta は (0,2π)(0, 2\pi) の一様分布、RR は re−r2/2r e^{-r^2/2} に従い、独立です。逆向きに読むと、一様乱数2つから正規乱数を作るボックス・ミュラー法になります。

試験のポイント:範囲の変換は省略できません。(u,v)(u, v) の範囲を答案に書き、範囲が長方形で式が積に分かれるときに限り、独立と結論します。

以上が、多変数の変数変換についての説明です。

和・積・比の分布を同じ型で導く

続いて、よく問われる3つの形について解説します。

和、積、比は、どれも補助変数を V=XV = X とすれば同じ型で解けます。同じ生地から3種類のパンを焼くようなものです。yy を x,zx, z で解き、ヤコビアンを掛けて、xx で積分します。

【ZZ の確率密度関数の公式】

  • 和 Z=X+YZ = X + Y: y=z−xy = z - x、∣J∣=1|J| = 1 より fZ(z)=∫f(x,z−x) dxf_Z(z) = \int f(x, z - x)\, dx
  • 積 Z=XYZ = XY: y=z/xy = z/x、∣J∣=1/∣x∣|J| = 1/|x| より fZ(z)=∫f(x,z/x) 1∣x∣ dxf_Z(z) = \int f(x, z/x)\, \dfrac{1}{|x|}\, dx
  • 比 Z=Y/XZ = Y/X: y=zxy = zx、∣J∣=∣x∣|J| = |x| より fZ(z)=∫f(x,zx) ∣x∣ dxf_Z(z) = \int f(x, zx)\, |x|\, dx

和の公式は、準1級の畳み込みです。積と比にも同じ型が使えることが、ポイントです。

具体的に見てみましょう。X,YX, Y が独立に (0,1)(0, 1) の一様分布に従うとき、Z=XYZ = XY の分布を求めます。0<z/x<10 < z/x < 1 が必要なので、積分の範囲は z<x<1z < x < 1 です。

fZ(z)=∫z11x dx=−log⁡z(0<z<1)f_Z(z) = \int_z^1 \frac{1}{x}\, dx = -\log z \qquad (0 < z < 1)

積分すると FZ(z)=z−zlog⁡zF_Z(z) = z - z\log z で、例えば P(Z≤1/2)≈0.847P(Z \le 1/2) \approx 0.847 です。積分の範囲を (0,1)(0, 1) のままにする間違いが、とても多いので注意しましょう。

例題:正規分布の比

X,YX, Y は独立に N(0,1)N(0, 1) に従う。Z=Y/XZ = Y/X の確率密度関数を求めよ。

【解答】

比の公式に f(x,y)=12πe−(x2+y2)/2f(x, y) = \dfrac{1}{2\pi} e^{-(x^2 + y^2)/2} を代入する。被積分関数は xx の偶関数だから、次を得る。

fZ(z)=12π∫−∞∞∣x∣ e−(1+z2)x2/2 dx=1π∫0∞x e−(1+z2)x2/2 dx=1π(1+z2)f_Z(z) = \frac{1}{2\pi} \int_{-\infty}^{\infty} |x|\, e^{-(1 + z^2)x^2/2}\, dx = \frac{1}{\pi} \int_0^\infty x\, e^{-(1 + z^2)x^2/2}\, dx = \frac{1}{\pi(1 + z^2)}

よって ZZ は標準コーシー分布に従う。

前の節の極座標で見ると、Y/X=tan⁡ΘY/X = \tan\Theta です。Θ\Theta は一様分布に従うので、一様な角度の正接がコーシー分布だと分かります。

以上が、和・積・比の分布についての解説です。

確率変数の線形結合を行列で扱う

最後に、確率変数の線形結合を見ていきましょう。

確率ベクトル X\boldsymbol{X} の平均を μ\boldsymbol{\mu}、分散共分散行列を Σ\Sigma とします。Y=AX+b\boldsymbol{Y} = A\boldsymbol{X} + \boldsymbol{b} について、次が成り立ちます。

E[Y]=Aμ+b,V[Y]=AΣA⊤E[\boldsymbol{Y}] = A\boldsymbol{\mu} + \boldsymbol{b}, \qquad V[\boldsymbol{Y}] = A\Sigma A^\top

証明は、Y−E[Y]=A(X−μ)\boldsymbol{Y} - E[\boldsymbol{Y}] = A(\boldsymbol{X} - \boldsymbol{\mu}) を (Y−E[Y])(Y−E[Y])⊤(\boldsymbol{Y} - E[\boldsymbol{Y}])(\boldsymbol{Y} - E[\boldsymbol{Y}])^\top に入れて、期待値をとるだけです。AA を1行のベクトル a⊤\boldsymbol{a}^\top にすると V[a⊤X]=a⊤Σa≥0V[\boldsymbol{a}^\top \boldsymbol{X}] = \boldsymbol{a}^\top \Sigma \boldsymbol{a} \ge 0 で、Σ\Sigma が非負定値であることが分かります。前回の「分散は負にならない」が、ここでも顔を出しました。

例えば、分散 σ2\sigma^2 で、どの2つの相関も ρ\rho である X1,…,XnX_1, \dots, X_n の平均 Xˉ\bar{X} を考えます。a=(1/n,…,1/n)⊤\boldsymbol{a} = (1/n, \dots, 1/n)^\top を入れると、次のようになります。

