統計学 学習ノート

統計検定の4級から1級まで、出題範囲の順に記事と練習問題で学ぶ

準1級-10 応用統計の手法

各種推定法 — 最尤法とモーメント法

  • 最尤法
  • モーメント法
  • 最小二乗法
  • 線形模型

はじめに

「母数の値って、結局どうやって決めるの?」

2級では、母平均は標本平均で、母比率は標本比率で推定しました。どちらも当たり前に思えますよね。では、ガンマ分布の形状母数はどうでしょうか? 標本の何を計算すれば、形状母数の推定値になるのか、すぐには思いつきません。

例えば、ガチャを10回引いて3回当たったとしましょう。当たる確率は30%だろうと、誰もが思います。でも、なぜ30%なのでしょうか? 実は、この「なんとなく」の裏には、どんな分布にも使える一般的な手順が隠れています。

そこで登場するのが、今回の主役 最尤法 です。あわせて、もう2つの基本の作り方である モーメント法 と 最小二乗法 も扱います。

前回の記事では、情報を失わない要約である十分統計量を学びました。今回の記事では、推定量を作る3つの方法と、回帰分析の土台である線形模型について解説します。

モーメント法:標本と母集団のモーメントをそろえる

はじめに、最も素朴な作り方であるモーメント法について解説します。

モーメント法 は、標本のモーメントと母集団のモーメントを等しいとおいて、母数について解く方法です。標本の kk 次モーメント mkm_k と、母集団の kk 次モーメントを、次のように書きます。

mk=1n∑i=1nXik,μk(θ)=E[Xk]m_k = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} X_i^k, \qquad \mu_k(\theta) = E[X^k]

母数が pp 個あるなら、mk=μk(θ)m_k = \mu_k(\theta)(k=1,…,pk = 1, \dots, p)という pp 本の連立方程式を解きます。大数の法則により mkm_k は μk\mu_k に近づくので、理屈も素直です。

洋服の仕立てに例えると、これは「お客さんの肩幅と着丈を測って、型紙の寸法をそろえる」作業です。形の型紙はもう決まっていて、寸法だけを合わせるイメージです。

具体的に見てみましょう。正規分布 N(μ,σ2)N(\mu, \sigma^2) では、E[X]=μE[X] = \mu、E[X2]=σ2+μ2E[X^2] = \sigma^2 + \mu^2 です。方程式を解くと、次のようになります。

μ^=Xˉ,σ^2=m2−m12=1n∑i=1n(Xi−Xˉ)2\hat{\mu} = \bar{X}, \qquad \hat{\sigma}^2 = m_2 - m_1^2 = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}(X_i - \bar{X})^2

分母が n−1n-1 ではなく nn である点に注意しましょう。

せっかくなので、別の例も見てみましょう。形状 α\alpha、尺度 β\beta のガンマ分布では、期待値は αβ\alpha\beta、分散は αβ2\alpha\beta^2 です。分散を期待値で割れば β\beta が出るので、v^=m2−m12\hat{v} = m_2 - m_1^2 として次の式が得られます。

β^=v^Xˉ,α^=Xˉ2v^\hat{\beta} = \frac{\hat{v}}{\bar{X}}, \qquad \hat{\alpha} = \frac{\bar{X}^2}{\hat{v}}

例えば、xˉ=6\bar{x} = 6、v^=12\hat{v} = 12 なら、β^=12÷6=2\hat{\beta} = 12 \div 6 = 2、α^=36÷12=3\hat{\alpha} = 36 \div 12 = 3 です。冒頭の疑問だった形状母数も、これで計算できました。

モーメント法は手軽ですが、弱点もあります。U(0,θ)U(0, \theta) を考えましょう。E[X]=θ/2E[X] = \theta/2 なので、θ^=2Xˉ\hat{\theta} = 2\bar{X} です。データが 1, 2, 2, 3, 9 だったら、xˉ=3.4\bar{x} = 3.4 で θ^=6.8\hat{\theta} = 6.8 となります。でも、データに9があるので、θ\theta は少なくとも9のはずです。推定値が、ありえない値になってしまいました。

以上が、モーメント法についての解説です。

最尤法:データが最も起きやすい母数を選ぶ

次に、推定量の主役である最尤法について説明します。

最尤法(maximum likelihood method)は、手元のデータが起きる確率を最も大きくする母数を、推定値に選ぶ方法です。尤は「もっともらしい」という意味です。

探偵に例えると、分かりやすいです。現場に残った証拠を見て、「この人が犯人なら、この証拠が残る確率は高いか」を容疑者ごとに比べます。そして、証拠を最もよく説明する人を第一の容疑者にするのです。ここで証拠がデータ、容疑者が θ\theta の候補です。

式で書きましょう。データ x1,…,xnx_1, \dots, x_n を固定して、同時確率(密度)を θ\theta の関数と見たものを 尤度関数 と呼びます。その対数が 対数尤度 です。

L(θ)=∏i=1nf(xi;θ),ℓ(θ)=log⁡L(θ)=∑i=1nlog⁡f(xi;θ)L(\theta) = \prod_{i=1}^{n} f(x_i;\theta), \qquad \ell(\theta) = \log L(\theta) = \sum_{i=1}^{n} \log f(x_i;\theta)

L(θ)L(\theta) を最大にする θ^\hat{\theta} が、最尤推定量 です。対数は単調増加なので、最大になる場所は LL でも ℓ\ell でも同じです。積が和に変わるので、ふつうは ℓ\ell を使います。

【最尤推定量の求め方】

  1. 尤度関数を書き、対数をとる
  2. θ\theta で微分して0とおく(これを尤度方程式と呼ぶ)
  3. 解いて、最大であることを確かめる

冒頭のガチャを解いてみましょう。10回中3回当たる並びの確率は L(p)=p3(1−p)7L(p) = p^3(1-p)^7 です。候補の値を入れて比べます。

pp0.20.30.5
L(p)L(p)0.001680.002220.00098

0.3が最も大きいですね。微分でも確かめましょう。ℓ(p)=3log⁡p+7log⁡(1−p)\ell(p) = 3\log p + 7\log(1-p) なので、次の式を解きます。

ℓ′(p)=3p−71−p=0⇒p^=0.3\ell'(p) = \frac{3}{p} - \frac{7}{1-p} = 0 \quad \Rightarrow \quad \hat{p} = 0.3

「なんとなく30%」の正体は、最尤推定値だったのです。

次に、母数が2つある例です。N(μ,σ2)N(\mu, \sigma^2) の対数尤度は次の形です。

ℓ(μ,σ2)=−n2log⁡(2πσ2)−12σ2∑i=1n(xi−μ)2\ell(\mu, \sigma^2) = -\frac{n}{2}\log(2\pi\sigma^2) - \frac{1}{2\sigma^2}\sum_{i=1}^{n}(x_i - \mu)^2

μ\mu と σ2\sigma^2 でそれぞれ偏微分して0とおくと、μ^=xˉ\hat{\mu} = \bar{x}、σ^2=1n∑i(xi−xˉ)2\hat{\sigma}^2 = \frac{1}{n}\sum_i (x_i - \bar{x})^2 が得られます。ここでも分母は nn です。

微分が使えない例もあります。U(0,θ)U(0, \theta) の尤度は、θ≥max⁡ixi\theta \ge \max_i x_i のとき θ−n\theta^{-n}、それ以外では0です。θ−n\theta^{-n} は θ\theta が小さいほど大きいので、許される範囲の左端を選びます。つまり、θ^=max⁡iXi\hat{\theta} = \max_i X_i です。さきほどのデータなら θ^=9\hat{\theta} = 9 で、モーメント法の6.8のような矛盾は起きません。前回の分解定理から分かるように、最尤推定量が1つに定まるなら、それは十分統計量の関数になります。

最尤法には、もう1つ便利な性質があります。θ^\hat{\theta} が θ\theta の最尤推定量なら、g(θ)g(\theta) の最尤推定量は g(θ^)g(\hat{\theta}) です。これを 不変性 と呼びます。

例題:最尤推定とモーメント推定を比べる

f(x;θ)=θxθ−1f(x;\theta) = \theta x^{\theta - 1}(0<x<10 < x < 1)からの大きさ4の標本で、∑ilog⁡xi=−2\sum_i \log x_i = -2、xˉ=0.65\bar{x} = 0.65 でした。θ\theta の最尤推定値と、モーメント法の推定値を求めましょう。