V[Xˉ]=σ2n{1+(n−1)ρ}V[\bar{X}] = \frac{\sigma^2}{n}\{1 + (n - 1)\rho\}

σ2=4\sigma^2 = 4、ρ=0.2\rho = 0.2、n=10n = 10 なら1.12で、独立のときの0.4の約3倍です。n→∞n \to \infty でも σ2ρ=0.8\sigma^2\rho = 0.8 が残ります。全員が同じ先生に習ったクラスのように、共通のぶれは、人数を増やしても平均で消えないのです。また、分散が負にならないことから、ρ≥−1/(n−1)\rho \ge -1/(n - 1) も分かります。

分布の形については、準1級で見たとおり、独立ならモーメント母関数の積で調べます。特に、独立な正規分布の線形結合は正規分布です。

例題:標本平均と偏差

X1,…,XnX_1, \dots, X_n は独立に平均 μ\mu、分散 σ2\sigma^2 の分布に従う。〔1〕Cov[Xˉ,Xi−Xˉ]=0\mathrm{Cov}[\bar{X}, X_i - \bar{X}] = 0 を示せ。〔2〕さらに Xi∼N(μ,σ2)X_i \sim N(\mu, \sigma^2) のとき、Xˉ\bar{X} と ∑i(Xi−Xˉ)2\sum_i (X_i - \bar{X})^2 が独立であることを示せ。

【解答】

〔1〕Cov[Xˉ,Xi]=1nV[Xi]=σ2n\mathrm{Cov}[\bar{X}, X_i] = \dfrac{1}{n} V[X_i] = \dfrac{\sigma^2}{n}、V[Xˉ]=σ2nV[\bar{X}] = \dfrac{\sigma^2}{n} だから、差をとって0である。

〔2〕第1行が (1,…,1)/n(1, \dots, 1)/\sqrt{n} の直交行列 PP をとり、Y=PX\boldsymbol{Y} = P\boldsymbol{X} とする。ν=E[Y]\boldsymbol{\nu} = E[\boldsymbol{Y}] とおく。直交変換は長さを変えないので ∑i(xi−μ)2=∑i(yi−νi)2\sum_i (x_i - \mu)^2 = \sum_i (y_i - \nu_i)^2 で、∣det⁡P∣=1|\det P| = 1 である。したがって変数変換の公式より、Y\boldsymbol{Y} の同時確率密度関数は積に分かれ、Y1,…,YnY_1, \dots, Y_n は独立で、それぞれ分散 σ2\sigma^2 の正規分布に従う。ここで Y1=n XˉY_1 = \sqrt{n}\,\bar{X} で、次が成り立つ。

∑i=2nYi2=∑i=1nXi2−nXˉ2=∑i=1n(Xi−Xˉ)2\sum_{i=2}^{n} Y_i^2 = \sum_{i=1}^{n} X_i^2 - n\bar{X}^2 = \sum_{i=1}^{n} (X_i - \bar{X})^2

Xˉ\bar{X} は Y1Y_1 だけの関数で、偏差平方和は Y2,…,YnY_2, \dots, Y_n だけの関数だから、両者は独立である。

この結果は、後の標本分布の記事で tt 分布を導く鍵になります。

以上が、確率変数の線形結合についての解説です。

細かい部分が分からなかったとしても問題ありません。ここでは、「確率の量は保存され、密度だけが補正される」という点だけ押さえておきましょう。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は変数変換の公式の証明と、補助変数を使った導出の手順を紹介しました。引っ越しで荷物が消えないように、確率の総量は変わりません。この保存則さえ押さえれば、和でも比でも、同じ手順で分布が導けます。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • 1変数の公式は累積分布関数の微分から出る。単調でなければ枝ごとに足す。
  • F(X)F(X) は一様分布に従う。これが確率積分変換である。
  • 補助変数は、1対1で解きやすく、独立になりそうな形を選ぶ。範囲の変換を忘れない。
  • 和・積・比は、V=XV = X とする同じ型で導ける。
  • 線形結合の分散は AΣA⊤A\Sigma A^\top。直交変換を使うと、正規標本の平均と偏差平方和の独立が示せる。

キーワードのおさらい

  • 変数変換: 確率変数を関数で別の確率変数に変え、その分布を求めること
  • ヤコビアン: 変換による面積の伸び縮みを表す行列式
  • 確率積分変換: F(X)F(X) が一様分布に従うという変換
  • 補助変数: 1対1の変換にするために足す変数
  • 確率変数の線形結合: 確率変数に定数を掛けて足したもの。平均は a⊤μ\boldsymbol{a}^\top \boldsymbol{\mu}、分散は a⊤Σa\boldsymbol{a}^\top \Sigma \boldsymbol{a}

さて、ここまでは分布を厳密に導いてきました。しかし、nn 個の和の分布を厳密に求められる場面は限られます。nn が大きいとき、和はどんな分布に近づくのでしょうか?

次回は、極限定理と確率分布の近似について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. XX が (−1,1)(-1, 1) の一様分布に従うとき、Y=X2Y = X^2 の確率密度関数として正しいものはどれか。ただし 0<y<10 < y < 1 とする。
問2. UU が (0,1)(0, 1) の一様分布に従うとき、Y=−2log⁡UY = -2\log U の確率密度関数として正しいものはどれか。ただし y>0y > 0 とする。
問3. X,YX, Y が独立に (0,1)(0, 1) の一様分布に従うとき、P(XY≤1/4)P(XY \le 1/4) に最も近いものはどれか。
問4. 分散9で、どの2つの相関も0.5である5個の確率変数の平均 Xˉ\bar{X} の分散として正しいものはどれか。
問5. X,YX, Y が独立に平均1の指数分布に従うとき、P(X/Y≤2)P(X/Y \le 2) として正しいものはどれか。