【解き方】

  1. 対数尤度: ℓ(θ)=nlog⁡θ+(θ−1)∑ilog⁡xi\ell(\theta) = n\log\theta + (\theta - 1)\sum_i \log x_i
  2. 微分して0とおく: n/θ+∑ilog⁡xi=0n/\theta + \sum_i \log x_i = 0 なので、θ^=−n/∑ilog⁡xi=4÷2=2\hat{\theta} = -n/\sum_i \log x_i = 4 \div 2 = 2
  3. モーメント法: E[X]=∫01θxθ dx=θ/(θ+1)E[X] = \int_0^1 \theta x^{\theta}\,dx = \theta/(\theta + 1) なので、xˉ=θ/(θ+1)\bar{x} = \theta/(\theta+1) を解いて θ~=xˉ/(1−xˉ)\tilde{\theta} = \bar{x}/(1 - \bar{x})
  4. 代入する: θ~=0.65÷0.35≈1.86\tilde{\theta} = 0.65 \div 0.35 \approx 1.86

答えは最尤推定値2、モーメント推定値約1.86です。同じデータでも、方法が違えば値も変わります。

例題:不変性を使う

電球の寿命が指数分布に従うとします。5個の寿命が 120, 80, 200, 60, 40 時間のとき、200時間より長くもつ確率の最尤推定値を求めましょう。

【解き方】

  1. 平均 θ\theta の指数分布の最尤推定量は θ^=xˉ\hat{\theta} = \bar{x} なので、θ^=500÷5=100\hat{\theta} = 500 \div 5 = 100
  2. 求めたいのは g(θ)=P(X>200)=e−200/θg(\theta) = P(X > 200) = e^{-200/\theta}
  3. 不変性より、g(θ^)=e−2≈0.135g(\hat{\theta}) = e^{-2} \approx 0.135

答えは約0.135です。

補足(ここは読み飛ばしてOK): ガンマ分布の形状母数のように、尤度方程式が式変形では解けないこともあります。その場合は、θnew=θ−ℓ′(θ)/ℓ′′(θ)\theta_{\text{new}} = \theta - \ell'(\theta)/\ell''(\theta) を繰り返すニュートン法などの数値計算で求めます。

試験のポイント:範囲が母数で決まる分布では、尤度方程式は使えません。尤度の形を直接見て、最大の場所を探します。

以上が、最尤法についての説明です。

最小二乗法:ズレの2乗を最小にする

続いて、最小二乗法について解説します。

2級の回帰分析で学んだように、最小二乗法 は、観測値とモデルの予測値のズレの2乗和を最小にする方法です。

S(θ)=∑i=1n{yi−g(xi;θ)}2S(\theta) = \sum_{i=1}^{n} \{y_i - g(x_i;\theta)\}^2

例えば、各データ点と直線をばねでつないだ場面を想像してください。ばねのエネルギーは伸びの2乗に比例するので、手を離すと、直線はエネルギーの合計が最小になる位置に落ち着きます。それが最小二乗法の答えです。

最も単純な g=ag = a(定数)の場合は、S(a)=∑i(yi−a)2S(a) = \sum_i (y_i - a)^2 を aa で微分すると a^=yˉ\hat{a} = \bar{y} が出ます。標本平均も最小二乗推定量なのです。

g=a+bxg = a + bx の場合は、aa と bb で偏微分して0とおきます。

∑i(yi−a−bxi)=0,∑ixi(yi−a−bxi)=0\sum_{i}(y_i - a - bx_i) = 0, \qquad \sum_{i} x_i (y_i - a - bx_i) = 0

この2本を 正規方程式 と呼びます。解くと、2級で使った b^=Sxy/Sxx\hat{b} = S_{xy}/S_{xx}、a^=yˉ−b^xˉ\hat{a} = \bar{y} - \hat{b}\bar{x} になります。

ここがポイントです。最小二乗法は、誤差の分布を何も仮定していません。最尤法は分布を決めないと使えませんが、最小二乗法はズレの大きさだけで計算できます。

では、2つの方法は関係がないのでしょうか? 実は、誤差が N(0,σ2)N(0, \sigma^2) に従うと仮定すると、対数尤度は次の形になります。

ℓ=−n2log⁡(2πσ2)−S(θ)2σ2\ell = -\frac{n}{2}\log(2\pi\sigma^2) - \frac{S(\theta)}{2\sigma^2}

ℓ\ell を最大にすることは、S(θ)S(\theta) を最小にすることと同じです。つまり、誤差が正規分布なら、最小二乗推定量は最尤推定量に一致します。

以上が、最小二乗法についての解説です。

線形模型:行列で一度に解く

最後に、線形模型を見ていきましょう。

線形模型(線形モデル)は、応答 yy を説明変数の線形結合と誤差の和で表すモデルです。nn 個の観測をまとめて、行列で次のように書きます。

y=Xβ+ε,E[ε]=0,V[ε]=σ2I\boldsymbol{y} = X\boldsymbol{\beta} + \boldsymbol{\varepsilon}, \qquad E[\boldsymbol{\varepsilon}] = \boldsymbol{0}, \quad V[\boldsymbol{\varepsilon}] = \sigma^2 I

y\boldsymbol{y} は nn 次元の応答、XX は n×pn \times p の 計画行列、β\boldsymbol{\beta} は pp 次元の未知の係数です。「線形」とは、係数 β\boldsymbol{\beta} について1次式という意味です。したがって、y=β0+β1x+β2x2y = \beta_0 + \beta_1 x + \beta_2 x^2 のような2次式も線形模型です。単回帰、重回帰、分散分析は、XX の作り方が違うだけで、どれもこの1つの式に入ります。万能の型紙のようなものです。

ズレの2乗和は S(β)=(y−Xβ)⊤(y−Xβ)S(\boldsymbol{\beta}) = (\boldsymbol{y} - X\boldsymbol{\beta})^\top(\boldsymbol{y} - X\boldsymbol{\beta}) です。β\boldsymbol{\beta} で微分して0とおくと、X⊤(y−Xβ)=0X^\top(\boldsymbol{y} - X\boldsymbol{\beta}) = \boldsymbol{0} となり、行列の形の正規方程式が得られます。X⊤XX^\top X が逆行列をもつとき、解は次のとおりです。

X⊤Xβ^=X⊤y,β^=(X⊤X)−1X⊤yX^\top X \hat{\boldsymbol{\beta}} = X^\top \boldsymbol{y}, \qquad \hat{\boldsymbol{\beta}} = (X^\top X)^{-1} X^\top \boldsymbol{y}

記号の意味を確認しましょう。X⊤X^\top は XX の転置です。X⊤(y−Xβ^)=0X^\top(\boldsymbol{y} - X\hat{\boldsymbol{\beta}}) = \boldsymbol{0} は、残差が XX のすべての列と直交することを表しています。つまり、Xβ^X\hat{\boldsymbol{\beta}} は、y\boldsymbol{y} を XX の列が張る平面へ落とした影です。真上から光を当てたとき、棒の先の影が棒の先に最も近い平面上の点になるのと同じです。

推定量の性質は、次の3つです。

【線形模型の推定量の性質】

  1. 不偏: E[β^]=βE[\hat{\boldsymbol{\beta}}] = \boldsymbol{\beta}
  2. 分散共分散行列: V[β^]=σ2(X⊤X)−1V[\hat{\boldsymbol{\beta}}] = \sigma^2 (X^\top X)^{-1}
  3. 誤差分散の不偏推定量: s2=RSS/(n−p)s^2 = \text{RSS}/(n - p)(RSS\text{RSS} は残差平方和)

なお、誤差が正規分布のとき、σ2\sigma^2 の最尤推定量は RSS/n\text{RSS}/n です。分母が違う点は、正規分布の σ^2\hat{\sigma}^2 と同じ話です。

例題:行列で回帰係数を求める

4組のデータ (x,y)(x, y) が (1, 2), (2, 3), (3, 5), (4, 6) のとき、y=β0+β1x+εy = \beta_0 + \beta_1 x + \varepsilon の β^\hat{\boldsymbol{\beta}} と s2s^2 を求めましょう。

【解き方】

  1. XX は1列目がすべて1、2列目が xx。X⊤XX^\top X と X⊤yX^\top \boldsymbol{y} を計算する
X⊤X=(4101030),X⊤y=(1647)X^\top X = \begin{pmatrix} 4 & 10 \\ 10 & 30 \end{pmatrix}, \qquad X^\top \boldsymbol{y} = \begin{pmatrix} 16 \\ 47 \end{pmatrix}
  1. 行列式は 4×30−10×10=204 \times 30 - 10 \times 10 = 20 なので、逆行列を掛ける
β^=120(30−10−104)(1647)=(0.51.4)\hat{\boldsymbol{\beta}} = \frac{1}{20}\begin{pmatrix} 30 & -10 \\ -10 & 4 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 16 \\ 47 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0.5 \\ 1.4 \end{pmatrix}
  1. 予測値は 1.9, 3.3, 4.7, 6.1 で、残差は 0.1, −0.3, 0.3, −0.1
  2. RSS=0.01+0.09+0.09+0.01=0.2\text{RSS} = 0.01 + 0.09 + 0.09 + 0.01 = 0.2 なので、s2=0.2÷(4−2)=0.1s^2 = 0.2 \div (4 - 2) = 0.1

答えは β^0=0.5\hat{\beta}_0 = 0.5、β^1=1.4\hat{\beta}_1 = 1.4、s2=0.1s^2 = 0.1 です。傾きの分散の推定値は、0.1×4÷20=0.020.1 \times 4 \div 20 = 0.02 となります。

ここまでの3つの方法を比べてみましょう。

方法考え方必要な仮定特徴
モーメント法モーメントをそろえるモーメントの式計算が手軽。ありえない値が出ることも
最尤法データが最も起きやすい母数分布の形汎用で性質がよい。数値計算が要ることも
最小二乗法ズレの2乗和を最小に回帰式の形分布の仮定が不要。正規誤差なら最尤法に一致

試験のポイント:β^=(X⊤X)−1X⊤y\hat{\boldsymbol{\beta}} = (X^\top X)^{-1}X^\top\boldsymbol{y} と V[β^]=σ2(X⊤X)−1V[\hat{\boldsymbol{\beta}}] = \sigma^2(X^\top X)^{-1} は、2次の逆行列を手で計算できるようにしておきましょう。

以上が、線形模型についての解説です。

今回のまとめ

それでは、今回の内容を振り返ります。

今回は、推定量を作る3つの方法と、線形模型について紹介しました。寸法をそろえるモーメント法、証拠から犯人を探す最尤法、ばねのエネルギーを最小にする最小二乗法と、発想はそれぞれ違います。その中で最尤法は、どんな分布でも同じ手順で使える、最も汎用な方法です。

今回のポイントを振り返りましょう。

振り返り

  • モーメント法は標本と母集団のモーメントを等しいとおく。手軽だが、ありえない値が出ることもある。
  • 最尤法は尤度を最大にする。対数をとって微分するのが基本で、範囲が母数で決まる分布では直接考える。
  • 最尤推定量には不変性があり、g(θ)g(\theta) の推定量は g(θ^)g(\hat{\theta}) でよい。
  • 最小二乗法は分布の仮定なしに使え、誤差が正規分布なら最尤法と一致する。
  • 線形模型の解は (X⊤X)−1X⊤y(X^\top X)^{-1}X^\top\boldsymbol{y} で、残差は XX の列と直交する。

キーワードのおさらい

  • モーメント法: 標本モーメントと母集団モーメントを等しいとおいて母数を解く方法
  • 最尤法: 尤度関数を最大にする値を推定値とする方法
  • 最小二乗法: 観測値と予測値のズレの2乗和を最小にする方法
  • 線形模型: 応答を、係数について1次式の部分と誤差の和で表すモデル

さて、同じデータでも、方法によって推定値が変わることが分かりました。では、どの推定量が「よい」推定量なのでしょうか? 分散の分母は nn と n−1n-1 のどちらがよいのでしょうか?

次回は、不偏性や有効性など、推定量のよさを測る基準である「点推定の性質」について紹介します。

それでは、次の記事へ進んでいきましょう。

練習問題5問開いて挑戦する
問1. 形状 α\alpha、尺度 β\beta のガンマ分布(期待値 αβ\alpha\beta、分散 αβ2\alpha\beta^2)からの標本で、xˉ=8\bar{x} = 8、v^=m2−m12=16\hat{v} = m_2 - m_1^2 = 16 だった。モーメント法の推定値の組として正しいものはどれか。
問2. 幾何分布 P(X=x)=p(1−p)x−1P(X = x) = p(1-p)^{x-1}(x=1,2,…x = 1, 2, \dots)からの標本で、xˉ=4\bar{x} = 4 だった。pp の最尤推定値として正しいものはどれか。
問3. U(0,θ)U(0, \theta) からの標本が 2, 5, 3, 7, 4 のとき、θ\theta の最尤推定値として正しいものはどれか。
問4. ポアソン分布からの標本で xˉ=1.2\bar{x} = 1.2 だった。P(X=0)P(X = 0) の最尤推定値に最も近いものはどれか。
問5. 線形模型で X⊤X=(5101030)X^\top X = \begin{pmatrix} 5 & 10 \\ 10 & 30 \end{pmatrix}、X⊤y=(2050)X^\top \boldsymbol{y} = \begin{pmatrix} 20 \\ 50 \end{pmatrix} のとき、β^\hat{\boldsymbol{\beta}} として正しいものはどれか。